イケメンプロデューサーのルーツに迫る

“イケメンプロデューサー”濱田智之氏のトークショーをリポート――『センチメンタルグラフティ』などの話題も!_07

 2014年3月23日(日)、東京ビッグサイトで開催された“AnimeJapan 2014”の“声旬!”ブースにて、現在5pb.Recordsにて声優の今井麻美さんや原由実さんなどのアーティスト活動をプロデュースしているサウンドプロデューサーの濱田智之氏のトークイベント“クリエイタートーク 濱田智之ってどんな人?”が行われた。今井さんや原さんのプロデューサーとしての仕事や、過去に携わった仕事などについてインタビューをすることで、濱田氏について深く掘り下げていくという本企画。“イケメンプロデューサー”として一部で話題となっている同氏がどんな青春時代を送り、どのようにしていまの仕事に就くことになったのか? 詳しくイベント内で語った。なお、同イベントは整理券がすぐになくなってしまったようで、各アーティストを通して同氏のことが気になっているファンも多くいることが窺えた。

 当日紹介用に写真提供を求めたところ、何も出てこなかったため“脳内メーカー”で濱田氏のことを調べたというWebサイト“声旬!”の編集長であり、今回のイベントで司会進行を務めた橙灯氏。すると濱田氏の脳内には“悩”しかなかったということだったが、実際のところは「今日の晩ご飯何にしようかなあとか考えている」(濱田氏)とのことだった。そんな濱田氏の趣味・特技は、音楽制作、クルマ、音楽の話ということで、とくにクルマに関しては自分でカスタマイズするための知識を得るために19歳〜21歳までのあいだ自動車整備工場でバイトをしていたほどだと語っていた。また、“イケメンプロデューサー”ということで女性ファンが多いかと思いきや、男性ばかりが集まった会場に橙氏が不満を漏らすと「若いころから“そっち系の人”に人気があったんです(笑)」と濱田氏は笑い飛ばした。

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 ここからは濱田氏のルーツを辿っていくことに。3歳のころに姉といっしょにエレクトーンを始めたという濱田氏。4歳からはヴァイオリンを習い始めたとのことだが、これには父親の“ヴァイオリンが弾ける科学者に育てる”という夢が影響していると語る。そんな4歳ごろのヴァイオリンを弾いている写真や小学3年生ごろの全国大会の名古屋予選の様子を撮影した写真といったレアな写真が公開されると、会場からは歓声も。なお当時は全国大会にも出場していたそうだが、自身は記憶がないと語る。そして中学3年生のころにフォークギターを始め、高校に通うようになると友人と“インタールード”というバンドを組んでベースを弾いていたそう。この話題では高校卒業直後の写真も公開され、“モテたんじゃないですか?”と聞かれると「どうでしょうね?(笑)」とコメントし、橙氏から「モテない人はそういう答えかたをしないからモテたんだ!」という追撃を受けていた。

 18歳のころから作詞や作曲を始めたという濱田氏は、当時フュージョンやJ-POPなど、さまざまなジャンルを演りつつ、クラシックを聴くなど、幅広い音楽に触れていたとのこと。10代後半からは音楽業界で生きていくことを心に決めており、高校卒業後は音楽の専門学校に通っていたとのこと。アニメにはあまり触れていなかったとのことだが、ゲームはよくプレイしていたそうで、とくにパソコンでハマった『ブラックオニキス』(1981年発売)には思い入れがあり、後にBPS社の『ブラックオニキス』開発者と知り合いになったときにはとてもうれしかったと子どものような笑顔を見せる。また、学生時代に影響を受けたアーティストとして、小田和正氏と角松敏生氏を挙げる。透明感のあるメロディーに定評のあるふたりの影響は、現在の濱田氏が作る楽曲にも見られる要素と言えるだろう。

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▲この日公開された、超レアな3枚の写真。
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 その後、原太郎氏とともにティーズミュージックを立ち上げると、世界の航空機を紹介するレーザーディスク専用ソフトのBGMや、コンビニエンスストアで当時販売されていた“ビデオマガジン”のBGMなどを書いていたという。初めて関わったゲームの仕事は、セガのマスターシステムの作品とのことで、音楽プロデュースはセガサターン用ソフト『センチメンタルグラフティ』が初。同作ではゲーム中のBGMとキャラクターソングを担当しており、杉原真奈美(声:豊嶋真千子さん)の歌う『想い出を止めたままで・・・』、遠藤晶(声:鈴木麗子さん)の歌う『振り向けば I Love You』の作詞・作曲を手掛けた。同作は濱田氏の転機ともなった作品であり、「当時ゲーム音楽ってゲーム会社の社員さんだったりが作っていることがほとんどだったんですが、そこに音楽業界の人間が入ったらどうなるんだろうと、(ティーズミュージック社長の原氏とともに)ふたりで考えていたんです。あと、ふたりともゲームが好きだったのでやってみようと」ということでゲーム業界に飛び込んでいったそう。同作に関わったことで、それまでは歌の入っていないインストゥルメンタルばかりを書いてたのが、「歌モノもおもしろいな」と感じ、歌モノを書くようになったと語る。また、『センチメンタルグラフティ』と『センチメンタルプレリュード』で音楽プロデュースをしている濱田氏、“それぞれのキャラクターソングで違う面は?”と問われると「『センチメンタルグラフティ』は懐かしい音楽というものを意識して、『センチメンタルプレリュード』では当時の時代に合ったものを意識していました」と過去作品の裏話なども披露された。なお、現在プロデュースを担当しているアーティストである今井麻美さんとは、『センチメンタルプレリュード』で初めて知り合ったとのことで、当時の印象は「脚がキレイな女の子って感じでした」とコメント。「もちろん歌もうまいなって思いましたよ!」とフォローを入れていたが、最後は「いまでも脚がキレイですからね」とやはり話題の中心は脚に向かっていた。

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 “キャラソンのプロデュースとアーティストのプロデュースはどちらがやりやすいか?”という質問を受けた濱田氏は、少し悩みつつ、キャラクターソングはキャラクターの設定が明確に決まっていて、それをいかに音楽で表現するかというところに焦点があり、アーティストは設定ですべてが決まっているわけではないので、各アーティストの持っているものをどう音楽で表現するかというところに焦点が合っていると語る。キャラクターは自発的に表現することができないが、アーティストは自発的に表現をすることができるため、楽曲に対して濱田氏が思っているものとは異なる表現も出てくることがあり、それら不確定要素も含めてクリエイトするというおもしろさがあるとのこと。そういった“表現についてアーティストと濱田氏のあいだで違いが出た際にケンカをすることがあるか?”という質問には「そんなことはないです(笑)」と笑いつつ「そういう場合はジャンケンで決着をつけます。音楽には正解がないので、自分の意見も相手の意見もどっちも正しいと思うことがあるんですよね。そういうときにはジャンケンで。でも、僕が負けたことはいままでないと思います」と、ここぞという場面での強さを見せる。また、プロデュースする際に心がけている点については、「その人にとって最終的にイチバンいいものができあがるアプローチのしかたをしています。1度どうしたいか意見を聞いたほうがいい人もいれば、こちらから強くこうしたほうがいいということを言ったほうがいい人もいる。それをまず考えます」と、人と人とが作り上げていくものである以上、どのようにアーティストと向かい合うかというところを重要視していることを伝えた。

 今後の野望・夢については、別ジャンルとのコラボレーションや、大きなハコでライブをやってみたいということを語った濱田氏。2014年3月26日に発売される今井さんの12thシングル『漆黒のサステイン』では、カップリング曲の『化身』で作曲を担当しており、タイアップ作品である『コープスパーティー ブラッドドライブ』で血が流れるシーンをイメージして曲を書いたため、すごく怖い内容になっているとのことだ。こちらもぜひ注目したい。最後は、ふだん裏方である自身のトークイベントに集まってくれたファンに向けて、「こんなに多勢の方に来ていただいて、ありがとうございます。今井さんだったり原さんだったり、アーティストの方を通じてですけれども、僕の音楽の世界を感じてもらえればと思います。ありがとうございました」と感謝を述べた。

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