ドHENTAIな一面がたくさん見られたトークショー

『劇場版シュタインズ・ゲート』の裏話や新作『カオスチャイルド』の情報も−−若林漢二監督トークイベントリポート_01

 2014年3月23日(日)、東京ビッグサイトで開催された“AnimeJapan 2014”の“声旬!”ブースにて、『劇場版シュタインズ・ゲート 負荷領域のデジャヴ』で監督を務めた若林漢二氏のトークイベント“映像創作のインタヴュ”が開催された。緊張気味の若林監督をゲストに迎え、映像制作へと身を投じたきっかけなど、若林監督のルーツを辿った本イベント。多くのファンの前で、“若林監督とはどんな人なのか?”を少しずつ語った。

 まずはプロフィールの紹介ということで、用意された写真がなんと女装した姿というHENTAIな一面を覗かせる若林氏。「今日は執事コスプレでステージに出演しろと宣伝担当の人に言われたんですが、ふだんはこっち(女装)です。仕事中はだいたいこれ」と会場のファンの目を丸くさせる。そして、ここからはマジメに若林監督についてのインタビューがスタート。子どものころ好きだったアニメとして『ベルサイユのばら』、『ガンバの冒険』、『あしたのジョー』を掲げた若林監督。これらはすべて出崎統監督の手掛けた作品であり、その影響を強く受けているという。また、武蔵野美術大学の油絵科に在籍したころは、アニメを観ることもなく油絵と自主制作の映画作りに没頭する日々だったという。アニメから離れていた若林氏の転機となったのは、大学卒業後、絵の勉強のためにヨーロッパへ留学していたころに触れた海外での“日本文化”。 短期間ではあるもののイタリアやフランス、ベルギー、オランダなどを転々としていたという若林氏は、ヨーロッパの絵画や彫刻に触れ「芸術というものがすでに完成されているように感じた」と語る。その中でどれだけの成果が出せるのかと考えていたときに、海外でテレビをつけると日本のアニメが放送されていたのだという。『北斗の拳』や『らんま1/2』、『美少女戦士セーラームーン』などがヨーロッパで放送され、受け入れられている姿を見て、「世界で認められるにはアニメをやるしかないんじゃないか」と感じ、帰国後にProduction I.Gへ入社する。

『劇場版シュタインズ・ゲート』の裏話や新作『カオスチャイルド』の情報も−−若林漢二監督トークイベントリポート_06
▲こちらが、会場で用意された若林監督のプロフィール写真。マダムになりたかったと若林監督は語る。

 Production I.Gへは、作画試験に落ちたものの、“制作進行なら空いている”という理由から入社したという若林氏。入社当時はフルアニメーションで描かれ、選択肢により物語が分岐していくという画期的なゲームとして注目を集めた『やるドラ』シリーズ初期の作品に関わったそうで、その後もセガに出向するなど、ゲームに携わる仕事を多く担当していたそう。

 そしてI.Gを退社後、フリーランスの演出家・アニメーターとして多くのテレビや劇場アニメに携わっていくなかで、『シュタインズ・ゲート』という作品に出会う。そんな若林氏は、映画好きということもあり、テレビアニメ版のときから「隙あらば映画っぽいことを混ぜ込もうとしていました」と語る。『劇場版シュタインズ・ゲート 負荷領域のデジャヴ』にて監督を務めることになったときにはレンズの使いかたや画面の構図、長回しを多用するなど、映画的な手法を盛り込んみつつも90分という尺の制約の中で、カットしたシーンも5分ほどあったとのことだ。また、劇上映画を作る際には、“カット割”や“間”に気をつけていると語る。「カット割と間だけでじつは映画はできちゃうんじゃないかと最近思っています。これから作る映像はそういう方向をさらに突き詰めていけるんじゃないかと」とコメントした。

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『劇場版シュタインズ・ゲート』の裏話や新作『カオスチャイルド』の情報も−−若林漢二監督トークイベントリポート_02

 そのほか、『劇場版シュタインズ・ゲート 負荷領域のデジャヴ』の舞台設定についての話題も展開。同作では秋葉原だけではなく、池袋近辺がモデルとして登場する。“椎名まゆりの自宅のモデルなどはあるのか?”という話題には、東池袋の都電沿いに商店街があるのですが、線路の両脇が区画整理されているところにまゆしぃの家があります。ただ、区画整理でもうなくなってしまっている可能性もありますね」とコメント。また、牧瀬紅莉栖が訪れた、鬼子母神境内にある上川口屋という駄菓子屋なども実在する場所で、なんと江戸時代から開業しているお店なんだとか。これらの場所は、「昔ながらの街並の雰囲気が残っていて、時間が止まっているように感じるんです。タイムスリップ感がある」という理由で舞台として選ばれたのだそう。さらに、紅莉栖自身が心身ともに相当まいっている状態で訪れる場所であり、場所や時間の感覚が曖昧になっていくという心情をも表しているのだとか。

 また、幼少の岡部倫太郎と紅莉栖が出会うシーンについての心情について問われると「わりとよく聞かれるポイントですね。アフレコのときにも宮野さんに聞かれて、お話ししました。あのシーンは画面の通りに見てはいけないんです。子どものころの岡部がいて、そこにどうやっても岡部を助けられないという心情の紅莉栖がさまよって偶然再会してしまう。そのときの紅莉栖の心情を描写しています。もうひとつ『シュタインズ・ゲート』的に込めたかった意味は“あったかもしれない過去”ということですね。その先は皆さんに解釈していただければ」とコメントした。

 続いて、今後の監督のお仕事について、科学アドベンチャーシリーズ第4弾『カオスチャイルド』に演出として参加していることを告げた若林氏。同作については、「絵作りの部分を担当させていただいています。演出という形で絵作り全般に関わっています」としつつ、新たな情報としてはキャストについてすでに決まっていることと、豪華なキャストが参加しているということを伝えた。

 今後の予定については、「テレビアニメはつねに参加しています。スタッフロールなどを見ていると名前がたまに出ていると思います。あとは、テレビアニメ以外のアニメを作りたいなと思っています。これは個人的に思っているだけで、まだ言えるような段階ではないです。何かが決まったときには“Live5pb.”などで発表されるのではないかと思います。ほかにもやりたいことはいっぱいあって、テレビアニメももっとべったり関わる感じで1年ぐらいかけてやりたいし、実写もやりたいですね」と語った若林氏。最後にファンに向けて「皆さんやりたいことがあったらやればいいじゃない(フラウ風に)熱意と努力で大抵のことは実現するのでどんどんやりましょう(笑)。科学アドベンチャーシリーズは、ますますおもしろくなっていきます。新作を作るたびに言いたいことなのですが、『カオスチャイルド』はいままででイチバンおもしろくなると思います」と期待感を煽り、イベントの幕とした。

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