ゲーム実況配信はこれからのコミュニケーション手段

 Ustream Asiaが、Ustream内に、ゲームに特化したサイトとして“Ustream Games(ユーストリームゲーム)”を開設した(→サイトはこちら)。同サイトの開設は、いうまでもなくプレイステーション4のSHARE機能により、ゲーム実況配信に対する敷居が格段に下がったことを受けてのもの。Ustream Gamesは、プレイステーション4から配信される映像を始めとする、さまざまなゲーム映像や関連番組を集め、配信と視聴を通して新しいゲーム体験を提供することを目的としている。

 ここでは、Ustream AsiaにてUstream Gamesを担当する秋山広行氏と小森谷良太氏に、サイト開設の意図や、今後のゲーム実況配信の可能性などを聞いた。

※本インタビュー記事は、週刊ファミ通2014年3月27日号(2014年3月13日発売)に掲載された特集“実況配信がゲームを変える?”に掲載されたインタビューの完全版です。

Ustream Gamesの戦略を聞く PS4のSHARE機能が広げるゲーム実況配信の可能性_04

Ustream Asia
コンテンツ企画部 秋山広行氏(右)
サービス・デザイン部 サイト企画課 小森谷良太氏(左)

――まずは、Ustream Gamesを開設するに至った経緯を教えてください。

秋山 プレイステーション4が発表されて、“Ustreamに対応する”ということが判明したときに、社内でもかなり盛り上がったんですよ。ゲーム実況配信がものすごく人気があることは、前からわかっていたのですが、それまでは権利問題でグレーゾーンだった。私たちはクリーンなサービスを目指しているので、積極的に展開するというわけにはいかなかったんです。それが、ある意味で“正式対応”となって「やっと僕らもできるんだ!」ということで、プロジェクトを始動させることにしたんです。

――やはり、公式のお墨付きが得られたのは大きい?

秋山 大きいですね。

小森谷 で、ソニー・コンピュータエンタテインメントさんも含めて、どういった取り組みができるかということで、お話を進めさせていただきました。それで、ゲーム専門のサイトUstream GamesをUstream内に立ち上げることにしたんです。

――サイトを作るにあたっては、どのような点に気を配ったのですか?

秋山 個人的には、Ustreamで「特定のコンテンツを見つけたい」というときに、なかなかたどり着けないところが気になっていました。それでUstream Gamesでは、見たいコンテンツをなるべくすぐに見つけられるように心がけています。具体的には、ゲームタイトルごとに配信コンテンツをまとめたり、視聴者が多い順に並べたり……といった工夫をしているんです。あとは、編成担当の判断で“注目の配信”をピックアップして、人気コンテンツをフィーチャーしたりとか。

――今後、プレイステーション4向けのタイトルが増えたら、さらにすさまじい状況になりそうですね。

秋山 むしろ楽しみです(笑)。タイトルは多ければ多いほどいいと思っています。そのために、ジャンルごとに振り分けをしているんです。

――Ustream Gamesに対して、どのようなことを期待していますか?

小森谷 これまでゲームを購入するときには、ゲーム情報誌を見たり、Webサイトなどを見て判断材料にするケースが多かったと思うのですが、これにゲーム実況配信が加わることによって、さらに大きな後押しをしてくれるのではないかと。で、“ゲーム実況配信を視聴して”→“ゲームを購入”→さらに“みずからゲーム実況配信を行う”というサイクルを期待しているんです。ちなみに、ソニーストアのソフトウェアのページにも、Ustream Gamesのコンテンツを配信していただいていて、購入のための参考にしていただけるようになっているんですよ。

秋山 ソフトを購入するかどうかで迷ったときに、ユーザーさんのプレイ動画や生の声は、いちばん説得力がありますからね。

Ustream Gamesの戦略を聞く PS4のSHARE機能が広げるゲーム実況配信の可能性_02

――Ustream Games、ひいてはゲーム実況配信に対する、ゲームメーカーさんの反応はいかがですか?

秋山 ゲーム実況配信に対して、プレイステーション4が登場する前は、正直、反応はさまざまでした。もっと言えば、タイトルを担当するクリエイターによってまちまちでしたね。プロモーション効果を期待している方もいらっしゃいましたし、逆に「ネタバレ要素を見せたくない」という方もいらっしゃいました。それが、今回プレイステーション4にSHARE機能が搭載されたことで、業界としての方向性は示されたのかな……と思っています。いまは、「いっしょにチャレンジしていきましょう!」というお声掛けを、多くいただいています。

――ゲーム実況配信に向けて、より一層盛り上がっていく感じでしょうか?

秋山 そうですね。我々も実際にやってみて感じたのですが、とにかくプレイステーション4のSHARE機能が圧倒的に簡単なんです。いままでパソコンなどでゲームを配信しようとすると、どうしても機材やソフトウェアを用意したり、さらにはOSとの相性もあったり……と、配信するまでのハードルが高かった。それがプレイステーション4さえあれば、すぐに実況配信できてしまう。僕自身、いままでゲーム実況配信をやろうとしたことはあるのですが、なかなか難しくて続かなかった。そんな僕が、プレイステーション4発売後は、ほぼ毎日配信しているんですよ。とにかく簡単過ぎて、配信せざるを得ないくらいです。

――(笑)。相当敷居が低いことは間違いなさそうですね。

秋山 あと、僕がプレイステーション4のSHARE機能の詳細を聞いたときにまっ先に思い浮かんだのが、ゲームを遊ぶときに「これで、ひとりでなくなる」ということでした。いままでは、ゲームをプレイするときは、自分の部屋でひとりで遊んでいたものが、配信をすることによって「誰かが見ていてくれるかもしれない」と思えるようになった。配信をするという行為だけで、ゲームを遊ぶことに対するモチベーションがさらに高くなったんです。

――ああ、ゲーム実況配信を見てもらうだけで、コミュニケーションが成立するんですね?

秋山 気持ちとしては、強く感じますね。何もコメントがなくても、視聴者数のカウントが増えていくだけでうれしい気分になります。「ああ、見てくれているんだ」という。

――なるほどなあ。それはゲーム実況配信独特の感覚かもしれませんね。

小森谷 あと、「ゲームで詰まったときに、アドバイスをしてもらえるからいい」というユーザーさんからのご意見もありましたね。

――いずれにせよ、“ゲームを見て楽しい”という層は、確実に増えているようですね。

小森谷 僕の妻もそうなのですが、「難しいゲームに自分で挑戦するのはたいへんだから、人がプレイしている映像を見るのを楽しむ」という人もいますね。

秋山 確かに、“ゲームを見る楽しさ”は、確実に存在しますね。ゲーム実況配信は“見る”というエンターテインメントだと思います。

――今後、ゲーム実況配信が盛んになるでしょうが、そのことによりゲーム業界はどのように変わっていくと思いますか?

秋山 実況配信をすることの敷居が下がって、実況配信を見る人が増えることによって、ゲームを遊ぶ人の間口が広がるものと期待しています。そうすることによって、ゲーム好きな人がどんどん増えていってほしいなと思っています。ゲーム実況配信は、ゲームのイメージをさらにポジティブにするものと期待しています。引いては、ゲーム業界全体が盛り上がってくれたらいいなと。

小森谷 あとは、今後は新しい楽しみが生まれていくと思っています。たとえば、これはいまでも実装されているのですが、コーエーテクモゲームスさんの『真・三國無双7 with猛将伝』では、実況中にコメントに“肉まん”を入力すれば、実際にゲームに肉まんが落ちてくるようになっています。視聴者がコメントすることで、ゲームに反映されるんですよ。

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――実況配信の視聴者が、ゲームに介入できるんですね?

小森谷 「実況配信者はひとりじゃない」というのは、すごく感じます。小中学生のころの、友だちとワイワイ集まってゲームを遊ぶ感覚に近いですよね。大人になると、なかんなかそういう機会は持てないけど、ネットだからこそ、再現できるという。

――ちなみに、Ustream Gamesの企画が立ち上がったのは、いつごろだったのですか?

小森谷 じつは、昨年の11月くらいなんです。

――そんなに短期間で実装開設したのですか!?

秋山 小森谷の突貫力のなせる技です。北米市場での発売にあわせてプレイステーション4本体を入手して、SHARE機能に感動して「これはやばい!」みたいな(笑)。

小森谷 11月末くらいに、「やろう!」と決断していましたね。で、何としてでも日本の発売日である2014年2月22日には間に合わせないといけないということで、死に物狂いでした。で、じつは秋山はUstream Gamesの開設時は、日本にいなかったという。開設を見届けることなく、新婚旅行に行ってしまったんです。

秋山 新婚旅行の申し込みをしたときは、まさかこんなことになるとは思っていなかったんです。Ustream Gamesのプロジェクトは、影も形もなかった。それでも、準備をしておけば大丈夫かな……と思ったのですが、ギリギリまでバタバタしてしまって、最終的には周囲のメンバーにお願いして、新婚旅行に出かけました。Ustream Gamesが開設されたときは、イスタンブールの空港からWi-Fiにつないで、「トルコでも見えるよ!」というコメントを送りました。妻には、「新婚旅行に集中してよ!」って文句を言われましたけど(笑)。最終的には、小森谷らのがんばりにより、無事プレイステーション4の発売前にはサービスをスタートできました。

小森谷 Ustreamの本社はアメリカ・サンフランシスコ、開発拠点はハンガリー・ブダペストということで、その間での調整がたいへんでした。とくに時差。夜中にメールが返ってくるので、内容を確認してすぐ返信しなければならなかったり……。「24時間起きていないといけないのか」という感じでした。

――今後、Ustream Gamesはどのようなサービスを予定していますか?

小森谷 多言語化は急務でして、3月11日に英語と韓国語への対応を行いました。そのほかの言語に関しては、順次展開予定です。

秋山 ゲーム業界を盛り上げていきたい……ということで、各ソフトメーカーさんとのコラボ企画みたいなものは、どんどん実施していきたいと考えています。今後も続々と発表していきますので、お楽しみに。あとは、いろいろとやりたいことがたくさんあるんですよ。こちらも詳細が決定次第発表していきますので、ご期待ください。

Ustream Gamesの戦略を聞く PS4のSHARE機能が広げるゲーム実況配信の可能性_01

 インタビューでも触れている通り、ただいまUstream Gamesでは、“プレイステーション Vita プレゼントキャンペーン”を2014年3月28日まで実施中だ。こちらは、プレイステーション4のSHARE機能を使ってゲームをUstreamで配信するか、Ustream公式ツイートをリツートすると、抽選でプレイステーション Vitaが当たるというもの。気になる方はキャンペーンサイト(→サイトはこちら)公式サイトでご確認を。