元LoLのコミュニティマネージャーが身につけたスキルを明かす

「インターネットは無法の荒野」ネットでぶん投げられる罵倒からクリエイターが生き延びるには?【GDC 2014】_01

 現在アメリカはサンフランシスコで開催中のゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス(GDC)は、ゲーム開発者の国際会議。というわけで、参加しているのはほとんどクリエイターばかり。
 で、特にインディーの人なんかはそうだけども、所属を明かしてツイートしたりなんだりやっている人も多いもんで、それがコミュニティーの力となることもあれば、自分の制作物に関連して、ありがたーい罵声を頂くこともある。

 「もうモノ作りやめようか?」とダメージを受ける人もいるだろう。でも、耐性上げて乗り切ろうというのが、元『League of Legends』のコミュニティマネージャーで、現在はコミュニティコンサルタントなどをやっている“Nikasaur”ことNika Harper氏による講演「How to Become Fireproof: Surviving Internet Negativity」だ。

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▲彼女が出演したビデオに対する皆さんからの反応。「カンガルーの中ではクールだな」、「おぉぉ、このクソアマ無茶やってんぞ」、「マジでこいつ使ってビデオ撮るのやめてくんないすかね? もっとマシなの出来るだろ常識的に考えて……」、「子作りしてーは」、「うわブス! 目がかわいそうだわ」

 Harper氏は、「インターネットは無法の荒野」であるという。人々は匿名で責任もあまりなく、あらゆるものが憎しみの対象となりうる。さらに、なんでもいいから煽ったりなんだりで注意を惹きたいだけの人もいる。
 クリエイターにとって不運なのは、作ったモノとクリエイターが重ねて見られがちで、距離を取りにくいことだ。ネット上ではひとりの人間としての真実味が伝わりづらいのもあって(スーパーセレブが個人的な感情を表現してもリアルに思えないのと同じ)、遠慮ない言葉が浴びせられる。すると、たとえいいコメントをたくさんもらっていても、悪いコメントだけが意識に溜まっていき、それに押し潰されそうになる。

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▲HAHAHA、インターネッツは西部の荒野だぜヒャッハー!
▲非があろうがなかろうが、なんであれ、ヘイトを掻き立てる可能性がある。

 Harper氏は、耐性を上げるためにまず、なぜ彼らが批判するのかをしっかり理解することが必要だと語り、キッツい批判者の三類型を挙げた。
 まずは“重要性とパワー型”。作ったモノが自分にとって何らかの重要性やパワーがあるため、逆に個人に対して怒りや痛みをぶつけてくるというタイプ。
 そして“過度な情熱に駆られたファン型”。作ったモノに対するフラストレーションや落胆を必要以上の言葉で表現するタイプだ。
 最後は“煽動型”で、煽って煽って論争すること自体が目的の輩タイプ。

 これらのコメントをする人は、書いている内容ほど深く考えていないことが多く、また個人的外観など(デブ、ブス/ブサイク、アホ、ゲイ、フェイク野郎)が罵倒ワードに選ばれやすいという。ではスルー力を上げておけばいいのか?

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▲“おめーは俺の気分を害した。今どんな気分だ、あーん?”個人攻撃に走るパターン
▲“俺の愛するものを直せよ、このケツ穴野郎!”熱狂的過ぎるファン。
▲“ざまぁ、釣れてんじゃん。もっと注目してくんねぇかな!”煽り屋さん。

 そうでもない。キッツいことを言われれば傷つくのは当たり前だが、ひとまず個人的なこととして受け止めることはせずに、逆に言った相手個人を想定して、いったいなぜそんなことを言うのか、何を言いたいのかを冷静に分析してみようというのだ。
 単なる怒り? 何に対して? その中には何かフィードバックが隠れているかもしれない。一部の批判には価値があり、一所懸命に作ったものを批判されて頭にくるのは当然であるものの、違った視野を与えてくれる機会にもなりうると語る。

「インターネットは無法の荒野」ネットでぶん投げられる罵倒からクリエイターが生き延びるには?【GDC 2014】_07
▲「ワロタ」、「ドアホ」ぐらいの略語の罵倒が多いが、たまには長い割に要約すると「ヘタクソ」だけのものが来たりもする。まー、どういった部分について言ってるのか、考えてみるしかないですね。っていうか、知ってる実例が豊富だなぁ……。

 だがそれでも、疲れて繊細になっている時などには傷ついてしまいがち。しかもそういう時期に限って、それを知っているかのように弱点をグサリと突かれるものなのだそうだ。そんな時は無理をせずに、自分の求める安全な場所に移動し、精神衛生的にいいことをやるべきだとのこと。

 なぜなら、クリエイトすることは絶対にやめないで欲しいからだ。しっかり準備しておけば、インターネットは無法地帯でありながらも、一方ではあなたをサポートしてくれる人たちもたくさんいる機能満載の都市なのだから、心ない批判に折れずにクリエイティブでい続けて欲しいと講演を締めくくると、聴講者からは熱い拍手が送られた。(文・取材・写真:ミル☆吉村)

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