ウワサのSteamコントローラーを体験

 2014年3月17日~21日(現地時間)、サンフランシスコ・モスコーニセンターにて、ゲームクリエイターを対象とした世界最大規模のセッション、GDC(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス)2014が開催中だ。

Steam Machine成功のカギを握るのはSteam コントローラー Valveのキーパーソンを直撃【GDC 2014】_01

 2014年3月17日~21日(現地時間)、サンフランシスコ・モスコーニセンターにて、ゲームクリエイターを対象とした世界最大規模のセッション、GDC(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス)2014が開催中だ。

 GDC会期中の3日目からは、セッションとは別に展示ホールのGDC EXPOがオープン。ハードメーカーやツール&ミドルウェアメーカーを中心に、自社の製品をお披露目する場が設けられている。その中に、ひときわ注目を集めているブースがあった。Valveだ。同社のブースでは、先ごろ正式に発表されたばかりの(→関連記事はこちら)話題のハードSteam Machineを出展。多くの来場者を集めていた。

 会場ではSteam Machineのプロトタイプを試遊できたわけだが、遊んでいる人の手元を見ると、Steamコントローラーが! さんざんSteam Machineの記事を取り扱っている記者ではあるが、何を隠そうウワサのSteamコントローラーは初見。「Steam Machineの大きな特徴のひとつ」と言われるコントローラーのこと、記者は、試遊の順番が訪れると、おもむろにコントローラーを手に取った。

 Steamコントローラーは、左右がホイール状になった独特の形状。ノートパソコンのタッチパッドやマウスと親和性のある操作形態で、「PCユーザーでも違和感なくプレイできるように」との配慮が見られる。ボタンは左右に4個ずつ。左側の矢印がついたボタンは、何に使うのだろう……と思われるが、担当の方に聞いてみると、「開発者やプレイヤーが自由に振り分けられるんですよ」とのこと。そう、Steamコントローラー最大の特徴は、開発者やユーザーが自由にボタンの役割を割り振りできること。PCゲーム並の自由度の高さを実現しているのだ。そのためボタンは多めに用意してあるようだ。で、コントローラーを握っていると、背面にもレバーのようなボタンがあることに気がついた。なかなかほかでは見かけないレバーだが、左右の平衡感覚が問われるゲームとかに向きそうだ。ゲームによっては、有効活用するケースもあるのかも。

 と、つらつら書いてきたSteamコントローラーだが、実際のところはまだまだ試作の段階で、今後変更する可能性があるとのこと。試作→ユーザーからのフィードバックを経て手直し→試作、というプロセスをくり返しているようだ。

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 さて、期待も高まるSteam Machineであるが、今回GDCの会場でValveのマーケティング・バイスプレジデント、ダグ・ロンバルディ氏にインタビューをする機会を得た。以下、そのやりとりをお届けしよう。

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――先日発表されたばかりのSteam Machineに対する反応を教えてください。
ダグ 皆さん、このアイデアにわくわくしているようです。これまでとは違った方向へ引っ張っていく新しいものが出ると、いろいろな意見が出てきますよね。よいという人、ダメだという人、さまざまですが、私たちとしては、すべての意見を聞いていきたいと思っています。

――よい意見にはどのようなものがありますか?
ダグ Steamでいっしょにやってきたデベロッパーは、ゲームをより多くの地域でプレイしてもらえるようになることを喜んでいます。Steam Machineでは、多様なゲーム経験を提供できます。今後成長するプラットフォームが提供できるんです。もっとも重要なのは、我々が長期的な視野でこのプロジェクトを進めているということ。ひとつのバージョンを出してしばらくこのまま……ということはありません。これはデベロッパーにとってもプレイヤーにとっても、エキサイティングなことだと思います。元々は、Steam Machineは、プレイヤーがプレイできる地域を広げて欲しいという要望からはじまったことなんです。

――改めて聞きますが、Steam Machineの魅力は?
ダグ まだ動き始めたばかりなので、いろいろと動いています。いまは、コントローラーのフィードバックをもらっているところですね。デベロッパーへのサポートやエンジンへのサポートも加わり、勢いがついてきています。ベータテストからのフィードバックも検討中です。ゲームを開発してきた経験から言うと、テストをやればやるだけ内容はよくなる。Steam Machineでは、これと同じアプローチを取っていて、デベロッパー、ゲームユーザー、皆さんの意見と取り入れて作ったものをリリースする予定です。

――リビングに入るということで、プレイステーション4やXbox Oneは、ライバル関係に立つものとして意識しますか?
ダグ 私たちは、個々に自分の領域を定めようとしています。任天堂やソニー、マイクロソフトと比べてどうかということはあまり考えていません。Steamの利用者、デベロッパーが求めるものは何かを追求し、それをどれだけ早く実現し、テストし、改善できるかにフォーカスしています。これをやっていれば、Steam Machineはおのずとうまくいくと思っています。

――Steam コントローラーの特徴を教えてください。
ダグ これまではリビングルームで遊ぶことが難しかったゲームが、Steamコントローラーを使えば遊びやすくできることです。ふつうPCベースのSteamでは、マウスとキーボードでプレイしますが、Steam Machineを使えばリビングで快適に遊べるようになる。そういった意味では、Steamコントローラーは、Steam Machine成功のカギを握っています。

――今回、Steamコントローラーのプロトタイプでは、新しく左側に4つのボタンが追加されましたね。
ダグ これは、前回からのメジャーな変更点として、GDCで初お披露目させていただきました。当初は、LEDスクリーン上に置く予定でしたが、従来のゲームユーザーにはなじみ深いスタイルにしています。操作は、タッチバッドにするか、方向ボタンにするか選んでもらえるようになっています。既存のゲームでは、方向ボタンのほうがノーマルに感じるかもしれませんが、将来出てくるゲームに関しては、新しい操作方法がでてくることを期待しています。今年始めにSteam Machineを発表して以来の大きな変更点ですね。いまフィードバックをもらっているところで、これからテストをして様子を見ます。

――Steam Machineの価格帯が幅広いですが、戦略的なものですか?
ダグ Steam Machine参入各社に対して、デザインを含め仕様をオープンにしたので、各社の意向で作っています。現時点では、13社のハードメーカーがSteam Machineの発売を予定していますが、価格は各社が決めたことですね。そうした自由度の高さが、Steam Machineの特徴でもあります。

――Steam Machineはいつごろ発売になりますか?
ダグ 今年の秋を予定しています。

――最後に、日本のSteamへひと言お願いします。
ダグ 日本の皆さんにSteam Machineをお届けできる日が来るのを心待ちにしています。ぜひプレイして楽しんでいただけるとうれしいです。

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▲会場では、自社制のプロトタイプ(左)と、GIGABYTEのSteam Machine(右)が試遊できた。

Steamのよいところはカスタマーサービスがしっかりしているところ

 さらにGDCの会期中では、Valveのファイナンス担当、マーク・リチャードソン氏にも話を聞くことができた。Valveでは、デジカと協力して日本市場で日本円での決済を可能にする“Steam ウォレットコード”を導入しているが(→関連記事はこちら)、リチャードソン氏はファイナンス担当として、Steamのロジスティックを担当している。リチャードソン氏によると、Steam Machineに対する反応は「ものすごくポジティブです。おもにPCで遊ぶものだったゲームが、Steam Machineを活用することでテレビでもプレイできる。その点に多くのクリエイターが注目しています。家庭用ゲーム機と同じ立ち位置ですが、もっとオープンです」とのこと。

 また、“Steam ウォレットコード”は非常に好評で、そのため日本市場は新規顧客がいちばん伸びている地域だという。

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▲マーク・リチャードソン氏(左)とデジカのジャック・モモセ氏。GDCの会期中に行われたミーティングの途中にお邪魔しました。

 今後のSteam Machineの展望を聞いてみたところ、「家庭用ゲーム機は世界中の全地域で発売されているわけではありませんが、PCは世界中のどこでもあります。PCがあるところに、Steamも進出できるんです」とコメント。さらに、「Steamのよいところはカスタマーサービスがしっかりしているところです。ゲームを売るだけでなく、いろいろな仕組み作りに取り組んでいるんです。Steamでは、ゲームの販売はもちろんさまざまなコミュニティー要素も充実しているので、ユーザーが再度利用する気になってくれるんです。これが大事なことで、一度ソフトを買ったらそれで終わり……というわけではなくて、何度でも戻ってきてくれる。それで、Steamは成長を続けられるのだと思います」と自信のほどを見せた。日本でも着々とSteam Machineの波は押し寄せつつあるようだ。

(取材・文/編集部F)