インタビューに加え、2タイトルのディレクターのコメントを独占掲載!
『魔界戦記ディスガイア』シリーズなどの数々のタイトルを生み出し、2013年に設立20周年を迎えた日本一ソフトウェア。その日本一ソフトウェアが、新たな取り組みとして“日本一ソフトウェア NEWBRAND”(以下、“NEWBRAND”)を立ち上げた。“NEWBRAND”は、その名の通り、“「新たな切り口、新たなゲーム性」をテーマに新規IPを創出していくもの”(リリースより引用)で、2014年4月26日に発売予定のプレイステーション3用ソフト『ハーレム天国だと思ったらヤンデレ地獄だった。』や、2014年6月19日発売予定のプレイステーション Vita用ソフト『htoL#NiQ -ホタルノニッキ-』などが、“NEWBRAND”に含まれるという。今回、この“NEWBRAND”を立ち上げるに至った経緯から、上記の2タイトルの内容までを、日本一ソフトウェア代表取締役社長の新川宗平氏にうかがった。20周年タイトル、そして“NEWBRAND”と、新タイトルに意欲的に挑んでいく日本一ソフトウェアの狙いとは? 合わせて、気になる新世代機への取り組みについても迫る。
■プロフィール
新川宗平氏(Niikawa Sohei)
日本一ソフトウェア代表取締役社長。『魔界戦記ディスガイア』シリーズを始め、同社のタイトルのプロデュースを多く手掛けるほか、シナリオを担当することも。写真は、同社の会議室に飾られている大型パネルをバックに。
新しい人材による、新しい感性の新しい挑戦
――まずは、“NEWBRAND”を立ち上げた経緯からおうかがいできますか?
新川宗平氏(以下、新川) 日本一ソフトウェアは、おかげさまで2013年で20周年を迎えましたが、家庭用ゲームの業界でお客様に育てていただいた会社だと思っていますし、これからも家庭用ゲームでがんばっていきたいという強い想いを持っています。それを、もっともわかりやすい形で表現する方法というのが、商品で語ることだと思っているんですね。もちろん、お客様のニーズに合わせて続編を出すということも考えられますが、そこで新規のオリジナルタイトルをやっていくチャレンジと言いますか、新しいものに挑む元気なところを皆さんにお見せし、なおかつお客様に楽しんでいただくことが、ここまで育てていただいた日本一ソフトウェアからのお返しとしてやるべきことなのではないかと考えました。そこで、あえて声を大にして宣言するために、“NEWBRAND”を立ち上げさせていただきました。
――日本一ソフトウェアは、2013年にも“20周年記念タイトル”と銘打って、新規IPにチャレンジされていましたが、それらの新規IPと今回の“NEWBRAND”の違いとは?
新川 我々の中で、“NEWBRAND”として位置づけするのに必要な条件は3つあります。ひとつは新規IPであることと、もうひとつは家庭用ゲームであること、そして最後に、それぞれのタイトルに、世の中として、もしくは日本一ソフトウェアとしての、何らかの新しい挑戦が入っていること。この3つの条件を満たしているものを、“NEWBRAND”と呼んでいます。確かに、おっしゃる通り、2013年に発売した『神様と運命革命のパラドクス』や『魔女と百騎兵』なども新規IPですし、弊社の新たな看板タイトルにするべく開発したものでした。ただ、それらのタイトルは、すでにたくさんの経験を積んでいるスタッフたちが、それなりのコストと時間をかけて作るという、我々の看板商品である『ディスガイア』シリーズのようなイメージのタイトルだったんですね。でも、ゲーム制作はコストがすべてではないと思っていますし、日本一ソフトウェアとして、『ディスガイア』のような商品ばかりでもダメだとも思っています。そこで、もっと新しい感性や感覚を取り入れた、先ほど言ったような新しい挑戦を前面に出したものが、“NEWBRAND”になるわけです。
――なるほど。しかし、そのようなタイトルを意図的に作るというのも難しいと思います。
新川 はい。そこで、2012年12月に社内で企画公募をしたんです。ひそかにアイデアを溜めていたスタッフや、「本当はこういうものを作りたい」と考えているスタッフにアイデアを出してもらうきっかけにするために、ジャンルも問わず、開発部門以外からも参加オーケーにしたところ、当時の社員が100人近くだったんですが、1ヵ月くらいの短期間にも関わらず、最終的に52個の企画が出ました。
――52個! それはすごい!
新川 私たちもビックリしました(笑)。これまで、弊社では主要なタイトルを手掛けてきたディレクターやプロデューサーが、「こういうのをやろう」と企画を出すことはあっても、一度に多数の企画が出てくるということはなかったので、そんなに多くの企画が提出されると思っていなかったんです。こんなにもうちのスタッフに「やりたい!」と思うような熱い志があったのかと。でも、考えてみれば当然なんですよ。弊社は岐阜にありますが、東京や大阪などではなく、わざわざ岐阜……と言うと、岐阜の方々に怒られそうですが(苦笑)、ここにまで就職に来るということは、「何かやってやろう!」と秘めた想いを持っているのに決まっていますよね。そうじゃなかったら、東京の大手メーカーさんに行きますし(笑)。
――いえいえ(笑)。でも、そんなスタッフの秘めた熱い想いが、企画公募をきっかけに出てきたわけですね。
新川 ですので、お客様の目に触れるものとしては、それらの公募から厳選されたものになりまして、今回紹介するのが『ハーレム天国だと思ったらヤンデレ地獄だった。』(以下、『ハーレム天国』)と、『htoL#NiQ -ホタルノニッキ-』(以下、『ホタルノニッキ』)の2本です。じつは、『ハーレム天国』は、52の企画のひとつではなく、その後に出てきた企画だったのですが、企画公募の条件にもピッタリ合っていて、とても尖った内容だったので、“NEWBRAND”のひとつに加えました。どちらのタイトルも、ディレクターを担当するのが初めての人間で、そういった部分も含めて、いままでにない新しいおもしろさが出せるのではないかと期待しています。
――予算の大きいタイトルやシリーズものですと、実績のある人がディレクターになりがちですが、こういった企画ですと、新しい人材の抜擢につながっていいですね。
新川 新しい人材に任せることや、社内の企画公募などは、「会社都合だろう」と、悪く感じる方もいらっしゃるかもしれません。ですが、実際には将来的にお客様のためになると思っています。というのも、現在弊社で『ディスガイア』クラスの大きいタイトルのディレクションをする人間も、もともとはパズルゲームやアドベンチャーゲームなどの規模の小さいタイトルで初めてのディレクターを担当することになったわけです。私も麻雀ゲームからでしたし、会社としても、こういった規模の小さいタイトルを用意して、経験を積める機会を作らないと、将来的に大きいタイトルを扱える人間も少なくなってしまいますので。
――大きいタイトルは、ある程度キャリアを積まないとできませんよね。
新川 弊社で言うと、『魔女と百騎兵』や『神様と運命革命のパラドクス』といった大きなタイトルでディレクターを初めて経験すると、そのボリュームの多さに、ディレクションにブレが発生して、失敗してしまう可能性が高いと考えています。ですので、安心して任せることはできない。ただ、続編の場合は話は別で、続編ならば方向性も固まっているので、新人のディレクターにも任せやすい。大手さんで続編が多いのは、そういう理由もあるのではないかと考えています。
――おうかがいして感じるのは、“NEWBRAND”は日本一ソフトウェアという、名前の知られたパブリッシャーから出るタイトルではありますが、インディーゲームの感覚に近いですよね。
新川 まさに、社内インディーのような形でやっています。ただ、作るものは同人などではなく、お客様に向けた商品というつもりでやっていますので、そこはご安心いただければ。たとえば、『ハーレム天国』と『ホタルノニッキ』にしても、お気に入りいただけたならば、「このチームはつぎはどんなものを作るのか」、「この人だったらこういうのを作れるんじゃないか」というような期待も含めて、楽しんでいただける展開ができると思っています。
――こういった企画は、やはりある程度ダウンロード販売が浸透してきたからこそ実現したものなのでしょうか?
新川 そうですね。現在、パッケージ販売の本数がなかなか振るわない状況ですし、ダウンロード販売があるからこそ生まれたチャンスだと思っています。
――『ハーレム天国』、『ホタルノニッキ』の順に発売される理由は?
新川 先に企画書が通っていたのは『ホタルノニッキ』のほうだったんですが、開発の進行状況的に『ハーレム天国』が抜いたので、この順になっています。『ハーレム天国』よりも『ホタルノニッキ』のほうが、初めて作るシステムなどが多いので、それなりに時間を要することになりました。
ギャルゲーのような『ハーレム天国』で待つのは、血の惨劇
――各タイトルごとにお聞きしていきます。『ハーレム天国』は、日本一ソフトウェアでは珍しい恋愛アドベンチャーゲームのような雰囲気で、発表後に大きな反響がありましたが、ゲームとしてはいわゆるアドベンチャーゲームなのでしょうか?
新川 そうです。選択肢がいくつか登場してきて、それを選んでいくと、そのうちエンディングにたどり着くという流れですね。
――本作でとくに尖っているところは?
新川 全員“ヤンデレ”というところですかね(笑)。ヒロインなんだけど、ちょっと、いやだいぶ病んでいると。
――それは尖っていますよね(笑)。
新川 ただ、序盤は完全に学園ラブコメディのテンションで、プレイしていると、自然と顔がにやけてくるような内容なんです。ヒロインたちが病んでいくのが想像つかないような。でも、そのギャップが“ならでは”の魅力ですね。あと、ディレクターには、「とにかくバットをおもいっきり振れ」と伝えています。このタイトルの場合、“とりあえずバットに当てることが重要”と中途半端なスイングをするのではなく、当たるか空振りかの二択でいいから、おもいっきり力強いスイングをすることが重要だと思っていたので、とにかく“振り切れ”という話をしていましたね。
――このディレクターの方は、これまでどういったタイトルを手掛けてきたのでしょうか?
新川 ディレクターの辰己は、弊社の大阪開発室に所属している人間で、もともとデザイナーでした。『魔界戦記ディスガイア 魔界の王子と赤い月』や『迷宮塔路レガシスタ』などに関わっていましたね。
――“ハーレム天国”と“ヤンデレ地獄”というタイトルのように、プレイ時のギャップはすごいのでしょうか?
新川 前半のラブコメ展開は、まさにピンク色というような雰囲気で、男の主人公ひとりを複数のヒロインが取り囲む、タイトル通りのハーレム天国なんです。
――それが終わりのほうではサスペンスのように……?
新川 そうですね。シナリオは、恋愛アドベンチャーと、サスペンスの両方に書き慣れている方にお願いしているので、さすがという展開になっています。
――パッと見た感じ、日本一ソフトウェアのイメージではないですよね。
新川 よく言われます(笑)。でも、完全に内製タイトルです。『流行り神』のときも「どこか外の会社にお願いしたの?」と言われたんですが、『流行り神』も社内開発なんです。うちは、けっこうアドベンチャーゲームを作っているんですよ。ブロッコリーさんの『うたの☆プリンスさまっ♪』も、ゲームの開発はうちですし。
ハーレム天国だと思ったらヤンデレ地獄だった。 プロモーションムービー
これぞ“NEWBRAND”の真骨頂『ホタルノニッキ』
――続いて、『ホタルノニッキ』はどのようなタイトルでしょうか?
新川 光と影を駆使して謎解きをしていく、アクションアドベンチャーゲームです。ただ、アクション性はあまり強くありません。先ほどインディーゲームという言葉が出ましたが、“NEWBRAND”の中でインディーというイメージがいちばんピッタリなタイトルなのではないかと思います。ゲームデザインとディレクターとキャラクターデザイン、ほとんどを古谷という人物がひとりで担当していまして、彼のこだわりというか、持っている世界観がすごくいい形で出ましたね。正直、このタイトルが完成しただけでも、“NEWBRAND”の取り組みをやってよかったと思えるほどです。それは、このタイトルのおもしろさだけではなく、こういうものを社内で作り上げられたことが大きい。これをステップに、つぎのタイトルへと広げられる手応えを持っています。あとは実際にお客さんに遊んでいただいて、おもしろいと思っていただければいいなと。ただ、難度はけっこう高いので、そこだけは、あらかじめご了承いただければと思います。
――かわいらしい見た目に反して、難しいんですね。
新川 トライアンドエラーと言いますか、やられて解法を覚えるタイプのゲームです。こういった尖った内容のゲームは、ソーシャルゲームなどでは絶対に受け入れられないと思いますので、そういう意味でもこういう遊びの提案ができるのは、家庭用ゲームならではだと思います。
――本作は、企画公募で出たタイトルなのでしょうか。
新川 はい。しかも、企画書をそのまま仕上げたような内容で、企画段階からいっさいブレていないですね。でも、それは非常に大事だと思うんです。最初に立ち上げたコンセプトがブレてしまうと迷走してしまいますし、そういうタイトルは失敗する可能性が高くなってしまう。こういう小さいプロジェクトだと、最初のコンセプトをこだわり抜きやすいですし、こういったタイトルを経験して、ディレクターとして大きく成長してほしいと思います。
――ディレクターの古谷さんは、もともとはデザイナーの方だとか?
新川 最近は、『ディスガイア』シリーズで高解像度キャラクターを描くチームのチーフをやっていました。デザイナーの統括はしていたんですが、ゲームのデザインなどは初めてだったので、ディレクターを任せることにちょっと心配していたんです。でも、無事にマスターアップを迎えましたし、心配いりませんでしたね。もし、こういった企画公募がなかったら、彼はずっと『ディスガイア』の高解像度キャラクター担当をしていたと思うんです。
――内に秘めるものはあったと思いますが、それを発信する場が必要だったんでしょうね。
新川 じつは、彼にディレクターをやってもらうとなったとき、『ディスガイア』で彼のポジションが空いてしまうので、それも心配でした。でも、結果として『ホタルノニッキ』をしっかり作り上げてくれて、『ディスガイア』のほうも新しい人間が育って、代わりに統括するスタッフが出てきたので、社内でいいサイクルが生み出せていますね。
――それは理想的ですね。本作のプレイ時間は、どれくらいでしょうか?
新川 トータルで考えると、20時間以上は遊べると考えています。ただ、トライアンドエラーを含んでの時間ですので、こういったゲームに慣れていて、ギミックをあっさり見抜ければ、8時間くらいでクリアーできるかもしれません。あと、ストーリー部分なども謎がありまして、何度もプレイしたくなるような仕掛けがありますので、コンプリートを目指すと、うまい人でも20~30時間くらいかかるでしょうね。私はこういうゲームは苦手なので、ものすごい時間がかかりそうです(苦笑)。
――そんなにですか(笑)。
新川 とても難しいので……。1回謎解きにハマってしまうと、なかなか閃かないんですよね。SNSなどでいろいろな人と試行錯誤しながら遊ぶのもおもしろいかもしれません。ただ、攻略本や攻略サイトはオススメしません。
――答えを見るのはよくないと。
新川 答えを見ながら遊ぶと、何の意味もなくなってしまうので(笑)。
――そういうゲーム性もインディーゲームのようですね。
新川 インディーゲームというのは、開発に関わった人数が少ないとか、値段が安いとかではなく、精神の部分が大きいと思うんです。ひとつのものにこだわり抜いて、自分たちがおもしろいと思うものをフルスロットルで作っていく。思い返せば、『ディスガイア』の第1作は、我々にとってそういうインディーゲームの精神を持ったゲームに近かったんだと思います。社員が20人ぐらいで、来年には会社がないかもしれないという中で、生き残るために必死になって尖ったものを作ろうとした結果、できあがったものでしたので。
――ある意味、日本一ソフトウェアの原点回帰というわけですね。本作は、ステージ追加などのダウンロードコンテンツの予定はありますか?
新川 いえ、いまのところ予定はありません。ただ、どんなタイトルでも、ディレクターのほうで、まだやるべきこと、やりたいことなどは残ると思いますので、このタイトルがお客様に評価していただけるようであれば、ここで得たものを使って、別の新しいものを作れるといいなと思っています。あと、個人的には『ホタルノニッキ』のベースを使って、別のタイトルが作れるのではないかと考えています。私が思っているだけで、まったく予定はありませんけどね(笑)。
――それは、同じシステムで、別のキャラクターにするといったものでしょうか?
新川 いえ、システム的にも新しいものを想定しています。こういうベースがあれば、ああいうゲームも作れるんじゃないかと、夢が広がるようなイメージですね。
――そういう広がりが出るだけでもやった甲斐がありますよね。
“NEWBRAND”の今後、そしてPS4への挑戦
――今回の企画公募をされてみて、新川さんから社員のイメージが変わったりしましたか?
新川 やはり見ているだけじゃわからないというのを、改めて実感しましたね。おとなしくて、自分から企画を持ってくるようには思えなかった人物が複数の企画を出してきたりしましたし。そんなに考えているなら、もっと早く言ってくれと言いたくなる人もいました(笑)。ただ、そういう企画を出すという行動は、毎日の仕事や先輩を差し置いてやっていいのかと思ったりするんですよね。だからこそ、こういう公募をやる意義があった。ただ企画を集めたかっただけではなく、新しい発想や考えかたを持った人に出てきて欲しかったというのが大きいです。
――では、狙い通りの効果があったと。
新川 想定以上ですね。
――企画公募でほかに採用になった企画はどれくらいあるのでしょうか?
新川 まず5つの企画が通って予算がつきました。そのうちひとつはボツになって、もうひとつは企画の練り直しをしてテストまで行ったのですが、商品化の前に中止しています。
――では、まだ今後発表される“NEWBRAND”のタイトルもあるのでしょうか?
新川 はい。そう遠くないうちにひとつ発表できると思いますので、楽しみにしていただければ。我々としては、今回の取り組みに対するお客様の反応を見たうえで、もし一定以上の評価をいただけるようであれば、2年に1回くらいのサイクルで、また社内で企画公募を行って、新しいディレクターを発掘していきたいと思っています。
――“NEWBRAND”はブランドとしても継続していくと。“NEWBRAND”の中から、シリーズ作が生まれる可能性もあるのでしょうか?
新川 もちろんです。ただ、我々は“NEWBRAND”だけをやっていくわけではないですし、先日発表させていただいた『神様と運命覚醒のクロステーゼ』のようなシリーズ展開や、『魔女と百騎兵』といった大きめの新規タイトルも継続していく予定です。
――せっかくですので、先日発売されたばかりのプレイステーション4(以下、PS4)といった、新世代機への取り組みもおうかがいできますか?
新川 PS4につきましては、参入の意志を示していますが、じつは現時点で開発もスタートしています。かなりの人数の開発スタッフを動員して、具体的なタイトルを開発していますので、東京ゲームショウあたりのタイミングでお披露目できるのではないかと。
――けっこうな人数がいるということは、“NEWBRAND”とは違うと?
新川 そうですね。違います。でも、これ以上はヒミツということで(苦笑)。続報を楽しみにしてください。
――最後に、“NEWBRAND”について、読者へのメッセージをいただけますか?
新川 “NEWBRAND”と、読者の方へのメッセージという両立は、じつはいちばん難しいところだと感じています。というのも、低予算で、少人数、結果としてですが、初めてディレクターを担当する人間の挑戦というのは、お客様からしたら、「全部自分たちの都合じゃないか」と言われてしまう可能性もある。ただ、我々としても、お客様を裏切るようなものを作るつもりはまったくありませんし、これまでお客様に評価していただいてきたタイトルもすべて、低予算で、少人数で、初めてディレクターに挑戦した人間がいろいろな経験を積んで作れるようになったものです。古いところでは、『マール王国の人形姫』というタイトルがありましたが、あれも10人程度の少人数で作っていました。その人間たちが経験を積んだ結果として、シミュレーションRPGを作ることができ、その流れで『ディスガイア』が生まれたわけです。我々としては、『ディスガイア』のような雰囲気の新タイトルばかりを作るのではなく、新しい楽しさをお客様に届けたいという想いを込めて、“NEWBRAND”を立ち上げていますので、その想いを受け止めていただければうれしいです。そして、この“NEWBRAND”から、お客様の将来のお気に入りタイトルを作る人物が登場してくる可能性も十分あると考えています。そのとき、「初ディレクションの時代から知ってる。あのタイトルの人だよね」と言っていただけるような結果が生まれるように、お客様といっしょに“NEWBRAND”を育てていければ幸いです。ぜひファミ通読者の皆様に応援していただけるとうれしいなと思いますので、よろしくお願いいたします。
新進気鋭のディレクターふたりからのコメント
本記事の締めとして、今回の“NEWBRAND”2タイトルの企画を提出し、初となるディレクションを行ったふたりのクリエイターからコメントをいただいた。どちらも新進気鋭のディレクターらしく、想いのこもった熱いコメントになっているので、ぜひお読みいただきたい。
・『ハーレム天国だと思ったら、ヤンデレ地獄だった。』
ディレクター:辰己拓馬氏
本タイトルは、日本一ソフトウェアがこれまで作ってこなかった美少女アドベンチャーです。しかも、ヒロイン全員が“ヤンデレ”ということで、かなりの異色作。内容に関しても、いろいろと挑戦しています!
シナリオの中身(とくに後半部分)に関しては、ネタバレになってしまうのでお話できませんが、 前半、後半とで話の雰囲気が変わるのが本タイトルの大きな特徴です。前半の“ハーレム天国”部分は明るいシーンがメインとなっており、「ヒロインの女の子がお弁当を持ってくる」など定番のシチュエーションが目白押しです。学園物として楽しめますが、 本タイトルにおいて、このような定番のシーンでも後半部分の“ヤンデレ地獄”に突入すると、「じつは……」というシーンがいくつも潜んでいたりします。後半部分でまったく同じシーン、同じシチュエーションなのに怖く感じる……、ということもあるので、そういった“ヤンデレ化した場面”を予想しながらプレイしていただくのも楽しみのひとつだと思っています。
本タイトルは、これまでの日本一ソフトウェアタイトルとは趣の異なる、“問題作”を意識して開発を行ったタイトルです。ぜひともプレイしていただけるとうれしいです。
・『htoL#NiQ -ホタルノニッキ-』
ディレクター兼メインデザイナー:古谷優幸氏
初めまして、日本一ソフトウェアの古谷です。今回、『htoL#NiQ -ホタルノニッキ-』のディレクター兼メインデザイナーを担当しました。『ホタルノニッキ』は、“光と影”、“生と死”、“少女と廃墟”など、“二面性”をテーマに掲げて製作した、難易度高めのアクションゲームです。暗くサビついた廃墟の中を淡く光るホタルが飛び、理不尽で残酷な死が待ち受ける世界で、白いワンピースを着た少女がたったひとりの生者として存在している……。ゲームシステムにある“光の世界”、“影の世界”も、二面性というテーマが意識されています。
また前述のように、このタイトルは難易度が高く、とにかく主人公のミオンが死んでしまいます。プレイヤーがくじけてしまうのが不安でしたが、ミオンがかわいければなんとしても助けたいと思ってもらえるはず……。ということで、ミオンの仕草のかわいさにはとにかくこだわりました。アニメパターンやアニメ枚数も、ほかのキャラクターやギミックとくらべて、かなりのボリュームになっています。ぜひお手に取って、ミオンの仕草を隅々まで堪能してください。ちなみに僕のイチ押しは、ミオンが高所から落下するときのアニメーションです! それでは今後とも、『ホタルノニッキ』をよろしくお願いいたします!