海外オタク系女子が語る“Bishonen”の創りかた
2014年3月17日~21日(現地時間)、サンフランシスコ・モスコーニセンターにて、ゲームクリエイターを対象とした世界最大規模のセッション、GDC(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス)2014が開催。ここでは、開催2日目にあたる2014年3月18日に行われたセッション、“Fewer Tifas or More Sephiroths? Male Sexualization in Games”の模様をお届けしよう。
スピーカーは、フリーランスのWriter/Editor/Narrative DesignerのMichelle Clough 氏。プロフェッショナルなクリエイターというよりも、熱心なファン活動をくり広げるゲームファン的な視点から、“ゲームにおける男性の性的目的化”といテーマで講演が展開された。
まず彼女は、ゲームにおいては男性を性的目的にすることが少なく、これはゲームの多様性を広げ、対象を拡大する機会を逃していることになると主張する。また、セックスアピールは外見だけではないのだから、アート担当だけの仕事ではなく、男性キャラクターを作成する際にある点に注意して変更を加えることも必要だと語る。
では、なぜ“男性の性的目的化”が重要なのか? 彼女の示したデータによると、ゲーマーの45%は女性であり、女性は一日10回セックスのことを考えるのだという(ホント?)。そして、エロティックなイメージはほかのイメージに比べて女性の欲望を20%早く刺激するのだとか。これらの統計はすべての女性に当てはまらないまでも、女性のセックス指向をはっきりと表している……とは彼女の説。
そして、女性以外にゲイの男性、バイセクシャル、その他男性に魅力を感じる人たちを加えると、こうしたコンテンツには市場があることは明白だ(?)。
ちなみに彼女自身も、若いころには、「ゲームは男がやるもの」と思っていたが、『FF7』をプレイしてキャラクターの性的魅力を発見し、ゲームをやってもよいのだと思った、のだそうだ。
さて、彼女の分析するところでは、一般にゲームに登場する男性はタフ、荒っぽい、感情的弱さ、筋骨、怒りなどで表現されることが多いが、ドキドキするような魅力に溢れているとは考えにくい。従来、ゲームでは男性キャラクターがアクションを起こす側なので、性的な面でも“欲望する側”となる。対して、欲望の対象となるのはある意味で受身であり、ゲームの中では男性キャラクターをこのような設定に置くことは避けられがちだ。しかし彼女は、性的指向は幅が広いものなのだから、欲望をもっとライティングに取り入れてもよいはずだと主張する。
そして彼女が、“男性の性的目的化”を上手に取り入れている例として挙げたのは……“韓国のMMORPG”と、“日本から発信されるすべて”。それらのコンテンツでは多数のスラリと細く洗練されクールな印象の“Bishonen”が登場する。もちろん、本来“Bishonen”は美少年=美しい少年という意味だが、成人男性もその中に含まれる。“Bishonen”が持つ、長い髪や華やいだ雰囲気は、性別や性的指向を問わず受け入れられており、アニメ、マンガにも登場する。彼女の分析では、日本には「源氏物語」に遡る流れがあり、魅力あるこうした男性が重要なツールとして使われてきた文化があるからだろう、とのこと。
一方ヨーロッパの男性キャラクターのルーツは、“貴族男性”、“007”などの流れがあると言う。そして北米では、開拓時代の荒っぽい男性の流れから、“男臭い”、“毛深い”人たちが中心になっている……これは彼女独自の分析だが、言われてみればうなずけないこともない?
かように、東西で大きく異なる男性キャラクター像だが、東と西の融合は可能なのだろうか? そこで彼女が挙げたのが、スクウェア・エニックスの『クライシス コア ファイナルファンタジーVII』。彼女いわく、多数の“Bishonen”が登場するこの作品は、北米でも日本に劣らないセールスを記録したが、これはこのゲームが、どんなプレイヤー層をも拒まないものになっているからであり、あらゆるファンを満足させた好例だと語る。
では欧米の開発会社はどうか? ここで彼女が挙げたのは、『マスエフェクト』などで知られるBiowareだ。Biowareは、幅広い層に受け入れられる魅力(性的なものも含め)ある多くのキャラクターを生み出している、とは彼女の弁。彼女の見たところ、Biowareの作品は、性的目的をうまく使い、そのキャラクターの欲望やほかのキャラクターとの関係を知ることができるるようにデザインされているとのことだった。
最後に、彼女が考える、“セクシーな男性キャラクターを書くルール”について。まずもっとも重要なのは、キャラクターの土台をしっかり作ることだと言う。そのキャラクターの性格や特徴を明確に捉えることが何よりも大切で、たとえばセクシーにしようと思って『Call of Duty』のキャラクターに服を脱がせたバージョンを作る、なんて具合ではダメ(当たり前だ)。彼女は、なぜそこでセクシーな男性でなくてはならないかを理解し、適正な使いかたをしなければいけない、と力説する。
そして、対象となるゲーマーの意見を聞くことも重要だとする。自分が気に入ったキャラクターならとことん作り込む。気に入らないなら好きだという人たちの意見を聞き、そういう人を雇って作ってもらうのも、ひとつのやりかただ、とのこと。
さらに、セクシーな男性キャラクターをうまく実現した例を参考にするのもいい。ゲームやアニメ、漫画などはもちろん、コスプレや創作活動などの“ファンダム文化”は、まさに対象となる人たちが好んでいることがダイレクトにわかるので、利用価値が高い……というのは、ファンダム文化に傾倒する彼女の贔屓目も、多少あるかもしれない。
以上、ゲームにおけるセクシーな男性キャラクターの重要性を熱く語ったClough氏。場内の聴衆(男女問わず)からは大ウケだったが、笑いの中には、かなりのシンパシーも混じっていたようだ。日本では女性向けゲームが大きな市場となっているが、意外と北米でも、女性向けを意識したゲームに隠れた大きなニーズがあるのかも……?
ゲームにティファより、もっとセフィロスを!? ゲームにおける男性の描きかたを過激に指南【GDC 2014】 http://t.co/KMFRZ2bTrw
— ファミ通.com (@famitsu)
2014-03-19 19:00:04