先駆者niconicoが見据える実況配信の未来

 日本におけるゲーム実況ブームの火付け役とも言える動画配信サイト“niconico”。その運営を手掛けるドワンゴに直撃! ゲーム実況の歩みや人気の要因などを分析してもらうとともに、配信機能が充実した次世代ゲーム機の登場により、実況、そしてゲームそのものがいかに変化するのかを聞いた。

※本インタビュー記事は、週刊ファミ通2014年3月27日号(2014年3月13日発売)に掲載された特集“実況配信がゲームを変える?”に掲載されたインタビューの完全版です。

実況配信がゲームを変える!? 実況ブームの立役者・niconicoが考える新世代のゲーム実況配信とは?【インタビュー】_02

【インタビューに応えてくれた方々】
ドワンゴ・ユーザーエンタテインメント
ユーザー文化推進部 文化グループ
青山雄一氏(文中は青山
(あおやま ゆういち)

ドワンゴ・ユーザーエンタテインメント
ユーザー文化推進部 文化グループ
伊豫田旭彦氏(文中は'伊豫田
(いよだ あきひこ)

ドワンゴ ニコニコ事業統括本部 プラットフォーム事業本部
第一企画開発部 第三セクション セクションマネージャ
橋本剛志氏(文中は橋本
(はしもと たけし)

実況配信を利用したプロモーションはいまや当たり前に

――まずは、ゲーム実況の、いままでの歩みについて教えてください。

青山 ニコニコ動画ができる前、2005~2006年ごろから、PeerCastや2ちゃんねるなどで、ゲームをしながら喋るという遊びが流行り始めていました。そのタイミングでニコニコ動画ができて、最初のうちは、PeerCastなどでの配信を録画したものが、ニコニコ動画に転載され始めたんです。それにコメントがついて、「これはおもしろいぞ」となり、自分で実況動画をアップする人が増えていった、という流れです。

――ニコニコ動画でブームになったのは、いつごろからなのでしょうか?

青山 2007年後半くらいから投稿者が増えて始めて、2008年春あたりから爆発的に増えてきました。それ以降は、ずっと増え続けている状態ですね。

――人気に火が点いた要因は、何なのでしょう?

青山 自分のやりたいことをやると、それにコメント、レスポンスが帰ってくる。そういうものが、当時は、ほかにはほとんどなかったんですよ。最先端の自己表現の場と言いますか、それに当時の若い人たちが食いついてきたのかな、と思います。

――レスポンスがわかりやすいのは、ニコニコ動画ならではですね。

青山 ええ。それに、Ustreamやニコニコ生放送などのリアルタイム配信も普及していなかったころですし、ほかにないものだったのだと思います。

――そのあたりの楽しさというのは、いまも本質的には同じなのでしょうか。

青山 動画は、昔に比べると、クリエイター気質の人が増えたように思います。ゲームをもっと広めたいとか、解説したいという人や、おもしろい動画を作りたいと言う人が多くなっていますね。

――2014年までの流れの中で、ターニングポイントなどはあったのでしょうか?

青山 ずっと右肩上がりで、人気は上がり、新しい人も増え、再生数も増え……と言う状況は変わらないのですが、2012年の1月に、初めてゲーム実況を公式に扱う番組を放送したんです。そのときは『DARK SOULS(ダークソウル)』を60時間放送したのですが、そのあたりがターニングポイントだったかな、と思います。これ以降、実況者が運営の放送側に出てきたり、素顔を出したり、イベントに出たりと、公の活動が増えていきました。

――実況主の“スター化”が始まった、と。

青山 そうですね。それまで顔を出さずにひっそりと家でやっていた人たちが、公の場で、ゲームを語る語り部として出てくるようになっていきました。

――それにしても、最初の公式放送が2012年1月というと、けっこう最近なのですね。

伊豫田 厳密に言うと、それ以前もゲーム番組はやっていて、実況者の方に出演していただいたケースも、いくつかはあります。えどふみさん(人気実況者のえどさん”氏、ふみいち氏によるプロ実況ユニット)が“ゲームの時間”という番組に出ていたり。

――『ダークソウル』実況はゲームメーカーと協力して放送したんでしたよね。メーカー公認放送が好評だったことで、ほかのメーカーさんの見かたも変わったのではないですか?

伊豫田 ええ。ただ前提として、それ以前から、ユーザーや我々がゲームの番組をいろいろ放送していたというのも、土台としてあると思います。ゲームメーカーさんも、ニコニコ動画でゲーム文化が盛り上がり、そこにユーザーさんがたくさんいることは認識されていました。そこで我々も、メーカーとユーザーを近づける場にしようと考えて、番組を制作してきたんです。

――でも、なかには消極的なゲームメーカーさんもあったのでは?

伊豫田 そこは少しずつ、ですね。本当にいちばん最初のころのniconicoは、アングラ色が漂うサイトという見られかたでしたから(笑)。でも、メーカーの方に番組に来ていただくことで、少しずつ周囲の認識が変わりましたし、メーカーさんにも、ユーザーが実況で盛り上がっているところを目の当たりにして、理解していただけました。さらに、“ニコニコ超会議”というリアルの大イベントで、たくさんのお客様が集まっているのを実際にご覧になって、「ゲームを楽しく遊ぶ」という文化がこんなに受けているんだ、と実感していただけたのも大きかったと思います。

――近年では、ゲームメーカー公認のもと、協力して盛り上げているケースが増えていますよね。

青山 最近では、『コール オブ デューティ ゴースト』は、発売後にガーッと動画があがって、盛り上がりましたね。

伊豫田 『コール オブ デューティ ゴースト』は、発売元のスクウェア・エニックスさんが公式に実況の許可を出されていて、とても盛り上がっていますね。また、我々といっしょに“ニコニコゲームマスター”というゲーム大会イベントもやっています。これは、生放送を使って対戦の予選をしてもらって、決勝戦は、六本木・ニコファーレに集まって実際に戦いましょう、というものです。いっしょにやらせていただいた我々としても、スクウェア・エニックスさんが、ネットの流れを非常にうまく使われたキャンペーンだと思いました。実際、地方からも参加できるし、ニコファーレの豪華な演出をフルに活用して盛り上がるし、ということで、多くの人が楽しんで参加してくれています。

――メーカーが実況配信をうまく利用するようになってきている、と。

伊豫田 『ドラゴンクエストX』も、公式に実況の許可を出されていますね。スクウェア・エニックスさん自身も毎月情報番組を放送されたりして、大きく盛り上がりました。とても画期的なことだったと思いますが、これも、少しずつ取り組んできた成果かな、と思います。

――実況動画がゲーム業界に与えている影響については、どのようにお考えですか?

伊豫田 いろいろありますが、アメリカの事例で言うと、PCを使ったゲームでは、もうメーカーがゲーム実況を公認して、YoutubeやTwitchなどで宣伝することが、ごく当たり前になっているんですよね。ゲームプレイをみんなで見るのは、もう当たり前で、その“当たり前”が、日本にもやってきているのが現状だと思っています。
 ただ、アメリカのゲーム実況配信は対戦ゲームのスーパープレイが中心ですが、日本では、下手なプレイでも、ゲームをおもしろく見せていくことが受けていますね。それは日本独特のもので、コミケなどから脈々と続いてきた“作品を自分好みにアレンジすることで、ファンの人たちともう一度盛り上がる”という文化なのだと思います。
 この場合、ファンのコミュニティーができて、長く愛されることにつながりますから、ゲームの売りかたという観点で見ると、一発消費型ではなく、たとえばダウンロードコンテンツのようなビジネスと相性がいいんですね。『アイドルマスター』がその好例で、コアなファンの方がニコニコですごく盛り上がり、DLCもちゃんと買って、いっしょになって応援して、ムーブメントを作っていきました。それでやがてアニメになり、映画になり、とコンテンツが大きくなっていきましたよね。

――なるほど。じわじわ盛り上がって、発売後の販促に効果が期待できるわけですね。

伊豫田 ええ。ですので、初週で売り切ってしまうタイプのものとは、相変わらず相性は悪いかな、と思います。もちろんネタバレNG系のものとも相性が悪いでしょう。実際、そういった相性が悪い題材を扱った動画は人気が出にくいんですよ。

――盛り上がりようがないですもんね。

伊豫田 そうなんですよ。ストーリー重視のものは誰がプレイしても同じ動画になるので、せっかくのゲーム実況のよさがまったく生きないんですね。

実況配信がゲームを変える!? 実況ブームの立役者・niconicoが考える新世代のゲーム実況配信とは?【インタビュー】_01

ゲーム実況がもたらしたのは“居間でいっしょに遊ぶ楽しさ”

――ゲーム実況は、なぜこれほど人気になっているのでしょうか?

伊豫田 いちばんは、まず、ゲームが好きなお客さんがインターネットに多いことでしょう。そしてもうひとつ、ゲームはそもそも、誰かと遊ぶのが楽しいエンターテインメントなんですよね。小説やマンガ、アニメなどは、誰かと楽しむものではないですが、ゲームは、居間で誰かと一緒に遊ぶというのが、ファミコン時代からのおもしろさとしてあったと思うんです。その楽しさを、インターネットの動画を通じて叶えることができたといいますか。実況を見るのは、誰かが遊んでいるのを隣で聴いているような感じですし、自分が生放送でプレイする場合は、コメントがついて、友達と遊んでいるかのような感じになれる。だから、相性がすごくよかったということだと思います。

――ゲーム実況のブームがもたらした現象として、“実況主のスター化”がありますが、その要因をどのように分析されていますか?

青山 実況者さんは、ラジオパーソナリティーのような存在なんです。最初に視聴者が実況者に触れるきっかけは、おそらくは、「このゲームの攻略が見たい」、「昔遊んだゲームをちょっと見たい」などのゲーム目的だと思います。でもゲーム実況動画って、基本的に1本30分くらいの動画が、2日に1本くらいのペースで定期的にアップされていって、最終的にパート30とか、ものによってはパート100までいったりするんですね。それを見て、聞いていくと、必然的に、その人のしゃべりを何十時間も聞くことになるわけです。すると、気づくと大ファンになっている、という。まるで旧来の友だちであったかのように、洗脳されていくような(笑)。しかも情報が声しかないですから、いろいろ、都合良く脳内で変えられるというのもあります(笑)。

――現時点で、niconicoにはどれくらいの動画が投稿されているのでしょうか?

伊豫田 ゲームカテゴリの動画は、現時点で……(とniconicoのトップページをチェック)、約457万件ですね(取材時点、2014年3月3日)。

――どんな動画が人気を集めているのでしょう?

伊豫田 まずゲーム全体で言いますと、大きくふたつに分かれています。ひとつはゲームプレイの要素を紹介する“ゲーム実況”。もうひとつは、ゲームを使った何らかのネタですね。おもしろいプレイだったり、ある一瞬を切り取ったものだったり、リミックスしたものだったり。それが半分くらいの割合です。
 さらにゲーム実況の中には、人間の声で実況するものと、ロボットボイスで実況する“ゆっくり実況”とに分かれていて、それは5対1くらいの割合ですね。

――選ばれる題材としては、どんなゲームが多いのですか?

伊豫田 2014年2月のゲームカテゴリ総合ランキングTOP100を見ると、投稿動画の半数がゲーム実況なのですが、その題材を見ると、家庭用ゲームの実況動画は半数を切っていて、自作ゲームや『艦これ』、TRPGなどいろいろです。

――確かに、自作ゲームの人気が目を引きますね。じつは、けっこう著作権的な問題を意識している投稿者も多いとか……?

伊豫田 それはありますね。著作権的な意識が高い人ほど、自作ゲームを題材にされていると思います。あとはやはり、家庭用ゲームはやり尽くされているということもあります。「こんな有名なゲームをいまさらやってもねぇ」という(笑)。それよりも、新しい、誰も見たことがないゲームをやったほうが、みんな喜ぶし、受けるだろうと。

――自作ゲームを題材にした例で、とくに盛り上がったものというと、どんなものがありますか?

伊豫田 いちばんニコニコらしい流れという例では、少し前ですが、『青鬼』というゲームが大流行しました。『RPGツクール』で作られたゲームなのですが、これがとても怖くて、実況プレイをすると、ギャーギャー騒ぎながら見ることになるんですね。その様子がおもしろいということで、すごく流行しました。
 また自作ゲームは作者がゲームを改善したり追加したりするので、アップデートがかかるたびに、バージョンアップされた部分を遊んで、新しい動画が投稿されるんですね。それでいいキャッチボールが生まれて、『青鬼』はすごく有名なコンテンツになり、小説化されたりもしました。この流れは、すごく現代の自作ゲームらしいと思います。

PS4+ニコニコ生放送=……?

――ここからは、PS4の登場による影響についてお聞きしていきたいと思います。まず、2014年春より、PS4のブロードキャスト(生配信)に、ニコニコ生放送への配信機能が追加されるとのことですが、その概要を教えてください。

橋本 PS4を購入した人であれば、ユーザー生放送として配信ができるようになります。また、PS4から配信されているものに限り、PS4から視聴することもできます。

――PS4から配信された生放送を、PCから見ることはできるんですよね?

橋本 はい。PC側からであれば、PS4も含めて、ニコニコ生放送に対応している全デバイスからの生放送が見られます。

――実装イメージとしては、SHAREボタンを押したとき、配信先の選択画面に、ニコ生が追加される、ということですよね?

橋本 そうですね。

――PS4側から見る場合は、ニコニコ生放送のアプリを使うのでしょうか?

橋本 いえ、TwitchさんやUstreamさんと同様に、Live from Playstationから見る形です。ただ、ニコニコ生放送を視聴する場合は、コメントが画面の上に流れるようになります。

――ニコニコ生放送の場合だけは、独自の見えかたになるんですね。やはり視聴にはniconicoのアカウントが必要になるのでしょうか?

橋本 視聴に関しては、PS4からの視聴に限り、非会員の方でも視聴が可能です。コメントをつけたい場合は、niconicoのアカウントを取得していただいて、PS4上からログインしていただく必要があります。

――もちろん、すでにアカウント持っている人なら、それをそのままPS4でも使える、と。

橋本
はい。

――ちなみに、PS4のニコニコ生放送対応は、日本のみですか?

橋本 いったんは国内のみのリリースとなりますが、ゆくゆくは国内のみに留まらず、海外対応も考えていきたいと個人的に考えています。

――その場合、国、地域ごとに別々にサービスをすることになるのでしょうか?

橋本 必要に応じて、地域ごとにサービス設計をすることもあるとは思います。ある程度ニコニコの利用ユーザーがいる、台湾や北米などには、早い段階で対応したいですね。ただ、これは具体的にSCEさんとお話をさせていただいているわけではないです。

――わかりました。では、まずは日本で盛り上がることが重要ですね。

橋本 現在、ニコニコ生放送の配信をするには、niconicoのプレミアム会員になる必要があるのですが、PS4から配信される場合は、初回配信から1ヵ月間、無料で配信していただくことができます。視聴に関しても、現在は基本的にアカウントを作成していただく必要があるのですが、PS4からの視聴の場合は、アカウントがなくても見られます。ですので、まずは視聴して、楽しそうだと思ったら、配信も試してみてほしいですね。

“SHAREされることを前提にしたゲーム”も増加する!?

――PS4の登場は、ゲーム実況配信にとって、ひとつのターニングポイントになりそうですか?

橋本 そうですね。いまゲーム実況配信をやろうとすると、キャプチャー用のソフトやハードウェアを購入して、インストールして……といった手順が必要になりますが、PS4なら、PS4を購入して、ネットにつなぎさえすれば、あとはボタンひとつで配信ができます。ゲーム配信をする際の敷居も下がりますし、配信者を増やすという点では大いに期待しています。

――ユーザー層は確実に拡大しそうですね。

橋本 あとはもうひとつ、PS4のSHARE機能を使った配信の場合、メーカーが公認した部分のみが配信されることになります。安心して、手軽に配信できるというのは、新たなユーザー獲得にもつながるので、弊社としてもうれしいところです。

青山 動画投稿や配信は、そもそも敷居が高いんですよね。ゲームは、特別な技量を持っていなくても、機材さえ揃えればできるぶん、歌や演奏などに比べれば低いほうではありましたが。その敷居がさらに下がって、本当にやりたい人がすぐに、ワンタッチでできるようになるというのは大きいと思います。

――ユーザーの“数”という量的な変化のほかに、実況配信の質、中身のほうには変化は起こるでしょうか?

青山 個人的には、小さいコミュニティ―が増えるだろうと予想しています。いまは、人気がある実況者のところに視聴者がガーッと集まっていますが、気軽にできるようになることで、中学や高校の友だちどうしなどの、リアルなコミュニティーがそのままゲーム実況のコミュニティーになっていくのではないかと思います。

――10人以下の仲間内で、交代で実況したり?

伊豫田 はい。また、PS4でログインしたら、「友だちが新作ゲームを配信しています」という通知があって、「何やってるの?」と観に行く、という遊びかたも盛んになるかもしれません。

――ゲーム実況配信の目的が、たくさんの人に観てもらうことだけではなくなるわけですね。

青山 それでも成り立つようになるのだ思います。いまは、ある程度視聴者が集まらないと成り立たないというか、おもしろくなかったりします。でも、ゲーム機で、フレンドと直接連動することで、10人、もしかしたら3人くらいいれば十分楽しい、となるのではないかと。

――配信がコミュニケーションになって、それがまたリアルのコミュニケーションも楽しくするようなイメージですね。

青山 そうですね。それに配信を見た側もソフトを持っていれば、すぐにいっしょに遊べるわけですし。

橋本 PS4の場合、SCEさんがPS4の機能として実装してくださっているので、配信の視聴画面に、“このゲームに参加する”というようなボタンがあるんですね。それがマルチプレイ可能なタイトルであれば、ぐにプレイに参加できます。

伊豫田 SHARE機能が盛んになることで、おそらくPS4では、SHARE機能に向いた、SHAREされることを前提にしたゲームも増えてくると思います。そうしたコンテンツは、シェア機能に限った話ではなく、ニコニコのようなゲーム実況側にとってもおもしろいゲーム、いいコンテンツということになるでしょうね。

――なるほど。SHARE機能で楽しむことをメインにした、新しいゲームが生まれてくるかもしれませんね。

伊豫田 たとえば『マインクラフト』は、最初は無名のインディーゲームでしたが、いまでは全世界で3000万本以上売れています。あれも、ひとりで淡々と遊んでいるだけでは、それほどおもしろくない。でもサーバーを立ててマルチプレイで遊んだり、誰かが作ったMODを入れてみたり、コミュニティーとつながることで、劇的におもしろくなるんですよね。そういった、ネットにつなげることが前提のゲームが増えていくと思います。

小さなコミュニティーを束ねて大きなコミュニティーに

――SHARE機能を持ったPS4が普及していくとして、niconicoとしては今後、どのようなスタンスで仕掛けていくお考えですか?

伊豫田 僕らがやっていることとしては、“ニコニコゲームマスター(ゲーマス)”と、“自作ゲームフェス”というふたつの流れがあります。
 ゲーマスは、ネットを使った新しいゲーム大会です。たとえば『地球防衛軍4』では、「全員この時間にボタンを押して始めてください、いちばん最初にクリアーした人が勝ちです」というルールで行いました。そしてプレイの模様を皆さんに放送していただいて、我々は番組として順番に映しながら、「この人はそろそろゴールしそうですね」と解説をしていくんです。そうすると、実況を見る感覚というよりも、日本全体で、自宅にいながらにして、みんなとゲームを遊んでいる感覚になれるんですね。さらに、その中で勝った人をご招待させていただいて、ニコファーレで決勝大会をやりました。「俺は勝てなかったけど、勝ち抜いた人達が戦ってるな」と、またみんなが楽しめる。ネットワークゲームではなくても、ひとつのゲームをみんなで遊んでいる雰囲気にできるんです。
 青山が言うように、SHARE機能は小さなコミュニティー向けだと思うので、それをもっと大きくより集めた大きなコミュニケーションの場を我々が提供すると、“友だちと遊ぶ”と、“たくさんの人と遊ぶ”がネット上で両方できて、楽しくなるのかな、と思います。

――なるほど。もうひとつの“自作ゲーム”については?

伊豫田 自作ゲームを作っている人は昔からいましたが、作ったゲームを遊んでもらうのは、なかなか難しいんですね。でも、『青鬼』や『ib』のように、実況配信で遊ぶことで流行る流れができました。それで自作ゲームの作者の側からも、ゲームの作りを実況向けにして、みんなでワイワイ盛り上がっていくようにする、という流れができつつあります。ニコニコではそれを応援するために、“ニコニコ自作ゲームフェス”という一種のコンテストイベントを開催しています。大賞は30万円の賞金が出ます。斬新な作品はやっぱり注目され、参加作品のなかから大人気になる作品も生まれつつあります。

――自作ゲーム、インディーゲームはゲームの“最前線”を感じさせるものが多いですよね。

伊豫田 インディーは、XboxOne、PS4でも注目されているので、その流れともジョイントできるといいですよね。「niconicoで流行った自作ゲームが配信されるようになりました」といった流れができるとおもしろいと思います。

――話は変わりますが、PS4で初めて実況配信に挑戦する人の中には、「俺もスターに!」と思ってる人もいると思いますが、そうした人に向けて、人気を集めるコツなどがあれば教えてください。

伊豫田 生配信の場合、受けるポイントはだたひとつ、「世界でいちばんうまい人」です(笑)。世界でいちばんうまい人は、やっぱりみんなが見るスターです!
 動画のほうだと、うまさはわりとどうでもよくて、どちらかというと、ゲームの新しい遊びかたを作った人が人気になりますね。「こんな遊び方もできるんだ!」と。

青山 自作ゲームの実況が人気なのも、みんなが知らない、新しいものを発掘してきて紹介しているからなんですよ。

――なるほど。新しいゲームを見せるか、誰もが知っているゲームなら新しい切り口が必要、ということですね。

青山 少し前までは、みんなが知っている懐かしいゲームをやって、思い出を共有しよう、という動画が多かったんですけれどね。

伊豫田 それが主流でしたが、やりつくされていますから。同一タイトルで8000動画以上あるものもありますからね。

――PS4ですと、生配信が中心になるので、動画のようにじわじわ人気を上げるのは難しいですよね。タイトルの付けかたを工夫するとかですかねぇ……。

伊豫田 ああ、それは間違いないです。とても大事ですよ。

青山 あとは、毎日やるのがいいかもしれないですね。ずっと続けるとか。

伊豫田 ニコ生の場合、ユーザーさんのプチ大会を開いていたりしますね。ロビーがあるタイプのゲームなら、「このサーバーに集まってみんなで戦おう!」とか。そういう配信も盛り上がりますよ。