待望の一般公開に来場者も大興奮

 海外でも高い評価を集めている、日本のインディーゲームの数々。そのインディーゲームを、広く世界へと発信していくことを目的にスタートした“BitSummit”。2014年3月7~9日に京都みやこめっせで開催中の“BitSummit 2014 -京都インディーゲームフェスティバル-”は、3月8日に一般来場者を迎えた“パブリックデイ”を開催した。今回は、木村祥朗氏×ZUN氏×楢村匠氏という、豪華なトークセッションを中心にリポート。

 会場に到着してまず感じたのは、「あれ、初日のメディアデイより広くなっている!」。メディアデイとパブリックデイで会場レイアウトが変更されるというのは知っていたのだが、まさか会場が倍の広さになっていようとは。これだけの広さがあれば、東京ゲームショウのような混雑もなく、一般来場者も楽しめたに違いない。

日本最大のインディーゲームの祭典“BitSummit 2014”が3月8日、いよいよ一般公開!【BitSummit 2014】_04
日本最大のインディーゲームの祭典“BitSummit 2014”が3月8日、いよいよ一般公開!【BitSummit 2014】_12

 3月8日のステージイベントの開幕は、7日に引き続きサカモト教授。ただし、8日のほうが本番仕様で、『ロックマン』や『悪魔城ドラキュラ』などのおなじみのゲームミュージックに加え、自身のオリジナル楽曲も演奏し、会場を盛り上げていた。

日本最大のインディーゲームの祭典“BitSummit 2014”が3月8日、いよいよ一般公開!【BitSummit 2014】_01
日本最大のインディーゲームの祭典“BitSummit 2014”が3月8日、いよいよ一般公開!【BitSummit 2014】_02
▲演奏曲目と、会場の志向が一致している、サカモト教授のライブ。
▲ライブ終了後は、会場入り口付近で気さくに即席のサイン会。

 7日のメディアデイに比べると、8・9日は若干ステージでのセッションも少な目。ということで、広くなった会場をゆっくりと回れた人も多かっただろう。各ブースには、インディーシーンのみならず活躍してる著名クリエイターの姿もチラホラ。直接話のできるいい機会なので、知っているクリエイターを見かけたら声をかけてみてはどうだろうか。

日本最大のインディーゲームの祭典“BitSummit 2014”が3月8日、いよいよ一般公開!【BitSummit 2014】_03
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▲The Behemothのブースでは、なんとジョン・バエズ氏が、みずからクリアファイルを手渡ししていた。一瞬気付かなかったのはナイショ。
▲『街コロ』を出展しているグランディングコアゲームスには、『パンツァードラグーン』などで知られる二木幸生氏の姿が。

2014年に『LA-MULANA2』は絶対出ない……らしい

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 8日のステージイベントでいちばんの注目を集めていたのは、木村祥朗氏(Onion Games)×ZUN氏(上海アリス幻樂団)×楢村匠氏(NIGORO)によるトークセッション。『moon』や『チュウリップ』を手掛けた木村祥朗氏、『東方Project』のZUN氏、そして最新作『LA-MULANA2』がKickstarterで目標額をクリアーしたのも記憶に新しい楢村匠氏という、豪華なメンバー。3人ともすでに面識もあり、飲んだこともあるということで、ステージではビールを片手にざっくばらんなトークが展開された。

 ゲーム作りをはじめたきっかけは三者三様かと思いきや、「3人とも動機ややっていることはほとんどいっしょ」(ZUN氏)だそう。また、木村氏は「自分のイメージが伝わる仲間が大事で、その思想は商業も(インディーも)変わらない」と言うと、楢村氏は「僕がNIGOROをやり始めたときは、小さいころに好きだったゲームのスタッフクレジットで、少人数だったのがあるでしょ、5・6人の。あれに憧れたんですよ」と話し、木村氏とZUN氏も「それ大好き」「憧れますよね」と同調していた。
 また、今回出展している楢村氏と木村氏は、「開催前日の様子を見てほしかった」と笑って話す。出展準備の合間に、ひたすらデバックもこなしていて、直前まで修正を加えていたそうだ。
「それが、あのヒドイ罠に?」(ZUN氏)
「いやいや、あれは昔からあります(笑)」(楢村氏)
「え、あの難しいトラップって、バグじゃないの?」(木村氏)
「いや、あれは仕様ですよ」(楢村氏)
 また、ZUN氏はイベントの準備でやりたくないこととして、「自分でCDを焼くことですね(笑)。ひとりで1000枚焼いたこともありますよ」と語った。同人の場合、やはりコミックマーケットを逃すとたいへんなことになるので、締切もシビアだそうだ。続いて木村氏が昨年初めて行ったコミックマーケットの印象を、「オリジナルのゲームの数がすごかった。でも、コミケはコミックありきのイベントなので、ちょっと複雑な気分だった」と話すと、ZUN氏は「迫害とまでは言わないけど、ちょっとよそ者扱いです。もちろん、電源はないですし(笑)、デモスペースも混んできたら、空けないといけなかったり……」という知られざる苦労話を披露。木村氏は「去年は、同人やインディー系のイベントがすごく増えてきたんですよ。東京ロケテゲームショウ、デジゲー博、BitSummitがあり、東京ゲームショウにも“インディーゲームコーナー”ができた。そういう意味で言うと、インディーゲームはいま来てるね」と話すと、楢村氏は「来てるけど……もし、その波に乗りたいなら、今年か来年が限度かな(笑)」と続けた。『LA-MULANA2』がKickstarterで成功したので注目されているが、「『LA-MULANA2』は、今年出す気はまったくありません(笑)」(楢村氏)という注目発言も。そして、「SCEやマイクロソフトはインディーを獲得したいわけで、いちばん注目されている『Mighty No.9』が2015年に出ると言うことは、そこまでは待ってくれるでしょう(笑)。それまでに出すか、いっしょに(ブームに)乗っかるか。『Mighty No.9』が、もし期待していたほどの成果が出なかったら、(彼らは)“インディー”とか口にしなくなると思いますよ」という辛辣かつ率直な意見を話してくれた。「いま、インディーがどうのと言われているけど、結局はこれまで地道に作り続けてきた人たち自体がパワーだからね。ZUNさんや楢村さんの好きなところは、ずっと続けているところなんですよ」と木村氏。
 続いて、制作環境の話になった。楢村氏の場合は、自身が作ったゲームサイトで声をかけたスタッフの3人で“NIGORO”の活動をしているが、当初は離れた場所にそれぞれが住んでいたため“遠隔”でゲームを作っていた。その話を聞いた木村氏は「それを見習って」、いまプログラマーとは“遠隔”で仕事をしているとのこと。ZUN氏は、同人にも楢村氏のようにスタッフを募集するようなサイトはあったが、ほとんど失敗していてたとのこと。その理由として「同人はサークルとしての“集まり”に期待していたのかもしれない。それが同人とインディーの差なのかも」と分析していた。
 今回のトークテーマ、「俺たちのインディーゲームは世界にむけて売れるのか?」については、楢村氏は「売ることが可能か、というならもう簡単です」と答えた。「広まるか」という問いには「ゲームがおもしろいかとか、世界で売れるかどうかはわからない。僕らが苦労していたのは、まさしく広げていくことで」と答え、木村氏は「そもそもおもしろいゲームを作ることがたいへん(笑)」、ZUN氏は「おもしろくても売れないゲームもたくさんある」と答えた。
 最後に木村氏が「インディーゲームこそ、売れたら成功と言っていいと思うけど、どれくらいが成功か?」と質問。まず、楢村氏は「自分の好きなものを作って、継続できるだけの売上があればそれでいい。間違ってバカ売れしてくれてもいいですけど(笑)」と答えた。木村氏も楢村氏と同意見で「100万本売れる必要もないし、仮に5000本・5000ダウンロードだったとしても、好きなものを作り続けられるのが大事」とのことだ。ZUN氏は「まずは、ゲームを完成させられれば成功です。売れる・売れないは関係なしに、作りたいものを作る。そのうちに、絶対おもしろいものになっていくと思います」と話、楢村氏も「作り上げないと、こういった場に参加もできないし、おもしろいかを見てもらうこともできないので、作り上げることが大事ですね」。「そうか、ゲームを作り上げないとダメなんだな。しかも続けて。みんながゲームを作り続けることを祈って、最後に乾杯しよう」と木村氏の音頭でトークショウを締めくくった。

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▲(左から)木村氏、ZUN氏、楢村氏。3人の発言に、会場も聞き入っていた。
▲最後はビールで乾杯。すでに、楢村氏の缶の中身は空……。

初の一般公開日、来場者は1000を超える

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 2日目の最後のステージは、松浦雅也氏のスペシャルライブ。その前に、BiSummit実行委員長のJames Milkie氏が登場し、3月7日の入場者が1000人を超えたことを発表すると、会場からは大きな拍手が起こった。
 地元・立命館大学出身の松浦雅也氏。今回のスペシャルライブは、映像を高橋啓治郎氏(Unity Technologies Japan)が担当し、音楽と映像の新しい融合にチャレンジしたというライブ。松浦氏のアクションに合わせて映像に変化を加えたり、トーク部分では、松浦氏の声にモニターのオブジェクトが反応したりと、目と耳で楽しませてくれた。

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▲おなじみの曲から、最新のナンバーまで、たっぷりと楽しませてくれた松浦氏のスペシャルライブ。