メディアデイで注目したタイトルはコレだ!

 3月7日から9日にかけて、日本のインディーゲームを世界に発信するインディーゲームイベント“Bit Summit 2014”が開幕。会場の京都みやこメッセには100を越えるインディーズ企業や同人サークルが集まり空前絶後の熱気だ。

 各タイトルの対象プラットフォームは、PCやスマホ、携帯ゲーム機からプレイステーション4にも渡り、バイヤーや各プラットフォーマーがインディーゲームの発掘に熱心なこともあって、たとえいまはマイナーでも、内容さえおもしろければ、垣根を越えてどこにでも飛び出していきそうな勢い。
 本記事では、そんな会場で見つけたたくさんのインディーゲームの中から、品質の高さや内容の奇抜さに目を奪われたおもしろタイトルをピックアップ。活気に溢れたインディーゲームの最先端が見えてくるぞ。(取材・文/佐藤カフジ)

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▲会場となった、京都みやこめっせ。大ホールは、インディーズ開発者たちの祭り場と化していた。
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▲え~でるわいすのブース。開発者とお話しながら『アスタブリード』が試遊できるぞ。

■『アスタブリード』(えーでるわいす)
 “BitSummit”の会場には、ものすごい勢いで高品質化が進む同人ゲームが、所狭しと展示されていたけれど、真っ先に目に飛び込んできた代表例がこれ。2013年の3月に行われた第1回BitSummitでお披露目され、年末のコミックマーケット85でリリースされたPC用のシューティングゲームだ。この会場では入り口の真ん前にブースが設定されていて、よく目立っていたので、いのいちばんにご紹介。

 本作は、サイドビューのシューティングゲームを作り続けている同人ゲームサークル“え~でるわいす”の4作目にあたり、ノウハウの蓄積度はもはや完全にプロ。目の肥えたプレイヤーを一瞬で納得させる高品位な映像や演出はもとより、アクションの幅広さや、広いユーザー層が楽しめるように調整されたゲームシステムが秀逸だ。

 ほかの同人ゲームと同じく、各同人専門ショップで委託販売が行なわれているほか、2014年1月17日にはインディーゲームの販売サイト・Playsmでの配信も開始。現在は英語版の開発を進めているとのことで、世界最大級のデジタルコンテンツの販売チャンネルであるSteamでの配信も視野に入ることになりそう。


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▲即売用のパッケージも用意されている。さすがはコミケで鍛えた同人サークル。

 このタイトルのように、同人作品が即売会と専門ショップでの委託販売だけに終わらず、より広い範囲の商業チャンネルに載る時代になってきた。まずは、春予定の『アスタブリード』英語版が、世界でどう評価されるかが、個人的に楽しみだったりする。
『アスタブリード』公式サイト

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▲『重装機兵レイノス』。じつはプロトタイプ版で、2週間で作ったバージョンとのこと。それでもオリジナル版をほぼ完全再現したテイストで、ボス戦が遊べる。

■『重装機兵レイノス』(ドラキュー)
 インディーゲームがオリジナルタイトルばかりだと思ったら大間違い。ファン活動が名作のリバイバルを生み出す、インディーズ界広しといえども奇特な例、それがプレイステーション4で年内リリース予定の本作『重装機兵レイノス』だ。
 本作はもともと、1990年にメサイヤより発売されたメガドライブ向けのアクションシューティングゲーム。だからPS4版はリメイク版にあたるのだが……これを開発するのは、オリジナル版の開発者とは縁もゆかりもなかった、いち『レイノス』ファンなのである。

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▲ブースにはオリジナル版の『重装機兵レイノス』も。遊び比べてみる?

 しかも、その経緯がおもしろい。本作の開発チームである株式会社ドラキューを率いる富野裕樹氏は、メガドラ版の大ファン。しかし、続編がいつになっても作られないことに業を煮やし、ついに版元に直訴した。「ないなら俺が作る!」と主張し、しっかり許可をもぎ取って本作の開発に至る。

 だから本作は、富野氏による“俺の考える最高のレイノス”であり、開発がファン活動そのものなのだ。それもただの同人活動に終わることなく、きちんとPS4での製品化を目指す本格スタイル。もはや魂レベルで『レイノス』と一体化している。作りたいから作る、その開発姿勢はインディーズの鑑だ。年内リリース予定の製品にそのこだわりが現れることだろう。要注目。
※ドラキュー公式サイト

■『GANGS OF SPACE』(little big mmo)
 “BitSummit 2014”の全出展タイトル中でも貴重なオンライン専用ゲームで、ジャンル名は“MMOスペースシューティング“。全世界から大勢のプレイヤーがひとつの宇宙に参加し、仲間を作って宇宙のエリアを支配したり、領土を巡ってほかのチームと争うこともできるという、MMOとしての骨格に、超お手軽な2Dシューティングの対戦要素で肉付けしたゲームだ。


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▲たくさんのプレイヤーが、広大な2D空間で撃ちあうMMO! パッと見、レトロな雰囲気だが、中身は凄くユニーク。

 開発チームは、フランス発のインディーズスタジオなのだが、そのうち数名がたまたま日本に在住していたため、“BitSummit2014”への出展が実現。そのひとり、ギュモ・マチュー氏は本作のキモを“面倒くさくない『EVE ONLINE』”と教えてくれた。
 ああ、広大な宇宙を舞台に、無数の星系を奪い合いつつ、生産や交易、戦闘を通じて紡がれていく人間たちのドラマ……。なるほど、『EVE ONLINE』は人生をすり減らすほどおもしろいが、何もかもが本格的で時間を食いすぎる。そのおもしろさのエッセンスを、お手軽プレイで凝縮させるのが本作というわけだ。本作は、現在プレαテスト中で、そう遠くないうちに基本プレイ無料のオンラインゲームとしてデビューすることになりそう。

※『GANGS OF SPACE』公式サイト

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▲スターマップにはたくさんの星系があり、それぞれの宇宙空間を構築。
▲同一星系に敵と味方が入ると遭遇戦に。ギルド戦争が熱そう。
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▲Oculus RIFTとコントローラでプレイ。操作は右スティックでの移動のみ

■『木造校舎を歩く』(哲人ドリル)
 開発中のヘッドマウントディスプレイ(HMD)“Oculus RIFT”を使った、個人制作の3Dアドベンチャーゲーム。舞台はとある廃校で、古びた教室を歩きまわり、机や壁に書かれた落書きや、その他いろいろな手がかりをヒントに、世界そのものを深く探求していくという内容だ。移動以外の複雑な操作はなく、周りの環境そのものがゲームを物語るという、『Journey』や『Dear Esther』に近い雰囲気。

 注目したいのはビジュアルのおもしろさ。舞台となる廃校は、実際には建設されなかった学校を実際の設計図から再現したものだそう。壁や床のちょっとしたキズや汚れに至るまで、徹底的に写実的に作られていて、“Oculus RIFT”を通して見ると“その場にいる感覚”が凄い。そして、誰もが知っている学校という舞台だから身近に感じられるのだけど、実際は誰の記憶にも存在しない世界。その違和感に気付いたとき、不意に意識がねじれるような不思議な感覚がある。

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▲こちらはモバイル版。
▲廃校の中を彷徨う雰囲気はとても独特。

 本作はまだプロトタイプ的な段階で、現時点で探索できる範囲は狭いけれど、それでも十分にユニークな雰囲気を体験できた。“Oculus RIFT”に対応するたくさんの実験的ゲームの中でも特に異彩を放つ作風で、完成が楽しみだ。

※“哲人ドリル”公式サイト