やっぱ耐えに耐えてからの「NAZI SCUM!!」が燃えます

 ベセスダ・ソフトワークスのベセスダ・ソフトワークスの新作FPS『Wolfenstein: The New Order』のデモをサンフランシスコで体験してきたので、その模様をお伝えする。
 ……と、実は今回遊べたデモはTGSバージョンとほぼ同内容だったのだが、序盤を数時間たっぷりプレイして、あらためて感じた。このゲーム、やっぱ燃えるわ!

一応あらすじ&おさらい

 本作は、ベセスダ・ソフトワークスと同じZenimaxグループ傘下の老舗スタジオid Softwareが誇る元祖FPS『ウルフェンシュタイン3D』などで知られるウルフェンシュタインシリーズ最新作。
 開発はid Softwareではなく、ZenimaxグループのMachine Gamesが担当し、オールドスクールなFPSの要素を適宜取り込みつつ、最新技術によって生まれ変わらせた、いわゆるリブート作だ(要するに旧作から引き継いでいる要素も一部あるが、基本的に完全新作)。

 舞台は、謎の超科学の投入によって第二次世界大戦をナチスが勝利し、アメリカも原子爆弾の投下によって降伏し占領されている架空の未来(最序盤のみ時間軸は戦中)。
 本来アメリカが成し遂げるはずだった月面着陸なども実現し、この世の春を謳歌するナチス帝国を前に、鍵となる人物デスヘッドの殺害まであと一歩と迫りながら作戦に失敗し、植物状態のまま14年間過ごしてきた男BJがついに目覚める……というのが基本的なお話。

燃える漢のFPS『Wolfenstein: The New Order』の胸焼けするほど濃いキャラクターなど、最新デモで感じた注目ポイント3つを解説_08

注目ポイントその1: 懐古ではないオールドスクールFPSリスペクト

 それでは本作がヤバいと思うポイントを紹介していこう。まずはウルフェンシュタインシリーズに留まらない、オールドスクールなFPSへの敬意を払いつつ、新しいものを生み出そうとしているゲームデザインについて触れたい。

 例えば体力はオール自然回復が一般的な昨今のトレンドを無視して、昔懐かしのヘルス&アーマー制を採用(部分的に自動回復アリ)。
 体力システムがオール自動回復だと、マルチプレイでもない限り、ダメージを受けるたびに遮蔽物の影で回復を待つ、ちまちましたプレイになりがち。しかし本作では一定以上は回復しないので、やられる前に頑張って倒すか、マップ各所に置いてある体力やアーマーアイテムをゲットしに思い切って飛びだすといった積極的な策に出なければいけない(ちなみに、マップの変なところにアイテムが仕込んであるのも古いFPSらしいポイント)。

 一方で、遮蔽物に隠れるカバーリングや、リーン(上体を傾けて覗く動作)が結構使いやすく組み込まれていて、隠れる時はちゃんと隠れてプレイできるバランス感覚が絶妙。昔ながらのFPSを愛するがあまり「カバーリングは男のすることじゃねぇ!」と宣言したFPSもあるけど、「いや、それはそれであったほうがいいでしょ」というのがMachine Gamesなのだ。
 ちなみに、アキンボ(銃の二丁構え)なども、銃を二丁取っていればいつでもアキンボ化/非アキンボ化できる便利仕様。「よし、一気に前に出るぞ!」って時に、思う存分二丁撃ちで鉛弾と血潮の嵐を巻き起こせる。

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 「目に入った敵から順にちまちま撃っていく」という方向にいかないような仕組みはほかにもあって、例えばステルス的なプレイも可能になっている。死角からのステルスキルはナイフでざっくり突き刺すアニメーションが入る即死攻撃で、ほかの敵の注意も惹かないで済む。
 なぜそんなことが必要になるかと言うと、敵の中にはたまに増援を呼べるリーダークラスの敵がおり、コイツらに騒がれると実に面倒なことになるのだ。マップ内にいる彼らがいる場合はその場所までの距離が示されるので、まずはステルスキルや投げナイフなどで先に片付けるとか、警報を鳴らされたら優先して倒すといったプレイの組み立てで対抗するというワケ。

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 そのほか、ステルス(ナイフ投げ、ステルスキルでの回復など)・タクティカル(弾倉のサイズ、回復速度など)・アサルト(アキンボやタレット関連)・デモリッション(グレネードなど)の4系統で能力を強化していくPERKシステムなども搭載。

 まとめるとまぁそんな感じに、新旧の要素をうまくミックスして、単なる懐古趣味に留まらない、動きのある銃撃戦を実現しようとしている辺りに好感が持てるし、実際、隠れる時は隠れ、出る時は盛大に打って出るというプレイは、メリハリもきいていて、爽快で楽しい。

注目ポイントその2: 胸焼けするほど濃いキャラクターたち

 『ウルフェンシュタイン3D』の頃は主人公のキャラクターなんてあってないようなもの、その後のFPSは脳筋野郎が皮肉やジョークを飛ばしまくるという、これはこれでいいんだけど若干ステロタイプな感じ。一方でミリタリー系大流行の昨今は、逆にリアル寄りになってしまってキャラクターとしての魅力にやや欠ける。

 しかし本作は「ナチが世界征服した1960年」というぶっ飛んだ世界でありながら荒唐無稽なキャラクターにせず、「そういう設定の映画があったらこんな感じかな」ってぐらいには現実感とキャラの魅力が両立した丁寧な作りになっている。

 BJを始めとする「いい人側」の連中も一癖も二癖もあるいい感じの“キャラの立った”連中だし、BJもオールドスクールFPSの伝統に則って、プレイ中に視界に入ったものに反応して喋りまくり。ナチス月面着陸記念の図を見て怒りのあまり「ファッキュー・ムーン(ファッキン月)」と毒づくシーンはすでに記者のお好みのセリフとなっている。
 実際、海外のレビューでも「ファーガスは今まで見た中で最高のスコティッシュ野郎だぜ」とか書かれていたりするので、欧米人から見てもかなりイケてる模様。

燃える漢のFPS『Wolfenstein: The New Order』の胸焼けするほど濃いキャラクターなど、最新デモで感じた注目ポイント3つを解説_03
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燃える漢のFPS『Wolfenstein: The New Order』の胸焼けするほど濃いキャラクターなど、最新デモで感じた注目ポイント3つを解説_14
▲主人公ブラスコヴィッチ。通称BJ。1946年バルト海からの上陸作戦に参加。その時の負傷によりポーランドの病院に収容されていた。
▲アーニャはBJを担当していた看護師。ナチスの病院急襲からBJとともに生き延び、ともに抵抗運動に打って出ることを決意する。
▲ファーガスはBJとともに作戦に参加していたスコットランド系の兵士。キツいジョークとともに新兵を奮い立たせるベテランだ。
▲ワイアットはコックニー訛りのちょっと変わった若者。彼もBJやファーガスとともに作戦に参加していた。

 対する「悪者側」のナチ軍団も、筆頭のデスヘッドがもう、人間押し潰しトラップ(あくまでフィクションに沿った現実感であり、リアル寄りではないのでこういうアホで最高な仕掛けはよく出てくる)に捕らえられた人間がいたら満面の笑顔で覗き窓にべったり張り付いて眺め、BJたちを拘束したら「んん~、キミ、いいね! どっちのお友達を殺すか選ばせてあげよう」とドイツ語訛りの英語で語りかけてくるキ印なマッドサイエンティスト。
 さらに愛人付きのおばちゃんSS隊員は「あなた、ゲームをしましょう」と悪人らしいセリフをいやーな感じで放ってくるし、横ではその愛人がヘラヘラ笑い続けているという名脇役揃い。ちなみに愛人、SSおばちゃんの太ももの結構股間よりをナデナデしたりする。オゲー!

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燃える漢のFPS『Wolfenstein: The New Order』の胸焼けするほど濃いキャラクターなど、最新デモで感じた注目ポイント3つを解説_04
▲シリーズ作にも登場しているマッドサイエンティストの通称“デスヘッド”。拷問・人体改造が大好物の危険人物。
▲エンゲルは悪名高きSS(親衛隊)の隊員。ベルリンへと向かう特急でBJを見かけた彼女は、ヒマ潰しにタチの悪い“ゲーム”をふっかける。
▲エンゲル付きの若いSS隊員。ニヤニヤ笑いながらエンゲルのご機嫌を取ったり、太ももをなでまわしたりする様子からはただならぬ関係がうかがえる。

注目ポイントその3: しっかり練られたストーリー

 で、そんな連中たちのセリフもバッチリだし、ストーリーの練り込み方もしっかりしている。
 ミリタリーFPSなんかだとよく「大爆発が起こったりして、アメリカがなんか大変なことになったけど主人公たちがなんとかした」ぐらいのファーっとした話になることが多いが、それは多分、派手なシーンを見せる新作を作ることそのものが優先されがちだからじゃないかと思う。
 そこに来ると、本作の話の軸はしっかりしている。完全フィクションなので難しい国際情勢も反映しなくていいし、なんせ相手がエイリアン並みに「絶対的悪役」であるナチス。BJの動機は「アメリカ占領しやがってマジ許せねぇ、ブッ殺す」というシンプルなもの。

 だからこそ、(あくまでデモでプレイした範囲では)ストーリーを丁寧に描けていると思う。1946年バルト海から始まる前日譚パートで、BJの敵は何か、彼が作戦で失ったものは何かをじっくり描いて、彼が植物状態になってからは、ナチスが締め付けを強くしていくさまを、それを眺めるしかないBJの視点からタイムラプスムービーのように見せる。

 そしてタイトル後、ナチスがついに病院を襲撃するシーンで、BJがついに怒りとともに覚醒し、「NAZI SCUM!!(ナチのクズ野郎どもめ!)」と咆哮し朝食のナイフを兵士の首に突き立てるシーンで本編スタートというのがシビれるほどカッコいい。

燃える漢のFPS『Wolfenstein: The New Order』の胸焼けするほど濃いキャラクターなど、最新デモで感じた注目ポイント3つを解説_09

 1946年と1960年ではナチスの科学レベルもちゃんと違っていて、本作の象徴的な敵であるロボ犬も、1946年シーンでは普通の犬が矯正ギプスというか、犬用パワードスーツを着たようなものであるのに対し、1960年ではフルメタルサイボーグ犬になっているという感じ。
 映画でたとえるならば、“味のある連合軍軍団”&“いやーなナチス将校たち”という部分は「イングロリアス・バスターズ」で、“ナチスのびっくりドッキリメカ”なワクワク感は「アイアン・スカイ」。ナチものSFとしても結構イケている感じなので、そこら辺もぜひ注目してほしい。

燃える漢のFPS『Wolfenstein: The New Order』の胸焼けするほど濃いキャラクターなど、最新デモで感じた注目ポイント3つを解説_10
燃える漢のFPS『Wolfenstein: The New Order』の胸焼けするほど濃いキャラクターなど、最新デモで感じた注目ポイント3つを解説_02
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▲ナチスの科学力は世界一ィ! 1940年代に巨大三足歩行兵器を実現しており、戦後はパワードスーツも配備。

 本作は北米では先日発表された通り、5月20日に発売予定。日本の発売日は2014年中なのは発表されているのだが、早く日付まで決まって欲しいところです!(文・編集:ミル☆吉村)

※Wolfenstein(TM): The New Order(TM)は1960年代の仮想世界に基づくフィクションです。各名称、登場人物、団体、場所、事象は架空のもの、またはフィクションに基づく描写によるものです。本作品のストーリーとコンテンツはナチス政権の信念、イデオロギー、事象、行動、党員、行為を解釈、称賛、是認を意図するものではなく、またナチス政権による戦争犯罪や虐殺、その他人権に反する犯罪を矮小化する事を容認するものではありません。