『ぷよぷよテトリス』発売記念スペシャルインタビュー

 
 今年で30周年を迎えたロシア生まれの『テトリス』と、23年の歴史を持つ対戦パズル『ぷよぷよ』。これらの夢の共演を実現したプロデューサー・細山田水紀氏は、本作にどのような想いを込めたのだろうか? 対戦・バランス調整の話も含め、存分に語っていただいた。

『ぷよぷよテトリス』細山田Pインタビュー完全版&テトリスカンパニーからのコメント全文掲載_01
▲『ぷよぷよ』シリーズ総合プロデューサー・細山田水紀氏。『ぷよぷよテトリス』では、プランナー兼プロデューサーとして、ゲーム制作全体を監修している。

落ちものパズルゲームのブームをもう一度……

 
──いよいよ発売日となりましたが、改めて本作のコンセプトをお聞かせください。
細山田水紀氏(以下、細山田) 『ぷよぷよ』も『テトリス』も歴史の長いゲームですが、どちらか片方、あるいは両作品をプレイをしたことがないという方も大勢いると考えています。そういった方々に、落ちものパズルで盛り上がってほしいと思い、本作のプロジェクトを立ち上げました。僕が若いころからずっとやりたかったことでもあります。

──なるほど。細山田さんは、本作の制作でどのような立場なのですか?
細山田 僕は、もともと『ぷよぷよ』シリーズの監修もしていますから、制作全体を統括する役割ですね。ほかには、テトリスカンパニーとのやり取りなども行っています。

──テトリスカンパニーというと、なんとなく監修がきびしい会社というイメージがあるのですが、『ぷよテト』の制作において、やはり苦労されたことも多いのでしょうか?
細山田 テトリスカンパニーは、『テトリス』のIP(知的財産)を持っている会社ですから、本作の制作にあたって『テトリス』に関する部分の内容で承認が必要になります。『ぷよテト』の制作が節目に来たときにはテトリスカンパニーに対してプレゼンを行いましたし、パイロット版をプレイしてもらってゲームの方向性を確認していただいています。『テトリス』のゲームを制作するには、とくに理由がない限りは、テトリスカンパニーのレギュレーションに従う必要があります。テトリミノの色や回転のしかたなどがそうですね。ただ、逆に言えば、筋の通った理由があれば柔軟に対応していただけるので、『ぷよテト』の制作では、予想していたより自由度が高かったのではと感じています。ルールを試行錯誤する過程で、“ブロックひとマスぶんの中にぷよを閉じ込める”という案に関してはNGが出ましたが(笑)。

『ぷよテト』から生まれた新キャラクターたち

 
──『ぷよぷよ』シリーズでは、漫才演出を彩るキャラクターはおなじみの存在ですが、『テトリス』側のキャラクターはどのようなコンセプトで描かれているのでしょうか?

細山田 『テトリス』側のために新登場させたキャラクターたちは、テトリスカンパニーと相談して、それぞれテトリミノをモチーフすることに決めました。“ティ”や“エス”といったストレートなネーミングは開発段階の名称で、途中でほかの名前に変える予定だったのですが、わかりやすいのでこのままいくことにしました(笑)。

──確かに、覚えやすかったです(笑)。
細山田 どのキャラクターも、身体のどこかにテトリミノを表すパーツがありますので、探してみてください。身体の中央にドーンとテトリミノが描かれているゼットみたいなのもいますが、全員をそうしてしまうと戦隊モノみたいなイメージになってしまうので避けました。あと、ストーリーの流れは、“『テトリス』は『ぷよぷよ』の敵”という構図にはしたくなかったので、宇宙からやってきた『テトリス』側のキャラクターを助けたりするような流れにしました。

──新キャラクターは、声優陣も豪華ですね。
細山田 『ぷよぷよ』シリーズのときは、実力のある若手の声優さんを積極的に採用することが多かったのですが、今回は自由に各所へオファーし、サンプルボイスだけを聴いて決めたところ、人気の高い声優さんばかりという状況に……。ただ、セリフの量が多いうえにスケジュールもきびしく、東京ゲームショウ2013の会場で打ち合わせや収録を行ったこともありました。

今後『ぷよぷよ』と『テトリス』が盛り上がるための礎にしたい

 
──『テトリス』と『ぷよぷよ』を融合することで、とくに注力した部分をお聞かせください。
細山田 あまりにも『ぷよぷよ』や『テトリス』としてのルールを壊しすぎないように注意しました。せっかく本作で落ちものパズルを盛り上がったとしても、それぞれの次回作につながらなくなっては意味がないですから。『ぷよテト』だけが売れたとしても、今後の『ぷよぷよ』と『テトリス』が盛り上がらないとダメなんですよ。とはいえ、ルールに縛られすぎてもおもしろくないですから、ある程度は攻めています(笑)。具体的には、両作品のいいところはどんどん取り入れるようにしました。本作で、『テトリス』サイドのキャラクターを作ったこともそのひとつです。『ぷよぷよ』にはシリーズおなじみのキャラクターがいますが、『テトリス』にはいませんから。

──両作品の楽しい部分をそれぞれ抽出し、ミックスしているわけですね。話は変わりますが、VSルールで『ぷよぷよ』と『テトリス』が対決するケースでは、どのようにバランスを調整したのでしょうか?
細山田 まずは開発スタッフや僕がプレイして、ある程度のざっくりとした調整を行いました。つぎに『ぷよぷよ』と『テトリス』それぞれの上級プレイヤーがプレイし、上級者どうしが拮抗するように調整。そして今度は、両作品を遊んだことがないほどの初心者どうしで遊んでもらい、ゲームとして楽しめるかを実験、という流れです。それをくり返し、コアゲーマーだけでなく、あらゆる層の方が楽しめるように改善を重ねました。その結果、老若男女どなたでも楽しめるものに仕上がったと思います。これを読んでいる皆さんも、ぜひプレイしてみてください!

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テトリスカンパニー マネイジングディレクター ヘンク・B・ロジャース氏への一問一答

 『ぷよぷよテトリス』の発売を記念して、『テトリス』関連のライセンス許諾を行っている企業・テトリスカンパニー(The Tetris Company, LLC)を設立したヘンク・B・ロジャース氏へ、さまざまな質問に回答していただいた。

──まずは、御社がどのような企業なのかをお聞かせください。
ヘンク・B・ロジャース氏(以下、ヘンク) テトリスカンパニーは、『テトリス』に関わる知的財産を守り、供給するために1996年に設立されました。現在は、テレビゲーム、アパレル、玩具、さらにはインテリア、スクラッチくじなど、世界中でリリースされている様々な『テトリス』関連商品のライセンス許諾を行っています。

──御社にとって『テトリス』とは、どのような存在でしょうか?
ヘンク 『テトリス』は今年で30周年を迎えた、世界で最も知名度が高く個性的なゲームのブランドです。さまざまな家庭用ゲーム機や携帯電話端末で多くの方に遊んでいただいており、次世代機での展開も予定しています。『テトリス』というブランドの30周年を祝う中で、我々とともに歩んでくださったファンの皆様には感謝の気持ちでいっぱいです。テレビゲーム業界において30年という年月はとても長いものですが、今後もさらなる成長を期待し、これからの30年も楽しみにしています。『テトリス』はテレビゲームだけでなく広範囲にわたって展開しており、それらすべては『テトリス』をゲームプレイヤーの皆様のライフスタイルに提供するための一環となっています。現在はあらゆる年代のゲームプレイヤーに向けてコンテンツを発信していますが、新しい世代の方の心にも届くよう、新しいフィールドにも『テトリス』を拡大していきたいですね。

──『ぷよぷよテトリス』の企画が来たとき、第一印象としてどのように感じられましたか?
ヘンク 『ぷよぷよ』と『テトリス』という2つのアクションパズルの象徴的なゲームをいっしょに遊べることに、ワクワクしないわけがありませんでした。どちらのゲームも、シンプルでありながら奥深いゲーム性を持っており、あらゆる年代、あらゆるプレイスキルのユーザーにとって魅力的なタイトルです。ファンの方々のお手元に届けられる日を待ちわびていました。

──『ぷよぷよテトリス』では、テトリスサイドの新キャラクターが登場しますが、それぞれのキャラクターの印象をお聞かせください。
ヘンク セガさんは、世界的にも有名なゲームキャラクターを数多く創造しておりますので、安心してお任せしました。テトリスキャラクターの設定については、さまざまなアイデアが出てきたので、セガさんと話し合いしながらキャラクターを生み出していくことはとても楽しかったです。

──今後の『テトリス』の展開をお聞かせください。
ヘンク 『テトリス』は次世代機での展開もすでに発表されていますが、その他にもマルチプレイヤー対戦のスタンダード版になるようなゲームの企画を検討しています。日本のファンの方に向けた製品にも取り掛かっていますので、楽しみにしていてください。

──日本の『テトリス』ファンに向けてひと言お願いします。
ヘンク 長期にわたりテトリスをご支援いただき、ありがとうございます。日本はとても大好きな国ですし、弊社は日本とは長い付き合いがあります。『テトリス』の長期間にわたる成功は、日本のファンの皆様から長きにわたりご支持いただいた部分も大きいです。アレクセイ・パジトノフ(『テトリス』の開発者。ヘンク氏とともにテトリスカンパニーを立ち上げた)が『テトリス』を創造してから30年になりますが、これからもワクワクするような企画を考えていますので、楽しみにしていてください。