熱い気概が見え隠れする八木沢雪広

 コーエーテクモゲームスより2014年3月27日発売予定のPSP用ソフト『金色のコルダ3 AnotherSky feat.至誠館』。本作は、PSP/プレイステーション2用ソフト『金色のコルダ3』と同じ年の夏を舞台に、「主人公がもしほかの学校に転入していたら」というifのストーリーを描く最新作。2014年1月23日発売予定の『金色のコルダ3 AnotherSky feat.神南』につぐ『金色のコルダ3 AnotherSky』シリーズ2作目となる。声優陣には『金色のコルダ3』と同様の豪華な顔ぶれが揃っているのが特徴だ。
 ここでは、『金色のコルダ3』に引き続き八木沢雪広を演じた、伊藤健太郎さんにインタビューを行なった。

『金色のコルダ3 AnotherSky feat.至誠館』キャストインタビュー第1弾 八木沢雪広役の伊藤健太郎さんに聞く 男気にあふれるところが彼の魅力_01

――まず初めに、アフレコを終えての感想をお願いします。

『金色のコルダ3 AnotherSky feat.至誠館』キャストインタビュー第1弾 八木沢雪広役の伊藤健太郎さんに聞く 男気にあふれるところが彼の魅力_04

伊藤健太郎さん(以下、伊藤) 待望の至誠館編を、やっと演じることができました! 長期に及んだ収録でしたが、楽しみにしていたものを形にできて、とてもうれしく思います。

――舞台となる学校が『金色のコルダ3』から変わったことで、主人公との接しかたには変化がありましたか?
伊藤 “ifとして始まっている別世界”という捉えかただったので、『金色のコルダ3』の人間関係は1回リセットし、また初めて出会うところからスタートです。新鮮な気持ちでやらせてもらいました。

――後輩としての主人公はどのような感じですか。
伊藤 『金色のコルダ3』のような他校どうしのふれあいというシチュエーションだと、音楽に取り組む者どうしという立場でスタートして、恋愛に育っていくと思います。でも今作では、直接の後輩であり、部員であるため、“同じ音を作っていく仲間”という立場から始まるので、段階の踏みかたが違いますよね。詳しくは言えませんけれど、そこを楽しんでいただけたらと思います。

――伊藤さんが演じられた八木沢雪広の魅力を教えてください。
伊藤 舞台となる至誠館は、共学化はしましたが元々は男子校で、わりと体育会系のノリでドラマが展開していくんです。八木沢は吹奏楽部の部長というだけあって、誠実で実直。その真面目さゆえに、マイナス感情も含めてストレートに物事をとらえて表現し、ときに天然っぽい方向に物事を解釈することもあります。物腰や風貌から見て取れるイメージよりも、もっと男らしい部分が内在していて、そんな男気が随所に漏れてくることが彼の魅力ではないかと思い、演じています。

――『金色のコルダ3』と比べて、八木沢の新たな一面が見えてきたりはしますか?
伊藤 当然あります! 今回は至誠館での日々にカメラが向いていますので、登場の仕方や主人公との過ごしかたは、いままでとは違った形になります。『金色のコルダ3』では踏み込めなかった部分にもフォーカスしているので、「八木沢ってこういう方向に心が動くこともあるのね」と、新たな発見に驚くこともありました。現状を踏まえたうえで、『金色のコルダ3』をもう一回演じ直したいな、と僕自身が思うほどに感情の振れ幅が増していますよ。

――そんな八木沢雪広と、伊藤さんに共通点はありますか?
伊藤 よく聞かれるんですけれど、架空の人物に対して生身の僕が似ているというのは、おこがましいと思うのですが(笑)。演じていていちばんしっくりくる部分は、吹奏楽部の部長として部員たちと接するところですね。僕は劇団の座長でもあるので、劇団員たちを束ね、率いていかなくてはならない。年に1~2本舞台を作るうえでの仲間たちとの過ごしかたは、とても共感できる部分であり、また彼のようにありたいとも思います。彼の部長論と僕の座長論は、割と近いところがあるなあ、なんて思いつつ演じています。

――では八木沢は、伊藤さんにとって演じやすいキャラクターなのですね。
伊藤 性格的にはとても共感しやすいですね。ただ、楽器的(声質)には非常にがんばらなくてはいけないキャラクターなんです。油断すると、やさしい土浦(伊藤さんが演じた初代『金色のコルダ』のキャラクター)になってしまう(笑)。コンディションがよくないと出せない音なので、その部分だけは非常に苦労します。

――八木沢は和菓子が好物ですが、伊藤さんはいかがですか?
伊藤 それが、甘い物はあまり食べないんです。酒飲みでもありますし。ちょっと小腹が空いたらチョコレートを食べたりはしますけれど、ケーキなんかはクリスマスかお誕生日会ぐらいにしか食べる機会がありませんねぇ。ただ、小学生のころにおばあちゃんが買ってくれた“すあま”は、とても思い出に残っています。すあまって外はピンクで中身は白い物が大半だと思いますが、おばあちゃんが用意してくれたすあまは中まで真っピンクで、小学生の僕にはとてもゴージャスに見えたんですよ、全部甘い部分だ!みたいな感じで(笑)。そういう素朴な甘さの和菓子が好きだったぶん、あんこ系は得意ではありません。とくに、つぶあんって、粒がたちすぎていると、もうどうしていいのやら。アンマンとかでも、なるべくこしあんを選ぶようにしています。

――至誠館は前作の火原が先生として赴任していますが、火原とのシーンは?
伊藤 現時点では、若干あります、とだけ(笑)。どんな絡みかは、プレイして楽しんでいただきたいです。火積と同じ人とは思えないような、しっかりあの調子で演じられていますので、火原先生の活躍も楽しみにしてほしいですね。

――今回の新キャラクター“長嶺雅紀”と八木沢は因縁があると伺ったのですが……。
伊藤 はい。でも、八木沢が人とぶつかり合ったり、すれ違うなんて過去があるとは想像していなかったので、意外といえば意外でしたね。至誠館編はチームワークや団結力が強く書かれているのですが、そんな彼らにも対立の歴史があったことで、物語に厚みが出たと感じています。また、そういったすれ違いがあったからこそ、といえるシーンもありまして。長嶺といちばんいい解決を迎えた場面なんかは非常に素晴らしいですよ(笑)。
 恋愛ルートにもそういう部分が反映されていたので、八木沢を演じるうえで長嶺というキャラクターは大きなファクターになったと体感しました。先に収録を終えたやす君(保村真さん)演じる長嶺のセリフを聞いてから収録に臨めたので、そういった意味ではとてもやりやすかったです。長嶺は、さわやかなスポ根路線の音楽物というコンセプトに帰結するための、いいキャラクターだったと思います。

『金色のコルダ3 AnotherSky feat.至誠館』キャストインタビュー第1弾 八木沢雪広役の伊藤健太郎さんに聞く 男気にあふれるところが彼の魅力_03

――本シリーズは音楽を大きく扱っていますが、伊藤さんご自身は楽器とかは……?
伊藤 音楽は子どものころから苦手意識が強くて。歌も得意なほうではないため、仕事で歌うときも、不安いっぱいな状態で収録しているんです。なので、なるべく音楽から離れて生活してきたんですよね。でも約10年前から『金色のコルダ』シリーズに関わったことは、クラシックというものを改めて見直すきっかけになりましたし、僕にとってすごくプラスになりました。ただ、歌謡曲や流行の曲はまったくわからないですし、そんな状態なので、イベント以外で楽器に手を出すこともありませんねぇ。やれたらいいなあ、とは本当に思うんですけれどね。まあ、我々声優は喉が楽器、ということで。

――もし、伊藤さんが主人公として至誠館に転入されるとしたら、誰と関わっていきたいですか?
伊藤 主人公としてでなくとも火積ですね、もう好きで好きでしょうがないんですよ(笑)。今回もね、僕のツボのセリフが随所にあるんです! ああいう無骨で寡黙な男は大好きです。たとえ僕バージョンの女子だとしても、段取りさえ踏めば、いい彼氏になって守ってくれるんじゃないかなあと思います。

――では、伊藤さん自身が至誠館の生徒だったとしたら、どんな学園生活を送りますか?
伊藤 あそこの校風は自分に合う気がします。きっと演劇部で全国大会を目指すんでしょうね、芸事をしている仲間として吹奏楽部の部長と交流があったり。ちょっと芝居でトランペットが必要なんだよ、みたいなことはありそうですよね。でも、実際は男子校には演劇部がほとんど存在しないので、共学化によって本当は演劇をやりたかった男性陣が一念発起して演劇部を作る……なんてストーリーが生まれるかもしれませんね。今度どうですかね、コーエーテクモさん?

――八木沢たちとは仲よくできると思いますか?
伊藤 部長とか新は、友だちからスタートというのは簡単にいけると思うんですよね。あ、それは伊織たちもいっしょか。となると、難関は火積だなぁ。彼と仲よくなれるならば……。

――学生時代にかわいい子が転入してきた、みたいなエピソードはありました?
伊藤 これがねぇ、まさに至誠館の状況といっしょなんですよ(笑)。中高一貫の男子校に通っていたんですが、僕が高校3年生のときに学校の方針で共学化したんです。春休みが明けて学校に行くと、校舎がやけに綺麗になっていたり、廊下だった部分がくりぬかれて女子トイレができていたり。いちばん変わったのは、プールや体育教官周りでしたね、女の先生がやたら増えて。そんなことを体験したので、本作に登場するキャラクターの共学化したという気持ちはとてもよくわかりますよ。急に女子が入ってきますからね、しかも1年生だけなので人数比は5:1。それはそれは、し烈な争奪戦が……(笑)。

――八木沢でifストーリーを作ってもらえるとしたら、どの学校でどのキャラクターと絡ませてみたいですか?
伊藤 東金千秋という幼なじみがいますからねえ、神南に行って、というのがひとつのパターンですかね。『金色のコルダ3』にしろ今作にしろ、千秋とからむシーンがけっこうありますし、千秋とのやりとりは好きなので。もしふたりが幼なじみのまま同じ学校へ行き、同じ音楽をするチームにいたらどうなっていたんだろう。そんなifはやってみたいですね、今回のヒロインと同じように、他校ならではだったものが、今度は仲間になったら、という。そうなると各キャラで無限のフィーチャリングが生まれてきて、終わりが見えないですね!

――本作にはお弁当を作るシステムがあるんですが、伊藤さんは学生時代にお弁当にまつわるエピソードはありますか?

『金色のコルダ3 AnotherSky feat.至誠館』キャストインタビュー第1弾 八木沢雪広役の伊藤健太郎さんに聞く 男気にあふれるところが彼の魅力_02

伊藤 当時は親がお弁当を作ってくれていましたが、学校の学食で食べる友だちが格好よく思える時期がありまして。「もうお弁当はいいから、代わりに500円ちょうだい」と親を説き伏せて、やっと学食へ通えるようになったんですよ。でも実際は、学食のメニューがあまりおいしくなくて、母親のお弁当の偉大さを実感しましたね。でも、そこで頭を下げてまたお弁当をお願いできるほど素直な学生ではなかったので、けっきょくパンを1個買って、残りのお金で遊ぶ。そんな、親に内緒で倹約していたという思い出があります。

――本作は、主人公がもし別の学校に転入していたらというifストーリーですが、もし伊藤さんが引っ越せるとしたら、どこへ行きたいですか?
伊藤 僕はあまり海外へ行ったことがなく、ほかの所へ行けばまた変わるかもしれませんが、イギリスですね。じつは学生時代に研修で一度だけ訪れたことがあって、現地の演劇学校と交流したり、本場の舞台を見たりして10日ほど過ごしました。空気感や舞台演劇の捉えかたが日本とは大きく違っていて、そんな国で根を張ってやってみたらどうなるんだろうな、と。もしifが許されるのであれば、シェイクスピアの本場で違う演劇を学んだりするのもありだなあ、なんて夢想しています。日本でいえば、北海道ですね。もうカニが大好きなんですよ(笑)。

――今作の舞台となる仙台はいかがでしょう。
伊藤 じつは、収録の直前に仕事で初めて行きました。仙台という街の空気に触れて、ここが至誠館のある街なのか……と。でも、行った時期が日本シリーズの7戦目のときで、街全体がクリムゾンレッド一色の、楽天の街になっていました(笑)。個人的にはジャイアンツファン……というか阿部慎之助選手のファンなので、“ABE 10”と書かれたTシャツを着て乗り込んだのですが、おかげで現地ではジャケットを脱げませんでした(笑)。

――仙台で行ってみたい場所、気になる場所はありました?
伊藤 残念ながら、観光地を回る余裕はなかったのですが、伊達政宗像の写真は撮ってみたいですね。あと、牛タンをもっと食べたかった! 本当においしかったです。作中でも何ヵ所か回っていまして、そこにも行ってみたいです。

――4月からはアニメもスタートしますね。
伊藤 ええ、皆様のご声援のおかげで! 前作に続いて、とうとう『金色のコルダ3』のキャラクターたちも画面のなかで動くことができます。非常にうれしいことなんですけれど、声のコンディションを保たなくちゃ……という悩みも(笑)。

――最後に読者とファンの皆様にメッセージをお願いします。
伊藤 きっと皆様が期待してくれているであろう、フィーチャリングシリーズの至誠館編の収録が、とうとう終わりました! まもなく皆様のお手元に届くと思います。我々は、自分たちの学校が主体になったらこうなるだろうな、って予想しながら演じていたのですが、その予想を上回る部分はたくさんありました。いわゆるオマケの別ディスクとは違い、それぞれの学校の物語を1本の作品として充分に楽しんでいただけるボリュームです。みなさんが想像している至誠館の暑い夏、青葉茂る仙台の森の都、僕たちの熱い夏の戦いに気持ちよく参加できる、そんな学園生活をお送りできることをお約束できる1本です。
 僕の大好きな火積の、個人的にはツボな台詞もけっこうありますので、楽しみにお待ちいただければと。『金色のコルダ3』ではできなかったステップアップの恋愛のルートが、各キャラクターごとにいろいろとありますので、至誠館ライフをあますところなく満喫して頂ければと思います。ご期待ください。

(取材・構成 ライター/喫茶板東)

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