ゲーセンに対するこだわりとは?

 こんにちは、小学生のころからゲーセンに通い続ける週刊ファミ通の編集者、豊泉三兄弟(次男)です。今回はどうしてもみなさんに紹介したい、もっと注目されてほしい、そんな“写真家”を取材することができたので、その模様をお届けしたいと思います。

 先日Twitterを眺めていたら、“ゲーセン写真展を開催します”というツイートが目に入りました。「ん? ゲーセン写真? いったいなんだろう?」と思い、そのツイートのURLをクリックすると、そこには、とても懐かしいレトロな雰囲気のゲーセンの写真を収めた写真集が! 僕はその写真に一発で心を鷲づかみにされてしまいました。調べてみると、“ゲーセンをアートする”をテーマに、レトロなゲーセンの写真を撮っている方だということがわかりました。さっそくその写真家“iT'S key(イツキ)”さんに取材を申し込んでみると、快く受けていただけることに。以下がそのときのインタビューの模様です。イツキさんのゲーセンに対するこだわりをアツく語っていただきました。

ゲーセンをアートする写真家“iT'S key(イツキ)”さんインタビュー! ゲーセンにこだわるその理由とは!?_03
ゲーセン写真集「JOYSTICK GAMERS!」Ver2.0

【写真展“JOYSTICK GAMERS! EXHIBITION EDITION”概要】
■場所
デザインフェスタギャラリー 原宿(WEST ART POCKET)
→こちら
■会期
2014.02.08(Sat.)-11(Tue.)
OPEN 11:00-20:00
※入場無料
※公式ブログ→こちら

ゲーセンの写真を撮り始めたきっかけとこだわり

ゲーセンをアートする写真家“iT'S key(イツキ)”さんインタビュー! ゲーセンにこだわるその理由とは!?_01
写真家“iT'S key(イツキ)”さん。

豊泉三兄弟(次男)(以下、豊泉) ゲームセンター(以下、ゲーセン)の写真を撮ろうと思ったきっかけはなんですか?

イツキさん(以下、イツキ) 僕は小学校の低学年くらいからゲーセンに通っていて、いわばゲーセンで育ったようなものなんです。それに加えて、5年くらい前から趣味として写真を始めたんですが、クルマや空、動物などの写真はありふれているなぁと。そこでいろいろ考えてみて、写真も好きだし、ゲームも好きだから、好きなものをミックスさせたらおもしろいことができるんじゃないか、というのがきっかけです。あとは、おこがましいかもしれませんが、ゲーセンがドンドンなくなっているということもあり、そういうものを撮影して残す目的もありますし、写真を見てまたゲーセンに行ってみようと思ってくれたらうれしいなと。

豊泉 プレイするのは対戦格闘ゲームがメインですか?

イツキ そうですね。スーパーファミコンの『ストリートファイターII』をプレイしたのがきっかけで対戦格闘ゲームを始めました。小学生のころ、友だちの家がコンビニをやっていて、そこにMVS(※)の筐体を置いてもらって、『餓狼伝説2』や『龍虎の拳』をプレイしたところからゲームにハマっていきました。

※MVS:SNKが発売したアーケードゲーム基板・筐体。複数のゲームを1台の筐体で共有できる。

豊泉 ちなみに、イツキさんはおいくつですか?

イツキ 29歳です。

豊泉 昔のゲーセンで最先端のゲームがたくさんあったから、ゲーセンからゲームにハマることって多かったのかもしれませんが、20代の人の場合は家庭用があるから、ゲーセンがきっかけでゲームにのめり込むってちょっと意外ですね。ゲーセンは誰と行っていたんですか? 

イツキ 基本的にはひとりですね。最初はゲーム友だちがひとりいたので、その人と“駄菓子屋ゲーセン”だったり、個人経営の古めかしいゲーセン、ゲームの置いてあるコンビニに通っていました。

豊泉 小学校のころからひとりでゲーセンに通うってすごいですね。僕ですら兄や弟と行ってましたよ。

イツキ その友だちのおもしろいエピソードがあるんですよ。その友だちは、小学生なのにやたらとお金を持っていたんです。ふつうはお小遣いとかぜんぜんないじゃないですか。それで不思議に思っていたら、じつは親の財布からお金をとってきていたらしく……。ある日彼の親がうちに怒鳴り込んできて、「なんだろう?」と思ったら、その友だちが僕を裏切って、僕がお金をとっていることになっていて……。まぁ、それ以来彼とは絶縁状態になっちゃったんですけど、いまとなっては笑い話ですね。

豊泉 それでもゲーセンは嫌いにならなかったわけですね。

イツキ はい。ゲーセンには通い続けていました(笑)。

豊泉 写真集にも載っている町のうらぶれた場所にあるようなゲーセンが、当時から好きだったんですか?

イツキ 好きだったというか、子どものころはメーカー系だとか、個人系だとか、そういったくくりがわからないじゃないですか。自分の行動範囲の中にあるお店が、個人経営系のゲーセンだったり、おもちゃ屋だったので、いまでも想い出深いですし、それがこだわりになっているのかなと。

豊泉 そういったゲーセンは、いまでも残っているものなんですか?

イツキ だいぶ減りましたけど、ちょこちょこありますよ。軒先にゲーム筐体を置いているお店の人に話をうかがってみると、リースで借りていて店主的にはもうどうでもいいものなんですけど、リースの会社が引き取りにこないので放置しているというパターンが多いみたいです。

豊泉 へぇー。そういったお店に足を運んで写真を撮るのはやっぱり楽しい?

イツキ おもしろいですねー。初めて行くようなお店でも、「ああ、あったなこんな景色……」と思うことがありますから。お店独自のローカルルールが書かれた貼り紙もあったりして、その空間にいるだけでワクワクします。

豊泉 昔のゲーセンには、コアなゲームファン以外にも本当にいろんな人が集まっていたイメージがあるけど、格闘ゲームが流行してから強固なコミュニティーができ始めて、なかなか気軽にゲームで遊べなくなったイメージがありませんか? 前からやりたかったゲームを見つけて遊んでみると、すぐに対戦になってやられちゃって……と。それでゲーセンに来なくなった人も少なくないと思うんですよね。

イツキ そうですね。上級者がうまくなり過ぎているというか、ずっとプレイしてきた人と今日から始めましたという人が、同じ空間でプレイするからそういうこともおきてしまいますよね。それでも昔はなんとかなっていたのは、ゲーセンが活気づいていて本当にたくさんの人がいたからだと思うんです。いまの時代はそれじゃあ成り立たないですよね。

豊泉 やっぱりコミニティーに新しい人を受け入れる体制ができていないとダメなんですかね。でも、ゲーセンのコミニティーって、ほかにはないすごい一面もありますよね。お互いに面識はないのにお互いのことをよく知っていたり、対戦したことはあるけど話したことはなかったり。でも共通の話題があるからすぐ仲よくなれたりもする。

イツキ 僕は、対戦したことがあるけど話したことない、という関係がすごく好きですね。絶対に自分からは話しかけたくないというか(笑)。

豊泉 ゲーセンあるあるですね(笑)。自分から話しかけに行くのが悔しいんですよね。僕もこの仕事をしてから、当時対戦していたプレイヤーを取材することが多いんですが、その取材で初めて話すことも多いんですよ。でもお互いに当時のことを覚えているという(笑)。みんな大人になったのかな。だから、当時のゲーセンの景色もすごく覚えているはずですよ。イツキさんの写真を見ていると思うんですが、ゲーム筐体を撮影したいわけではないんですよね?

イツキ そうですね。ゲーセンの“そこにある空気感”を撮りたいんです。だから写真集の第1弾を出したときに、「テーブル筐体がない」のように●●筐体がないという声も多くありました。「う~ん、見てほしいのはそこじゃないんだけどなー」と思いつつも、悔しかったので第2弾ではテーブル筐体を増やしてみましたけど(笑)。

豊泉 撮影は、もう全国をまわったんですか?

イツキ 関東は東京を中心に自分で行ける範囲は網羅してしまったので、2013年に名古屋と大阪で何店舗か撮影させていただきました。あとは、嫁の実家が高知県なので、高知のゲームセンターにも行きました。そこでおもしろかったのが、昔ゲーセンだったなごりのあるおもちゃ屋さんがあったんですよ。店頭にネオジオの看板だけが残っているという(笑)。写真集にも掲載しているんですが、ノスタルジックな感じでよかったですね。

豊泉 いいですね。写真を撮る際に気を使っていることはありますか?

イツキ プレイヤーに迷惑をかけないことですね。それが第一条件です。あとは、なるべくいちばんかっこよく撮りたい。そのゲームをプレイしていなくても、そのゲームのプレイヤー目線に立って撮ることを意識しています。プレイ中はゲーム画面を見ているわけですけど、合間にふと目を移したときに視界に入るものを撮ってみたりとか。

豊泉 ゲーマーならではの視点ですね。

イツキ ゲーム画面以外でも想い出が蘇るきっかけになるものはあるんじゃないかと。

豊泉 僕が惹かれたのは両替機ですね。すごく懐かしい気持ちになりました。両替機って一日に何度も見ることになるから。

イツキ そうですね。両替機はゲーム画面やコンパネ(※操作盤、コントローラ)以上に見ているところだと思います(笑)。

豊泉 僕ら30代のゲーマーからすると、イツキさんの写真集は子どものころ自分がよく通っていたゲーセンの雰囲気があるから、本当にどれも懐かしく感じます。

イツキ メーカー系のゲーセンはすごくキレイでいいんですけど、どの店舗も同じ雰囲気なんですよね。僕はやっぱり個人経営ならではの雰囲気が好きなので、そちらに絞って撮影しています。

豊泉 撮影で印象に残っている風景はありますか?

イツキ 初代『ストリートファイターII』から『ストリートファイターIIダッシュターボ』までのコンパネが並んでいるところを見たときは、ビビっときましたね。そのコンパネが全部並んでいるさまを見るのが初めてだったので。

豊泉 あーいいですね。いまそういうのが残っているゲーセンはまずないでしょうからね。でも、地方の温泉宿や古くからあるテーマパークだと、20年前くらいのゲームがあたかも最新ゲームのように置いていることあるから、そういうところに残っているかもしれないですね。そういう場所は撮っていないんですか?

イツキ 行きたいんですけど、ホテルに泊まらないと撮影させてもらえないんですよね。旅行に行く機会があれば狙っています。

豊泉 なぜそういうゲームが残っているのか気になりますよね。リースの会社が引き取りにこないから放置しているとかなのかな(笑)。これからも被写体はゲーセンですか?

イツキ なくならない限りは撮り続けようと思っています。あとは、ゲーセンの筐体を自宅に搬入している人の家にお邪魔して部屋を撮らせてもらおうかなと。

豊泉 そういう方って結構いるんですか?

イツキ 意外といますね。ビデオゲーム以外でも『アウトラン』(セガのレースゲーム)のような体感系や、『ダライアス』(タイトーのシューティングゲーム)の筐体(3画面を連結した専用筐体)を搬入している人もいるそうですので、そういうところを抑えたいですね。

豊泉 筐体を買うのはたいへんだけど、筐体をモチーフにした机は販売されていましたよね。あれを買うか迷っていたんですよ。(※マイコンソフト、XAC-1 )家に筐体を置くのはゲーム好きの夢だから、買っちゃおうかな(笑)。

イツキ テーブル筐体とかが家に置いてあったらメッチャメチャオシャレですよね。子どものころは、大人になったら自分の部屋をゲーセンにしたいという夢を描いていましたが、ゲーセンって絶対に自分じゃ買えない金額じゃないですか。でも実際に筐体を自宅へ搬入して、夢を実現している人もいるんですよね。だからそういう人の部屋を撮影するのはおもしろいのかなと。

豊泉 その際はまたぜひお話を聞かせてください!

ゲーセンをアートする写真家“iT'S key(イツキ)”さんインタビュー! ゲーセンにこだわるその理由とは!?_05
ネオジオの看板だけが残るお店。

写真に残す意義

イツキ 小さいころ、部屋をゲーセンにしたいという夢があったんですが、よくゲーセンのレイアウトを考えたりするのも好きでしたね。

豊泉 昔、プレイステーション用ソフトで『できる! ゲームセンター』というゲーセン経営シミュレーションがあったんですけど、もしかしてあれやってました?

イツキ やりました、すげーやりました。『インベーダー』から始まって、『ストリートファイター』や『バーチャファイター』が発売されていって、その中でゲーセン経営を乗り切れるか……? みたいなやつですよね。あれは僕もすごくハマりました。

豊泉 あれおもしろかったですよね。いまならスマホアプリとかでもありそうですけど。ちなみに、イツキさんのゲーセンはどうでした? 潰れました?

イツキ 一応それなりの経営はできました。でも、レトロなテーブル筐体のゲームを多めにしたら、お客さんから「ゲームが古い!」というクレームが来て、わかってねーなーって(笑)。それでいたしかたなく、最新のアストロシティを置いて対戦台を作ってみました(笑)。

豊泉 ははは(笑)。レトロゲームといえば、僕も何年か前までは秋葉原のゲーセンにレトロゲームをプレイしにちょくちょく行っていたんですけど、いまは家庭用に移植されていたり、配信されているものが多いからそれで満足しちゃうんですよね。

イツキ でもちょっと味気ないですよね。僕はゲームのインスト(インストラクションカード:簡易説明書)がすごく好きなんですけど、移植された家庭用には画像しか収録されていないんですよ。やっぱり現物を見るのが好きなので、インストだけ基板屋さんで買ったりします。

豊泉 へえー。インストだけ買えるんですね。

イツキ はい。インストだけ売っているお店もありますよ。基板はないけど、インストだけあるみたいなとこも。あとは“●●稼動中!”なんて書いてあるポスターとかも売っています。そういうのを見ると「やべーアツい!」ってテンションが上がりますね。

豊泉 確かにデータ上で見られても、現物で見る機会ってほとんどありませんからね。

イツキ 基板屋に行ってもインストはカラーコピーだったりすることもありますから。

豊泉 ちなみに、撮影したお店はいまもそのまま残っているんですか?

イツキ 撮影したお店の半分くらいは閉店してしまっていますね。現物に出会うとやっぱりシビレますね。ビビっときたといえば、名古屋のUFO M1というゲーセンがすごくよかったんですよ。お店の外観がインベーダーで、“ビデオゲーム100円!”とかって大きな看板があるんです。「おぉーここか! はるばる来た甲斐があったなー」って思いました(笑)。1階はわりと新しめのゲームが置いてあるんですけど、汚い階段を上がって2階に上がるとレトロな空間が広がっているんです。写真集にも掲載しているので、ぜひ見てもらいたいですね。

ゲーセンをアートする写真家“iT'S key(イツキ)”さんインタビュー! ゲーセンにこだわるその理由とは!?_06
イツキさんがシビレたというゲーセン“UFO M1”。

豊泉 撮影に行くゲーセンはどうやって調べているんですか?

イツキ 下町で個人が営んでいるちっちゃいゲーセンがすごく好きなので、都内を中心に巡ったんですけど、個人経営系のゲーセンはウェブに載っていないところも多いんです。だからプレイヤーに紹介してもらったり、Googleのストリートビューで調べたりもしています。ストリートビューでどこか下町の駅前からスタートして、住宅街のほうをたどっていくと、怪しげな“●●商店”というのがあったりして、「これはもしかしたら……?」と、後日実際に行ってみたり。

豊泉 最新のツールを使ってレトロなものを調べているんですね。なんかへんな感じ(笑)。根気強く続けていたら、そのうちどこか田舎のほうにある宝の山のようなゲーセンに出会えるかもしれませんよ。

イツキ そんなゲーセンを見つけたら相当うれしいでしょうね。地方といえば、オートレストランがあるんですよ。自販機がいっぱいあるドライブイン的な場所。じつは、そういうところにレトロな筐体が残っているパターンもあるんです。

豊泉 田舎には怪しいゲーセンが多いですよね。僕の実家のほうも倉庫がゲーセンになっているところがありましたよ。クレーンゲームの商品が女性用の下着だったり(笑)。でもそういった怪しいゲーセンもだいぶ減りましたよね。

イツキ 減りましたね。僕が昔通っていたゲーセンも巡ってみたんですけど、9割くらいは潰れていてさみしい気分になりました。どうやら経営的な問題とは別に、店主が亡くなって後継ぎがいなかったり、建物の老朽化などの要因で閉店するお店も多いみたいなんですよ。だから、「これから本当になくなっていくんだろうな」と思って危機感を覚えましたね。ずっとあるものじゃないと。

豊泉 そういった意味でも写真として残すということは意義深いですね……。

イツキ ゲーセンは日本独自というか、日本の大切な文化だと思うんです。それを見て懐かしんでもらうのもいいですし、ゲーセンにあまり行ったことがなかったとか、ゲーセンになじみのない人に「こういうものがあったんだな」と思ってもらえたらうれしいですね。

豊泉 いやーすごいなー。僕もゲーセンが好きだから見習って何かやらないと(笑)。イツキさんはいまでもゲーセンに通っているんですか?

イツキ ゲーセンを盛り上げたいといいつつ、じつは仕事と家庭と写真で時間をとられてしまって、週1回行けるかどうかです。ゲーセンに行く人が減った理由というのは、ゲーセン側の問題だけではなく、こういうことなのかなと身を持って感じています。

豊泉 若いころゲーセンに魅了された世代の僕らが大人になって、自由に使える時間が減って最初に削るとしたらゲーセンに行く時間になっちゃいますよね。僕も昔は毎日必ずゲーセンに通っていたんですが、いまじゃ週末の時間があるときしか行けないですから。イツキさんの場合は家庭もあるし、なおさらですよね。

イツキ そうですね。家庭があると週末はほぼ拘束されちゃいますからね。最近は行けたとしても平日の会社帰りに少し寄るレベルですよ。結局、ゲーセンに行けなくなるから家庭用ゲーム機で移植作を遊ぶんですが、自宅のモニターでプレイすると興ざめしちゃうというか。のめりこめないんですよ。

豊泉 そうそう。ありますよね、それ。僕も昔プレイしていたゲームが移植されると、すぐに買って自宅でプレイするんですけど、「あれ、こんなだったっけ……?」と当時感じたワクワク感がなくて物足りないことが多いんですよ。やっぱりあれはゲーセンの雰囲気があってのものというか、ゲーセンの魔力なんでしょうね。それに対戦格闘ゲームをネットで友だちと遊んでいても、ゲーセンでやるのとは感覚が違うんですよね。同じ空気を共有しながらプレイするのって大事なんだなって思います。

イツキ そういう意味でもゲーセンはなくなってほしくないですよね。

写真とは異なるアプローチも

ゲーセンをアートする写真家“iT'S key(イツキ)”さんインタビュー! ゲーセンにこだわるその理由とは!?_04
ゲーセンフリーペーパー「ゲームと人」

豊泉 写真集とはべつに“ゲームと人”という、プレイヤーのインタビューを掲載しているフリーペーパーも作ってゲーセンに置いていますよね。そういった活動を始めたのはなぜですか?

イツキ ゲーセン写真集とはべつのアプローチでゲーセンを盛り上げたいという想いがあったのと、最近はウェブ媒体が増えた代わりに、紙媒体が減ってしまったので、じゃあ、と。紙媒体ならゲーセンに行かないともらえないので、「ゲームと人が出たから今週ゲーセンに行こうかな」というきっかけになればと。

豊泉 なるほど。フリーペーパーはどこで配布されているんですか?

イツキ Vol.1~4を出しているのですが、Vol.2からは全国17店舗のゲーセンで配っています。“ゲームと人”もある程度貯まれば1冊の本にしたいですね。入りきらなかった分もプラスして。

豊泉 “ゲームと人”でプレイヤーを選ぶ基準はあるんですか?

イツキ 基本的に新し目のゲームは選ばないようにしています。なおかつ、そのゲームのコミュニティーがある程度存在するものを選ばせてもらっています。Vol.1~4は自分の知り合いで構成しましたが、Vol.5は『ぷよぷよ』のプレイヤーを紹介してもらう予定です。『ぷよぷよ』も歴史のあるゲームなので、対戦格闘ゲームとは違ったアプローチができるのかなと。

豊泉 対戦格闘ゲームの場合はプロゲーマーもいるのでプレイヤーにスポットが浴びることも多いですけど、パズルゲームの場合はなかなか一般の人はわからないですからね。

イツキ そうですね。そのジャンルをやり込んでいるプレイヤーからすれば当たり前のことかもしれないですけど、プレイヤーの考えやエピソードってあまり表に出ませんからね。でも、話を聞くとおもしろいエピソードを持っているので取り上げてみたいなと。

豊泉 まもなく写真展が開催されるとのことですが、詳しく教えていただけますか?

イツキ こんな風に取り上げてもらえると思っていなかったので、ちょっとテンパっています(笑)。場所は、原宿の“デザインフェスタギャラリー 原宿”(→こちら)という場所で、2月8日(土)~11日(火)の4日間を予定しています。ゲーセンの写真展を見に来る人なんているのかなって疑問があったので、弱気なスペースにしちゃってます(笑)。

豊泉 (笑)。写真はどのくらい展示するんですか?

イツキ 厳選して40点程度を予定しています。写真集に収録しているものプラスアルファといった形です。入場は無料です。じつは、外国の方から注文をもらうことが結構あるんですよ。日本のビデオゲームオタクがいるみたいで。原宿であれば外国人の方にもわかりやすいと思うので、そういう意味でもよかったかなと。

豊泉 原宿ならゲーセンに縁のない人も来てくれるかもしれませんね。

イツキ そうですね。これがゲーセンを知るきっかけになってくれれば。でも活動を続けてきてよかったと思っています。ちなみに、この話しを嫁にしたら「ふーん」って言われました(笑)。ほかに仕事を持っているので、写真家という目では見てもらえていないようです。

豊泉 活動はすべて自費製作なんですよね? 

イツキ はい。もうカツカツですね。じつは本業とはべつにバイトをしているくらいです。なおさらゲーセンに行けなくなるという(笑)。

豊泉 それが情熱ってものなんですね。すごい!

イツキ やっぱり“好き”ということがいちばんの原動力なんでしょうね。

豊泉 イツキさんのように、最近はゲーム絡みの活動をする人が増えましたよね。ゲーセン世代がみんな大人になって、プレイヤーを続けてプロになる人もいれば、メーカーやメディアに入る人もいる。さらにはイベントを主催する側になったり、才能を活かして写真を撮ったり、マンガを描いたりと。すごいし、うらやましいですよ。

イツキ 確かにいろいろな活動をする人が増えましたよね。

豊泉 そういう人たちのことはすごいと思うし、うらやましくもありますよ。僕はゲーム以外に何もできないので(笑)。だから、そういうがんばっている人たちが少しでも注目されるように、応援する側としてがんばろうかと思います!

イツキ でもそういう人がいると、僕ら側からすればすごく心強いですよ。世に出ないことには始まらないので、そういうきっかけを与えてもらえるのはありがたいです。

豊泉 じゃあ少しはゲーセンの役に立てたのかな(笑)。でも応援するのも楽しいですよ。昔いっしょに対戦していた人たちがプロになって、そういうのを取材したりとか。話を戻して、写真集のVol.3の予定はありますか?

イツキ 撮影しに行く予定はありますが、まだ納得のいく写真セレクトができていません。それよりも自宅に筐体を搬入しているゲーセン部屋の取材にシフトしたいと考えています。あとは、“ゲームと人”をコンスタントに出していき、2015年にはゲーセン部屋写真集とゲームと人の本を出せればなと。

豊泉 では最後に、写真展に来る人たちに向けてメッセージをいただけますか?

イツキ ゲーセンは日本の大切な文化だと思うので、それを忘れないためにも、これから先に残していくためにも続けていきたいと思っています。まだ活動を始めて2、3年ですけど、途中の結果発表みたいな感じで写真展を行いますので、ぜひ立ち寄っていただいて、みんなでゲーセン話で盛り上がれたらと思います。


 イツキさんのインタビューいかがでしたでしょうか? 超盛り上がったし、貴重な話をたくさん聞けて充実した時間を過ごせました。イツキさんと話していて、この人は本当にゲームが、ゲーセンが大好きなんだな、という印象を強く受けました。これが情熱ってものなんだなと。やっぱり情熱を持って行動している人を見るとすごく刺激を受けますよね。僕も明日から(←ダメなやつの典型)自分にできることをがんばろうと思いました。というわけで、イツキさんの活動がもっと注目されて、ゲーセンに興味を持つ人が少しでも増えてくれたらうれしいです。興味を持った方は、ぜひ2月8日からの写真展に足を運んでみてください。

記事:豊泉三兄弟(次男)

【写真展“JOYSTICK GAMERS! EXHIBITION EDITION”概要】
■場所
デザインフェスタギャラリー 原宿(WEST ART POCKET)
※→こちら

■会期
2014.02.08(Sat.)-11(Tue.)
OPEN 11:00-20:00

※入場無料

※公式ブログ
※→こちら

■通販サイト
※→こちら

■フリーペーパー配布ゲーセン一覧
・ゲームニュートン 大山店
・ゲームニュートン 志村店
・プレイスポットビッグワン2nd 南浦和
・西日暮里バーサス
・ピア21小平店
・ピア21 桐生店
・テクノポリス 長岡店
・neo amusement space a-cho
・大須ゲームスカイ
・星狩物語 岸和田店
・星狩物語 中百舌鳥店
・えの木
・マグマックス川越
・アテナ日本橋
・フリーダム横浜
・天満べガス
・ファンタジスタ岡山
・ゲームチャリオット五井店