『斑鳩』がSteamで近日配信 なぜいまSteamなのかをトレジャーに直撃

トレジャーが同社のシューティングゲーム『斑鳩』をSteamで近日配信する。ここでは、トレジャーの代表取締役社長 前川正人氏と『斑鳩』のメインプログラマー中川敦友氏に、Steamでのリリースを決めた経緯などを聞いた。

●現状のゲーム市場を分析すると、Steamはひとつの選択肢

 2013年10月、トレジャーが同社のシューティングゲーム『斑鳩』をSteam Geenlight(※1)に登録したことが、コアなゲーマーのあいだで話題となった。PC版への移植はわかるが、ユーザーの評価でリリースの可否が決まるという、インディーズメーカー向けの場であるSteam Greenlightへの投稿は、(よくも悪くも)ユーザーのさまざまな憶測を呼び話題となった。
 そこで今回、同作の配信が決定したことを受け、トレジャーの代表取締役社長 前川正人氏と『斑鳩』のメインプログラマー中川敦友氏に、Steamでのリリースを決めた経緯、そしてSteam版『斑鳩』の注目ポイントを詳しく伺った。なお、Steam版『斑鳩』は近日配信予定だ。

※1 Steam Geenlight……Steamでのゲーム配信を希望する開発者が、ゲーム情報やビデオなどをSteamの専用サイトに投稿し、ユーザーの反応によって販売が決定される仕組み。


トレジャー/KO5_3518_R

■トレジャー 代表取締役社長
前川正人氏(左)
大手ゲーム会社から独立して1992年にトレジャーを設立。『ガンスターヒーローズ』や『幽☆遊☆白書 魔強統一戦』『レイディアントシルバーガン』『斑鳩』などなど、同社が誇る多数のタイトルで制作の陣頭指揮を取っている。

■トレジャー 開発部 副部長
中川敦友氏(右)
Steam版『斑鳩』の移植を担当。本職はプログラマーだが、トレジャーの社風(?)で、企画やディレクションなどなんでも行う。『罪と罰』シリーズや『グラディウスV』のメインプログラマーとしても知られる。


トレジャー/snapshot/snapshot_4

『斑鳩』とは――トレジャーが制作した縦スクロールシューティングテーム。自機の属性を白と黒に切り替え、敵の弾を吸収していく斬新なシステムが高く評価された。オリジナルは2001年12月にアーケードでリリースされ、以降さまざまなハードに移植されている。

■Steamで『斑鳩』をリリースする理由は“敷居の低さ”

――まずは、Steamで『斑鳩』をリリースしようと思ったきっかけをお聞かせください?

前川正人氏(以下、前川) プレイステーション4やXbox One、Wii Uなどの新世代機が出揃って、「つぎはどこでやるか……」ということを考えたときに、「PCっていう選択肢もありだな」って率直に思ったんです。で、PCゲームでダウンロード配信と言えばSteam、というのはすごく自然な流れでしたね。Steamに関しては以前から興味がありましたし、PCユーザーのあいだでは充分に知られたプラットフォームですので。逆に、家庭用ゲームしか遊ばない人にとっては「Steam? それなに?」なんでしょうけど。スタートから10年以上も経過しているのに。

――なぜユーザー投票によってリリースが決定するGreenlightに登録しての開発となったのでしょう? ユーザーのあいだでも「なんでGreenlightなんだ!?」って疑問の声は多く聞かれました。

前川 知り合いの会社にも聞いてもみたんですね。そこでGreenligihtって仕組みがあるよと教えてもらって、手っ取り早そうだと登録してみたんです。ぶっちゃけて言うと、Steamを運営するValve社の連絡先がわからなかった(笑)。それで、正面突破ということで、Greenlightに登録することにしたんです。
 ユーザーさんからも「わざわざ『斑鳩』をGreenlightに登録する必要はないのでは?」と言われたのですが、ユーザーが配信を決定するのはいいシステムだと思いますよ。タイトルをアピールするいい機会にもなりましたので、結果オーライかなと(笑)。ちなみに、まず1本目に『斑鳩』を選択したのは、トレジャーにとってもっとも知名度の高いブランドのひとつと考えているからです。


トレジャー/KO5_3436_R

――日本のデベロッパーにとっても「こういうやり方があったか!」と気づかせるきっかけになった気もします。

前川 Greenlightってシステムはいいと思うんですよね。作り手側としては、出したいタイトルをポンと出せるのは気が楽ですね。実際、10日ほどで“販売決定”の報が届いていますし。ユーザーからそのタイトルが“望むか望まれないか”がハッキリするわけですから。とはいえ、今後またGrennlightに登録するかはわかりませんが(笑)。

――今回は海外ユーザーがすぐに反応を示しましたが、『斑鳩』のこれまでの海外展開は?

中川敦友氏(以下、中川) ドリームキャスト版は海外で出ていないので、ゲームキューブ版が初『斑鳩』。その後はXbox Live アーケード版ですね。

前川 一応、Andoroid版もあります。

中川 ウチ(のゲーム)は外国人にウケがいいんですよ。

前川 まるで日本ではウケてないみたいに言わないでよ(笑)。

中川 外国の方々のほうが、名前じゃなくて中身で評価してくれる印象が強いです。

前川 とくにXbox Live アーケードのように、購入前にどんなゲームかを見て判断してもらえる仕組みはありがたいですね。パッケージだと、知名度がないタイトルは売れないですから。

――トレジャーさんみたいな立ち位置のメーカーさんが海外展開をしようとすると、パッケージよりもダウンロード販売のほうが……。

前川 断然やりやすいですね。ハッキリいって、いまの時代、うちのような大きくないメーカーだと、自社でのパッケージ販売は敷居が高いんですよ。やりたくないわけではないんですが、パッケージ化するコストや在庫の管理などを考慮すると、きびしさが上回ってしまう。Xbox Live アーケードをやったのも同じ理由ですね。メーカーの大小に関係なく評価してもらえますから。

――タイトルが求心的であるほど、遊んだ人が知り合いなどにオススメしてくれますものね。

前川 ですから今後は、ダウンロード販売が中心になっていくと思うんですよ。ダウンロード版がヒットして後からパッケージ化、みたいなケースも出てくると思うんですよね。現状では“いまあるものを後から出している”みたいになっていますけど、今後は最初からSteamでダウンロード販売して、ある程度認知度が出たところで、ほかのプラットフォームを含むパッケージにしてみる、というやりかたもアリだと思います。

――それは興味深い手法です。

前川 最初から「据え置きゲーム機用のパッケージで出します」と決めると、ものすごいボリュームにするなど、ユーザーが満足できるものを作らないと市場に出せなくなってしまっている。それに対してSteamなら、新作を例えば20ドルといった安価で販売することもできる。そういった柔軟性のあるところが、やりやすいですね。

――Steamに興味を引かれるのは、市場としての柔軟性ですか。

前川 それに、PCの価格がずいぶん安くなってきているじゃないですか。昔だったら、ネットゲームをしっかり遊ぼうとすると20万円コースだったのが、50000円くらいのPCにグラフィックボードとコントローラーを追加すれば、大抵のゲームを遊べてしまう。Xbox 360を持っている人なら、コントローラーのUSB端子を挿せばそのまま動作するからお得ですし。
 PCは実用品でもありますから、据え置き型ゲーム機よりも(家庭に導入する)敷居は低くなっているんじゃないかとさえ思えるんです。社内でのバグチェックも、業務で使っているPCだけで済みましたからね(笑)。

――“PCゲームは敷居が高い”という意識は、もう古いと。

前川 だと思いますよ。いまは据え置き機だっていろいろと揃えると50000円程度はしますから、いざ買うとなると、慎重になります。もちろんプレイステーション4やXbox Oneはこれから盛り上がっていくんでしょうけど、一般層まで広がるには、ある程度の時間が必要でしょう。だったら、PCという選択肢は十分にアリだと思います。

――では現状トレジャーとしては、並み居るゲーム機の中ではSteam推しであると。

前川 そうですね。であると同時に、どれかを選ぶ必要もない時代かなと。“とりあえずPCで作っとく”というのは、大事なことだと思います。それこそ昔は「◯◯のハードでタイトルを出しやがって!」みたいな熱いご意見を頂戴したこともありますが、そこからすると時代はもう変わったのではないかと。

――ちなみに、Steamに移植をするにあたって、レギュレーションみたいなものってあったのでしょうか?

中川 いや、とくにはなかったと思います。

前川 とにかく、メーカー任せで自由にやらせてもらえますね。『斑鳩』の場合、日本語と英語のみなんですけど、言語対応もメーカー次第でバラバラですし。向こうから何かを言われたことは、ほぼないです。


■決定版を目指して制作されたSteam版『斑鳩』

――Steam版『斑鳩』についてお聞きしますが、移植版という捉えかたでいいのでしょうか?

中川 ベースとなっているのは、Xbox Live アーケード版から調整を入れたNESiCAxLive版で、そこからさらに調整をいれています。新ステージや新ボスの追加などはありませんが、数々の移植版の中で、“これが決定版!”というものを目指して開発しました。

――では、そのほかの要素に関しても抜かりなく。

中川 オンラインCo-opは実装できていませんが、ランキングやリプレイ保存には対応しています。じつは一番注目してほしいのは、解像度です。従来はハーフHDだったんですが、フルHDに対応しました。さらに、画面を縦にしてのプレイや、画面のみを横に倒した状態でのプレイにも対応しています。

前川 複数の解像度に対応させるのが、地味にたいへんでしたね。


snapshot_SD_01
トレジャー/snapshot/snapshot_6

▲SD解像度(上)とHD解像度(下)を比較した画面。フルHDへの対応で、よりクッキリとした画面でゲームを楽しめるようになっている

中川 今後はもう、縦画面への対応はしたくないくらい。横画面縦シューもやっぱり違和感がありますし。縦スクロール型のゲームという意味では、やはりブラウン管の4:3比率が黄金比ですね。

――具体的に苦労された点というのは?

中川 ゲーム本体はすでにWindowsベースで動いていたので、移植にそれほど苦労はなかったんですが、『斑鳩』の場合は解像度にあわせてドットバイドットでレンダリングを行っているので、メニュー画面のレイアウトが崩れてしまうんですね。


トレジャー/KO5_3469_R

――ああ、なるほど。

中川 SD画面とフルHDだとフォントサイズは全然異なりますので。また、複数の解像度に加えて、ディスプレイサイズが4:3と16:9で、それぞれ縦横があるので、キチンと表示できているかの検証にはかなり時間がかかりました。あ、そのほかにはキーボードとマウスでの操作に対応しています。

――キーボードとマウス! ちょっと衝撃的です。

前川 PCゲーマーには、そちらの操作に慣れた方もいるでしょうしね。

中川 ASDWキーで移動、マウスでショットと属性の切り替えになっています。あとは、1台のコントローラーでのダブルプレイ(ひとりで2機を操作するスタイル)にも対応しています。

――ディープな『斑鳩』ファンにも満足な内容だと。

中川 演出・エフェクトの一部調整・追加をしたり、Xbox Live アーケードにあったバグの修正、Steamの実績やクラウドセーブ機能にも対応など、できうる限り手を入れています。オンラインCo-opだけ難しかったのですが……。

前川 ユーザーからの要望が多ければ、追加で実装を検討することは可能ですので。その辺りの手間も、Steamではカンタンなんですよ。運営からのレスポンスもすごくいいですしね。


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▲タイトル画面は、鈴木康士先生描き下ろしのコトブキヤのプラモデルのパッケージ絵を使用。

――Steamについてのお話を聞くと、なんというか、作り手からユーザーかの距離が近い“産地直送”みたいな印象を持ちますね。

前川 そうですね。あいだにいろいろ入らず、ほぼダイレクトにユーザーさんにモノを届けられる仕組みはいいと思いますよ。作り手側としてのやりやすさはあるし、ユーザーさんの応援さえあれば、継続的にモノを届けられるわけですし。

中川 僕も、Steamはいいと思います。新ハードだと研究に半年とか平気でかかってしまいます。それに家庭用ハードにはどうしても“寿命”がありますが、Windowsなら10年以上は続いています。

前川 ゲーム開発の規模が大きくなっている昨今ですと、5年とかで代替わりがあるとキツいですね。やっと環境が整ってバリバリ作れるぜ! と思ったら「ハイ、つぎのハード」では……。

中川 やっぱりゲームプログラマーなので、ゲーム本編を作り込むのに時間を割きたいんですよ。ハード研究まで必要だと時間がいくらあっても足りないです(笑)。その点PCだと、「試しに作ってみるか」の壁が低い。


■ゆくゆくはオリジナルタイトルのリリースも!

――話題をSteamそのものに戻しますが、Steamのサービスのどこに魅力を感じますか?

前川 インターフェースですね。ボタンをポチっとするだけでソフトが買えるから、セールのときなんかはついポチポチとしてしまいますね。その分積みゲーが増えていくのでどうかと思うんですけど(笑)。でも、「10ドルでこんなにおもしろいゲームが買えた!」ってもの、ひとつの楽しさだと思うんですよね。売る側にとっては、サービス過剰に思える節もありますけど(笑)。

――熱心なPCゲーマー以外にも、これから広がっていく可能性はありそう、と?

前川 「これから来る!」時期だと思うんですよね。コアな層への認知度は十分なので、あとはPCでゲームを遊ぶ習慣のない人がその魅力に気づけば、一気に広まりそうな気はしています。ハードそのものの普及率は、一家に一台レベルなわけですし。

――北米の家電ショウCESでSteam Machineが発表になりましたが、それについてはどんな印象でしょう?(⇒関連記事はこちら

前川 Steamは家庭用PCのサービスっていうイメージが強いので、専用ハードが出ることでどのような展開になるのかは予想できないですね。

中川 僕はおもしろいとは思います。ただ、プログラマー観点でいうとLinuxベースなのが……面倒で(苦笑)。WindowsベースのSteam版『斑鳩』を移植することを考えると、環境の違いをイチから覚え直さないと。ただ、専用コントローラーの独自性には興味がありますね。

――ここまでのお話を総合すると、今後もSteamでのタイトルリリースを考えられているように感じますが?

前川 『斑鳩』はあくまで一本目で、これで終わるつもりはないです。ユーザーさんからは、「つぎは『レイディアントシルバーガン』かな」とも言われていますが、移植だけで終わるつもりもなく。Steamというプラットフォームで、新たにオリジナルタイトルを作っていきたいという考えはあります。

――では、“とりあえずPC”で、その反響次第で別ハードに展開していく、という戦略になりそうだと。

前川 そう考えています。Steamの取材だからそう言っているわけではなく。ウチのような小さな会社の場合、同じタイトルをすべてのハードで同じ発売日にリリースすることは不可能ですから。まあ、ウチのスタンスとしては、変わらず“好きなものを作って好きなように出す”ですので、気負わずご期待いただければと思います。

中川 (ボソリと)横スクロールアクションとか、いいかもしれませんね。

前川 まだ何も決まってませんから!(笑)

――Steam版『斑鳩』は、トレジャーさんのつぎなるステップへの試金石と言えそうですね。本日はありがとうございました!


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(取材・文 ライター/馬波レイ)


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