日本戦車注目度アップ大作戦！
全世界7500万人以上のプレイヤーと白熱の戦車戦を楽しめるPC用オンライン戦車アクション『World of Tanks』（以下、WoT）。
1試合あたりの所要時間が10分前後という気軽さも魅力だが、もちろんやり込み要素も豊富だ。
本作には世界各国の戦車が300種以上登場する。どの戦車を使うか悩んでしまったら、愛着のある国の戦車を使ってみよう。そういう意味では、2013年12月24日に本格実装された日本戦車に注目したい。『WoT』における日本戦車は、ひと言で表現すると“個性的”。使いにくいと感じる場合もあるかもしれないが、その玄人好みの性能がクセになる人も多いはず。
「日本人たるもの日本の戦車を愛するべき！」と考えたファミ通.com作戦司令部では、ミリタリー好き声優の中村桜さんを直撃！ 日本戦車の魅力を語っていただいた。
ミリタリー関連が好きな声優。2013年7月には海上自衛隊の訓練支援艦“てんりゅう”において1日艦長を務めたことも。好きな日本戦車は九七式中戦車（通称チハ、『WoT』内の表記は“Type 97 Chi-Ha”）。
本文では“中村”と敬称略で表記いたします。
なぜ戦車に魅了されるのか
――最初に、戦車が好きになったきっかけを教えてください。
中村 駐屯地が家の近くにあったので、自衛隊の方が近所を歩いているのをよく見かけていました。なので、もともとミリタリー関連のものに対して怖いイメージはなかったんです。
――小さいころから身近な存在だったわけですね。
中村 そうですね。これという強いきっかけがあったわけではなくて、じわじわ好きになっていったんだと思います。戦争映画なんかも昔からよく見ています。
――戦争映画にもいろいろなジャンルがあると思いますが。
中村 最初は民間の人が戦争に巻き込まれるようなヒューマンドラマ作品が好きだったんですけど、気づいたらがっつりしたものが好きになっていました（笑）。『ゼロ・ダーク・サーティ』とか『ブラックホーク・ダウン』とか。
――ミリタリー好き度がゆるやかにレベルアップしてきている感じですね。戦車単体で見るとどうですか？
中村 う～ん、戦車そのものって身近なものじゃないですよね。
――映画と違って日常的に見るものではありませんね。
中村 高校生くらいのときにアングラ系のものに興味があって、ちょっとマニアックな古本屋さんによく通っていたんです。そのお店には軍事関係の本も置いてあって。小林源文先生（※1）の作品を初めて見てから、戦車を意識するようになったのかもしれません。“黒騎士物語”なんかは戦車隊が活躍するマンガですし。
（※1 小林源文：戦争を題材とした作品などで知られるマンガ家、イラストレーター）
――ミリタリー好きになる下地が作られていたからこそ、小林源文先生の作品が目に留まったのかもしれませんね。中村さんはどういう戦車が好きですか？
中村 日本の戦車が好きです。
――どういう部分に戦車の魅力を感じているか、聞かせてください。
中村 私個人の考えというか感覚なんですけど……。兵器と呼ばれるものは空・海・陸にそれぞれあるじゃないですか。空と海の兵器って、何となくふつうの飛行機や船からイメージがつながりやすいと思うんです。飛行機の先に戦闘機が、フェリーの先に軍艦があるというか。それに比べて、戦車って私たちの日常からは想像しにくいですよね。
――たしかに、飛行機と戦闘機はイメージが近い気がしますけど、ふだん乗る車から戦車はイメージしないですね。ふだんから飛行機や船に接している人は、おそらく違う感覚なんでしょうけど。
中村 プラモデルで言うと、戦車のプラモデルって、車よりアニメに出てくるロボットみたいなキャラクターモデルに近いんだと思います。日本がいま平和だからというのもありますけど、私としては戦車をファンタジーに近いものに感じていて。つい最近まで実物の戦車を見たことはありませんでしたし、映画の劇中で見るようなリアリティーのないものが実在するということに、「おおぉぉぉっ！」って思うんです。
――映像やプラモデル、おもちゃでしか見たことがない、ファンタジーに近いものが実在する感覚というのはおもしろいですね。船や飛行機と違って戦車は実物を見る機会が少ないですし、映像だって大抵がフィクションのものですから。
中村 実物より先にプラモデルやおもちゃを見ているから、というのも関係あるかもしれません。
――戦車って男子の目には“強そうでかっこいい”ものとして映ると思います。これはロボットアニメなどの影響もあるんでしょうけど。女子からすると、その辺りの感覚はどうなんでしょうか？
中村 ふふふふ。そうですねぇ。私もかっこいいと思います。やっぱり。『宇宙戦艦ヤマト』とか見ても、波動砲を発射するときに機械部分がウィーンって動いているのを見て「あー、いいなー」と思います。もちろん人間どうしのドラマもおもしろいんですけどね。
――そういう機械的なギミックが。
中村 いいんですよー。あ、そうだ。私は『サクラ大戦』世代なので、きっと“光武”と似たようなものを感じているんですよ。
――あー、なるほど。すごくわかる気がします。“光武”がリアルにあったら、そりゃ興奮しますよね。
中村 それと、もうひとつ思い出しました！ 軍装などでお仕事をされている金子賢一さんという方といっしょにラジオをやらせていただいているんですけど、金子さんも陸が好きらしいんですね。理由を聞いたら、「陸だけは歩兵が主役だから」。これは「たしかに！」と思いました。
――どういうことなんでしょうか？
中村 空も海も乗っている兵器がメインと考えられることが多いんです。戦車自体はすごく重要な兵器ですけど、最初はあくまで歩兵支援用のもので、完全なる主役じゃないというのも好きな部分だと思います。戦車って派手じゃないというか、奥ゆかしいんです。
――その考えは「ハッ！」と気づかされるものがありますね。戦車自体が主役というわけじゃないのか。
中村 人の受け売りですけど。戦車だけでは制圧できませんし、歩兵ありきの戦車っていうのがいいですね。
――華やかだけど華やかじゃないみたいな。
中村 戦闘機は「ロマン！ かっこいい！」ってきれいなイメージにつながりやすいですけど、戦車は泥臭いとかそういう（笑）。
――スーパースターじゃなくて、縁の下の力持ちといった感じなのでしょうか。
中村 そういうところが好きなのかもしれません。
日本戦車の魅力は奥ゆかしさ？
――中村桜さんは九七式中戦車（通称：チハ）がお好きなんですよね。『WoT』にも“Type 97 Chi-Ha”として登場しますが、どういう部分に魅力を感じますか？
中村 『WoT』に実装されている戦車のなかではチハが好きで、そのほかに八九式中戦車も好きです。やっぱり目立つのは強い戦車ですよね。たとえばアメリカの“シャーマン”とか、ほかにもソビエトやドイツの戦車とか。
――そうですね。私でも名前を知っているくらいですし。
中村 日本の戦車は、少なくとも主役級の強さじゃないんですよ。チハを調べると、いかに弱いかみたいなエピソードばかりが出てきて（笑）。「強い！ かっこいい！」じゃなくて、脆さや儚さがあるからこその魅力なのかなと思います。八九式中戦車なんて、開発された当時は活気的な戦車で、その時代の最先端だったわけですよ。だけど、あまり指揮がよろしくなかったりだとか、単純に材料や物資が足りなかったりして、けっこう境遇としては不幸というか……。
――運悪く、華々しい活躍ができなかったんですね。
中村 そう、性能が悪かったわけじゃないんです！（笑） たまたま実力を活かし切れない環境だっただけで。その不遇な感じがたまらなくかわいそうであり、かわいくもあり、愛おしいんです。
――日本人ならではの感覚かもしれないですね。苦労しているほうに感情移入するとか、散りゆく様が美しいとか。
中村 実際、あまり活躍してないじゃないですか。試作だけで終わった車両もありますし。何度も言いますけど、決して弱くはないんですよ！（笑） 装甲は薄いけど、弱いだけというわけじゃないんです。
――『WoT』中ではただ強いとか弱いとかではなく、通好みな戦車に仕上がってますから、安心してください（笑）。
中村 あと、フォルムがかわいいですよね。中戦車とか軽戦車とか、やっぱりほかの国の戦車と比べて小型なので、単純にパッと見の印象でかわいいなって思います。
――その辺はミリタリー好きな女子ならではの観点なんだなと思います。男子が見ても「かわいい」という発想はあまり出ないかなと。
中村 ドイツのティーガーとかだったら「かっこいい！」とは思いますよ。いわゆる「戦車！」って感じですからね。「強そうだー！ 装甲も厚そうだー！」って感じます。私が日本の戦車から魅力を感じるのは、いわゆる戦車的じゃない部分ですからね。
――ちなみに、八九式中戦車の魅力はどの部分ですか？
中村 フォルムで言うと、ソリの部分はかわいいですよね。おしりがドナルドダックみたいでキュッてなってるところが。さっきから「かわいいかわいい」ってそんなのばっかりですね。このインタビュー、大丈夫ですか？（笑）
――大丈夫です！ 『WoT』には300種以上の戦車が登場しますし、変わったデザインの戦車も多いですから。性能じゃなくて外見で選んだっていいと思いますよ。
中村 日本の戦車を実装するのは大変そうですよね。そもそも資料がないものもあるでしょうし。
――現時点の技術ツリーは初期段階のもので、今後も増えていくという話です。実際、開発はなかなかたいへんだという話も聞きます。
中村 九五式軽戦車（Type 95 Ha-Go）は日本の戦車のパイオニアと言われていて、実際に活躍しているのは九五式軽戦車（Type 95 Ha-Go）や八九式（中戦車）ですよね。三式（Type 3 Chi-Nu）は実際には戦地に行ってなくて、本土決戦用に国内で待機していたら、あまり日の目を見ることなく終わったっていう……。着々と強くはなっているはずなんですけどね。
――日本は島国なので輸送もたいへんらしいですから。
中村 だから軽くするために装甲を薄くしたみたいですね。『WoT』に実装されている日本戦車が作られた年をまとめてみたんですけど、最初の“NC27 Otsu”から最後の“STB-1”まで10年くらいしか経ってないんですね。実戦に出ていたのはおもに前半の戦車で、あまり強くないころですから、なかなか勝てないのは仕方ないと思います。
――ユーザーのみなさんにはがんばってSTB-1まで作ってもらって。
中村 そうですよね。強さは完全に史実に基づいているわけではないらしいので（※2）、そこは喜ぶべきポイントかなと（笑）。
（※2 戦車の強さ：史実上での性能をベースに、ゲームとしてのバランスが崩れないように調整されている）
――もしかしたら、今後、日本の戦車が世界で活躍する日が来るかもしれません。東京ゲームショウ2013でWargaming.netのCEOにインタビューしたときに「サムライスピリットを見せる最高の場を用意します」と仰ってましたから。
中村 世界大会で日本の戦車が活躍したらすごいですよね！
――テンション上がりますよね。泣いてしまうかもしれません。それでは最後に、ユーザーの皆さんにコメントをいただけますか？
中村 日本戦車が本格的に実装されたということで、これからはもっと戦車に愛着が持てるようになっていくと思います。ぜひ、史実では活躍できなかった戦車で最強の戦車たちをばしばしと倒して、のしあがっていただきたいと思います。そして、できれば、日本の戦車で世界の頂点に！
――日本の戦車兵の活躍に期待しましょう。ありがとうございました！
