バーチャル世界を覗けるなら、次は自分の体で干渉したい
CESで独特な存在感を示していたVR(バーチャルリアリティ)デバイス“Oculus Rift”。正式な名前は知らなくとも「初音ミクとかと同じ世界に入れるヘッドマウントディスプレイ」ぐらいで何となく知っている人は多いんじゃないだろうか。
CES会場では、PC系のブースでも、インテルのブースでも、Riftを使ったデモが行われていた。Riftを使った視界がゲーム世界に入ったように感じられるVR体験はとにかく新鮮なので、技術的な話に詳しくない家電店のバイヤーさん(CESは家電ショーである)とかにも「ウチのPC(プロセッサー)のパワーを使えばこんな体験ができるんです」とプレゼンするのに最適なのだ。
肝心のOculus VR社はごく一部の人にプロトタイプ“Crystal Cove”を見せるにとどまったが、本会場にブースを持たないベンチャーが集まる会場周辺のホテルには、VR関連のさまざまな出展が行われていた。
記者が縁あってデモに立ち会ったSIXENSEの“STEM”もそのひとつ。棒型の小型モーションセンサーや、それを内蔵するコントローラーなどでシステムが構成されており、デモとしては『ポータル』の改造ステージをOculus RiftとSTEMコントローラーでプレイすることができた。
このセンサー群によって、現在購入できるOculus Riftの開発機単体では不可能な、手や頭の位置の検出を行うことができるのだ(Crystal CoveではRiftの自体の位置検出には対応)。具体的なゲームのアクションとしては、VR世界内で実際にしゃがめる(上下移動の検出)とか、掴んだオブジェクトを投げられる(手の移動の検出)といったことが可能になっていた。
この現実の手を使ったVR世界への干渉を実現するには、これまでRazerのPC用モーションコントローラー“Hydra”などが使われてきたのだが、残念ながらHydraは生産終了。そこでHydraに技術提供をしていたSIXENSEから満を持して登場したのがこのSTEMなのだ。
しかも今度は2台のコントローラーだけでなく、コントローラー含めて最大5つのセンサーを同時に扱い、頭+両手両足の位置を検出することもできるのだ(頭腰両手とかでもいい)。
デモは見た感じ超高精度というわけではなさそうなものの、それでもVR世界に直接干渉できるだけの精度と面白みは十分に感じられた。
一番面白いのは、STEMがモーションコントローラーの決定版になるか否かということに関わらず、こういったVR周辺のデバイスが確実に増えてきていることだ。例えばRiftとSTEMだけで使うのではなく、以前デモリポートをお届けしたVR世界を歩けるデバイス“Omni”と組み合わせて、更に現実の身体とVR世界のキャラクターとのシンクロ度を高めることもできるだろう(実際、STEMとOMNIとの連携はプランに含まれている)。
話に聞く所によるとValveも超高精度なVRヘッドマウントディスプレイのプロトタイプを作っているそうで、絵空事のように語られてきたVRゲームが、ここから数年の間に急速に進化していきそうだ。(取材・文・写真:ミル☆吉村)