『IA/VT』の企画はどのようにして生まれたのか?

 マーベラスAQLより7月31日の発売に向けて開発中であることが発表されたPS Vita用ソフト『IA/VT』。本作のプロデューサーである高木謙一郎氏と、主題歌を提供するボカロP・じん(自然の敵P)氏にインタビューを行った。『IA/VT』は、2012年にアーティスト・Liaの声をもとに制作されたボーカロイドキャラクター・IAを題材としたリズムアクションゲーム。高木氏には企画立ち上げの経緯など、じん氏には提供される楽曲について聞いた。

新感覚リズムゲーム『IA/VT』(PS Vita)が発表! 高木P&じん(自然の敵P)氏に直撃インタビュー_01
新感覚リズムゲーム『IA/VT』(PS Vita)が発表! 高木P&じん(自然の敵P)氏に直撃インタビュー_05

――IAのゲーム化ということですが、まずは今回の企画の意図、立ち上げの経緯について教えてください。
高木 はい。意図としてはいくつかあるのですが、ひとつは単純に“新しいことをしたいな”ということです。また、世の中にあるいろいろなおもしろいものをゲームで表現するというのは、日々考えて模索していることですが、その中で今回はボーカロイドでやってみようと。僕自身がボーカロイドのムーブメントが好きということもありました。

――じんさんはIAのゲーム化のお話を聞いたときはいかがでしたか?
じん 以前から、ゲーム化したいという周囲の話は聞いていました。ですが、もちろん僕がゲームを作る・作れるわけではないので「そうなんだ」という程度でしたが(笑)、実現するという話を聞いたときは嬉しかったですね。

――ところで、じんさんは普段ゲームは遊ばれますか?
じん ゲームは大好きですね。ものすごいコアゲーマーか、と言われるともっとスゴイ人がいっぱいいると思いますが、ふつうに毎日遊ぶくらいには愛好しています。ちなみに『閃乱カグラ』シリーズの大ファンで、今回のお話で一番驚いたのは、ある意味高木さんが手掛けられるというところでしたね(笑)。
高木 ありがとうございます(笑)。

――IAで数々の楽曲を発表されているじんさんですが、IAの魅力はどこだとお考えですか?
じん そうですね、音声合成ソフトウェアである面、ビジュアルやキャラクター性などIAを形作る要素には多様な面がありますが、第一にソフトとしての使いやすさ、そしていい声で歌ってくれるのが魅力ですね。また、これはIAに限った話ではなくVOCALOID(ボーカロイド)というツールの話になりますが、音楽とビジュアルを同時に内包しているというものはなかなかないと思いますし、大きな魅力だと思います。

――ちなみに、じんさんはボーカロイドに合わせて曲作りをされるタイプでしょうか?
じん それはないですね。まず自分のやりたいことが先にあります。そのうえで、曲のイメージなどからボーカロイドや露出先を選ぶタイプです。楽器などを選ぶ感覚に近いと思います。

――では、高木さんはボーカロイドのムーブメントやIAの魅力をどう見ておられますか?
高木 初音ミクを中心にボーカロイドというムーブメントが大きく広がっていく中で、滑らかに歌うIAの登場は衝撃的でしたね。無色透明なイメージも新しかった。また、作り手側の話で言うと、やっぱり歌の収録ってすごく大変なんです。もちろんそれぞれの魅力があってよりゲームに合うほうを選択しているのでどちらがいいという話ではないのですが、ボーカロイドのほうが細かい調整がしやすかったり、人間では無理な早口ができたりという利点があると思いますね。そういうことも含めていろいろなシーンに広がっているのではないかと思います。

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▲『閃乱カグラ』シリーズの大ファンだというじん氏。高木Pにサインをもらう。

――まだお話しできることは少ないかと思いますが、ゲーム内容についてもお聞きします。まず、ジャンルはいわゆるリズムアクションですよね?
高木 そうです、ド直球です(笑)。IAにはすでに魅力のある楽曲がたくさん揃っていますし、そこに変に手を加えないほうがいいだろうと考えて、ストレートにリズムアクションを選びました。リズムアクションというジャンルのなかで新しいことを見せられればいいなと。
じん ゲームのジャンルについてはいろいろな案があったみたいですが、奇をてらったことをして「誰も理解できないから新しいでしょ?」というのは簡単です。ですが、伝えたいことをしっかりわかってもらったうえで新しいことを提示するというのが大事なんじゃないかと思いますね。
高木 まさにそういうことです。

――では、リズムアクションとして、本作ならではの新しい部分、特徴というのはどういった要素なのでしょうか?
高木 いくつかあるのですが、サブタイトルにあるカラフル。IAの無色透明なイメージを活かして、ゲームプレイを通じて彼女に色が付いていく、ということを形にしたいというテーマを持っています。具体的には、プレイに応じてゲーム内の背景など色調が変化していく、すべて含めた見た目ですね。これが、プレイヤーの操作に合わせて、その時の気持ちが色に出るような仕組みを考えています。

――同じ楽曲をプレイしても、プレイヤーによって違うものになる?
高木 そうですね、単にGoodとかNice、といったアクションへの評価だけではないフィードバックがあります。やるたびに結果が違う、プレイヤーの感情の起伏を表現したいんです。要素で言うと、リズムゲームの基本的な要素は踏襲しつつも、例えば音を自分からキャッチするという操作をくわえています。キャッチした声や音は最終的に解放されて、クライマックスを迎えるイメージです。まだ試行錯誤している段階なので詳しくお伝えできないのですが(笑)、単純に楽曲に合わせて流れてくるアイコンをタイミングよく押していくだけというものではないです。

――ターゲットとするプレイヤー層はどのあたりを考えておられますか?
高木 「この層に届けるんだ」というよりは、IAの魅力を多くのゲームファンにも伝えたいということがまずあります。もちろんIAのファン、楽曲のファンに興味を持ってもらいたいという気持ちもありますが、そこに絞っているわけではないです。難しいことだとは思いますが、そこはチャレンジですね。IAをもっと広げていく選択肢の中で、我々はゲームを提示する、という感覚です。

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――そして、本作の主題歌をじんさんが担当するわけですね。
じん はい。IAありきで曲を作るというは初めての経験なので、楽しんでやらせていただいています。

――どんな曲になりそうですか?
じん まさに“カラフル”なイメージです。現在のIAを伝えられるようなものにしたいですね。また、このゲームで、IAが初音ミクのように具現化していくひとつのステップになる、その助けになれるような曲を目指して作っています。

――ファンが聴いたらじんさんの曲だとすぐにわかりますか?
じん 一撃だと思います(笑)。
高木 まだデモの段階ですが、イントロですぐにわかりますね(笑)。

――高木さんからは曲のイメージなどの要望は?
高木 基本的にはお任せです(笑)。ひとつだけ、「楽しい感じの曲にしてほしい」ということはお伝えしました。
じん ですので、アッパーな曲調になると思います。

――これまでじんさんが手掛けた曲も収録される?
高木 もちろんです。

――ゲーム全体の初期収録曲は何曲くらいになりそうですか?
高木 60曲以上ですね。

――DLCなどでの追加楽曲の配信なども考えられていますか?
高木 やりたいと思っています。こうしてゲームを制作しているあいだにも、どんどん素晴らしい曲が生まれているわけで、それをお届けしないわけにはいかないですよね(笑)。

――では最後に、おふたりからIAのファン、ゲームファン、じんさんのファンに向けてメッセージをお願いします。
じん はい。いつもお世話になっているIAのゲーム化ということで、僕自身もそうですし、これを聞いた皆さんもワクワクしていると思います。そのワクワク感を僕は主題歌という形で皆さんにお届けできればと思っています。主題歌でもあり新曲でもありますので、楽しみにお待ちください。
高木 いろいろなご縁があって僕が本作に携わることになりましたが、オリジナル作とは違いIAという明確な主人公がいますので、IAのファンや楽曲のファンにしっかりと納得してもらえるもの、さらにIAを知らない人にも広がっていくような作品を目指してがんばっています。どうぞご期待ください。