松山氏がクリエイターの卵たちに語った言葉とは?
2013年12月2日、サイバーコネクトツー代表取締役社長・松山洋氏が、デジタルハリウッド大学にて講義を行った。
これは、同大学にて客員准教授を務めている、アクワイア代表取締役社長・遠藤琢磨氏の、“ゲームプロデュース&ディレクション”をテーマにした講義の一環として実施されたもの。遠藤氏の講義では、より実践的な内容にするべく、現役のプロデューサー・ディレクター、経営者などをゲスト講師に招いての講義も行っているが、社長、ディレクター、プロデューサーとすべての役割をこなしている松山氏は、ゲスト講師にうってつけの人材というわけだ。
講義では、まずゲームクリエイターの職種について説明されたうえで、ゲームクリエイターを志望する人が求められる知識・素養や、心がけるべきことなどが解説されていった。
★デジタルハリウッド大学・遠藤氏の講義についての詳細は→【コチラ】
多様に分化している“ゲームクリエイター”
松山氏は、「あくまでサイバーコネクトツーの場合、私の場合の考えですが」と前置きしたうえで、“ゲームクリエイター”について解説していった。
ざっくりと大別すると、ゲームクリエイターには、ゲームデザイナー、サウンド、アーティスト、プログラマーの4職種があり、全体を監督する“ディレクター”のもと、チームを組んでゲーム制作を手掛けている。サイバーコネクトツーでは、これらすべてを“ゲームクリエイター”であると定義し、年に1度実施するアイデアコンペでは、全員参加を義務づけているという。それは、「ゲームのアイデアひとつ作れないヤツが、ゲームクリエイターを名乗るんじゃない」という考えに基づくものなのだそうだ。
ざっくり分ければ4職種でも、現代のゲーム開発においては、そこからさらに専門的に細分化されている。
細分化が進んでいる中で、もっとも多様化している職種が“アーティスト”。もちろん、それぞれ重要であることには違いがないが、求人という意味でのニーズには大きな違いがある。
なかでもきびしいのは、“キャラクター/BGモデラー”。というのは、この分野の仕事は、現在では中国の会社に安く発注するケースが多く、よほどの付加価値(日本でトップクラスの技術があったり、キャラデザインやアニメーターもできたり、など)がある人材でもない限り、あえて採用することはないのだそうだ。
一方、サイバーコネクトツーでとくに重視されているのが、“キャラクターアニメーター”。サイバーコネクトツーが、アニメや少年漫画ノリの作品を作ることが多いせいもあるが、同社のスタッフ約230人のうち70%がアーティストで、さらにその70%がアニメーターなのだそうで、最近では元GAINAX、元マッドハウスといったアニメ業界からの人材も採用して、さらに強化を図っているという。松山氏いわく、手付けアニメは、なかなか海外ではマネができない分野。「センスと努力は必要になりますが、アニメーターはオススメの職種ですよ」(松山氏)。
ではどうすれば、ゲームクリエイターになれるのか?
職種の説明が終わったところで、講義は“クリエイターを目指すうえで”という内容に。松山氏が、本気でゲームクリエイターを目指す人が心がけておくべき事柄を語っていった。
◆目標を明確にする
松山氏は、まず大前提として、「具体的に何になりたいのか」を明確に決めることが重要だという。「プログラマーになりたい」というレベルでは論外で、「キャラクターモデラーになりたいではなく、こういうキャラモデラーになるんだ、と明確に目標を持たないと徒労に終わります」と松山氏。「なんでもやるので雇ってください!」という勢いだけの人については、「それは何もできません、というのと同じこと。それでは採用できない」(松山氏)とバッサリ。何ができるのかをハッキリ提示できる人なら、どんな仕事をさせるのかをイメージしやすいため、採用につながりやすいというわけだ。
◆スケジュールを見積もる
スケジュールの見積もりかた、時間の使いかたは、プロとアマチュアで大きく異なる部分だという松山氏。たとえば12月末までに作品を提出せよ、となった場合に、提出日の前日までに仕上げようとするのはアマチュアのやりかた。プロは4週間与えられたら、2週間で完成させ、残りの2週間をチェック、モニター、修正にあてるようにスケジュールを組むのだという。
◆チーム制作の経験を積む
現代のゲーム制作は、規模の違いはあれど、チームで制作するもの。サイバーコネクトツーでは、プロジェクトのスタート時で30人くらい、そこから制作が進むにつれて50人、70人になり、ピーク時は100人を越える規模のチームで制作を進めていくそうだ。スマートフォン用のプロジェクトでさえ、10人、15人規模のチームで作るのは当たり前になっており、「ゲーム作りでは、たくさんの人と一緒に仕事するのは、避けて通れません」(松山氏)。
嘘か誠か、松山氏も「私自身、青年時代は、人前で話すのが苦手な恥ずかしがり屋でした。でも、私の立場では、それが許されず……会社のため、タイトルのため、練習によって克服してきました」のだとか。ゲームクリエイターは、ほかの人たちとコミュニケーションを取りまくる必要がある職種なので、「人と話すのが苦手、説明が苦手、と思っている人は、早めに練習して克服したほうがいいですよ」(松山氏)。
◆つくったゲームの意見を聞く
学生時代、休み時間に絵を描いているところを友人にのぞき込まれ、慌てて手で隠す……というシーン。誰にでも経験がありそうだが、これでいいのはアマチュアのときだけだ、と松山氏。「プロになったら、ひとりでも多くの人に、ただでもいいから遊んでほしい、さわってほしい、見てほしい、と思うようになります」(松山氏)。
また松山氏は、完成品を見てもらって意見を聞く、というだけではなく、制作途中でも、見てもらえるのならばどんどん見てもらい、意見を聞くことに慣れておくべきだという。「開発チームでもよく起きることですが、開発も後半になって、いまさら直すのはたいへんだ、となってから指摘されるほど、お腹がちぎれる思いになることはないですから(苦笑)」(松山氏)。
◆アンテナをMAXに
松山氏は、漫画や小説、アニメ、映画など、誰にでも好みはあるが、好きなものだけを見て、遊んでいるだけでは、プロにはなれないと語る。好きなものも当然見るが、一方で“売れているもの”もしっかり見て、分析することも重要。それは、「“売れている”って、怖いくらい正しいんです。売れているものには秘密があるんです」(松山氏)ということ。だからサイバーコネクトツーでは、週刊少年ジャンプをはじめとする漫画雑誌から、特撮、アニメ、映画などのDVD/BDなど、あらゆるエンターテインメント作品を購入し、押さえているのだという。
それはたとえば、子ども向けの“コロコロコミック”などについても同様。毎号100万部を超える同誌は、小学生低学年~中学年から圧倒的指示を受けている。そこには、“子どもたちがおもしろいと思うものは何か”、“大人たちが何をプロデュースしようとしているのか”が満載されており、「コロコロを読んでないのに、子どもに受けるものがわかるはずない」(松山氏)というわけだ。
“作りたい”ではなく、“作った”なら使ってもいいッ!
そして、ゲームクリエイターになるためにはどうすればいいのか? 結論としては、「“つくりたい”ではなく“つくる”、“やりたい”ではなく“やる!!”」となる。松山氏は、「つくりたい、やりたいはただの言い訳。作る。やる。それがクリエイターです」とまとめた。
具体的で示唆に富んだ講義のまとめが、一見すると、ある種の精神論的な結論になったようにも感じられるかもしれないが、やはり本当に自分に足りないもの、必要なものは、挑んでみてこそわかること。松山氏が語った数々のアドバイスも、日々本気の作品制作に邁進しているからこそ、生まれてきたものなのだろう。松山氏の言葉を道しるべに、作品作りに挑んだ学生たちが、優れたクリエイターへと成長することを期待したい。
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