ついに発売!デザイナーのお二人にインタビュー

 カプコンより2013年12月5日に発売された、ニンテンドー3DS用ソフト『ガイストクラッシャー』。本作のデザイナーを務める石原雄二氏、末次治樹氏に魅力を語っていただいた。

(※インタビュー内容は、2013年11月21日に収録したものです)

『ガイストクラッシャー』発売記念開発スタッフインタビュー第1弾! デザイナーの石原氏と末次氏に本作のデザイン面について聞いてきました_13
石原雄二氏(写真左)
末次治樹氏(写真右)

どのようにして始まったのか?

――まず最初に、『ガイストクラッシャー』という作品の全体的なコンセプトについてお聞かせください。
石原雄二氏(以下、石原) 前から“子供向けの作品を作りたい”という思いがあって、いろいろ案を出していたんです。そんな時に社内で「鎧を纏って少年たちが闘うバトルものをやろう」という話になって……。当時、そういった作品が他になかったので、今ならいけるんじゃないかと思ってスタートしました。

――大人数でのスタートだったんでしょうか?
末次治樹氏(以下末次) 最初の頃は……プロデューサー兼ディレクターの野中さんと、石原さんの2人で形にしようとしていましたね。

――ふ、2人ですか!?
石原 いやいや(笑)。さすがに他にも何人かいましたよ。
末次 そうでしたっけ(笑)。ですが、“核”になっていたのはその2人でしたね。企画立ち上げの時は、核になる少人数の人間が企画書を作ることが多いです。

――その核になる人が、石原さんと野中さんだったんですね。
石原 『ガイストクラッシャー』についてはそうですね。カプコンでは、やりたいことがある人間が仕事内容や肩書きに関係なく企画を出していいことになっているんです。

――お話を聞いている限りだと、オープンというか一風変わった環境ですね。
石原 超大作を作っているラインになると、また違うと思いますけどね(笑)。

――『ガイストクラッシャー』に関わることになって、一番最初に作ったデザインはどういったものだったのでしょうか?
石原 まだ主人公・白銀レッカのデザインができあがっていない時に作った鎧がこれですね。ゴーストというか、鎧が装着している人間の肩や腕などを掴んでいるようなイメージです。

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▲石原氏が最初にデザインした鎧。

――この鎧に意思がある、ということでしょうか?
石原 そうですね。人間に覆いかぶさるようにして、操る鎧というのはどうかな、と思って描いてみました。

――この鎧はどうしてお蔵入りに?
石原 子どもがメインターゲットの作品なのに、奇をてらいすぎたのが原因ですね。「鎧が人間を操っているんだよ」という説明がないとわからない(笑)。なので、もっとわかりやすくするために虫や狼をモチーフにした鎧も作ったりしました。

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石原 見ていただくと分かると思うのですが、最初は実在の動物がメインだったんです。とにかく“数”が欲しいと言われたのでたくさん作ってみたんですが、「ちょっと迫力が足らないな……」と。それで、“ガルーダ”とか“ヤマタノオロチ”といった“神獣”に近いものをメインにデザインしていくことになりました。

――“鎧が武器になる”というギミックも『ガイストクラッシャー』の大きな特徴だと思うのですが、“鎧”と“武器”のどちらからデザインされるのでしょうか?
末次 武器っていくつか種類がありますよね、“槍”とか“銃”とか。そういう大まかな形状が先にあって、「このパーツはここで……」といった感じで進むことが多いです。
石原 ただ、“鎧のかっこよさ”を一番重視しているので、その分のしわ寄せが武器にいってしまうこともあります(笑)。

――キャラクターの設定もデザイナーの方が?
石原 『ガイストクラッシャー』については、基本的にはディレクターの作った設定を元にしてデザインを依頼されるんですが……。桜さんごっていう女の子の場合は、最初は僕が“ヒーローが守る町の弁当屋の娘”として提案したキャラクターなんです。そこから「レッカの家を弁当屋にしようか」といった話に派生していって……。

――そのエピソードから“しろめし屋”が誕生したんですね。
末次 ポンっと出た話から作られる設定もいっぱいありますよ。もちろん採用されない話がほとんどですが(笑)。
石原 基本的には、言ってもスルーされますからね。「ふーん……ところで」みたいな(笑)。

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――『ガイストクラッシャー』以外の作品でも、そういった作り方をされることが多いのでしょうか?
末次 最初はとにかくアイデアをいっぱい出しますけど、通るのはちょっとだけです。でも、後になって思い返してみると、「コレ通らなくてよかったな……」みたいな事がいっぱいあります(笑)。そのときは自分では「ウヒョーこれカッチョエエー!」と思って描いているわけですが、他の人が見ると「イヤイヤ」って(笑)。

――第三者の目線が必要だと。
末次 そうですね、煮詰まっている時は特にそう思います。

――ガイストのデザインで、大変だったところはありますか?
末次 まず、100種類という壁が大きかったです(笑)。今回、自分ではあまりデザイン作業をせず、ほぼ外部デザイナーの方の監修作業をやったのですが、それぞれに明確なコンセプトを持たせるのも難しい。「コイツは強いやつです」って説明されても、当然他にも強いやつはいっぱいいたり(笑)。

――男の子がメインターゲットになると思うのですが、デザインにおいてそのことも意識していたのでしょうか?
末次 子どもたちに、どうやって高揚感を与えるか……というのは考えて作っていましたね。少年向けらしい“アツくなるもの”を作るのに大事なものは何か?って。例えばこれなんかは、外部の方にデザインしてもらったものを利用して作った指針の一つなんですけど……。

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――金属生命体を意識するって書いてありますね。
末次 ガイストはロボットではなく生きているので、メカっぽさが前面に出てしまうと“魂”を持っている感じが出ないんです。「生きてる感」と僕らは言いますが。

――誰かがパイロットとして搭乗していそうなものではダメ?
末次 そう、そうです。なので、ガイストには“怪獣”のような雰囲気を持たせようとしました。“金属製の怪獣”って格好いいよね!と思って。

――キャラクターやガイストのデザインについて、特別なオーダーはあったのでしょうか?
石原 まず言われたのは“萌えすぎないこと”です(笑)。今流行のキラキラしたアニメ絵ではなく、もっとストレートに、元気で力強い感じで! という事を言われましたね。あと、これはオーダーではなく僕の考えですが、子どもに向けた作品のキャラクターは“似顔絵を描きやすい”ように作る、ということを常に頭に置いています。
末次 ガイスト(エクストリーム)については、先程も言った「生きてる感」ですが、メイルフォームは格闘戦用なので、「殴るのを意識してあまり強そう過ぎるパーツは拳につけない」とか。例外はありますけど、そのへんはキッチリしています。全体的なことでは、「ウェポンフォームは武器が主役なので、強いパーツは武器に行って、鎧のほうはちょっと弱そうな感じに」という感じに。
石原 一番最初にフレイム・フェンリルをデザインしたんですけど、その時点で玩具になることは決定していたので、最初は玩具化しやすい変形にできたらいいなとも考えて進めていました。ただ、100種類はやっぱり大変(笑)。

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――玩具化のことも考えて100種類……大変ですね。
末次 カプコンで“いいデザインか悪いデザインか”を判断する目安としてよく言われるのが、「それ玩具になった時に自分で欲しいか?」なんです。完成度が低いと「これは棚に戻すよな……」と思うし、完成度が高いやつは「これは欲しいな!」と思いますよね。
石原 “ガチャガチャで引き当てた時に嬉しいか”っていうのは、デザイン中によく考えます。自分が子どものころに触れた、心をアツくしてくれたものに対する感情や感覚を、今の子どもたちに伝えられたら嬉しいですね。
末次 “現れたときの嬉しさ”っていうのは大事ですよね。玩具じゃなくてゲーム内のキャラクターでも、そこにいるだけで嬉しいやつっているじゃないですか。そういう存在を生み出せるように意識はしています。『ガイストクラッシャー』で遊んでくれた子どもたちが、大人になった時に「アレ好きだったんだよなー。カッコよかったよねー」っていってくれたらいいなぁ、と思います。

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全部で何種類……?

――先ほども話題に出ましたが、種類がとても多いですよね。一口にガイストギアといっても、エクストリームとメイルフォームとウェポンフォームと武器……となると100種類ではとうてい収まらないのでは?
末次 ですので実質400種類なんです(笑)。中には兄弟のような関係性のガイストもいますが、武器だったり細かい部分など結構違います。属性違いのガイストもいるので、それも含めたら200種類を超えます。スタートした段階で「100種類は完全に別デザインで」という約束だったのですが、正直かなり無茶だったので、一度「70に減らしましょうよ」って言いました(笑)。でも、今思い返すと100種類っていう数字のインパクトは大きいと思うので、よかったなと……70と100じゃ全然違いますね。

――これだけの数をデザインするとなると、社外のデザイナーさんもたくさん関わっているのでしょうか?
末次 14…15人くらいかな?で、これだけいるとみなさん個性も癖もあるから、統一性を持たせつつバリエーションを増やすことが難しい。そのへんをまとめるのが大変でしたね。カッコいいものがあがってきても、ゲームに落とし込むときのことを考えて、泣く泣くボツになったものもあります。

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▲外部のデザイナーから上がってきたデザインの監修も、末次氏の重要な仕事だ。

――ゲームはもちろんですが、アニメ、マンガ、玩具っていうのも最初からやると決まっていたんですよね?
石原 まだ決まってはいなかったんですが、全てやる前提でスタートしました。

――それもデザインに影響してくるんでしょうか?
末次 そうですね、ただ、アニメを作って下さっている方には本当に申し訳ないんですけど、ゲームとアニメではデザインに必要な要素がやっぱり違うと思います。ゲームモデルは立体ですから、画面内でグリグリ動いた時に気持ちのいい立体と情報量を目指すんですが、アニメは絵で動かしてナンボじゃないですか。だから線を減らして動かしやすい形にすると思うんですが、そうするとシルエットが似てきますし、立体映えのするモデルにするのが難しい。普通はあまり立体映えを第一には考えないと思います。

――なるほど、しかし『ガイストクラッシャー』のアニメはそうしなかったと?
末次 立体モデルとしてカッコいいものにするという前提だったので、どちらかというとゲームのほうの事情を優先させていただきました。実は最初、石原さんがフレイム・フェンリルのデザインをされていた時には、アニメを意識して線を減らしてあったんです。でも、情報を減らしてカッコよくみせるのってすごく難しいんですよね……。外部のデザイナーの方は割とディティールを盛る傾向がありますし、調整の意味もあって、最終的にフェンリルも少し線が増えました。
石原 最後は末次さんにバトンタッチして仕上げていただきました。アニメになるときに、ちょっとは情報を減らすのかなと思ったんですが、全くそのまんまでびっくりしましたね。
末次 ただ、主役の5人のガイストギアに関しては、それでも意識してデザインの段階で情報を減らしてあります。ゲームのまんまのデザインでアニメでも動いていますので、アニメスタッフの皆さまには感謝ですし、プレイヤーの皆さんにも楽しんで頂ければと思います。

――アニメ、マンガの監修も石原さんと末次さんが?
末次 基本的にアニメや漫画などはプロデューサーが行っていますが、こちらに回って来たものについて見ています。アニメ、マンガにするにあたって「コレ欲しいから描いて」と言われたものを作ることもあります。ゲーム中に登場しないメカなんかもありますし。

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――「描いて」と言われてすぐに描けるものなのでしょうか?
末次 このあたりに関しては、長いこと現場で仕事してますから、色々経験値というか、昔取った杵柄というか、自分の中にデザインのストックがあるわけです。そこから出せる部類のものであれば、わりと時間はかかりませんよ。
石原 でも、僕らもこの仕事が長いので、油断すると懐かしい感じになっちゃうんです。
末次 そうそう。ガイストチームは割とおっさん率が高くて(笑)。もっと若い血があったほうがいいとは思っています。実は今回も、最初は僕ではなくてベテランの石原さんに新人をつけて、その人を育てよう。っていう話になっていたんですよ。ところが、タイミング的にちょうどいい人材が空いていなかったのと、その頃ちょうど僕が『モンスターハンター4』の武器デザインの仕事を終えて空いたので、僕が参加することになりました。今回本当に色々あったので、「これは自分がやることになってよかったな」とは思います。経験の浅い若い人がやっていたらパニックになっていたでしょう(笑)。
石原 本当に末次さんで良かったと思います。あとは、アニメやマンガになるというのもわかっていたので、その人たちを信じよう、と。

――“若さ”はそっちで出してくれ、ということですね(笑)。

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――最後に、お二人のお気に入りのキャラクターとガイストを、その理由と一緒に教えてください。
石原 好きなキャラクターは、やっぱり主人公・白銀レッカですね。記憶が飛ぶくらいたくさん描きましたし(笑)。ストレートにカッコよくて、好きになれる。性格も合わせて好感もてる主人公って、意外とめずらしいと思います。ガイストについては、やっぱりフレイム・フェンリルですね。『ガイストクラッシャー』の根源と言っても過言ではないガイストです。
末次 いきなりガイストについて語らせてもらいますが(笑)、メイルフォームではウィンド・ガルーダが好きです。ゴールデンでカッコいいなーと。あと個人的にすごく好きなのがハングオン・ケートス。武器になった時の形状がバイクなんですが……。

――バイク!?
末次 まあまあ(笑)。それで、最初は前方に集まった排気口から弾を発射して戦う銃だったんですが、何を血迷ったかコイツにだけ“乗って相手に突撃する”という固有の攻撃モーションがついてて(笑)、見たときはデザイナーみんな大喜びでした。そういう驚きの要素もいくつか盛り込まれているので、それも含めて『ガイストクラッシャー』を楽しんでほしいです。

――本日はありがとうございました!

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▲石原氏お気に入りの主人公・レッカ。瞳には並々ならぬこだわりがあるようだ。