海外で数々の賞を受賞したホラーアドベンチャーゲームがここに!
本作『ウォーキング・デッド』は、世界的に人気の同名アメリカン・コミックを原作とするホラーアドベンチャーゲーム。海外ドラマ版でタイトルを耳にしたことがある方もいるかもしれない。作品の舞台は、多くの人間が“ウォーカー”と呼ばれるゾンビと化し、数少ない生存者が過酷な生活を強いられる世紀末的な世界。原作コミックやテレビドラマ版と異なるオリジナルの主人公、リー・エヴェレットと、偶然に出会って行動をともにするようになった少女クレメンタインを中心に、波乱に満ちたストーリーが展開する。
あまりにもリアルすぎるキャラクター描写
画面写真を見てわかるとおり、本作のグラフィックはアニメテイストなので、プレイする前は“気軽に遊べるゾンビゲーム”をなんとなくイメージしていた。しかし実際の内容は、ライトなテイストとはまったくの逆。生々しい人間関係や、衝撃的なストーリー展開、ウォーカーのグロテスクな描写など、重苦しいほど重厚なアドベンチャーゲームだと感じた。
ゲームプレイを始めてまず印象的だったのは、リアルな人物描写だ。たとえば、エピソードの序盤に出会うケニー。彼は家族をこよなく愛するよき父親だが、他人と意見が衝突するとすぐにキレたり、家族や自分を守るために他人を見捨てるようなところがあり、仲間内でトラブルを起こしやすい。ただし、クセがあるのはケニーだけに限らない。責任感が強すぎるために高圧的な態度を取ってしまう元軍人の女性や、よく考えずに行動して仲間まで危険に巻き込んでしまう男子学生など、本作に登場するキャラクターは皆、単純に“善人/悪人”で割り切れない人間ばかりなのだ。完全無欠のヒーローやヒロインではない、現実のどこにでもいるような人々なので、期待以上の活躍を見せてくれることもあれば、感情まかせに思わぬ行動を取ってしまうこともある。そんな不安定さが、ストーリーにも予測不可能な展開をもたらして、作品世界にぐいぐい引き込まれてしまった。
つぎつぎに突きつけられる究極の選択
さまざまな感情のあいだで揺れ動くのは、周りのキャラクターだけではない。プレイヤー自身も難しい選択を迫られて、頭を悩ませることになる。いわゆる善人プレイや悪人プレイに徹することができたら、ある意味で気楽だが、そのような単純な選択肢は用意されていないのが、『ウォーキング・デッド』の“らしい”ところ。“ふたりの仲間が同時に襲われたとき、どちらをさきに助けるか?”、“言い争う仲間のどちらに味方するか?”、“時間稼ぎのために、襲われている生存者を見殺しにするか?”などと、プレイヤーの価値観を問われる場面につぎつぎと出くわす。しかも、よかれと思って選んだ行動でも、だれかに恨まれてしまったり、仲間を危険に晒してしまったりすることがあるのだ。選んだ行動は人間関係に影響を与えるため、思わぬ人物が手助けしてくれたり、逆に仲間から突き放されることも……。また、場合によっては登場人物の組み合わせまで変わってしまう。ストーリーは基本的に一本道だが、プレイヤーの選択によって展開がかなり変化するので、一度クリアーしても「あのとき、違う選択をしていたらどうなったんだろう?」と気になって、くり返し遊べた。
ゾンビがはびこる世界の絶望感を味わうゲーム
『ウォーキング・デッド』は、ゾンビをバッタバッタと倒しまくって爽快感を味わうタイプのゲームではなく、ウォーカーがはびこる荒廃した世界で、濃密なストーリーを体験できるのが特長。ネタバレになるのでくわしく書けないが、「え、このキャラクターが別れちゃうの!?」と驚かされたり、「いちばん来てほしくないときにウォーカーが来たーっ!」とハラハラさせられたり、画面を見ているだけでも「痛ーっ!」と思わず顔をそむけたくなったりして、プレイヤーの感情を揺さぶる見せ場がつぎつぎに押し寄せてくる。胸を締めつけられる切ないシーンもあるので、涙腺のゆるい方はひとりでプレイするのがおすすめ。「ゾンビが出てくるゲームで、泣くの?」を不思議に思う方がいるかもしれないが、実際にプレイしたら納得してもらえるはずだ。ゾンビゲームが好きな人だけでなく、ゲームのストーリー性を重視する人も十二分に楽しめるだろう。
(文・ライター/ムライサトシ)
ウォーキング・デッド
メーカー | サイバーフロント |
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対応機種 | PS3プレイステーション3 / PCWindows |
発売日 | 2013年12月05日 |
価格 | 6279円[税込] |
ジャンル | アドベンチャー |