このイベントのためにアレンジした楽曲も披露

 2013年11月16日(土)、ポケモンセンターヨコハマにて、ゲームフリーク・ディレクターの増田順一氏と、サウンドディレクターの景山将太氏によるトークイベント、“『ポケットモンスター X・Y』ファンミーティング in ポケモンセンターヨコハマ”が開催された。今回のメインテーマは“音楽”。会場にはシンセサイザーも用意され、ニンテンドー3DSソフト『ポケットモンスター X・Y』を彩るサウンドや、『ポケットモンスター 赤・緑』から続く音楽のアレンジ、さらに11月13日に発売されたばかりのサウンドトラック『ニンテンドー3DS ポケモンX・Y スーパーミュージックコレクション』の話題などが語られた。同催しは、当日、3回行われたが、ここでは最後の回となる3回めの模様をリポートしよう。

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▲午前10時30分に抽選券が配布され、運がよかった計150名(各回50名)がファンミーティングに参加できた。
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▲熱心なファンが会場に駆け付けた
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増田順一氏(ゲームフリーク・ディレクター)
『ポケットモンスター X・Y』ディレクター
株式会社ゲームフリーク創立メンバーの一員として、これまでの『ポケットモンスター』シリーズ全作品の開発に携わってきた。職務内容はディレクションを中心に、ゲームデザイン、作曲、シナリオ創作など、多岐に渡る。
景山将太氏(ゲームフリーク・サウンドディレクター)
『ポケットモンスター X・Y』サウンドディレクター
2007年、株式会社ゲームフリークに入社し、『ポケットモンスター ハートゴールド・ソウルシルバー』以降、ゲーム内楽曲の作・編曲を主に担当。『ポケットモンスター X・Y』では、ゲーム内すべての音に関するディレクション、およびサウンドチームの統括を行った。

 トークショウは、掲げられたテーマに沿って行われ、まずは『ポケットモンスター X・Y』発売から1ヵ月経った心境やフェアリータイプが新たに加わったことの経緯などが明かされた。フェアリータイプが加わったことに関しては、これまで開催されたゲーム大会を見てきた増田氏が、バトルのバランスが崩れかけてきていると感じ、そのバランスを取る意味でフェアリータイプの追加を決断したという。結果はどうだったと言うと「来年の日本大会、そして世界大会の戦いを見て、そこでゲームバランスがうまく取れていたかどうかがわかると思いますので、楽しみにしています」(増田氏)。

 続いては今回のメインと言える音楽の話題に。ご存知の読者も多いだろうが、増田氏はいまでこそディレクターだが、『ポケモン』シリーズ初期からサウンド面を担当していた、いわば『ポケモン』音楽の生みの親。その増田氏は『ポケモン』サウンドでこだわっている点として、ある程度のわかりやすさ、たとえば、ゲーム序盤のフィールドに出たときのウキウキ感から後半のドキドキ感が感じられるような作りを心がけたという。また、ポケモンが出てこない町では明るめの音楽、フィールドでは勇ましい音楽、などという違いもハッキリ感じられる音楽も意識したとのこと。一方の景山氏は、口ずさめるような覚えやすいメロディーがこだわったポイント。

 『ポケモン 赤・緑』は3音だけで作っていたという音楽だが、『ポケットモンスター X・Y』では、内部音源ではなく生音が使えるということで、楽曲もかなり豪華に進化している。サウンドをアレンジする際のこだわりとして景山氏は、メロディーをわかりやすく、ということに加え、「ゲームをプレイしているときに、どれだけ気持ちよくなれるか、バトルで盛り上があるかという点を大事にしています」と語った。

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▲会場に入りきれないファンも多数。

 また、熱心なファンからの質問として、物語冒頭で流れる『カロスのテーマ』とプラターヌ博士が登場するシーンで流れる『プラターヌ ポケモン研究所』が似ていることから、関連性があるのでは? という問いが景山氏にぶつけられた。景山氏は、「スルドイ!」と、その関係性を認め、同じ曲のアレンジになっていると説明。「拍子とキーが変わっています。そうした理由は、プラターヌ博士はカロス地方にいるということで、そのつながりを持たせたかったので、同じ曲のアレンジにしてみました」(景山氏)。

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▲設定資料も公開された。ゲーム制作の場合、音楽作りの前にゲーム画面が完成していることはあまりなく、どんな音楽にしたらいいかイメージを膨らませられる設定資料は、かなり重要だという。
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 イベント後半には、事前に募集された質問コーナーも行われた。まずは、どんなときに音楽を閃くのか、という質問について増田氏は「電車を待っているときや乗っているとき、アタマを洗っているとき」。景山氏も電車の乗っているときなど、ひとりでリラックスしているときや、ふとした瞬間に曲を思いつくことがあるいうのが、「締切に追われて「書かなきゃ!」とプレッシャーを感じながらピアノに向かって書くことが多いです(笑)」とのこと。また、ディレクターの立場としてゲームのアイデアも考える立場にある増田氏は、「ゲームのアイデアと曲は同時には考えられません。別々に考えています」と述べ、それぞれ個別に集中して考えていることを明かした。

 スランプの解消法については、「書けないときは書かない。とくにバトルの曲はテンションを高める曲が多いので、元気なときじゃないと書けないんです」(増田氏)。これには景山氏もうなずき「ゲームではいろいろな音楽を書く必要があって、曲を作るには、こちらもいろいろな気持ちにならなければいけない。なので書けないときは書かない。でも、締切はあるので、困るんですけど(笑)」(景山氏)。楽曲制作はメンタル面も重要なようだ。ただ、『ポケットモンスター X・Y』に関しては、順調に楽曲制作は進んだという。

 本作では、エンディング曲で歌詞がついているが、これについては増田氏は、『ポケットモンスター X・Y』では、伝えたいメッセージがいくつかあり、それらはストーリーなどでもいくつかは表現しているという。だが、「音楽を作っていた経験から、音楽に(メッセージを)乗せたことによって伝わる強さと魅力も知っています。ですから、音楽に歌詞をつけるということでも、メッセージを届けようと思いました」(増田氏)。ちなみに、海外版も、そのメッセージをその国に合った言葉で表現してもらっているという。

 最後は、景山氏がこのイベントのためにアレンジしたという楽曲が3曲披露され、盛況のままイベントは終了した。

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▲知らない者どうしが、この時代に、このゲームのファンであることで、イベントに集まって出会えた奇跡を記念し、写真撮影。