新たな『ストリートファイター』へ進化を遂げる!
カプコンの人気対戦格闘ゲーム『ストリートファイターIV』シリーズの最新作『ウルトラストリートファイターIV』。2014年4月の稼動に向けて(家庭用は2014年発売予定)、2013年11月22日~24日の3日間、東京、大阪、名古屋、仙台、福岡、札幌の全国6都市でアーケード版のロケテストがスタートする。そこで今回は、ロケテストで解禁となる新システムや新キャラクターを中心に、本作から新たにプロデューサーに就任した杉山氏と、アシスタントプロデューサーの綾野氏にお話しをうかがったぞ。
杉山晃一氏(左)
アシスタントプロデューサー
綾野智章氏(右)
――まずは、今回から杉山さんと綾野さんのふたり体制になったということで、それぞれの役割を教えていただけますか?
綾野智章氏(以下、綾野) 肩書きとしては杉山がプロデューサー、僕がアシスタントプロデューサーという形になります。
杉山晃一氏(以下、杉山) 「『ストリートファイター』のことをわかっているのか?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、私はこれまではずっと小野(※)の下で『ストリートファイター』に関わっていたのでご安心ください。
※カプコン 執行役員、小野義徳氏。
――なるほど。シリーズのことは知り尽くしているということですね。では、今回なぜ杉山さんと綾野さんのふたり体制になったのでしょうか?
杉山 『ストリートファイター』の開発は“ユーザーとともに作っていく”というコンセプトのもとに進められています。北米では、カプコンユニティーというサイトでユーザーの意見を集めているのですが、日本でもそういったことをもっとやっていかなければならないと考えたんです。そこで、ユーザーに認知されている存在である綾野は、もっとユーザーのコミュニティーを引っ張っていくべきだと。しかし、綾野がそれをやってしまうと、プロデュース業務がおろそかになってしまうと考え、今後は私が担当することになったんです。
――プロジェクトのプロデュース業務は杉山さんが、いままでよりももっとユーザーの前に出ていくのが綾野さんというわけですね。
杉山 そうですね。『ストリートファイター』の場合、北米への出張が多く日本を不在にしてしまうことも多いのですが、綾野とふたり体制になったことで仕事の流れもスムーズになると思います。
綾野 気持ち的には楽になったのですが、日本と北米で24時間動き続ける体制になったので身体的にはきつくなってますね(笑)。
――それでは、本題に入らせていただきます。ファミ通.comでのインタビュー掲載は今回が初めてということもありますので、まずは『ウルトラストリートファイターIV』(以下、『ウルIV』)のコンセプトを教えていただけますか?
綾野 まず、『ウルIV』を発売できるのは、ファンの皆さんからの強い要望があったおかげなんです。そのたくさんの要望の中で、新しい要素をたくさん入れてほしいという声が多かったので、『○○エディション』ではなく“新しい『ストリートファイター』”にしようと思い、『ウルトラ』というタイトルをつけました。ですから、『ウルIV』では新しいものを取り入れて“刷新”することをコンセプトにしています。
――その新しいもののひとつが、新たなバトルシステムやバランス調整だと思いますが、それらはどういった方向性のものなのでしょうか?
綾野 『AE』から『2012』になるときも、「新しいシステムなどを導入して大胆に変えてほしい」という意見があったのですが、そのときは“対戦ツールとして何年も遊べるものを作る”というコンセプトで制作を進めていたため、その選択肢は取りませんでした。今回の『ウルIV』は、さきほども述べた刷新感を大切にしたいと考えています。ですから、“既存キャラクターを使ったとしても、新しい感覚で遊べるように”という方向性で調整を行っています。
――それでは、新たに搭載されるシステム“ウルトラコンボダブル”がどのようなものなのか教えていただけますか?
綾野 ウルトラコンボダブルは、ふたつのウルトラコンボを同時に使いたいというファンの要望を反映したものです。具体的には、1ラウンド中にウルトラコンボIとウルトラコンボIIの両方を使えるというシステムです。ウルトラコンボセレクトは従来通り残してありますので、ウルトラコンボI、ウルトラコンボII、ウルトラコンボダブルの3パターンから選ぶ形になります。
――元のように複数のウルトラコンボを持っているキャラクターは……?
綾野 元は1流派にふたつのウルトラコンボがあるので、計4つのウルトラコンボを使えることになります。言うなれば……ウルトラコンボクアッドですかね?(笑)。
――それはすごい(笑)。でもその場合、ふたつ使用できるウルトラコンボダブルのほうが、ウルトラコンボIやIIを選ぶよりも有利に思えます。ウルトラコンボを個別に選んだときのメリットはあるのでしょうか?
杉山 おもに威力が違います。ウルトラコンボIやIIを選択したほうがウルトラコンボダブルよりも大きいダメージを奪えます。あくまで開発段階の数値ですが、ウルトラコンボIやIIを選んだ場合を基本にすると、ウルトラコンボダブルをセレクトした場合は60%程度の威力を想定しています。もちろん、一律に60%というわけではなく、ウルトラコンボごとに調整はするつもりです。
綾野 たとえば、ザンギエフで1発に懸けたい人であれば、威力の高いウルトラコンボIを選択して“アルティメットアトミックバスター”を狙っていただく。投げも決めたいけど、ジャンプで逃げる相手にも対応したいという人であれば、ウルトラコンボダブルを選択して両方に対応できるようにしたりと、自分のプレイスタイルに合わせて選んでもらいたいですね。
――ザンギエフを始めとする“投げキャラ”が、両方のウルトラコンボを使えたらすごく強そうですね(笑)。ただ、60%の威力ということで、ウルトラコンボダブルにするか、個別のウルトラコンボにするかで意見がわかれそう。
綾野 ウルトラコンボセレクトを拡張したというイメージですので、そこはプレイスタイルによってさまざまな意見があったほうがおもしろいのかと。ユーザーの皆さんでディスカッションして盛り上がってほしいですね。
――よりプレイヤーの個性が出せるようになればいいですね。ちなみにウルトラコンボは、ウルトラコンボダブルが搭載されるだけではなく、性能自体も『AE』から調整されるのでしょうか?
綾野 もちろんです。現在も日々更新がかかるほどに調整中です。たとえば、まことの“暴れ土佐波砕き”は、無敵で回避するためだけに使われがちなので、テコ入れできればと。
――個人的には、『ストIV』のときのようにメチャメチャ減るようにしてほしいですね。最近のウルトラコンボはあまり減らなくなってきたので(笑)。
綾野 そうですね。スーパーコンボより上のウルトラですからね。ウルトラコンボIやIIのメリットを出すためにそれもありえますよね。いちユーザーの意見として参考にしておきます。
――では、つぎにセービングアタックの進化系“レッドセービングアタック”はどのようなシステムなのでしょうか?
綾野 性能のお話をする前に、じつは裏話があるんですよ。『スパIV AE』のときに、ユンとヤンが追加されるという情報といっしょに、“多段セービングがあるらしい”という噂もネット上で広まっていたんです。そのときのコミュニティーの反応が「メッチャおもしろそう!」とポジティブな意見が多かったんですよね。それで今回セービングアタックも拡張したいと考えていたので、そんなに話題になるのであれば実現してしまおうと。それで開発に提案して、上がってきたものがレッドセービングアタックなんです。
――ほほう。そんな裏話があったんですね。ロケテストバージョンではどのような仕様になっているんですか?
綾野 カンタンに言ってしまうと、“多段技をセービングできる”仕様です。何発まで耐えられるようにするかという部分も含めて調整中です。現状では2ケタヒットまではがんばれますよ。
――2ケタですか!?
綾野 現状では2ケタです。ただ、発動には“EXゲージを2ブロック消費”しますからね。そのくらい耐えられてもいいのかなと。もちろんこれは、ロケテストバージョンでの調整です。製品版でその通り実装できるかは、皆さんのご意見で決めたいと思っています。
――ゲージを消費するんですね。通常のセービングアタックと同じで、溜める時間に応じてレベルが1から3に変化するのでしょうか?
綾野 ロケテストバージョンでは、通常のセービングアタックと同様、溜める時間によってレベルが1から3へと変化します。セービングの効果も同じモノです。ただし、通常のレッドセービングに対して、通常技や必殺技にキャンセルをかけて使う“EXレッドセービングアタック”の場合はこれの限りではないんですよ。EXレッドセービングの場合、たとえレベル1でも“膝崩れ”を発生させるという性能になっています。たとえば、リュウの場合“強パンチ→EXレッドセービングアタック(膝崩れ)→滅・波動拳”なんてこともできます。
――それはコンボが劇的に変わるキャラクターも多そうですね。これまではセービングアタック自体は当てずにキャンセルしてウルトラコンボにつなげていましたが、レッドセービングアタックをコンボに組み込むことも増えそうですね。“タメ必殺技”を持つキャラクターは“セビキャン”してもメリットが薄かったですが、『ウルIV』では変わるかもしれませんね。
綾野 でしょう! ガイルやブランカ、ベガなどのいわゆる“タメキャラ”は今回かなり意識していますよ。これまではタメキャラに不利なゲーム性だと言われることもありましたから、そういった意見も拾っていこうと思っています。
――ちなみにコマンドはどのような形に?
綾野 これもあくまでロケテストバージョンの仕様ですが、“中パンチ+中キックとどれかひとつのボタンを同時押し”すると出せます。たとえば、中パンチ+中キック+強パンチとかですね。さまざまな複合入力のテクニックを考慮してこの形になりました。
――これまでユーザーが編み出してきたテクニックが使えなくなってしまってはつまらないですからね。ちなみに、ユーザーのあいだでは、すでに“赤セビ”と呼ばれているようですが、愛称はこれでいいのでしょうか?
杉山 先日WEBで公開した際に、ツイッターのリアルタイム検索のランキングに“赤セビ”と入るくらい反響がありましたから、愛称は“赤セビ”でいいと思います。
――なるほど、ではつぎにディレイスタンディングの詳細な仕様を教えてください。
杉山 現状の仕様では単純に“起き上がるのが遅くなります”。コンセプトとしては、“ガード不能な起き攻め”(相手が起き上がるタイミングで、ガードできない攻撃を重ねる戦法)の対策です。強制的にダウンさせられる技を当てたあとの攻めが強すぎると思いますので。
――ディレイスタンディングを行った場合の視覚的な効果はあるのでしょうか?
杉山 それは現在検討中です。ロケテストのバージョンでは視覚的な効果はありません。ディレイスタンディングが相手にバレたら元も子もありませんからね。ただ、起き上がる側がディレイスタンディングに成功したのかまったくわからないのもまずいとは思っています。
綾野 攻める側が見てから行動を変えられると意味がないですから。なんらかの視覚的な効果をつけるにしても、それを確認してから行動を変えても間に合わないようにしたいですね。
――防御側に赤セビとディレイスタンディングをしっかり使われると、回避手段が強過ぎてしまう気もするのですが、攻める側の対抗手段はあるのでしょうか?
綾野 『スパIV AE Ver.2012』までは起き攻めが強過ぎた印象があります。ですから、赤セビとディレイスタンディングの追加だけで攻める意味がないという風にはならないと考えています。赤セビも確かに強いですが、セービングアタックと同じで投げには弱いですし、ゲージのコストが高く乱発できませんから。
――なるほど。攻める側が強過ぎたので、防御側の選択肢を増やして回避のチャンスを作ったということですね。
綾野 そういうことです。ただ、我々も何百人のスタッフでテストをしているわけではありませんので、開発が気づかない部分もあるかと思います。ですから、ロケテストではこれらの新システムがどのように使われるかを見たいんです。ユーザーの皆さんにはぜひロケテストに参加していただき、ご意見を寄せてほしいですね。
杉山 生温かい尖った意見は綾野のほうにお願いします(笑)。
新キャラクターは『ストクロ』とはまったくの別物に!
――ロケテストの話題が出たところで、今回はヒューゴー、エレナ、ポイズン、ロレントという4人の新キャラクターが使用できるそうですね。これら新キャラクターのアピールポイントはありますか?
綾野 4キャラクターとも『ストリートファイター X 鉄拳』(以下『ストクロ』)に登場していたので「そのまま持ってきたんじゃないか?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、まったくそんなことはありません。別キャラクターというほどに調整されていますので、ぜひロケテストで確かめてほしいですね。
杉山 じつは、新キャラクターの調整でいちばん悩んでいるのがヒューゴーなんです。『ストIII』のブロッキングありきのキャラクターなので、どのように『ストIV』ライクに落とし込むかというのが難しいですね。いまはすごく強かったり、弱くなったりと、日々更新がかかっている状態です。ここはロケテストでプレイされたユーザーさんの意見を取り入れていきたいと考えています。
――『ストIII』はスーパーアーツが3つでしたが、ウルトラコンボの配分はどのようになっているのでしょうか?
綾野 ヒューゴーとエレナは『ストIII』のスーパーアーツをウルトラコンボとスーパーコンボに割り振っています。なくなっているということはありませんのでご安心ください。ロレントもこれまでのシリーズで使っていた技をウルトラコンボとスーパーコンボに割り振っています。
――『ストクロ』から登場したポイズンのウルトラコンボは?
綾野 ひとつは『ストクロ』のスーパーアーツを持ってきています。残りは、知ってる人が見れば「あー!」という技がウルトラコンボになっていますよ。
――え、もしかして『ファイナルファイト』ネタですか!?
綾野 『リベンジ』的な……。
――それマニアック過ぎですね(笑)。
綾野 家庭用はサターン版がありますのでそちらで予想してもらえれば(笑)。
――『ストIV』は通常技を使った攻防が重要になると思いますが、通常技も『ストIV』ライクに調整してあるのでしょうか?
綾野 判定などはかなりいじってありますので、まったくの別物になっていますよ。じつは『ストクロ』のほうが判定は大胆だったので、そこは『ストIV』ライクにシビアなものになっています。通常技といえば、ロレントの調整に苦労しています。なんで通常技が多段ヒットするものばかりなんでしょうね(笑)。
――ではつぎに、旧キャラクターに新技が追加されるのでしょうか?
綾野 今回のロケテストは、新キャラクターと新システムの調整を主としていますので、まずはそちらを楽しんでみてください。もちろん、通常技の判定の調整などは施してあります。これまでのバージョンアップでは技の発生スピードや判定の大きさを変えるものが主でしたが、今回はダルシムの中キックが2ヒットするようになるなど、技の性質を大きく変えています。もっと攻めて戦ってほしいので、攻撃的な調整にしてあります。ただユーザーの皆さんが新技を使いたいということは、よ~くわかっています。
――そういった調整箇所をロケテスト前に公式ブログなどで発表することはないのでしょうか? ロケテストでのプレイは期間もありますし、何も情報がないと自分のキャラクターを試すだけで新システムを試すところまでいかなそうですが……。
綾野 確かにそうですよね。WEBに公開するのは難しいかもしれないので、会場限定で公開するなど、前向きに検討させていただきます。
――ユーザーの皆さんも知りたいところだと思いますので、ぜひお願いします。ちなみに、今回のロケテストでネシカカードは使えるんですか?
綾野 今回はまだ使えません。戦績の引き継ぎなどについても現状では何も言えませんが、ユーザーの不利益にならないように取り扱っていきたいと思います。ネシカの詳細については、もうしばらくお待ちください。
――では、現在の開発状況を教えていただけますか?
綾野 現状は65%です。ロケテストでとくにご意見がなければ100%になります(笑)。
杉山 ユーザーのご意見を取り入れるという意味で、残り35%を残しているということです。開発としてユーザーといっしょにやっていこうと。
――新システムも発表されてロケテストも行われれば、ユーザーも『ウルIV』の方向性が見えてくるでしょうね。そうなると稼動時期が気になるのですが……?
杉山 アーケード版は4月稼動予定です。日本だけではなく北米も含めて、社内でディスカッションを重ねて相当悩みましたので、やっとここまで来たという想いがあります。
――では最後にファンへのメッセージをお願いします。
杉山 今回からプロデューサーになったということで、「こいつわかってるのか?」と言われるかもしれませんが、私も『ストII』時代からずっとゲームセンターに通っていましたので、『ストリートファイター』に対するパッションは皆さんに負けないくらいあります。また、私は、バランスよくみんなの意見を取り入れていきたいと考えています。もしかしたら前作と変わっていない部分もあるじゃないかと、不満を持つ方もいるかもしれません。でもそれは、あくまでもみんなの意見を取り入れたうえのものなので、そこは理解していただければと。新キャラクターはロケテストで形になってはいますが、完成形とは言えない状態です。そこはユーザーの皆さんの意見を取り入れながらいっしょに育てて行きたいと考えています。ぜひロケテストでプレイして感想をお聞かせください。
綾野 まず第一に今回のロケテストにぜひ参加してほしいですね。『ストリートファイター』は日本だけではなく、世界のユーザーといっしょに作っていきたいと考えています。ぜひロケテストの感想をお聞かせください。日本のユーザーの大きな声を聞きたいです。僕も時間が許す限りロケテストの会場に足を運ぶつもりですので、よろしくお願いします。
■『ウルトラストリートファイターIV』(4月稼動予定)ロケテスト概要
実施日:2013年11月22日(金)~11月24日(日)
仕様:リンクマッチ、新キャラ4体(ポイズン・ロレント・エレナ・ヒューゴー)、新バトルシステム、バトルバランス調整済み
・実施店舗
東京 タイトーステーション新宿南口ゲームワールド8台
大阪 タイトーステーション大阪日本橋8台
名古屋 タイトーステーション大須4台
福岡 タイトーステーション福岡天神4台
仙台 タイトーステーション仙台クリスロード4台
札幌 タイトーステーション札幌狸小路4台
・ノベルティーの配布
オリジナルNESiCAステッカー(ポイズン/ヒューゴ、ロレント/エレナの2種)