『NINJA GAIDEN』シリーズの新たな挑戦

『YAIBA: NINJA GAIDEN Z』早矢仕洋介氏&稲船敬二氏インタビュー――強力タッグが生み出す新たなアクションゲームが目指すものとは?_14
コーエーテクモゲームス早矢仕洋介氏(右)
comcept稲船敬二氏(左)

 コーエーテクモゲームスのTeam NINJAと稲船敬二氏が率いるcomceptが共同開発する“ゾンビ×ニンジャ”アクションゲーム『YAIBA: NINJA GAIDEN Z』。己の目的遂行のために利用できるものは何でも利用する、ダーティーで残忍なサイボーグニンジャ、カミカゼ・ヤイバ。本作は、ゾンビがアウトブレイクした東欧の地で、彼が戦いをくり広げるアクションゲームだ。ここでは、本作を手がけるキーマンのふたり、コーエーテクモゲームス・Team NINJAの早矢仕洋介氏とcomceptの稲船敬二氏にお話を聞いた。

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企画立ち上げの経緯

――まず、おふたりはこの企画以前に面識・交流はあったのですか?
早矢仕 お見かけしたことはもちろんありましたが、面識はなかったです。
稲船 そうですね。Team NINJAは当然知っていまたし、板垣さんとは面識もありましたが、早矢仕さんとは今回が初めてでしたね。ですので、今回の企画も、まずは僕がコーエーテクモゲームスさんにプレゼンテーションするところからスタートしています。

――なるほど。企画は最初から『NINJA GAIDEN』をテーマにしたものだったのですか?
稲船 そうです。僕は、基本的にオリジナルタイトルを作りたくてcomceptを立ち上げて、そういう方向性でずっと活動してきましたが、唯一『NINJA GAIDEN』だけはやってみたいタイトルだったんです。すごく好きなんですよ。といってもじゃあ「続編を作りたい」ということではなく、『NINJA GAIDEN』の世界観で僕の見せたいことを形にしたのが 『YAIBA: NINJA GAIDEN Z』なんです。主人公のヤイバやその物語、ゾンビの存在というのは最初からコンセプトに盛り込んでいたものですね。

――現在の稲船さんならではの企画なんですね。
稲船 やっていることは昔から変わらないんですけどね(笑)。誰かに言われて作るのではなく、「こういうものを作りたい」と自分から提案していくほうが好きなんです。だからといって、やりたいことが全て通るかといえばもちろんそんなことはないですが。そういう面では、今回の企画はコンセプトのほとんどをコーエーテクモさんに採用していただけたので、有難かったですね。

――早矢仕さんは、この企画の話を聞いたとき、どう思われましたか?
早矢仕 じつは、我々も以前から“忍者xゾンビ”というのはアイデアとしては持っていたんです。ですが、形にできなかった。本格的にゾンビというものをゲームで扱った経験がありませんでしたからね(笑)。そうして、これまで手を付けることはしていなかったのですが、稲船さんからの提案がそこにピタっとはまったわけです。加えて、稲船さんから「このプロジェクトはTeam NINJAにしっかり見てもらいたい」というお話をいただいて、ご一緒することになったんです。

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――『NINJA GAIDEN』の名前が付いているとはいえ、新規IPであること、立ち上げの経緯、海外スタジオ制作など、チャレンジングなタイトルになりました。
早矢仕 今世代では新規IPに挑戦してこなかった。そこを何とかしたという気持ちはありました。ゲームが形になってきて手応えを感じていますし、ぜひいい形で完成させて、世に出していきたいです。新規IPというのは私自身、初めての経験で大変なことも多いですが、とても刺激的で充実した日々ですよ(笑)。

――いっしょに仕事をされてみていかがですか?
稲船 僕はやりやすいですね。自分をすごく尊重してもらえますし。それから、Team NINJAはアクションゲームというものについて一から話をする必要がないので(笑)、そこは楽をさせてもらっていますね。

――早矢仕さんはいかがですか?
早矢仕 これまで稲船さんの発言を拝見することはあっても、お話したことはなかったので、あまり他の人の言うことは聞かないで開発をされるタイプかなと思っていました(笑)。ですが、実際にご一緒させていただくとそんなことはなくて、しっかりこちらの意見を受け止めて、さらに稲船さん流にアレンジを加えてくれることも多いです。アイデアの出しがいがあります。

まったく新しい『NINJA GAIDEN』

――では、ゲーム部分についてお聞きしていきます。まず、改めてになりますが、ストーリーの概要について聞かせてください。
稲船 主人公は、一度リュウ・ハヤブサに敗れてサイボーグ化したヤイバという男。そのヤイバがハヤブサを追っていくというのが、物語の軸になる部分です。加えて、なぜサイボーグ化されたのか? 彼をサイボーグ化した人の思惑は? といった側面もありますよね。

――そこにゾンビの存在も絡んでくる?
稲船 そうなりますね。ゾンビの居る所になぜヤイバが来ていて、さらにどうしてそこにハヤブサが居るのか。ヤイバはそこにハヤブサが居ることをどうして知ったのか? これらの要素が絡み合って、ひとつのストーリーになっています。

――お話を聞く限り、ラスボスはハヤブサということになるのでしょうか?
早矢仕 そこは遊んでみてのお楽しみということで(笑)。詳しくはお話しできませんが、しっかりとした形でリュウ・ハヤブサが出て来ることは間違いないです。皆さんの期待を裏切らないものになっていると思いますよ。
稲船 これまでは存在しなかった、リュウ・ハヤブサの明確なライバルが主人公のヤイバである、という見方を持って楽しんでいただきたいですね。もしかしたら、つぎに繋がってくるかもしれませんし、それだけ個性と魅力のあるキャラクターに仕上がっている自信もあります。

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――これまで『NINJA GAIDEN』シリーズのビジュアルはリアル路線で進化してきたと思いますが、今回はガラリと変わってアメコミ風になっています。
稲船 アメコミ風のビジュアルで行くというのも早い段階で決まっていましたね。
早矢仕 とくに不安や迷いはなかったですね。『NINJA GAIDEN』の世界観・設定を使ってまったく新しいゲームを作る、というところからスタートしているものですから。ですので、例えば『NINJA GAIDEN』の戦闘システムを持ってこなければいけないとか、そういうことは最初から考えてもいなかったです。その意味で唯一こだわったところといえば、登場するキャラクターのイメージは『NINJA GAIDEN』に忠実に、新規キャラクターも世界観に合うものに、という部分だけですね。

――なるほど。せっかくのアメコミ風ですし、例えばコミック展開などの施作は?
早矢仕 じつは、北米では展開予定です(笑)。ヤイバがどういった人物なのか、というところをコミックで伝えようと思っています。

――なんと!(笑) 日本では実施しないのでしょうか?
早矢仕 日本ではアメコミとなるとなかなか難しい部分もありますので、何か別の形でお伝えする方法を考えています。

――気になるところとしては、キャラクターボイスもあります。日本版では字幕のみになるのでしょうか? それとも日本語ボイスが入るのでしょうか。
早矢仕 日本語ボイスは入ります。まさにいま声優さんのオーディションをしているところですので、発表を楽しみにお待ちください。もちろん、ゲームでは日本語ボイス、英語ボイス、字幕を切り換えてプレイすることができます。
稲船 僕はじつはこれまであまり日本語ボイスというものに縁がなかったんですよ(笑)。ですので、楽しみにしているところのひとつですね。

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――ゲームを少しプレイさせていただきましたが、ゲーム全体のスピード、アクションのスピードがかなり速いですよね。合わせてゾンビの動きも速いような。
稲船 まあ、忍者ですしね(笑)。それから、僕の作るゾンビには基本的なルールがあるんです。まず走ってはいけない、それから武器を持ってはいけない、考えてはいけない、ユーモアがある、といったような。ですが、『YAIBA: NINJA GAIDEN Z』では最初からそのルールを破ろうと考えていました。走ってもいいし、武器も使うし、頭を使った攻撃もしてくる。それを『YAIBA: NINJA GAIDEN Z』のゾンビの個性にしようと。ただし、ユーモアだけは絶対になくしてはダメ、ということも決めていました。やはり、ゾンビが真面目にやっていたらおもしろくないですから(笑)。

――ということはつまり、稲船さんが長年守ってきたゾンビルールを本作では初めて破ったと。
稲船 そうなりますね(笑)。このルールというのは『バイオハザード2』のときにジョージ・A・ロメロに会う機会があって、その時に彼から聞いた話がベースになっています。これまではそれを忠実に守ってきましたが、時代の流れもありますし、そもそもゲームとしてのおもしろさ、ゲームデザインに合うかどうかがまず考えるべきところですからね。ゾンビが主役で第一のテーマであるゲームならまた違ってきますが、本作は『NINJA GAIDEN』という大きな柱がありますから。いわゆる“らしさ”は、ユーモアの部分でしっかり見せていくつもりです。
早矢仕 ゾンビのユーモアは大事にしているところですね。これがないと、ただの敵になってしまう。となるとゾンビじゃなくていい、となってしまう(笑)。

――いわゆる雑魚ゾンビの出てくる数が多いのも驚きました。ある種『無双』シリーズを思わせるような。
早矢仕 意識していたわけではないのですが、ゾンビの数に関しては『無双』っぽいというのはよく言われますね(笑)。出現する数が多いほうが斬っていく、まとめて倒す爽快感がありますし、発想としては同じだと思います。

――アクション部分全体の仕上がりはいかがですか?
早矢仕 これまでに蓄積したアクションゲームのノウハウもありますし、おもしろいギミックも揃っています。仕上げはこれからというところですが、楽しんでいただける手ごたえは十分感じていますね。

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――キャンペーンモード以外のモードはあるのですか?
稲船&早矢仕 あります。

――まだ公開されていないものだと思いますが、どんなものが?
早矢仕 詳細は明かせませんが、かなりやり応えのあるものを用意しています。
稲船 長く何回も遊べるモードですよ(笑)。

――オンライン要素は絡んできますか?
稲船 んー、一部(笑)。オンライン協力モードといったものではないです。
早矢仕 このゲーム、この題材だからこそできるモードですね。いまはこれ以上は言えません(笑)。

――DLCの展開などは考えていらっしゃいますか?
早矢仕 いまのところはパッケージでしっかり遊べるものを作ろうと考えているので、単純な追加・拡張要素をDLCで、という予定はないですが、何か別のものやサービスは提供したいと思っています。

――では最後に、楽しみしているゲームファンにひとことお願いします。
早矢仕 はい。現在まさに開発が佳境で、東京ゲームショウにも日本語版が出展できなかったこと、なかなか情報をお伝えできていないことなど、大変申し訳なかったと思っています。今後はどんどん新情報を出していく予定ですし、何らかの形で皆さんに実際にゲームに触れていただく機会を設けることも考えています。
稲船 忍者、ゾンビ、ロボット、アメコミ、僕の好きなものを全部詰め込んだゲームになっています。もちろんただ美味しいものを並べただけ、というものではもちろんないです(笑)。きちんとバランスを考えて料理されています。稲船の集大成のようなゲームになっているので「遊んでみて文句言ってやる」というくらいの気持ちで、ぜひ触ってみてください(笑)。Team NINJAと僕たちの化学反応もいいほうに出ていると思いますので、そこも確認してみてください。

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