やっぱり日本の研究者ってオモシロイ!

 東京・日本科学未来館において、2013年10月24日、デジタルコンテンツエキスポ2013が開幕した。本イベントは、デジタルコンテンツ分野で活躍する研究者やクリエイター、企業関係者たちが参加し、最新技術の展示や公演などを行うもの。例年、ゲーム分野とも密接に関連する技術も含めて、多彩なデジタル技術が展示されているが、今回も非常にユニークな出展が多数見受けられた。ここでは、それらの中から、ゲーム分野での応用が期待できそうなユニークな出展を、ピックアップしてリポートしよう。

【こだわり物理エンジン】
◆東京大学大学院 情報工学系研究科 五十嵐研究室
 今回の出展の中で、もっともゲーム分野に近しい内容と思われるのが、こちらの研究。二次元では当たり前に表現できることでも、三次元では整合性がとれない表現というのは多い(たとえばスネ夫の髪型ってどうなってんだ? など)。この研究では、視点と物理演算対象の三次元的な位置関係に応じて物理演算の内容をコントロールできるようにすることで、二次元アニメ的表現を、三次元CG技術で再現することを可能にしている。
 会場では、実例として下の映像が上映されていた。

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 “アホ毛”がつねに同じ方向を向く、どこから見ても前髪で目が隠れない、などは、ゲーム開発では非常に実用性が高そう(“鉄壁のスカート”は、余計なことをしてくれるな、といったところだが……)。“アホ毛”の例の場合、3Dモデルの“アホ毛”部分を指定するだけで、“こだわり物理エンジン”が自動的に処理をして、カメラ位置に応じて適切な描画をしてくれるようになっているそうだ。

 なおこの“こだわり物理エンジン”のソースコードは MITライセンスの元で公開されており、商用利用も可能となっている。“こだわり物理エンジン”を活かした魅力的なコンテンツが生まれる日は遠くはない、かも?

※“こだわり物理エンジン”詳細は→【コチラ

【アクアトップディスプレイ】
◆電気通信大学 情報システム学 小池研究室
 水面をディスプレイとする、インタラクティブなシステム。白濁した水面をスクリーンとして、プロジェクタの映像を投影することで、水面に映った画像を鑑賞できる。さらに、深度カメラを使用して水面上に存在する身体を計測することで、水面をタッチパネルのように操作することも可能となっている。
 使用している機器は特別なものではなく、一般的なプロジェクターと、Kinectの組み合わせで実現可能とのこと。また水も、白濁させればオーケーなので、市販の入浴剤でまったく問題ない。
 それほど高価な機器が必要となるわけではないので、将来的な用途としては、もちろんホームユースも視野に入れているそうだ。確かにこんな楽しいお風呂なら、半身浴がはかどりそう。また、アミューズメント施設などで、大がかりなゲームとして作り上げることも想定しているとのことだった。

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▲水面下から指で突き刺す動作で映像(ウィンドウ)を選択し、移動させたりすることができる。
▲映像を手ですくって、そのまま移動させる、といったことも可能。
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▲Kinectとプロジェクター。
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▲こちらは、ほかの機器とも組み合わせた、簡易なゲームの実演。手に気(?)を集めて……
▲発射して……
▲命中すると光と水しぶきが上がる!

【でるキャラ】
◆東京大学 苗村研究室
 映像キャラクターを実空間に結像させる裸眼複合現実感(MR)インタフェース。“空中像ディスプレイ”で、空間内に空中像を表示させる……というのは、それほど目新しいものではないが、おもしろいのは、深度センサーと、プロジェクターを組み合わせているところだ。深度センサーは、空間内に配置されたブロックや手の位置、形を計測し、地形データを作り出すためのもの。この地形データを参照して、現実的におかしくない位置に空中像を表示させるとともに、プロジェクターが空中像の“影”を正しい位置に描き出す。これによって、非常に実在感のある映像を実現しているわけだ。

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▲ここでもKinectが!
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▲ブロックの上をピョンピョン跳ねるヒヨコのキャラクター。ブロックの配置を変えても、おかしな位置に表示されるようなことはない。適切な位置に描かれた影が、実在感を高めている点に注目。

 そのほかにも、好奇心を刺激するおもしろい展示が多数見られるデジタルコンテンツエキスポ。開催は2013年10月26日までで、イベントは入場無料(日本科学未来館への入館は有料)となっているので、ぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。ちなみに会場でアンケートに答えると、巷で話題の“Miku Miku Akushu”も体験できるそうですよ!

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▲慶応義塾大学 筧康明研究室の“dePENd”。机内部の磁石をXYステージとコンピュータで制御することで、ペンを磁石で引き付け、その動きを制御するシステム。コピーと異なり、実際に手でなぞるため、線をある程度アレンジしたりできるのが特徴。
▲“dePENd”は、誰かが描いている線を読み取り、それをリアルタイムで別の描き手がなぞる、といったことも可能。たとえば習字の先生と生徒が使ったり、アイドルがサインを描き、ファンが自分でサインをなぞる“バーチャルサイン会”的な利用法もできそう。
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▲パイオニア株式会社のホログラムプリンター。従来のホログラム作成に必要だった大がかりな設備が不要で、3次元形状データから簡単にホログラムを作成することができる。お値段は4ケタ万円に届くか届かないか、というレベルだそうで、意外にリーズナブル?
▲写真ではお伝えしにくいが、見た目のインパクト、おもしろさは抜群。現時点で商用利用はされていないが、近日、テストとして、病院の産婦人科で、胎児の3Dエコーデータから記念品としてホログラムを作成する、というサービスを実施する予定とのこと。
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▲東京大学石川奥研究室の“1msオートパン・チルト”。こちらも写真では非常にお伝えしにくいが、カメラを超高速制御することで、激しく動き回る物体を、あたかも止まっているかのように、画面中央に捉え続けるというもの。デモンストレーターの見事なヨーヨーパフォーマンスで上下左右に高速移動するヨーヨーが、ブレもなく、つねに画面の同じ位置に表示されている様子は、実際に目にするともの凄く不思議な感じだ。