''新コンテンツが追加される大型アップデート“本能寺の変”が始動!''
10月でサービス開始から1周年を迎える、カプコンのPC・スマートフォン向けオンラインゲーム『鬼武者Soul』。それと同時に実施される大型アップデート“本能寺の変”の詳細や今後の展開について、エグゼクティブプロデューサーの杉浦一徳氏、プロデューサーの津川宏史氏に話を伺った。
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『鬼武者Soul』エグゼクティブプロデューサー
杉浦一徳 氏
『鬼武者Soul』プロデューサー
津川宏史 氏
●大型アップデート“本能寺の変”について
――“本能寺の変”はサービス開始から1年目の節目のアップデートとなります。ユーザーの期待も非常に高いと思われますが、全体的に意識した点や目玉となる要素などを教えてください。
津川 新しいコンテンツとして、“装備”を盛り込みます。武器、防具、装飾品を兵法書のように武将にセットすることで、合戦などのPvPや、PvEコンテンツで特殊効果を発揮します。戦闘に関して、新しい楽しさや深みを提供できると思っています。
杉浦 目玉は、“織田信長”そのものだと思っています。何人ものイラストレーター様にキーになるイラストを描いていただきました。いくつかバリエーションがありまして、鬼物語ですとか巨大悪鬼羅刹ですとか、いろいろな形で登場します。
――装備のシステムをもっと詳しく教えていただけますか。
津川 武器、防具、装飾品を装備することでパラメータがアップし、さらに、特殊効果を持ったものもあります。武器でしたら攻撃力がアップするというように、それぞれで上がるパラメーターが異なります。
――装備できるのはひとつだけなのでしょうか。
津川 いまのところ、ひとりの武将につきひとつです。
――パラメーターが上がるうえに、特殊効果を持つ装備などもありますか。
津川 あります。武将が持つ技と近い効果を持ち、相乗効果を生むような形で調整中です。戦闘中に発動した場合は、発動したとわかるように演出を入れます。たとえば武将の技のように、合戦のみ、悪鬼羅刹のみ発動といったようなバリエーションも考えられますね。悪鬼羅刹専用の武器なども、考えてみたいです。
杉浦 ただ、巨大悪鬼羅刹戦は火力がすごいことになっていますので、ダメージの桁数は少し自重しようかなと。プログラマーに怒られました(笑)。
――兵法書との併用も可能でしょうか。
津川 できます。それも含めて、組み合わせを考える楽しみが出てくるかと思います。
――装備の入手方法は?
津川 各種イベントクエストや鬼くじなど、いろいろな入手方法を用意します。ここだけでしか手に入らない、ということにはしないつもりです。
杉浦 いきなり課金限定、ということもありません(笑)。
――装備システム導入の目的はどこにあるのでしょうか。
津川 お客様からのご意見の中に、サービス開始から1年が経過して、武将もある程度育てきってしまった、という内容が増えてきたんですね。育成に関する新しいシステムが必要なのではないかと、開発チームも考えていたので、それを解消して新しい育成の楽しみを提供する、というのが目的となります。
――装備の数はどのくらいあるのでしょうか。
津川 50種類以上は実装する予定です。
――手に入れた装備は、使い捨ての兵法書とは違い、使いまわしができるのでしょうか。
津川 使い捨てではないですね。いろいろな武将に使い回すことができます。また、装備は武将のように育てて、進化させることもできます。最初は特殊効果を持っていない装備でも、進化させてグレードを上げれば、特殊効果が発動するようになる装備もありますので、そこも楽しんでいただけるかと思います。
――装備の育成方法はどのような形になるのでしょうか。
津川 いまのところ武将と同じような方式です。武器を生贄にしてて、経験値を溜めてレベルを上げていきます。いまプレイされているお客様にわかりやすい方式がいいかと思いまして、この方式にしました。ですので、育てるにはそれなりの数が必要になります。
●鬼物語“本能寺の変”について
――鬼物語に“本能寺の変”が追加されますが、ひとつの物語としては、今回でひとつの区切りを迎えるという認識でよろしいでしょうか。
杉浦 そうなりますね。もともとサービス開始前から、1周年は“本能寺の変”と決めていたので、それに向けてストーリーを展開してきました。ひとつの節目にはなっていると思います。
――どういったストーリーになるのでしょうか。
杉浦 うーん、ネタバレになるので詳しくは言えませんが・・・名前の通り、信長とは対決することになります(笑)。まあ、読んでみてのお楽しみということにさせてください。史実の“本能寺の変”とは違う、新しい切り口になっているので、期待していただければと思います。
――ここでひと区切りとなると、気が早いですが、つぎの展開が気になるところでもあります。すでに構想は練られているのでしょうか。
津川 『鬼武者』シリーズで織田信長が出た後、『新鬼武者』で豊臣秀吉政権での話が進んでいたと思います。『鬼武者Soul』では、そのシリーズの世界観を踏襲しつつ、オリジナルストーリーを展開しているわけですが、今後もそういった過去の流れも踏まえながら、オリジナルのストーリーを展開していくことになるかと思います。
杉浦 まずは、“本能寺の変”から秀吉が台頭してくるまでのあいだを、新しい切り口で描いていくことになると思います。
●武将のグレード8開放について
――武将のグレード8が開放されますが、これによってゲームがどう変化するのでしょうか。
津川 グレード7開放のときとは違い、新たな技を開眼したり、イラストが新しくなるといったことはないのですが、これまでのグレード開放と同様に、パラメーターを上げられるようになります。また、今回、同時に実装する装備と関連があって、グレード8になると特定の装備を扱えるようになるといったメリットを用意しています。装備と武将のグレードの関係もわかりやすくしようと考えていまして、同じグレード以上のものを装備できるという仕組みになると思います。
――グレード8の装備を作るのは、どのくらい大変ですか?(笑)
津川 いますぐに作れる、というわけではないですね。武将もそうですけど、そこそこ大変かと思います(笑)。
●その他のリファイン項目について
――その他、リファインを予定しているところを教えてください。
津川 リファイン項目は多岐にわたります。ただ、装備の部分をしっかり作り込まなければいけないので、これを終えたあとに、どこまでほかの部分に手を回せるか、これからやってみないとわかりません。たとえば、お客様に要望をいただいているのは、いまは技継承や武将の進化に関することが多いですね。強い技になると継承確率がかなり低くなりますし、武将のグレードが上がっていくと進化の成功確率もかなり下がるので、これを緩和するアイテムを導入しました。ほかには、合戦で特別な敵が出てきたりですとか、いろいろと考えてはいますよ。
――グレード8が開放されることに合わせて、それまでの行程を多少緩和するということでしょうか。
津川 そうなりますね。また、悪鬼羅刹と大合戦に関しても、いろいろとリファインしたいところがあるのですが、こちらは12月を目標に進めていくことになる予定です。
●海外展開について
――5月から台湾でもサービスが開始されています。海外での展開に踏み切ったきっかけなどを教えてください。
杉浦 もともと、上司の小野(小野義徳氏)とブラウザゲームを作りたいという話をしたときに、海外でも展開したいということを言っていたんですね。韓国や台湾で行った『モンスターハンター フロンティア オンライン』のサービスの経験を活かして、どうしても海外で長く運営できるタイトルを橋頭堡的に築いていきたいという思いがありました。しかし、ものすごく期間や費用がかかるオンラインゲームを、そのために作るというのは初期リスクも高いですから、ある程度、開発費も抑えられてスピーディーに開発できるブラウザゲームなら適しているだろうと。『鬼武者Soul』は、最初から海外を視野に入れて作り始めていました。
――5月開始となったのは理由があるのでしょうか。
杉浦 それまで、台湾支社がなかったですからね。まず運営拠点をしっかり作りましょうということで、去年、現地のスタッフを募集して、まずは少数精鋭のカプコン台湾を作りました。そのときに私から、現地のスタッフも日本でのゲーム作りから関わってもらったほうがいいと思い、なるべく日本に長期滞在させてほしいという要請をしました。じつは、日本版の開発中から台湾のスタッフが手伝ってくれていたんです。8ヵ月程度いっしょに仕事をして、カプコン台湾の準備を始めるために、そのスタッフは現地へ戻りました。
これによって、台湾と日本の開発チームとのパイプもできましたし、設計思想なども理解してもらったと思うので、それをもとに、現地で運営するために必要なチームを作って、リリースしたという流れです。なるべく早くカプコン台湾という現地法人を作って、なるべく早くサービスできるようにと思って進めた結果が、たまたま5月だったということです。
――将来的にほかの地域での展開は考えていらっしゃいますか。
杉浦 当然やりたいとは思っています。おかげさまで、いろいろな企業様からオファーをいただいておりますので、さらにもう1ヵ所、年度内には始めたいなと思って進めています。ただ、いくら現地のスタッフを動員するといっても、日本の開発のサポートがゼロという形で進めるわけにはいきません。そうなると、いまの開発チームにその余裕があるかというところも考えないといけないので、それを見ながら判断しています。
――別の地域でサービスする場合でも、台湾で立ち上げたときのように、スタッフの交流を図ることになるのでしょうか。
杉浦 その地域やタイミングによると思いますね。地域によっては、そこのスタッフにお任せしたほうがいい場合もあるでしょうから。ただ、カプコン台湾が成功した大きな理由のひとつに、日本の開発とダイレクトにコミュニケーションが取れる関係にあったことも挙げられるので、それを考えるとケースバイケースかなと思います。ただ、少なくとも台湾は、これからも日本といっしょにやっていく、カプコン直営に近い運営になることは間違いないと思います。
――ほかのタイトルでも海外展開は考えていますか。
杉浦 どちらかというと、選ぶのは海外のユーザー様になりますから、ユーザー様の熱意が高ければ、海外展開を積極的に開発チームが支援していく、という形になります。海外でのサービスに関しては、『モンスターハンター フロンティアG』も再スタートしますし、カプコンのさまざまなオンラインゲームをアジアや北米、欧州で積極的に展開していく予定です。
●マルチデバイス展開について
――スマートフォン版に続き、これからタブレットでも遊べるようになりますが、まず、スマートフォン版を遊んでいるユーザーの反応をお聞かせ願えますか。
杉浦 まず申し訳ないと思っているのが、iPhone4がサポート外になっていることです。iPhone4S以降からのサポートになっているんですね。iPhone4でプレイしているお客様からは、「頻繁に落ちる」ということを言われていまして、「サポート外なんだよな・・・」と少し困ってはいるんです。もとがPC向けのオンラインゲームとはいえ、、かなりのスペックを端末に要求してしまっているので、断腸の思いでiPhone4S以降のサポートという判断になってしまいました。
実際に遊んでいただいているお客様の評価は、プレイデータを分析するとかなり上々ですね。じつは、まだ宣伝をほとんどしていないのですが、多くのお客様にプレイしていただいています。まだ不具合が出てしまうこともありますが、そのあたりが解決するのを待ってから、積極的に宣伝してお客様に広めていきたいです。スマートフォンもスペックがどんどんよくなっていますしね。
津川 PC版と合わせて遊んでいただいているお客様は、外出先でも編成を考えることができてありがたい、といった評価をいただいています。スマートフォン版のみのお客様からは、アプリでここまですごいボリュームのゲームがほかにはないので、逆に「情報が多すぎる」、「わかりにくい」といった声もいただいているため、ここは改善していく必要があると感じています。
――やはり併用しているユーザーが多いですか。
杉浦 多いですね。お昼の時間帯の接続人数がかなり上がりました。
――タブレット版の進捗状況はいかがでしょうか。
津川 全力で開発中です。順調にいけば10月24日の1周年のときにリリースできるかなと。インターフェースなどが一部、スマートフォン版とは違いますが、ほとんど同じような形で遊べるかと思います。
――それにあわせて宣伝をしたりといったことも考えているのでしょうか。
津川 さきほど杉浦も申し上げたとおり、年内のどこかでお客様にしっかり広めたいという考えもあります。スマートフォン版とタブレット版をしっかりリリースして、どこか時期を見極めてPRしていきたいなと。あとは、これはスマートフォン版も同様ですが、お昼の時間帯だけでも楽しんでいただけるように、時間限定のクエストを配信したりですとか、外出先でも遊びたいなと思っていただけるような施策をやっていきたいですね。
――コンシューマー版も控えていますよね。
杉浦 お待たせしてしまい申し訳ないのですが、来年の1~2月あたりのサービスを想定しています。ハードのメモリがやはりネックとなっていて、つねにそれを解決するために試行錯誤している感じですね。ゲームを起動させて、プレイすること自体はできるのですが、やはり将来的な拡張性を持たせておかないと、アップデートがうまく行えませんし、そこで手を抜いてしまうと、快適さがなくってしまいますから。ただ、同じサーバーにあらゆるハードからアクセスできるという、当初からの思想は貫いていきます。
●いまの『鬼武者Soul』の特徴、魅力
――『鬼武者Soul』はサーバーがひとつで、ゲーム進行がリセットされることもありません。新規のユーザーにとっては、ベテランのプレイヤーが多い、ややハードルが高いゲームに思えてしまう面もあるかと思います。
津川 ゲームの要素は、当初からなんら変わっていなくて、内政部分で城下町を自由にカスタマイズして、鬼物語でストーリーを読みつつ、武将を入手して育成し、部隊を編成して、合戦や大きなイベントに参加していくという大きな循環があります。それぞれクオリティーが高いと自負していますし、チュートリアルでも誘導していますけど、その順番にプレイしていただければ、スムーズにゲームへ入っていけるかと思います。
新規ユーザーとヘビーユーザーの差というのは、どうしても生まれてしまうものですが、我々もそこを軽視していることはなくて、いまでも大きなイベントの“天下分け目戦“などは、レベルが同じくらいのお客様どうしで楽しめるように武将のグレードで合戦場を分けていますし、今後も新規のお客様だけが集まれるような場所も提供していきます。
もともと、いきなりヘビーユーザーにボコボコにされ続けてしまうような状況にならないゲームになっていますし、今後も対策はつねにしていきますので、安心して遊んでほしいです。城下町づくりもサービス当初と比較すると、かなり快適にできるようになっていますしね。
杉浦 『鬼武者Soul』は、そもそも後発の不利を感じやすい対人戦の部分が、それほどシビアではないんですよ。たしかに、すごい強い人とぶつかることもあると思いますが、だんだん同じレベルのお客様とマッチングされるようになっていますから。サーバーリセット型のタイトルでもカード資産自体は残る場合が多いですよね。後発が不利という議論は、そういったタイトルのほうが大きな課題としてあるのではないでしょうか。『鬼武者Soul』は、むしろライトな設計だと思っています。
それと、最初は強い人とぶつかってもいいんじゃないか、という考えもあります。なぜかいうと、対戦の流れが見えますし、リプレイもありますので、相手になんで負けたかが研究できるようになっているからです。それを見てもらって、技の連携や、どういう技を使うと攻撃力が叩き出せるのか、というのを研究すれば、吸収できることもあるかと思います。僕自身も研究させていただいていて(笑)、相手の戦法を見て、こちらのやりかたを変える、といったこともしています。
やり込みの度合いももちろん重要ですが、ある程度読み合いや戦術でなんとかできるようにしているつもりです。うまく立ち回れば勝てるという部分があるのは、このゲームのひとつのウリかと思います。また、シンプルなバトルですが、技や装備を用いることで、面白味が増す設計にしてあるので、そこは新規のお客様でも最初から楽しんでいただける部分かと思います
――ほかのプレイヤーの城下町や部隊編成が、すべて見ることができますからね。新規ユーザーにとってはいいお手本になると思います。
杉浦 お客様からはコミュニケーション要素が少ないんじゃないか、という指摘もあります。ただ、僕はもともとヘビーなMMORPGなどを担当したこともあって、そのときの経験から、『鬼武者Soul』を作るときに、同じようなヘビーなコミュニティー要素を作ろうという思想はなくて、かなりカジュアルなコミュニティーでもいいんじゃないか、という考えからスタートしました。いわゆるギルドのようなものも、あえて入れてませんし、そもそも、ほかの人とつねにコミュニケーションをしないと進められない、というゲームではないんですよね。
なぜかというと、ふつうはゲームにログインしたら、まず自分のことをやりたいと思うんですよね。レベルを上げたいとか、武器や防具を揃えたいですとか。そういうときに、誰かから「助けて」と言われても、本音では「自分のことがやりたいなあ」ということがあると思うんです。お手伝いも楽しい部分でもありますが、『鬼武者Soul』では、まず自分が楽しめるようにしたいなと考えていたので、城下町づくりにしても合戦にしても、まずは自分のことだけに専念できるようにしています。
ただ、“大合戦”などの連携が必要なイベントでは、チャットをして連携を取れば明らかに人数が少なくても勝てるといった調整にもなっていますし、掲示板で国全体の方針を決めるといったことをしているお客様もいます。
プレイを進めていくと、そういった連携を取る要素も出てきますが、基本的には、ゲームを始めて初期のころは、自分のことだけをできるようにしています。たとえば、家に帰ってきて、短時間でさっくり遊びたいという人にとっては、いきなり深い人間関係にさらされるのはしんどいですからね。“MMO疲れ”みたいな話もよく聞きますけど、それを感じることのないような調整に、あえてしているんです。
とはいえ、合戦などのコンテンツでは、みなさん気づいていると思いますが、上位にいけばいくほど、たいたい同じ人と戦うことになるんですよね。「あいつの部隊編成は俺の部隊と相性が悪いな」といったことがわかってくるんです。会話はしてないかもしれないですが、知っている名前の人がどんどん増えてくるので、それもひとつの間接的なコミュニケーションと言えると思いますし、楽しみのひとつかと思います。
●これからの『鬼武者Soul』について
――ブラウザゲームの運営・開発はカプコンにとってもチャレンジだったと思います。いま振り返ってみて、どのような感想を持たれていますか。
津川 アップデートのスパンが本当に短かったなと感じています。昨年の10月から毎週のようにイベントをやり、リファインを続けてきましたから。そういう意味では、すごいボリュームのゲームを提供できているのかなと思います。反面、最適化する前にリリースしてしまったり、バランス調整が不十分なコンテンツが出てきてしまったのは、大きな反省点です。2年目はそれを踏まえて、展開を考えていかなければならないと思っています。
杉浦 バランスなどが不十分なままリリースしてしまうことに関しては、開き直るわけではありませんが、一長一短だと思っています。しっかり作り込んでも、実装が遅くなるとお客様も不満が出てゲームから離れてしまうでしょうし。これは、僕らが割り切ってどちらを選ぶか、ということなんだと思っています。ただ、ゲーム内容がダメと判断されたことに対しては、もちろん真摯に受け止めて反省しています。
これまでにないブラウザゲームの運営を続けていることで、非常に勉強になっています。このノウハウが、本作の今後やほかのゲームにもいい影響として出てくるかと思います。
たとえば、当時のソーシャルゲームでは当たり前だった、課金ガチャというシステムですが、『鬼武者Soul』では課金ガチャの売上をメインの売上にはしないということ考えていました。スタッフからかなり反対があったのですが、僕の中では、課金ガチャがメインでなくてもいけるという確信もあり、いまのモデルにしました。コンテンツがおもしろければ、どんどん行動力を消費して遊んでいただけるだろうという設計です。ガチャの設計ばかりを考える開発チームではなく、コンテンツやサービスを開発するという、開発者としての考えかたも鍛えることができると思っています。
何事も答えはひとつではないと思うんです。ソーシャルにはソーシャルの成功例がありますし、それもひとつのやりかたとして、学ぶことはいっぱいあります。でも、それが完全な答えだと決めつけることをしてはいけないと思います。それもひとつの方法として踏まえたうえで、新しいビジネスモデルを作り出すということもしていかなければいけません。
ブラウザゲームを遊んでいるお客様の思考はとても勉強になっています。『鬼武者Soul』のお客様は信じて見守っていただいているというか、寛大な方が多いですし、非常に論理的というか、かなりしっかりとした具体的な提案や意見をくださるお客様が多いですね。おそらく年齢層が高めというところや、シミュレーション要素が多いことも影響していると思います。
ブラウザゲーム1作目のタイトルとしては、いろいろなところで結果が出て、カプコンとしてもいい形で切り込むことができたタイトルになったかなと思います。自分自身、2011年の正月休みをすべて返上して、約2000体のキャラクターの設定をした甲斐がありました(笑)。
イラストレーター様にも、力を入れて描いていただいて、とても感謝しています。すごく研究熱心な方が多くて、家紋のタイプを質問されたりということもありました。そういうプロ意識にも触れられて、刺激をもらいましたね。
――この1年は、非常に順調だったと言ってもいいですか?
杉浦 僕が立てた計画の、7~8割は達成できたと思います。実装できなくて悔しかったのは、“茶会“、“家紋“、“婚姻“ですね。もとが『鬼武者』というハードな世界観のゲームですので、「茶会を入れよう」といっても、後回しにされることが多かったです(笑)。ただ、そろそろ内政パラメーターの活用を考えた場合、茶会に手を付けてもいいはずだと、僕は読んではいるんですけど(笑)。あとは水上マップですね。いまのデキだと30点以下だと思っています。そこは津川が引き継いで、100点にしてくれるでしょう(笑)。
――途中で津川さんがプロデューサーになられたんですよね。
杉浦 実際はかなり前に現場からは離れていたのですが、もうそろそろ忙しくなってきたので、メッセンジャー役も変わってくれと(笑)。まあ、部長なので新作などの切り込み隊長みたいな役割は僕がやるものだと思っていまして、今回はそれを終えたので、引き継いでもらったということです。
津川 開発当初から杉浦と二人三脚でやってきて、すごく愛着があるタイトルですので、とてもやりがいを感じています。
――では最後に、つぎの1年間についての展望などを教えてください。
津川 この1年間は、2ヵ月のスパンで「○○編」という形でアップデートを行ってきましたが、今後もコンテンツを追加したり、大きなリファインをしていくということは、変わらずにやっていこうと思っています。ただ、いったん“本能寺の変”で鬼物語はひと区切りを迎えますので、以降も「○○編」という形でアップデートを行っていくかは、検討している段階です。
今後はチャネリング展開ですとか、タブレット版もコンシューマー版も始まりますし、年末に向けてコラボレーションも用意しています。多くの方に『鬼武者Soul』を知っていただいくと同時に、いまプレイしているお客様にも、末永く遊んでいただけるようにしていきます。
杉浦 これからは新しいコンテンツをがんがん入れていくという形ではなくて、いまあるものを的確にリファインしてくことが、優先されると思います。これによって、既存のコンテンツも生き返って、おもしろくなっていき、新しいコンテンツと感じていただけることになるかと思います。水上マップや大合戦は、まだまだおもしろくしていかなくては、と思っています。ただのリファイン続きではやることがなくなってしまいますので、モチベーションを高めてもらえる新たな刺激も用意します。今後の『鬼武者Soul』にも、ぜひご期待ください。