さまざまなコンテンツがいろいろなマシン、デバイスで遊ばれる時代、ゲームの未来は!?

浜村弘一 ファミ通グループ代表による講演“ゲーム産業の現状と展望<2013年秋季>”詳報_01

 2013年10月11日、KADOKAWA エンターブレイン ブランドカンパニー ファミ通グループ代表の浜村弘一(以下、浜村)が、業界アナリスト及びマスコミ関係者に向けて行う恒例の講演“ゲーム産業の現状と展望<2013年秋季>”を開催した。本講演は、変化の激しいゲーム業界を半期に一度のペースで切り取り、ファミ通調べのマーケティングデータをもとに、現状分析や浜村氏の視点での今後の展望などを解説する講演で、すでに20回以上行われている。

 今回のテーマは、“ルールが変わる時 -プラットフォームを越えた挑戦-”。現在、ゲーム業界ではプレイステーション4とXbox Oneという新世代機の登場が控えているが、浜村は「これまでの単なる世代交代とは違う気がします」と述べる。

 その要因は追って記すとして、まずはいつもどおり俯瞰で見た現在のゲーム業界を把握することから始めよう。

2013年度上半期の世界におけるパッケージソフト市場は前年同期から2割マイナスだが新たな可能性が

 2013年度上半期の世界におけるパッケージソフトのゲーム市場規模は、前年から約2割のマイナスとなる。このいちばんの要因は家庭用据え置きゲーム機の世代交代が遅れたことによるもの。日本は、ニンテンドー3DSの伸長のおかげで10%減ですんだが、コアゲーマーの多い欧米はプレイステーション4、Xbox Oneの登場の遅れが響いたかたちだ。

 一方、デジタルゲーム市場規模(タブレット、スマホのアプリ、PC向けのブラウザゲームやソーシャルゲームなど、家庭用パッケージ以外のゲーム)は右肩上がり。米国では、今年7月の段階で、ついにデジタルゲーム市場規模が家庭用ゲーム市場規模を上回った。

 国内の家庭用ゲーム市場規模を見てみると、2013年度上半期は前年同期と比べ、15.4%減となった。この数字だけ見ると、「家庭用ゲームは大丈夫なのか」という印象を与えかねない。だが、浜村は、新たな家庭用ゲームの可能性を示すできごととして、家庭用ゲームの代表格とも言える『ドラゴンクエスト』のナンバリング最新作『ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン』がクラウド配信され、スマホやタブレットに対応するというニュースを紹介。これにより『ドラゴンクエストX』はWii、Wii U、PCのユーザーとスマホ、タブレットユーザーが同じサーバーでいっしょに冒険できる、というまさにプラットフォームの枠を越えた施策をスタートさせる。

 これについて「次の世代で起きることを象徴的に表した出来事」(浜村)と前置きし、続いて各プラットフォームの状況を解説していった。

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任天堂――メインプラットフォームの道を歩む3DS、Wii U復活の道はあるのか?

 すでにミリオンセラーが8タイトルあり、メインプラッフォームの地位を固めつつあるニンテンドー3DS。

 2013年度上半期は『トモダチコレクション 新生活』がミリオンを超え、それ以外にもスマッシュヒットが多数登場。さらに9月14日には『モンスターハンター4』が発売され、2週間ちょっとで約254万本の特大ヒットを記録。『モンスターハンター4』の初週販売本数は、シリーズ最高の販売本数を誇る『モンスターハンターポータブル 3rd』の初週214.6万本に迫る187.5万本。「この勢いなら『モンスターハンター4』は最終的には、400万本はいくのでは、と期待しています」(浜村)。

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▲2012年度と2013年度の上半期販売本数トップ5を比較すると、上位トップセラーの販売本数も伸びているのがわかる。これはハードが普及してきていることが大きな要因。

 ニンテンドー3DS本体はついに、国内累計1200万台を突破。この好調な要因については浜村は、ソフトのラインアップをいちばんに挙げる。タイトル数だけではなく、『トモダチコレクション 新生活』や『ディズニー マジックキャッスル マイ・ハッピー・ライフ』といったファミリー向けのものから、『真・女神転生IV』や『逆転裁判5』、そして『モンスターハンター4』などコア向けのものまで、バリエーションも豊富。こうしたことも普及を後押しする大きな要因だ。

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▲2013年の4月から9月までの各月のソフト販売ランキング。どの月もニンテンドー3DS用ソフトが多数を占め、8月にいたっては、TOP5はすべてニンテンドー3DS用ソフト。

 これは海外も同様の状況で、かなり好調だという。

 また、ニンテンドー3DSの快進撃を支える要因に、ニンテンドー3DS LLの登場が挙げられる。下のグラフを見ると、ニンテンドーDSのときと比べ、ニンテンドー3DSは3DS LLがかなり伸びていることがわかる。前世代機のニンテンドーDSi LLでは、おもに高年齢層に文字が大きく見えるから、といった購入動機が多かったようだが、ニンテンドー3DSではゲームらしいゲーム、たとえば『モンスターハンター4』などを大画面で遊びたいというユーザーが多かったようで、「リビングでニンテンドー3DS LLを遊ぶといった、据え置き機の代替機のような位置づけでニンテンドー3DS用ソフトが遊ばれているようです」(浜村)と、携帯ゲーム機の使われかたの変化を指摘した。

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 今後はニンテンドー3DSをさらに加速させるソフトとして『ポケットモンスター X・Y』、そして注目の『パズドラZ』が発売される。

 海外でも大人気の『ポケモン』だが、海外では『ポケットモンスター X・Y』の発売同日にニンテンドー2DSが登場。2DSは3DSより安価な価格設定のため、ニーズは高くなるだろうと予測される。

 普及が先行する日本に加え、欧米でもニンテンドー3DSが加速すれば任天堂は盤石と言えるだろう。

 これまで任天堂ハードの懸案事項になっていたのは、サードパーティのソフトの伸び。過去には任天堂のソフトしか売れず、同社のソフトがないときは市場が小さくなってしまう、ということも起きたが、ニンテンドー3DSのサードパーティソフトの販売比率は、ニンテンドーDS時代を大きく上回る。「ニンテンドー3DSは任天堂のソフトが切れても、市場規模を持続できる強いハードになるのではないでしょうか」(浜村)

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 今後のラインアップを見ても、ニンテンドー3DSが国内のメインプラッフォームになることは間違いないところだろう。

 一方のWii U。期待した『ピクミン3』は20万本のスマッシュヒットにとどまった。そのほかのタイトルも期待ほど振るっていない。ハードの伸びもニンテンドウ64やゲームキューブより勢いが弱く、序盤苦しんだPS3とほぼ同じ推移だ。この要因はソフトの不足。Wii U GamePadの特徴を活かしたタイトルが少ない、というのもこれに拍車をかける。

 ただ、任天堂は対応策を取り始めている。まず、ハードでは、お得なパックで実質的な値下げを敢行。加えて、『Wii Sports Club』を投入する。今作はWii U向けにダウンロード専用にし、サービスとして展開する。さらには、Wiiでは世界でシリーズ累計2200万本を販売し、同ハードのムーブメントの決定打となった『Wii Fit』の新作『Wii Fit U』も登場する。

 年末にはこれら有力タイトルが続々と登場する。この年末、浮上する可能性は十分ありそうだ。

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ソニーグループ――PS4の登場を目前に新たなプラットフォーム戦略を打ち出せるか

 まずは、プレイステーションVitaの2013年度上半期の分析から。『討鬼伝』や『ドラゴンズクラウン』などスマッシュヒットが登場。ただ、前年同期のTOP5の販売本数はほぼ横ばい。ニンテンドー3DSのソフト販売本数と比べると小粒なのは否めない。

 先日投入された新型PS Vitaに期待がかかるが、カラーバリエーションは豊富になったが価格はほぼ変わらない。果たして効果があるのか? これが“意外と効く”とのこと。その例として、同じく価格がほぼ変わらなかった新型PSP(PSP-2000)の発売後のデータが示され、それを見ると新型PSPの販売台数は大きく伸びたという実績がある。ニンテンドーDSiが発売されたときも同様。「ただ、これはPSPもニンテンドーDSも勢いがあったときで、これが当てはまるかは難しいところ」(浜村)。重要なのはやはりソフトだと強調した。

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 今後は『GOD EATER 2(ゴッドイーター2)』、『ファイナルファンタジーX/X-2 HDリマスター』などが控え、『モンスターハンターフロンティアG』も登場する。『モンスターハンター』は携帯ゲーム機でブレイクしただけに、発売が楽しみではあるソフトだ。ただ、今後のラインアップに関しては全体的にまだまだ小粒。「どこまでブーストがかかるかに期待しましょう」(浜村)

 続いてプレイステーション3。上半期は収穫期を期待されたが、ヒット作は『ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル』くらいで大きなソフトはあまりなかったのが現状。年末のソフトを見ると『グランツーリスモ6』、『ライトニング リターンズ ファイナルファンタジーXIII』など、スマッシュヒットが複数登場しそうで、プレイステーション4が出る前の最後の収穫期として期待はできそうだ。

 そしてこの冬、新たなハードとして登場するプレイステーション Vita TV。どんな狙いがあるのか、少しわかりづらい商品だが、浜村ファミ通代表はこのハードを「プレイステーションプラッフォームが一体化するための隙間を埋めるハード」と表現。さらに、「PS3、PS Vita、そしてPS4。今後はこれらが一体化してハードの壁がなくなる、ルールが変わる」と語る。PS4ではクラウドの技術を使って過去のソフトが遊べるほか、PS4のソフトがPS Vitaでリモートプレイ可能になる。今後、PS3とPS Vitaのマルチタイトルはさらに増えていく傾向にもある。ひとつのタイトルを何らかの形でプレイステーションフォーマット全部のハードで遊ぶことができるという、新しい状況が生まれてくるかもしれない。具体的には、外ではPS Vitaで遊び、続きをリビングのプレイステーション4で、さらにPS Vita TVがあれば自室のモニターでも続きが遊べるといったように、いつでもどこでもプレイステーションのソフトの続きが楽しめるといった具合だ。この“ソニープラットフォームのボーダレス化”はゲームライフを変える可能性がある。

 プレイステーション4については、日本は発売が最後になってしまったが、これは日本市場が携帯ゲーム機主導という傾向があり、国内ソフトメーカーの開発ラインはまだ少ない。その一方で、年末商戦の依存度も高い欧米は、Xbox360を含めると7~8年ぶりの新たな据え置きゲーム機の登場ということでかなり加熱気味だという。そういった状況が、日本が最後の発売になってしまった要因のひとつだろう。

マイクロソフト――家電と一体化することで新しい境地を切り開くXbox One

 日本における存在感は限りなく小さくなってきたXbox 360。だが、海外ではマイクロソフトの幹部が今後5年間で2500万台を販売・普及させ、全世界で1億台突破を狙うという発言を紹介。Xbox Oneを控えたこのタイミング。ふつうに考えると新ハードが出ると旧ハードは売れない。2500万台を販売するということは不可能なように感じるが……。「これが新世代機の特徴なんです」(浜村)。この発言の真意は、後述する。

 マイクロソフトの注目は当然、Xbox One。年内に発売されるのは欧米。浜村がいちばんの特徴として挙げたのはHDMI入力端子。この入力端子が何に使われるか。それはCATVのセットトップボックスの入力に使われるのだ。欧米はゲーム専門機という側面だけではなく、映像を楽しむためのマシンとしての使われかたも多いという。「E3の発表会では、有力ソフトの紹介に続き、HuluやNetflixに対応するといった発表がされました。それほど欧米では映像配信を楽しむマシンとしてゲーム機が重要な役割を担っているのです」(浜村)。テレビのサービス、または家電と一体化(オール・イン・ワン)させることで、新しい境地を切り開く、それがXbox Oneの“One”たる所以だ。

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PS4とXbox One、新世代機で変わるルール

 新世代機の特徴として、マルチタイトルが多いことが挙げられる。その要因のひとつは、ゲームの作りかたの変化。新世代の両ハードのソフトはPCベースで開発できるため、PS4とXbox Oneのどちらにも対応させやすい。現在のラインアップを見ても、今後、マルチタイトルが大幅に増加することは間違いない。

 また、ゲームの作りかたも、特定の機種に特化した作りかたではなく、ハードが持つ描画性能や操作方法に合わせて調整し、新世代機だけではなく現行機や高性能になってきたスマホ、タブレットなどにもリリースするという作り方へとシフトしてきている。もはや、「このゲームを遊ぶなら、このハードが必要」という時代ではなくなっているのだ。つまり、新世代機が発売されても、PS3もXbox 360にもソフト供給が途絶えず、両ハードは新世代機の廉価版のような位置づけになる。価格重視の人は旧世代のゲーム、マシンを選ぶという傾向が見込まれ、前述のXbox 360の1億台突破も実現可能な数字、というわけだ。

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 こうした作りかたの変化は、インディーゲームの増加にもつながっている。PCベースの開発環境、発売できるマシン、デバイスの増加により、小規模でもゲーム開発が可能となったことに加え、Xbox 360の『マインクラフト』を筆頭に、インディーゲームの成功例もかなり増えてきてきた。大手メーカーからは続編モノが多くなり、タイトルが固定化してきたという背景もあり、独創的なインディーのゲームにソニー・コンピュータエンタテインメント、マイクロソフト、そして任天堂も注目し、力を入れて誘致している。

 ちなみに、浜村はPS4とXbox Oneとを比較し、初期のローンチタイトルは引き分け(インディーゲームの誘致に関してはいまのところPS4が有利か)、本体価格とオンラインサービスは無料のサービスが多いPS4は有利だが、Xbox Oneでは独占タイトルとして発売予定の『タイタンフォール』のデキと評判がよく、キラータイトルになる可能性があることなどを挙げ、スタートダッシュはPS4、だが、2~3年後にXbox Oneがキャッチアップしてくる可能性がある、というのが業界の見かただと述べた。

2013年度上半期家庭用ゲーム機市場の概況

 冒頭でも示したとおり国内家庭用ゲーム市場規模は前年同期と比べ、15.4%減となった2013年度上半期。ここから、もう少し詳しく見ていこう。

 ハードの販売シェアはニンテンドー3DSが61.9%、PS Vitaが12.8%、PSPが5.4%となり、約8割を携帯ゲーム機が占めていることがわかる。

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 また、2013年度上半期のトレンドとして、ソフトメーカーの中には、家庭用ゲームソフトの開発を絞り、発売するソフトを絞り込んできている、という傾向がある。これは開発リソースをオンラインゲームやブラウザ・スマホゲームなどに割くところも増えてきているからだが、「かつてどのメーカーも家庭用ゲームに力を入れる、という世の中はなく、会社によって、力を入れるところが変わってきています」(浜村)。ゲームの作りかたも各社変わってきているということだ。

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 海外では、米国は前年同期からマイナスとなった。これは明らかに新世代機を待つ買い控えが原因。その中でニンテンドー3DSはハード、ソフトともに順調。2013年度下半期はPS4、Xbox Oneというふたつの新世代機がリリースされるうえ、好調なニンテンドー3DSはさらに『ポケットモンスター X・Y』が発売されるため、上半期をカバーできそうだ。

 欧州も米国同様に前年同期からマイナス。ニンテンドー3DS以外はほぼダウンという状況だったようだ。要因は経済の状態、新世代機の買い控え。ただ、ある調査会社のリポートによると、2013年通期では、前年からプラスになると予想されている。新世代機がどれだけ盛り上がるかがポイントと言えそうだ。

 欧米の年末のソフトラインアップは、『バトルフィールド4』、『コール オブ デューティー ゴースト』、『Wii Party U』、『Wii Fit U』など大ヒットが見込めるタイトルが目白押し。「これほど充実した年は記憶にありません」(浜村)

 また、年末発売のソフトではないが、触れなければならないソフトとして挙げられたのは『グランド・セフト・オートV』。本作は、開発とマーケティング費用が史上最高額を更新、世界初日に8億ドル&英国だけで157万本の売上など、驚愕の数字が並ぶ。注目は、売れ行きだけではなく、購入者向けのオンラインタイトル『Grand Theft Auto Online』の存在。同作は少額課金に対応するというニュースが英国のサイトで紹介されている。こうしたソーシャルゲームのような課金手段は欧米ではほとんど行われておらず、欧米ナンバーワンのタイトルのオンラインゲームが少額課金に成功すると、今後のビジネススキームが変わりかねない。『Grand Theft Auto Online』の今後には要注目だ。

ユーザーのソフト購入意識の変化

 続いてビジネススキームが大きく変わる要素のひとつとして、購入意識の変化が挙げられた。エンターブレインの調査では、家庭用ゲームでパッケージ版とダウンロード版の両方があるソフトの場合、どちらを購入するかのアンケートを取った結果、ダウンロード版と回答した人は20.6%、安いほう、状況次第ということも含めると約25%がダウンロード版でも構わないと考えているという結果が出た。「10%くらいかなと思っていたのですが、これは想定以上に多い数字でした」(浜村)

 これまでもダウンロード販売は少しずつ普及してきていたが、『モンスターハンター4』でもダウンロード版は好調だったという。ダウンロード版の伸長はプレイステーションフォーマットのソフトが顕著で、販売本数のうち、約20%がダウンロード版というソフトも目立ってきているとのこと。爆発的に普及したスマホやタブレットおいては、音楽や映像、そしてゲームをダウンロードすることは当たり前になってきており、こうした経験からパッケージにこだわらないユーザーも増えてきている、というのがダウンロード版が好まれる要因のひとつのようだ。

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ネットワークプラッフォームの市場の概況

 世界のアプリ・スマホ・タブレット・PC市場について。こちらも冒頭で右肩上がりの成長を示していると言及されたが、各ソフトメーカーもそれぞれの戦略を立てている。その中でもアクティブなのはスクウェア・エニックス。同社は基本無料のブラウザゲームを多く輩出しているが、先日『ドラゴンクエスト』シリーズが『I』から『VIII』までをスマホ向けに発売するといった発表もあったとおり、スマホ向けは有料アプリを展開。『拡散性ミリオンアーサー』は韓国や台湾でも大ヒットしている。そんなスクウェア・エニックスと同様にスマホに力を入れているのがセガ。ゲームセンターとの連動やスマートフォンアプリ向けのマーケティング支援サービス“Noah Pass”といった新しい取り組みを行い、存在感をみせている。

スマートメディアの高性能化でゲームとの親和性がさらに高まる

 スマホ、タブレットなどのスマートデバイスの高性能化が進み、さらに64bitのアーキテクチャを持つiPhone5sの登場により、家庭用ゲーム機と遜色ないゲームが遊べるようになってきた。ゲーム専用機より新機種の発売サイクルが早いスマホ・タブレットが、家庭用ゲーム機の性能に追いつくのは時間の問題かもしれない。

モバイルとブラウザゲームに地位を奪われたPCソーシャルとMMOゲーム

 モバイルとブラウザゲームの伸長の煽りを受け、市場を縮小しているのがPCソーシャルとMMOゲーム。『World of Warcraft』は2013年4~6月期に前四半期比60万人減。一時、一世を風靡したZyngaの『FarmVille』シリーズも振るわず、ソーシャルゲーム業界の移り変わりの速さを象徴していると言えるだろう。

 一方、国内主要ソーシャルゲームプラットフォームであるGREEやMobageは過去のタイトルで引き続き収益をあげており、次の一手が待たれるところ。だが、海外では成功し始めており、今後に期待が持てる。止まらないのはLINEの躍進。さらに、中国ではWeChatという新サービスが4億というユーザーを集め、大きく飛躍している。

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PCダウンロードゲーム市場の最新動向

 注目はSteam。米PCゲーム配信サイトを運営するValveはSteamOSを発表。これは同社が推し進めるリビングの大きなテレビでPCゲームをプレイされることを意図したLinuxベースのOSで、近日中に無料公開される予定。つまり、家庭用の大きなテレビでPCゲームをプレイさせよう、というもの。Steamはオープンプラットフォーム化して、ソフトメーカーを誘致。PCがない人向けのハードSteam Machinesは複数のパートナー企業が製造を許可され、ユーザーにとっては、ハードの選択肢も増える。さらにValveはゲームだけではなく映画や音楽、テレビ番組もサポートさせようとしており、もはやPS4やXbox Oneと狙っているところは同じだ。強みは5000万を超すSteamアカウントユーザー。さらに、PCベースによる家庭用ゲームのマルチプラットフォームも追い風となる。どういうことかと言うと、家庭用ゲームのエクスクルーシブタイトルは、PC向けにリリースすることに関しては縛りがないことが多い。となると、PS4やXbox OneのエクスクルーシブタイトルがSteamには揃ってしまう、という状況が生まれかねないわけだ。PS4やXbox Oneの本当のライバルは、Steamなのかもしない。

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ユーザーが4つのスクリーンを生活に合わせて使い分ける時代に

 PS4、Xbox Oneに加え、PC、スマホ、タブレットなどさまざまなプラットフォーム、遊びかたが存在する百花繚乱の時代へと突入する。その象徴的な出来事が冒頭にも述べた『ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン』がクラウド配信され、スマホやタブレットに対応する、という施策だ。今後はスマホやタブレットで外で遊んだ続きを自宅のテレビの前でプレイするということが、手軽に楽しめる時代になる。さらにその先では、『ドラゴンクエストX』のように、あらゆるゲームがハードにとらわれずボーダレスに遊ばれる時代、クロスオーバーの時代がやってくるだろう、というのが浜村の見かただ。

 さらにおもしろいデータとして、現代の4スクリーン(テレビ、PC、タブレット、スマホ)の時代におけるゲーム接触時間を調査した結果を示す。この調査によると、ゲームをプレイする時間はテレビではわずか4.3%。それがPCでは24.5%、タブレットになると20.8%、そしてスマホになるとゲームがもっとも遊ばれており、53.6%にもなる。ユーザーがどうゲームを楽しんでいるか、ゲームライフのスタイルが変わってきていることが、このデータからもうかがえる。「ゲームは、すべてのスクリーンからボーダレスで楽しまれています。これまでとルールが変わってきているんです」(浜村)。

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 かつては勝ち抜くためにはコンテンツを囲い込む必要があったが、次世代ではどのハードで遊ぶかをゲームファンが個人の好み、ライフスタイルに合わせて遊べる時代、また、場合によっては複数のマシン、デバイスを使い分ける時代へとルールが変わった。

 そんな時代にハードプラットフォームはどうすればいいのか。「もちろん、ハードを普及させる施策は打つんですが、本当の勝負はそこではない」と述べ、続けて「どのプラットフォームがシェアを伸ばしても勝てる施策を取る」と指摘。浜村は、ソニーもマイクロソフトもゲームコンテンツ以外にも音楽や映画、電子書籍などにもコンテンツを広げていくことを視野に入れ、それらがゲーム市場と融合していく状況が生まれるだろうと予測する。

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 浜村はまとめとして「いままのでゲーム産業はパッケージ中心だったが、さまざまなスクリーンに対応するゲームがオンラインを通じて拡大していく」(浜村)。その結果として、(下のグラフが示すように)ゲーム産業はますます拡大するだろう、と結論づけた。

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あらゆるデジタルコンテンツで、もっとも時間が費やされるのはゲーム

 前回の講演(→こちら)の最後に、あらゆるスクリーンを通じて、デジタルコンテンツが戦う“IDとIPの異種格闘戦”という話があった。そこで公開されたのが、“エンタメコンテンツTOP30「TVドラマ&ゲーム」:週間延べ接触時間”というランキング。14000人を対象にしたアンケートでは、15歳~49歳の男性に絞ると、並み居るテレビドラマを押しのけて『パズドラ』が1位という結果に。以下、『LINE POP』が4位、『ドラゴンクエストX』が13位、『ファンタシースターオンライン2』が17位に。以下、ソーシャルゲームや家庭用ゲーム機のソフトも多数ランクインしていた。

 今回は、スマートフォンのユーザー男女14000人(10~49歳)を対象に、ゲームと親和性の高いTVアニメやTVバラエティとゲームの接触数(8月第4週~9月第3週の各週に1回でも接触した回数)を比較するランキングが披露された。

 その結果、トップはバラエティやアニメが上位。6位に『パズドラ』、11位に『LINE POP』、13位に『LINE バブル』がランクインする程度。これを男性に絞ってみても、『パズドラ』は3位にランクアップしたが、バラエティ、アニメの強さは変わらず。28位に『モンスターハンター4』がランクイン。スマホユーザーを対象にしたアンケートでありながら、(男性に絞ると)家庭用ゲームもラインクインしてくる。

 これが接触数ではなく、接触時間でランキングを出してみると……驚くべきことにスマートフォンのユーザー男女(10~49歳)合わせた1位は『パズドラ』で2位が『モンスターハンター4』。3位にバラエティが食い込むが、4位『LINE バブル』、5位『LINE POP』と上位にゲームが続く。これを男性に絞ると、上位にさらにゲームが入ってくる。一方で女性に絞ると、意外なことに、女性も上位は『LINE バブル』、『LINE POP』などゲームとなる。

 このデータから導き出される結論として浜村は、「4スクリーンの時代になって、あらゆるところからスクリーンを通じて、ゲームに接触できる時代になりました。そこで、ゲームは動画や音楽配信などと戦うことになるのですが、人々がもっとも時間を使うコンテンツはゲームになりそうな気がします」と述べ、講演を締めくくった。