ひとつのタイトルをどのハードで遊ぶかゲームファンが選べる時代がやってくる
2013年10月11日、KADOKAWA エンターブレイン ブランドカンパニーの浜村弘一ファミ通グループ代表が、業界アナリスト及びマスコミ関係者に向けて行う恒例の講演“ゲーム産業の現状と展望<2013年秋季>”を開催した。本講演は、変化の激しいゲーム業界を半期に一度のペースで切り取り、ファミ通調べのマーケティングデータをもとに、現状分析や今後の展望などを解説する講演。
今回のテーマは、“ルールが変わる時 -プラットフォームを越えた挑戦-”。現在、ゲーム業界ではプレイステーション4とXbox Oneという新世代機の登場が控えているが、浜村ファミ通グループ代表は「これまでの単なる世代交代とは違う気がします」と述べる。
その要因のひとつは、ゲームの作りかたの変化。新世代の両ハードのソフトはPCベースで開発できるため、PS4とXbox Oneのどちらにも対応させやすく、現在のラインアップを見てもマルチタイトルが大幅に増加することは間違いない。新世代機だけではなく、PS3やXbox 360などの現行機、さらにはスマートフォン、タブレットなどへも、その表示性能、操作性に合わせてゲームを落とし込むといった作りかたも可能になってきており、もはや「このゲームを遊ぶなら、このハードが必要」という時代ではなくなってきている。また、PCベースで開発できることで、開発環境が整えやすいため、小規模開発のインディーゲームも増加、その成功例も増えてきているというのもトレンドのひとつだ。
また、ゲームの作りかただけではなく、売りかたも変わってきた。これまでもダウンロード販売は少しずつ普及してきていたが、『モンスターハンター4』では、ダウンロード版もかなり好調だということが時代を象徴している。プレイステーション3、PS Vitaでもダウンロード版の販売は伸び、追加コンテンツなどの市場も広がってきており、パッケージだけで売上を語ることは難しくなってきている。爆発的に普及したスマホやタブレットおいては、音楽や映像、そしてゲームをダウンロードすることは当たり前になってきており、こうした経験からパッケージにこだわらないユーザーも増えてきている、というのが背景のひとつとしてあるのだろう。ちなみに、講演ではパッケージ版とダウンロード版の両方のソフトがある場合、「手軽だから」、「安い」、「保管が楽」などの理由から、約20%ものユーザーがダウンロード版を購入する、と回答したアンケートも示された。
さらに、スマホ、タブレットなどのスマートデバイスの高性能化が進み、家庭用ゲーム機と遜色ないゲームが遊べるようになってきた。ゲームは移動中やちょっとした時間の合間に楽しまれることが多くなり、必ずしも“テレビの前に座ってじっくりとプレイするもの”ではなくなり、プレイスタイルや遊ばれかたも多様に変化している。この傾向を受けて、(スマホ、タブレットが高性能になり、ゲームらしい作品が求められてきているということもあり)家庭用ソフトメーカーが開発リソースをスマホゲームなどに割くところも増えてきている。
こうしたゲームを取り巻くこれまでのルールが変化してきているなか、「次の世代で起きることを象徴的に表した出来事」として浜村が挙げたのが、家庭用ゲームの代表格とも言える『ドラゴンクエスト』のナンバリング最新作『ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン』がクラウド配信され、スマホやタブレットに対応するというニュース。これにより『ドラゴンクエストX』はWii、Wii U、PCのユーザーとスマホ、タブレットユーザーが同じサーバーでいっしょに冒険できる、というまさにプラットフォームの枠を越えた施策となる。
PS4とXbox Oneもクラウド配信やスマホ、タブレットとの連動は視野に入れられている。今後はスマホやタブレットで外で遊んだ続きを自宅のテレビの前でプレイするということが、手軽に楽しめる時代になる。また、ゲーム配信サイトを運営するValveは、リビングでのPCゲームプレイ、音楽や映画配信を意図した“SteamOS”を発表。この“SteamOS”は、オープンプラットフォームになるため、これからはPCベースで開発されるPS4やXbox One向けのソフトが“SteamOS”でもリリースされる可能性は高い。今後は、あらゆるゲームが『ドラゴンクエストX』のように、ハードにとらわれずボーダレスに遊ばれる時代、生活スタイルに合わせて、どのハードで遊ぶかをゲームファンが選べるクロスオーバーの時代がやってくるだろう。一方のプラットフォームホルダーは、ゲームだけではなく、テレビや音楽、電子書籍などすべてのデジタルコンテンツを狙ってくるはずだ、というのが浜村ファミ通グループ代表の見かただ。
なお、現状のゲーム市場規模の分析など講演の詳細は、後日、ファミ通.comでリポート予定。そちらもチェックしてほしい。