体験版は本日(10月10日)より配信中

 ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジアより、10月17日に発売予定のプレイステーション3用ソフト『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツーソウル)』。本作は、全世界で好評を博したプレイステーション3用ソフト、『HEAVY RAIN(ヘビーレイン)-心の軋むとき-』を手掛けたQuantic Dreamの最新作だ。ここでは、発売を一週間後に控えた本作のファーストインプレッションをお届けする。

プレイヤーにさまざまな感情を抱かせるQuantic Dreamの演出力に脱帽――『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツーソウル)』プレイインプレッション_02
プレイヤーにさまざまな感情を抱かせるQuantic Dreamの演出力に脱帽――『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツーソウル)』プレイインプレッション_04

“空気感のリアリティ”が世界を構築し、そこに惹き込まれていく

 ゲームの写実的なリアリティの追及、おもにグラフィック面での進化というのは最近まで留まることを知らない勢いで進み、近年はやや緩やかになった感はあるが、それでも日々進歩している。また、インタラクティブなメディアであるため絵画におけるスーパーリアリズムのような方向性は難しいが、インタラクティブであるがゆえに、モーションキャプチャーやフェイシャルキャプチャーの技術はゲームが最先端を走っているとも聞く。本作も現実の世界が舞台、加えてハードの成熟期ということもあり、この話はもちろん当てはまる。グラフィックのリアリティ、人や物の質感、世界の美しさは抜群だ。しかし、本作に触れてみて強く印象に残るのは、そこではない。驚くのは、人物の細やかな仕草や表情、何気ない目線の向き、会話の間といった“空気感のリアリティ”とでもいうものなのだ。前述したようにゲームのグラフィックというのは無限に進化していくように思えるし、技術者たちの飽くなき追求がゲームの発展を支えているひとつの大きな要因であることは間違いない。しかし、ゲームはあくまでゲームであり、極限までリアルに近づけたとしてもそれは現実ではない。
 では、リアリティという面でさらにプレイヤーの心に刺さる方向性はないのか? その答えのひとつを、ディティールまでこだわり抜いた演出という手法でまさに『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツーソウル)』が見せているように思う。幼少時代の主人公ジョディを操作すると、まるで本当の子どものような危なっかしさを感じるし、また別の場面では心臓を掴まれたような焦燥感に駆られ、かと思えば若かりし頃の酸っぱい感情が蘇ってくるシーンもある。ゲームには、こういった部分をプレイヤーが行間を読み想像することで楽しむという面もあると思うが、ここまでストレートかつ緻密にぶつけてこられると、新鮮であり少し照れてしまうような、なんとも不思議な感覚になる。こういった感覚をプレイヤーに与えるということは、それは間違いなくリアリティと言っていいだろう。この、本作を手がけるQuantic Dream真骨頂であり最大の特徴は、絶対に体験しておくべきものだと筆者は思う。

プレイヤーにさまざまな感情を抱かせるQuantic Dreamの演出力に脱帽――『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツーソウル)』プレイインプレッション_01
プレイヤーにさまざまな感情を抱かせるQuantic Dreamの演出力に脱帽――『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツーソウル)』プレイインプレッション_03

 ゲーム的な部分では、まずゲームオーバーという概念がないことがおもしろい。筆者はアドベンチャーゲームといえばトライ&エラー、どうしてもわからなければ正解するまで総当たり(笑)、という世代だが、それにしてもこの仕様は斬新だ。もちろん選択肢を選ぶことも頻繁にあるし、QTEやアクションパートもあるが、例えばQTEに失敗したからといってゲームオーバーになって最初からやり直し、ということはない(一部リトライを求められるところはあるが)。では、選択肢やQTEの成功失敗は何に影響しているのか? 何度かやり直してみたところ、選択肢によってそのシーンの内容に変化があったり、失敗するとそのシーンが最後まで見られない、といった影響があるようだ。この積み重ねが最終的に物語にどう影響してくるのかまではわからないが、ゲームオーバーがないという点では、いわゆるライトゲーマーの人も安心だろう。これは想像だが、そういった要素の成否で足止めをして物語の流れを切ってストレスをかけるのではなく、しっかりとこの世界、物語に没入してほしいという作り手側の考えの表れではないかと思う。物語はザッピング形式のチャプター制で、時間軸もバラバラに飛ぶ形なため、全体を把握しづらくしないための配慮という面もあるだろう。この点では、前述の演出と相まって没入感は非常に高く、狙いは成功していると言える。
 没入感という点ではもうひとつ、会話シーンの極端というか刺激的な選択肢が拍車をかける。例えば何気ない会話の中に「真実を話す」&「嘘をつく」、「キスをする」&「拒む」といった選択肢が出てくるのだ。ここまで正反対の選択肢だとやはりドキッとするし、重大な選択を迫られている気持ちになり、どちらが正解なのか、そもそも正解があるのかもわからないが「どっちだ!?」と考えを巡らせてしまう。これも演出のひとつと言えるが、こういったプレイヤーの感情の起伏の煽り方や雰囲気作りが絶妙なため、どんどんゲームに惹きこまれていってしまう。この感覚はぜひ味わってみてもらいたい。

プレイヤーにさまざまな感情を抱かせるQuantic Dreamの演出力に脱帽――『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツーソウル)』プレイインプレッション_06
プレイヤーにさまざまな感情を抱かせるQuantic Dreamの演出力に脱帽――『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツーソウル)』プレイインプレッション_05

 以上、簡単ではあるがファーストインプレッションをお伝えしてきたが、筆者が語るまでもなく気になっている人は多いであろうし、実際に触れてみることでわかる、触れてみないとわからないゲームでもあると思う。本日(10月10日)より本作の無料体験版がPlayStation Storeにて配信されているので、まずはぜひこれをお試しあれ。(TEXT:佐治キクオ)

プレイヤーにさまざまな感情を抱かせるQuantic Dreamの演出力に脱帽――『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツーソウル)』プレイインプレッション_07