中嶋氏“F1 CLASSICS”モードに感心「確かにヘレスだ」

 F1日本グランプリの開催直前、2013年10月10日に発売される、コードマスターズのプレイステーション3、Xbox360用レースゲーム『F1 2013』。このたび、発売に先駆けて“メディア体験会”が企画され、今シーズンのデータが反映された最新マシンはもちろん、“F1 CLASSICS”モードに収録された1980年代の名車にも、報道関係者からの注目が集まった。また、“F1 CLASSICS”モードにも登場する、元F1ドライバーの中嶋悟氏がゲストとして迎えられ、合同インタビューも行われた。ここでは、インタビューの模様を中心に、試遊インプレッションもお伝えする。

『F1 2013』体験会に中嶋悟氏が来場! 再現された愛機ロータス 100Tに目を細める_01
▲ゲストとして登場した中嶋悟氏。

 1991年に引退後、自身のチームであるナカジマレーシングを設立し、総監督としてスーパーフォーミュラやスーパーGTに参戦している中嶋悟氏。合同インタビューのはじめに近況を報告し、「F1日本グランプリでは鈴鹿サーキットでの開催25回目を記念して、現役時代に乗ったF1マシン3台を、僕と、息子でレーシングドライバーの一貴と大祐とでデモンストレーション走行します」と告知した。

 続いて、当ファミ通.com編集部が『F1 2013』のグラフィックについて感想をたずねると、開発スタッフによるプレイデモを見たうえで「非常にリアル」と回答。現役時代、実際にスペイングランプリを戦ったヘレスのコクピットからの景色や、自身のヘルメットなどが細部まで再現されていることに感心の様子だった。また、開発スタッフが中嶋氏のロータス 100Tにて1位でチェッカーを受けたことに対し、「僕のマシンがトップにいるのが一番すごい(笑)」と会場の笑いを誘った。

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▲“F1 CLASSICS”モードでヘレスを走る、中嶋氏のロータス 100T。

 また、『F1 2013』を試遊したメディアから、ゲーム上で1980年代のマシンと最新のマシンでは視界が異なるように感じたと前置きしたうえで、現実では両者にどんな違いがあるのかという質問が。中嶋氏は「今のマシンには乗ったことがないので、わかりませんが」と笑いつつ、レーシングカーは走行性能だけでなく、安全のための装置やコクピットの居住性もどんどん進歩していると解説。現役当時は、レーシンググローブの甲の部分が擦れて破れるくらい狭いコクピットに収まっていた、と振り返った。さらに、セミオートマチックトランスミッションやパワーステアリングが採用された現代のマシンは、操作性が格段に向上しているはずとも分析。中嶋氏の時代にはマニュアルトランスミッションが搭載され、シフトレバーでギアチェンジを行っていたため、超高速域で片手運転になる場面もしばしばあったという。とくに、鈴鹿サーキットのダンロップコーナーなど、200km/h以上で曲がっていくような高速コーナーでは「大きな横Gがかかっているなか、重たいハンドルを支えている最中に、シフトチェンジで片手になるのはすごく辛かった、難しかった」と回想した。

 そして、もう一度F1に乗るとしたら、誰と対戦してみたいかを聞かれると、「ベッテルを僕の時代のクルマに乗せて、僕が今のクルマに乗って対戦したらどうかな」、「セナが今、生きていれば50歳ちょっとですよね。僕が当時の年齢に戻って、対戦するくらいでちょうどいいかな」とユーモアたっぷりに語った。

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ゲームのダイナミックな天候変化に“雨のナカジマ”からアドバイスが!?

 さて、ここからは『F1 2013』の試遊インプレも交えてお伝えしよう。『F1 2013』は、どちらかといえばシミュレーター寄りのレーシングゲームと感じられた。速く走るためにはシビアなコントロールが必要で、そのための集中力をレース中、ずっと切らさないよう耐える感覚にシビれる。中嶋氏はインタビューで、実際のF1で速く走ることについて、「車両の限界点付近でいかに持続して走るか。たとえば100km/hで曲がっていくヘアピンがあったとして、99km/hで走ってしまうとトップにかなわない。でも、101.数km/h出すとタイヤが滑ってしまう。そこを101km/hでいけるのか、100.5km/hでいけるのか、そんな細かい範囲での挑戦をレース中ずっと繰り返しているのがF1ドライバー」と説明したが、まさにこの感覚を追体験できるのが『F1 2013』と言えそうだ。

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▲試遊台にはステアリングコントローラーと通常のコントローラーの両方が用意された。

 それから、中嶋氏も言及していた1980年代のマシンと現代のマシンの違いだが、実車のデータに基づいて設計されたゲーム中のマシンにも、自然と反映されているようだ。たとえば両者はノーズの位置がまったく違い、これによって発生するダウンフォースも異なってくるといった具合。最新マシンと比べて、“F1 CLASSICS”モードに登場する1980年代のマシンは、ハンドリングが明らかに難しく、曲がりにくさを感じた。新旧のマシンを乗り比べることで一層、往年のF1ドライバーの果敢なチャレンジが偲ばれて、アツい気持ちがこみ上げてくる。

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▲“F1 CLASSICS”モード。1988年に中嶋氏がドライブしたロータス 100Tのノーズは低い。
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▲今シーズンの最新マシン。ノーズを持ち上げ、より多くの空気をフロアに流し、ダウンフォースを得る。

 最後に『F1 2013』では、天候システムがより緻密になり、レインコンディションひとつとっても大雨、小雨、雨が降りはじめてドライからウェットへ変化していく様子など、いろいろなパターンが再現されているという。試遊では雨が止むシーンも見られ、メーカー側からは「雨が止んで、何周か走っていくうちにだんだん路面が乾いてくる、そんな様子も再現しています」との説明が。それについて中嶋氏は、「そういう状況では、最初は乾き出したところを走るんですけど、レインタイヤがオーバーヒートしちゃいますんで、半分ズラして(濡れているところも通るように)走るとか、そういったことを実際には考えて走ってます」とコメントし、かつて“雨のナカジマ”と呼ばれた走りっぷりを思い出させた。

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▲今シーズンのトロロッソ、ケータハムなどのマシンを、最新画像とともに紹介。

(取材・文:ライター/櫛田理子)