未知のハードをいかに普及させていくのか……?

 2013年秋以降、新型プレイステーション Vita(以下、PS Vita)、プレイステーション Vita TV(以下、PS Vita TV)、プレイステーション4(以下、PS4)と、プレイステーションファミリーの新製品が続々と市場に投入される。これらの新しい魅力を、ソニー・コンピュータエンタテインメント(以下、SCE)はいかに伝えていくのか? SCEJA SVP兼戦略企画部部長の植田浩氏にお話を聞いた。

PS4、PS Vita、PS Vita TV――新世代プレイステーションのプロモーション戦略をSCE植田浩氏に訊く【TGS2013】_04

好評だったカンファレンスを振り返って

――まず、先日(2013年9月9日)に開催された、プレスカンファレンスを振り返っていただきたいのですが、反響はいかがでしたか?

植田 浩氏(以下、植田) 自分たちで言うのは面はゆいのですが、カンファレンスに来ていただいた業界の方々からは、長さや内容などを含めて、「すごくよかった」、「勢いを感じたよ」というお声をいただきました。ふだんは辛口の方も多いのですが(苦笑)、「すごく洗練されたカンファレンスだった」、「何かがいままでとは変わったね」と言っていただけました。

――たしかに、密度が濃く、充実した内容でした。

植田 でも、裏側はバタバタでした(笑)。うまく河野(SCEJA 河野弘プレジデント)が、伝えるべきことを伝えながら、コンパクトにプレゼンテーションしたと思います。

――プレゼンテーションもわかりやすかったですし、サプライズが見事でしたよね。PS Vita TVについては、発表後の反響はいかがですか?

PS4、PS Vita、PS Vita TV――新世代プレイステーションのプロモーション戦略をSCE植田浩氏に訊く【TGS2013】_01

植田 ブースで実物を見たり、いろいろやれることをご覧になった後には、こんなに小さくて、こんなにいろいろできるのか、と改めて実感していただけて、皆さん「これは売れるよ!」と言ってくださいました。

――PS Vita TVはいろいろな顔を持ったハードですが、プロモーション計画についてはどのようにお考えですか?

植田 おっしゃるとおり、このハードは、ゲームはもちろんですが、それだけでなく、ビデオや電子書籍、音楽など、本当にさまざまなことができる。なので、それをユーザー様にわかりやすく伝えていくには、どうすべきかというところで、とても頭を悩ませていました。ただ、発表直後から好意的な感想を寄せてくれたり、関心をもってくれたユーザー様がとてもたくさんいて、まずは、こういったお客様にもっと満足してもらい、自信をもって買っていただけるようなプロモーションを計画中です。バリューパックに付属させた、PS PLUSの90日間利用権キャンペーンなんかも、その一環ですね。

――たしかに、ファミ通.comで速報を伝えた直後から、激烈な反応がありました(笑)。
植田 ありがとうございます! うれしいですね。

――新型PS Vitaも大きなインパクトがありました。今後のプロモーションはどのように進めていかれますか?

植田 やはり二軸があって、まずは“共闘”のフレームですね。従来、PSPからご支持をいただいている、マルチプレイでの遊びかたを継続して押し出すというのは、年間を通じてやっていきます。もうひとつは、新しいPS Vitaで、新しいカラーバリエーションや、薄く、軽く手軽になったという部分で、女性やカジュアル層の方々にも訴求していきたいと考えています。つまり、ベーシックな、ボトムとなる部分はしっかり続けつつ、プラスしていくということですね。

「単なる体験会ではなく、PS4でやりたかったことを伝える場を設けたい」

――ではPS4については、日本でのプロモーション戦略はどのようにお考えですか?

植田 やはりお客様に、PS4を触っていただく機会を増やさないといけないと考えています。全国で体験できるような場を設けられないかなども検討中ではありますが、まだ詳細はお伝えできておりません。全国キャラバンのような体験会だけではなく、我々がPS4でやりたかったこと・ビジョンをユーザーの皆さんにしっかり説明していかないといけないと考えています。

――確かに、メディアの情報を見ているだけでは、実感としては伝わらない部分もあるかもしれません。

植田 TGSは日本の皆様に向けての初めての試遊の場になりましたが、9月9日のカンファレンスまで日本の発売日や価格などもご案内できていませんでした。ただ、PS4には、本当にさまざまな機能があるんです、たとえばDUALSHOCK 4についているSHAREボタンは、PS4の特徴です。そして、ゲーム体験を共有する、というのはPS4のコンセプトのひとつですが、ゲームプレイをシェアするというのは、人によっては勇気がいることなのかもしれません。でも、実際に使っていただけると、これまでにない感覚を味わえて、きっと特別な体験になると思います。その楽しさの部分を伝えていかないとならないと考えています。

――SHAREは夢が膨らむ機能である一方で、「自分の下手なプレイを人に見せるなんて恥ずかしい!」などと考える人もいるかもしれませんね。

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植田 そうなんです。それに、シェアした映像に、多くの人がコメントしてくれればうれしくなると思いますが、あまり反応がなかったりする可能性もあります。でも、恐れずに、まずは体験してもらいたいですね。我々がやらないといけないと思っているのは、シェアすることの意味、楽しさというのも、体験していただくこと。これは、発売する前にやることが重要だと思っています。

――TGSでは、『deep down』実際にSHARE機能でUstreamに配信を実施していますよね。それを、ユーザーに実際に体験してもらおうということですね。

植田 はい。通常の体験会は、試遊台があって、操作説明しながら遊んでいただくだけですが、PS4では、もう一歩踏み込んで、たとえばSHAREボタンを押して投稿してもらい、その投稿した結果はどうなるのか、どんな意味が生まれるのかを体験してもらう。それこそが重要だと考えています。

――体験の場としては、最近はプレコミュイベントを盛んに開催されていますね。ああいった場を使ってさらに広げていくイメージでしょうか。

植田 プレコミュイベントも根付いてきていますし、年間を通じて続けて行こうと考えています。当然、プレコミュイベントでも、PS4、PS Vita TVの体験会もやろうと思っていますが、詳細は改めてご案内いたします。。

――プレコミュと言えば、ユーザーの声がダイレクトに届くという点が画期的ですが、PS4の日本における発売日については、かなりきびしい意見も多いですよね。熱烈なファンだからこその意見だとは思いますが……。

植田 河野もコメントしていますが、我々もいっしょで、本当に申し訳ないという気持ちです。日本のお客様にはいろいろなご提案をしていき、ひとつひとつ積み上げて、お客様の気持ちに応えていく。これを続けて行くしかない、と思っています。

「インディーズへのサポートはさらに強化していきます」

――PS4のロンチラインアップにもインディーズ系のダウンロードタイトルが3タイトル含まれていますよね。いままでにも、インディーズ系開発者へのサポートが表明されていますが、改めて、インディーズに対する戦略を教えてください。

植田 インディーズゲームは、日本でも作っている方はいらっしゃいますが、とくに海外ですごい勢いになっていますよね。そのインディーズゲームを、まず日本で発売していただけるような環境を作らないといけません。細かい話になりますが、レーティングの審査にはいろいろとハードルがあるんです。まずCESAの会員になる必要があって、そこに費用がかかりますし、タイトルの審査にも費用がかかる。ここが障壁になっている部分があるんです。我々ソニー・コンピュータエンタテインメントでは、そのハードルを取り払うことができるプログラムをご用意しているんですよ。

――それはSCEJAがサポートをするということですね。

植田 はい。かつて、海外のインディーズ開発者の方々に、日本のPSNストアでも販売をしてほしいということで、お声がけをしていた時期があったんです。でも、最初のうちは、お問い合わせも多かったのに、どんどん数が減っていってしまったんですよ。その理由を調査したところ、最初の障壁が高いせいで、採算が取れない、というケースが多かったんです。

――なるほど。開発規模の小さいインディーズゲームでは、メジャーパブリッシャーにとっては些細なことが、大きな障壁となることもあるんですね。

植田 ええ。ただ正直なところ、海外のインディーズ開発者に対するサポートという点では、SCEA、SCEEと比較して、SCEJAはまだまだ及ばないところがあって、我々としてはもっと強化していかないといけないと強く考えています。

――今回のTGSでも、そのための取り組みをいろいろと実施されていますね。

植田 TGS最終日となる9月22日の日曜日に、“INDIE STREAM”という開発者の交流イベントを実施します。そのためにSCEAなどのメンバーも来ていて、日本のインディーズ開発者の方々と交流してもらっているんですよ。海外のゲームを日本で出しやすくするとともに、日本のゲームも海外で出しやすくなるようにしないといけないと思っています。

プレイステーションのファンを増やすために

――先日、Gaikaiの技術を活用したPS3ゲームのクラウドサービスが、2014年に北米で開始予定だとのアナウンスがありました。日本においての、クラウドサービスのマーケティング的観点からの戦略はいかがですか?

植田 いろいろ々検討しているけれども、サービスに関する詳細はまだお話できません。もう少々お待ちください。

――最後に、新たなハードも登場して、プレイステーションフォーマットがさらに広がった感がありますが、今後ユーザーを増やしていくために、どんな戦略で臨まれるのか、お考えをお聞かせください。

植田 まずはこれまでプレイステーションを遊んでいただいていたお客様はもちろん、これからPS Vita、PS4、PS Vita TVをご購入していただいたお客様に、「これは本当にいいね」と思っていただくことが大事だと思っています。その方々が、「おもしろいから、あなたも買ってごらんよ」とまわりの方々を誘ってくれるような環境や雰囲気作りを進めていきたいですね。

PS4、PS Vita、PS Vita TV――新世代プレイステーションのプロモーション戦略をSCE植田浩氏に訊く【TGS2013】_02