『D4: Dark Dreams Don't Die』
2013年9月19日~22日に千葉県・幕張メッセにて東京ゲームショウ2013が開催(19日、20日はビジネスデイ)。会期中に日本マイクロソフトによる『D4』のプレゼンが行われた。今年の6月に行われたE3のメディアブリーフィングでは、アニメタッチのビジュアルでひときわ注目を集めていたXbox Oneタイトルの『D4』。開発を担当するのが日本のアクセスゲームズということで、記者も「おおっ!」と気になっていたゲームだが、とうとうそのベールを脱ぐ日が来たのだ。プレゼンを担当するのは、ディレクターのSWERY氏(末弘秀孝氏)。ディレクションを担当した『レッドシーズプロファイル』などにより、海外での評価も高い、日本のクリエイターだ。
さて、『D4』は正式タイトルを『D4: Dark Dreams Don't Die』という。略称が“D4”となる。タイトル以外にも、本作では“D”がいろいろなところで出てくるとこから、愛称として“D4”を使っていく予定なのだという。『D4』でまず言及しておかないといけないのが、新しいKinectでの操作を前提にしているという点。「コントローラーにも対応はしていますが、Kinectメインで遊んでいただきたいと思っています」とSWERY氏。ご存じの通り、新型Kinectでは、手を開く⇔閉じるを認識できるが、本作では、手を開く、手を閉じる、のほかに“ラッソ”(指を2本立てる)の3つのジェスチャーでの操作を実装。手を開いて、さまざまなオブジェクトを選択して、握ることで決定、ラッソは特殊なコマンドを行うことになる。そういった操作を行いながら、3D空間で人物やオブジェクトにアプローチをしながら、謎を解いていくことになるのだ。
ゲームの主人公は、超能力を持った私立探偵。超能力は“メメント”と呼ばれ、オブジェクトに触れることで、オブジェクトが持っている記憶を調べに実際に過去に行けるというもの。私立探偵は2年前に奥さんを亡くしており、その謎を解明するのが本作の目的だ。物語は、私立探偵が“メメント”を使って保安官バッチを読み、過去の飛行機の中に来るところからスタート。プレゼンでは、ハンドカーソルを使ってオブジェクトに触るところや、手を上に上げて顔を洗うといったデモが披露された。「実際にアクションに近い動きをさせることによって、その感覚を再現したいというのがコンセプトでした」とSWERY氏。ただ、顔を洗うのに実際と同じアクションをしたのでは疲れるだけ。本作では、そのへに配慮しており、ちょっとした動きでアクションを行えるようにしている。
オブジェクトに触ることで謎をたどり、物語を進めていくことになる本作だが、「どこに謎が隠されているか、わからない」という方のために用意されたのが“ビジョン”。“ビジョン”は、左右2本突き出した指をそれぞれこめかみに当てることで発動し、触るべきオブジェクトのヒントを示してくれるのだ。本作には“スタミナ”の要素があり、プレイするごとにスタミナを消費⇒食事をすることで回復、というゲームシステムを採用しているのだが、この“ビジョン”を駆使することで、食べ物も探しやすくなる。
もちろん、本作にはアクションも存在する。アクションは、いわゆるQTE(クイック・タイム・イベント)となっており、タイミングにあわせて動作することでアクションが発動する。プレイヤーの動きに準じたアクションを画面の指示にしたがって行うことで、まるで実際にプレイヤーがアクションをしているかのような感覚でゲームが楽しめるのだ。そして、クライマックスではスペシャルなポーズを取ることになる。SWERY氏いわく、そうすることによって「ここは重要ですよ」と強調する狙いがあるのだとか。デモのときは、バッティングのポーズをとること。悪漢との乱闘の末に、悪漢が投げたボールを主人公の私立探偵が、マネキンの足を使って打ち返す……というシチュエーションだ(なぜこんなシチュエーションが現出するのか不思議に思われるかもしれないが、いろいろあったのです! 詳細はゲームでご確認を)。
なお、本作はXbox Liveでエピソードごとの配信を予定しているという。つまり、テレビドラマを見るように、各話ごとに用意されたハラハラドキドキの展開を楽しむスタイルというわけだ。「もしかすると、ゲームユーザーからすると、“ええっ?”というところで終わる回もあるかもしれませんよ」とSWERY氏。各エピソードは、1話につきメインプレイで2時間を予定。そのほかに、サイドクエストや“自宅”でのプレイなども含まれるという。“自宅”というのは、主人公が現代に戻ったときに過ごす場所で、メタゲームなどが行えるとのことだ。
さて、せっかくの機会なので、気になる『D4』についてSWERY氏に聞いてみた。『D4』の企画が動き出したのは2010年。当初SWERY氏が設定した本作のコンセプトは“物語は感情移入、ゲームプレイは感覚再現”。ちょうど2010年はKinectが出たころで、「このコンセプトを実現するにはKinectしかない!」と、マイクロソフトにラブコールを送ったのだという。その後数々のプレゼン&ディスカッションをこなして、やっといまにたどりついたのだとか。最初はXbox 360でも考えていたが、タイミング的な兼ね合いもあり、最終的にはXbox One版でいくことになったのだという。「コンセプトにもっとも近い、感覚を再現するには新しいKinectが必要なのでは」という判断もあったという。「前世代のゲームだった場合、コントローラー+KinectでKinectがオマケ扱いとか、“コントローラーのほうが楽だね”という意見を聞くことが多かったと思うのですが、『D4』の場合は珍しく、Kinectでやったときのほうが評判いいんですよ」(SWERY氏)とのことで、新型Kinectのパフォーマンスを推し量るには、最適の1本と言えるのだろう。
独特なアートスタイルを採用している理由は、人気がでてシリーズが続いたときに、最初のエピソードが古臭くならないように……との配慮のほかに、Xbox Oneでは、ロンチ近辺はリアリスティックなビジュアルのゲームが集中するので、目立つために……との意図からだという。「スクリーンショット1枚を見ても、『D4』だとわかるようなアートスタイルがいいですね」ということで、いろいろと試行錯誤の末にできあがったアートスタイルだという。
エピソード単位での展開は当初からSWERY氏のプランだったという。本作を手掛けるまえにSWERY氏は、『Deadly Premonition』を開発していたのだが(日本未発売)、同作では各ステージがちゃんとおもしろくて、スタートとエンディングが途中途中でクリフハンガー(※)があるタイトルとして作ったのだという。それを活かして単品として販売する新しいスタイルで感情移入を表現してみたいと思ったのだという。
※クリフハンガー:ハラハラ状態のままで続きを迎える作劇手法
ちなみに、“スタミナ”をゲームデザインに盛り込んだのは、やみくもにアプローチするのではなくて、少し考えながらプレイしてほしかったのがひとつ。もうひとつが、ゲームプレイをしていると往々にしてお腹が減るが、そういう感覚をゲームに取り込むことで、ゲームの外のプレイヤーと中のキャラクターの結びつきを深めたい仕掛けでもあるという。感情移入のひとつだ。
『D4』の北米における発売時期は未定。各話がどのようなペースで、どれくらい配信されるかも、現時点では明らかにされてない。さらに日本発売は正式には決定していないが、当然日本発売はする方向性で動いているという。そんなわけで、日本のゲームファンに向けてのメッセージをお願いしたところ「今回、新しいKinectというデバイスを与えられて、すごくチャンスが広がったし、ゲームデザインの幅も広がったと思っています。そういう新しい可能性を含んだタイトルですので、ぜひとも体験していただいて、ゲームの可能性や、“昔のゲームってワクワクしたよね”という感覚を感じていただけたらと思っています。楽しみに待っていてください」(SWERY氏)とのこと。SWERY氏もゲームが大好きで、子どものころはゲームを遊んでいてワクワクしたそうだが、そんなゲームを意識しながらつねにゲームを作っているのだという。Kinectという新しいデバイスに、ワクワク感という“魂”が込められた『D4』。Xbox Oneの注目作として、押さえておいてソンはないだろう。