家中でプレイステーションとの接点を作りたい

 2013年9月19日~22日(19日と20日はビジネスデイ)、千葉県幕張メッセで開催中の東京ゲームショウ2013。ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジアブースでは、先日発表された薄く軽くなった新プレイステーション Vita(PCH-2000シリーズ)とプレイステーション Vita TV(2013年11月14日発売)が大々的に出展されている。

 ここでは、両ハードの開発に携わったソニー・コンピュータエンタテインメント SVC 兼 第2事業部 事業部長 松本吉生氏と同ソフト開発部 部長 島田宗毅氏、そして戦略・商品企画部 部長(ハードウェア、システムソフトウェア担当)兼 ハードウェア企画課 課長 渋谷清人氏に、それぞれのPS Vita商品の魅力を語っていただいた。

東京ゲームショウで新型PS VitaとPS Vita TVに触れてみよう! 両ハードの魅力を開発陣に訊いた【TGS2013】_01
▲写真左から島田宗毅氏、松本吉生氏、渋谷清人氏

――デザイン、いままでのプレイステーションハードと少し系統が違うような気がするのですが。

松本 PV Vita TVは、いままでプレイステーションでやってきてない展開をしていこう、というコンセプトのもと、簡単にテレビにつないで楽しんでいただくというのがポイントでした。ですので、なるべく小さくしてテレビの後ろに隠れるくらいのもの、というイメージで作られています。

――携帯ゲーム機は気軽に持ち運べてどこでも遊べる、一方で据え置き機は腰を落ち着けてテレビの前でリッチなコンテンツを楽しむ、という特徴があるかと思うのですが、携帯ゲーム機(のシステム)をあえてテレビにつなぐ、というのはある意味、ユニークな提案ですよね。どういった発想からPS Vita TVは生まれたのでしょうか。

島田 では、私のほうから開発経緯を説明しますと、開発することになった時期は、PS Vitaが発売に向けて最終コーナーを曲がったあたり……PS Vita発売の3ヵ月前でした。PS Vitaは携帯ゲーム機でありながら、非常にパワフルなゲーム機でもあったので、ほかの何かに転用できないか、という話になりました。いろいろ企画が出たのですが、形になったのが今回のPS Vita TVとなります。おもにカジュアルなユーザー層をターゲットにしていますので、存在感を打ち出さない、「どこにあるんだっけ?」と思われるくらいのデザインになっています。

渋谷 テレビに溶け込んでいるくらいの感覚でPS Vita TVに接していただきたいんです。ですので、色も白、そしてより小さく、というところにこだわりました。ハードの存在感を感じていただくよりは、“プレイステーションでの体験”自体を感じていただきたいんです。

――小さく設計するに当たって苦労もあったのでは?

松本 そうですね。社内では開発に関しては「妥協するな」という姿勢でしたので、コンパクトにすることには徹底的にこだわりました。開発設計の担当はたいへんだったと思います。

――PS Vitaの基板を多少コンパクトにして、といった簡単なものではなかった、と。

松本 もちろんです。PS Vita TV用に再設計しています。最初、形になったものはもう少し大きかったのですが、「限界までやれ!」と(笑)。

――歴代のSCEのハードというのは、相当なこだわりが詰まっていましたが、PS Vita TVも同様なんですね。さきほど、カジュアル層というお話がありましたが、価格も10000円を切る戦略的な価格になって、かなりお手頃感がありますね。

松本 PS Vita自体も次第にコストダウンできていますが、かなりがんばりました。

渋谷 かつてゲームは楽しんでいたけれど、最近は少し離れてしまったという方々にとっては、据え置きハードはなかなかお手軽に購入しづらいと思うんです。ですが、10000円を切る価格のコンパクトな商品なら、店頭で見て気に入っていただければ、気軽にサッと購入し、ゲームを楽しんでいただけるのではないかと考えました。ゲームは初代プレイステーションのアーカイブス、PSP、PS Vita、そしてPS4があればリモートプレイでPS4のタイトルも遊ぶことができます。我々のイメージとしては、リビングではプレイステーション4、ほかの部屋のテレビにはPS Vita TVで遊んでいただく。家中でプレイステーションとの接点を作りたい、ということなんです。

――基調講演では、PS4のゲームをリモートプレイで遊ぶデモも公開されました。

島田 基調講演でも触れられましたが、PS Vita TVはPS4のDUALSHOCK 4にもアップデートで対応します。また、PS4ではシステム面からリモートプレイをサポートしているので、PS3でのリモートプレイより快適に利用できるようになっています。

――PS Vitaのタイトルには、前面のタッチスクリーン、背面パッドなどDUALSHOCK 3にはない操作法を持つ作品もありますが、そういったPS Vita特有の操作を持つタイトルなどは、どういった操作になるのですか?

島田 PS Vitaのセンサーデバイスでの操作を前提に作られた一部のソフトは対応できなかったり、ゲーム内の一部モードが遊べないタイトルもあります。ただ、画面上に手や指のカーソルを表示させ、タッチさせるような機能も用意していますので、それで対応できるタイトルもあります。基本的には、ソフト側でDUALSHOCK 3でも操作できるよう、パッチを当てるなりして、対応していただくことになると思います。

――新型PS Vitaについてうかがいます。大きな変更点として、パネルが有機ELから液晶に変わりましたが、河野弘プレジデントからは薄型化、軽量化、そしてバッテリーの持ちなどを考慮して液晶を選択することになったとうかがいました。

松本 たしかにそれらが大きな理由ですね。今回は薄さ、軽さ、それに伴ってカジュアルさも出していきたいと思っていました。では、有機ELと液晶はどう違うんだ、と思われる方も当然いらっしゃるでしょうが、最近の液晶は性能が上がっていますし、量産性を含めて安定性も高い。いろいろなテストを経て、液晶を選択しました。ただ、有機ELの3G/Wi-Fiモデルはこれからも販売されますので、お好みで選んでいただければと思います。

――ユーザーにとっては選択肢が増えたということですね。

松本 そうですね。

――実際に持ってみると、薄く軽くなったことが実感としてすごく感じられます。

渋谷 そうなんです。とは言え、持っていただかないとなかなか伝わりづらいんですよね。東京ゲームショウのSCEJAブースでは、すべてのPS Vitaタイトルは新型PS Vitaでお試しいただけるので、ぜひ実際に触れていただきたいですね。

――カラーバリエーションも豊富になり、女性ユーザーも増えそうですね。

渋谷 過去に、プレイステーションのハードは、PSPを含めていろいろなカラーバリエーションを出させていただいていますが、その実績を考慮し、今回の新型PS Vitaのカラーバリエーションはどんなカラーを何色用意するか、設計や営業のチームなどさまざまなチームといろいろ議論し、今回のカラーに決定しました。

――ソフト面でも共闘プロジェクトで盛り上がっていますし、『モンスターハンター フロンティアG』のPS Vita版も発表されてものすごい反響となっています(関連記事は→こちら)。いよいよPS Vitaが勢いに乗ってきた印象です。

松本 2月の価格変更に加え、パブリッシャーさん、デベロッパーさんがタイトルをたくさん作っていただけている状況ができています。さらに今回、新型PS Vitaでユーザーさんを広げる幅広い戦略を取りながら、ポータブルだけではなくてPS Vita TVという提案できたことをうれしく思います。

――では、最後にひと言お願いします。

松本 新型PS Vitaはカジュアルなカラー、大きさも含め、いろいろな点で自信作です。これを機会に、まだお持ちでない方はぜひお買い求めいただきたいなと思います。

島田 ゲームショウのブースでは、新型PS VitaとPS Vita TVの両方を使ったアドホック通信によるマルチプレイも可能になっています。ひとりはテレビを見ながら、ほかの3人はPS Vitaを見ながらプレイするというのは新しい体験じゃないかなと思いますので、ぜひお試しいただければ。PS Vita TVはビデオサービス等いろいろと楽しめる商品ですが、まずはこれから年末にかけてのゲームをぜひ楽しんでいただければと思います。

渋谷 新型PS Vita、PS Vita TVも含め、SCEは今後もPS Vitaプラットフォームに関して新たな展開をやってきたいと思っています。新型PS Vitaに関しては、一度手に取って、そのよさを実感していただきたいですし、PS Vita TVに関しては、新たなゲームスタイルを体験していただきたいですね。