まずはシリーズ全体をおさらい!

 ユービーアイソフトから、2013年9月5日に『スプリンターセル ブラックリスト』が発売された。本作はWii U/プレイステーション3/Xbox 360用ソフトで、前作『スプリンターセル コンヴィクション』よりじつに3年ぶりの新作となる。

 「シリーズの名前は聞いたことあるけれど……」という人に向けて、まずは本シリーズの概要から紹介していこう。2003年に登場した初代『スプリンターセル』は、潜入捜査のエキスパートである“サム・フィッシャー”となって、さまざまな任務を行う三人称視点のステルスアクション。『レッド・オクトーバーを追え!』をはじめ、名作を書き続けてきた軍事作家トム・クランシー氏が監修を担当し、緊迫感あふれるストーリーや実在のガジェットが登場するリアルな設定で注目を集めたのだ。

 以後『スプリンターセル』はシリーズ化され、最新作『スプリンターセル ブラックリスト』では、新たなるサムの活躍が描かれる。というわけで、さっそくインプレッションをお届けしよう。ちなみに今回の記事は、プレイステーション3版を用いて作成している。

今度のサムは、潜入だけでなく大暴れもアリ!? 『スプリンターセル ブラックリスト』プレイインプレッション_03
▲シリーズ通しての主人公であるサム・フィッシャー。さまざまな武器/ガジェットを使いこなす敏腕エージェントだ。
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▲本シリーズは、三人称視点のステルスアクション。主人公サムとなり、さまざまな場所へ潜入するのだ。

サム率いる特殊組織“フォースエシュロン”始動!

 本作はシリーズ物のため、まずはバックグラウンドから解説していこう。シリーズ通しての主人公であるサム・フィッシャーは、長らく特殊部隊“サードエシュロン”のエージェントとして活躍してきた。だが任務に嫌気がさしたサムはサードエシュロンと決別、新たな人生を歩むことを決意する。ちなみに、古巣であるサードエシュロンとの対決は、前作『スプリンターセル コンヴィクション』で描かれている。気になった人はプレイしてみるといいだろう。

 というわけで落ち着いた生活を手に入れたサムだったが、安息の日は長くは続かなかった。今作では、“エンジニア”と名乗るテロ組織がアメリカを襲撃。世界各地に派遣されているアメリカ軍すべてを引き上げさせることを要求してきたのだ。この事件を解決すべく、アメリカ合衆国政府はサムをリーダーとした新たな組織“フォースエシュロン”を結成。かつてフランクリン・ルーズベルトが提唱した4つの自由に加え、新たに“法律にさえ縛られない第5の自由”がサムに与えられた。世界を転戦し、エンジニアの調査およびテロを阻止することが、サムの今回の任務というわけだ。

 このように、『スプリンターセル』はサムの活躍が描かれているシリーズだが、過去作から直接引き継がれているストーリーではないため、本作からプレイしても十分に楽しめる。ちなみにグリムやコビンといった、懐かしい面々も登場するので、シリーズのファンならばさらに楽しめる仕掛けも用意されている。

 なお今作では、サム率いるフォースエシュロンは“パラディン”というステルス飛行機を本拠地としている。このパラディン内部にあるSMI(ストラテジック・ミッション・インターフェース)というシステムにアクセスし、各種任務にチャレンジするのだ。

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▲拠点であるパラディン内部。グリムやチャーリーなどの仲間と会話したり、サイドミッションを受けることができる。
▲このSMIマップから各種ミッションにアクセスする。このマップ上で特定のポイントを見つけ出す“極秘任務”ミッションも存在する。

サムの格好いいアクションをたっぷり堪能せよ!

 ここからは、ゲームシステムについて解説していこう。実際のミッションは、三人称視点のシューティング、いわゆるTPSスタイルで進行。物陰に隠れるカバーアクションや、多彩なガジェットを活用して任務達成を目指すのだ。

 任務はミッションごとに異なり、対象人物の確保や敵拠点の襲撃などさまざま。ミッション中に緊急事態が発生して急遽目的が変更、なんて場合もあり、緊張感あふれる物語を楽しむことができる。

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▲敵の罠にハマってしまい、大至急脱出する、なんてハラハラな展開も!
▲多彩なガジェットを活用できるのもシリーズの魅力。小さなラジコンのようなガジェット“トライローター”を飛ばして屋内を偵察せよ!

 個人的に気に入ったのは、なんといってもサムの格好良さ! 窓からぶら下がって待機し、通り過ぎる敵を落下させたり、パイプを登って天井に張り付いたり、そこから落下して地上の敵を一撃で倒す、などなど……“人間兵器”といわれるだけある、サムの超人的なアクションをたっぷり堪能できる。ミッションが成功したときの“俺って最強エージェント!”感は最高である。

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▲敵に気づかれぬよう背後から近づき、一気にステルスキル! ステルスアクションの醍醐味ともいえる倒しかただ。
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▲窓からぶら下がって様子をうかがい、近づいてきた敵を窓の外へ放り投げる、なんてシビれるアクションも可能。

 そんな格好いいサムのアクションのなかでも、トップクラスのイカしているのが“マーク&エクスキュート”だ。これは、あらかじめマークをつけた最大3体の敵を、△ボタンを押すだけで格好良く倒せてしまう特殊アクション。使用するには、敵を倒すと溜まるゲージが必要だったり、敵が射程内にいる必要があるなど、多少発動条件に制限はあるが、その格好良さは一度味わえばヤミツキ。ボタンひとつで最大3体の敵を確実に倒せるという、実用度の面でもトップクラスだ。

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▲最大3体の敵にマークをつけることが可能。敵が壁の向こうにいてもマークは表示されるため、簡易レーダーとしても活用できる。
▲ゲージが溜まっていれば、△ボタンを押すだけでマークした敵を仕留められる。前作に登場した“マーク&アクション”とほぼ同様のシステムだ。

自分好みの戦術スタイルを貫き通せ!

 さきほどの“マーク&エクスキュート”で気づいた人もいるかもしれないが、本作はステルスアクションにも関わらず、さまざまなプレイスタイルで楽しめるのが大きな特長。まったく敵に気づかれず潜入し、ひとりも倒さずに目的を達成するプレイスタイルはもちろん、アサルトライフルを撃ちまくって暴れ回るプレイも可能なのだ(一部、敵に接触するとゲームオーバーになるミッションも存在する)。

 このプレイスタイル(戦術スタイル)はゲームシステムで3種類に分類されている。敵に発見されず、また殺害せずに進んだ場合は“ゴースト”、敵に発見されずに倒した場合は“パンサー”、敵に発見されたあとで倒した場合は“アサルト”という具合に、敵の対処方法によって各スタイルのスコアが増えていくのだ。

 ミッション終了時には各スタイルの評価が表示され、それに応じて報酬が支払われる。さらに各スタイルで一定以上のスコアを獲得すると、そのミッションでその戦術スタイルを“マスター”したことになる。すべてのミッションで各戦術スタイルのマスターを目指す、といったやり込み要素も用意されているわけだ。

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▲ミッション終了時に、各戦術スタイルのスコアが表示される。スコアアタック要素も楽しめるのだ。
▲ミッション選択時の画面で、各スタイルをマスターするための目標スコアを確認可能。ひとつのスタイルを貫き通すのが達成のコツだ。

 ちなみに、敵への対処方法も何通りも存在する。敵がひとりになるタイミングを見計らって始末してもいいし、物音を出しておびき寄せ、そのスキに突破するのもアリ。まったく異なるルート、たとえば通風口を通り抜けたり天井のパイプにしがみついて、敵そのものをスルーすることも可能。単に上手に敵を倒すだけではなく、多彩な解決手段を発見/検討し、それを実行する楽しさも味わえるのだ。

 さらに、隠しルートを発見したり、ノートパソコンからデータを集めるという探索要素も存在。ひとつのミッションを、さまざまな角度から何度も楽しめるように作り込まれているのだ。

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▲重要情報を見つける“デッドドロップ”、目標人物を生け捕りにする“重要ターゲット”といったサブ目標があることも。達成すればボーナスを獲得できる。
▲意外な場所に抜け道があったりと、マップを探索する楽しさも味わえる。攻略にも役立つのはうれしい。

装備やガジェットを強化して戦いの幅を広げる

 続いて、さまざまなパワーアップ要素について述べていきたい。サムはメイン武器であるピストルのほかに、アサルトライフルやショットガンなどのサブウェポンひとつを装備可能。さらに各種グレネードやカメラなどのガジェットも利用可能だ。

 これらの装備やガジェットといったギアは、任務で得た報酬で購入することができる。たとえば催眠ガスを購入すれば、より簡単に敵をスルーできるといった具合に、プレイを重ねるごとに戦術の幅が広がっていくのだ。サムのスーツも購入でき、こちらは防御力や隠密性が向上する。さきほどのゴーストやパンサーといったスタイルでのバトルが、より行いやすくなるのだ。

 こうして購入した武器やガジェットは、一部を除きアップグレードも可能。たとえばピストルであれば、レッドドットサイトをつけて命中率を向上させたり、弾薬を替えて威力を向上させる、といった強化が可能。お気に入りの装備を強化し、より使いやすくカスタマイズすることもできるのだ。

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▲武器やガジェットなど各種装備を購入/装備することが可能。一部のギアは条件を満たさないと購入できない。
▲一部のギアを除き、各種装備はカスタマイズすることもできる。自分好みに調整するのだ!

 さらに、フォースエシュロン本部であるパラディンのアップグレードも可能。たとえば操縦席をアップグレードすると、HUDレーダーがアンロックされて画面にミニマップが表示されるようになる。ほかにも新たな装備がアンロックされたり、体力の回復速度が向上するなど、サムの底力を引き上げる内容が多い。

 このように本作では、サムの装備のみならず本部の飛行機までもがアップグレード可能。強化の選択肢が多いため、どれからアップグレードさせるかアレコレ悩むのもまた楽しいのだ。ミッションに持ち込める装備の数は限られているため、任務内容に応じて装備をカスタマイズしていく楽しさも味わえる。

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▲グリムに話しかけるとパラディンの各部屋をアップグレードすることが可能。強化する部屋によって、さまざまな恩恵が受けられるのだ。

ステルスアクションが気になる人は文句なくオススメ!

 今回紹介した以外にも、さまざまな要素が詰め込まれている本作。たとえばメインミッションとは別に、グリムやチャーリーから受けられる“4E ミッション”というサイドミッションが存在。こちらは協力プレイに対応しており(ブリッグスのミッションのみ協力プレイ専用)、オンラインやオフラインでフレンドとワイワイ楽しめる。

 さらに、サムとは異なる傭兵またはスパイとなり、相手チームと戦うオンラインモードも存在する。こちらはシングルプレイとは異なるレベルや装備が存在し、オンラインで戦ってレベルを上げ、キャラクターを強化していく楽しさも味わえるのだ。これらのオンライン要素は、次回のインプレッションでまとめて取り上げたい。

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▲敵の波状攻撃を退ける、発見されずに盗聴器を仕掛けるなど、本編とはひと味異なる内容の4E ミッション。
▲さまざまな目標を達成するとボーナスが受け取れる、“シャドウネット”というやり込み要素も。

 3年ぶりに登場した『スプリンターセル』シリーズ最新作。ステルスアクションというシリーズの中核は残しつつ、現在のトレンドを取り込んだため、前作『スプリンターセル コンヴィクション』と同様、とても遊びやすいゲームに仕上がっている。これまでサムの人生を体験してきたファンはもちろん、ステルスアクションに興味がある人にもぜひ遊んでほしい完成度だ。序盤はちょっと難しいかもしれないが、格好良く任務を遂行するサムのファンになってしまうこと請け合いだ。


筆者紹介 喫茶板東
ファミ通Xbox 360で海外ゲームマニアックス、実績解除愛好会などを担当していたフリーライター。前作あたりからサムの暴れっぷりに拍車がかかっている印象ですが、これはこれでオモシロ格好いいからいいじゃない!



スプリンターセル ブラックリスト
メーカー ユービーアイソフト
対応機種 X360Xbox 360 / PS3プレイステーション3 / Wii UWii U
発売日 発売中
価格 各7770円[税込]
ジャンル アクション / 諜報