オンライン広告を活用したマーケティングとは!?

 2012年8月21日~8月23日の3日間、神奈川県のパシフィコ横浜・会議センターにて、ゲーム開発者の技術交流などを目的とした“CEDEC(コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス)2013”が開催されている。

 開催2日目となる8月22日、セッション“欧米における最新デジタルマーケティング ~世界が熱狂するゲームトレーラー~”が行われた。本セッションは、グーグル株式会社(以下、Google)の広告営業部門メディア&エンターテインメント業界担当している定元邦浩氏が登壇。定元氏は、Google入社以前にフロム・ソフトウェアやバンダイネットワークス、バンダイナムコゲームスにて新規ゲーム開発や新規事業の立ち上げなどを担当している経歴の持主。その彼がゲーム業界に向けて参考になるオンライン広告の海外の事例を中心に紹介し、オンライン広告の効果的な活用法を明かした。会場には、ゲーム開発者はもちろん、マーケティング担当者も参加した。

マーケティング活動は買わない人を買う気にさせることが重要

まず定元氏は、Googleで検索されている単語の動向がわかるGoogleトレンド(→コチラ)で人気の商品の検索量をグラフで把握できることを紹介。これを世界最大の小売り“WAL★MART”が活用して販売商品の検索量を調査して仕入れ量を決めていることや、お店を作った場合は大きな駐車場を作って購入者を増やしている事例を明かした。その上で、マーケティング活動というのは「買わない人を買う気にさせることが重要」とのこと。ゲームを買う気にさせるには、ショーなどで大きなスクリーンで動画を見せることや試遊台で体験させる現在の手法も大切だが、それだけでは買う人にアピールしているだけになっている。

現代のマルチスクリーン時代にあわせ、広告もマルチ展開が必要

 オンライン広告とテレビCMについて定元氏は、現状のインターネットのバナー広告はクリック率が0.1%にすぎず、この数字を気にしすぎても意味がないことや、テレビCMの15秒程度で商品の魅力を語るには少なすぎると語った。しかし、このふたつを両方同時に行うことで、テレビCMでは接触しにくかった若い層にアプローチできるようになるとデータとともに紹介。さらにYouTubeとテレビCMの両方を使ったクロスメディアキャンペーンの調査も披露し、この両方に触れた人ほど、広告についての評価や内容の理解度が高まる。そして最近の人は、テレビをつけながらPCで動画サイトを観て、スマートフォンをいじっている傾向があるので、「マルチスクリーンを制する者が広告を制する」と現代の生活スタイルにあわせたマーケティングが重要と語った。

 ここまでのまとめとして、

(1)すべてのものがオンラインにつながる時代
(2)買わない人を変えることを考えよう
(3)クリック率を気にすることはない
(4)TVだけではなくマルチスクリーンで伝える

と紹介した。

動画サイトYouTubeのおもしろ広告事例

 続いて、YouTubeを使った画期的な広告例の数々を披露しながら解説していった。

・『クマ・トモ』(→コチラ
ニンテンドー3DS用『クマ・トモ』をPC用YouTubeで体験できるようにしたもの。映像内のメニューなどをリンク機能でクリックできるようになっていて、クリックしていくと、ゲームを体験できる。

・“Peugeot 208 : Interactive Experience”(コチラ
浮気をした男性になって物語を楽しんでいく動画。途中で表示される“YES・NO”をクリックしていくと物語が変化していく仕組みになっている。

・『TANK! TANK! TANK!
Wii U用『TANK! TANK! TANK!』のYouTube広告。画面上のボタンをクリックして、迫りくる敵を攻撃できるようになっていた。期間限定で配信されていたが公式サイト(→コチラ)で体感できる。

・“Hunter and bear's 2012 birthday party”(→コチラ
修正テープのメーカーの広告で、狩人と熊との誕生パーティーの最中に隕石が迫ってきており、年号を入れることでタイムスリップしていろんな映像が楽しめるもの。現在は、年号の入力はできない。

・“わくわくゲームチャンネル”(→コチラ
YouTubeは動画を見終わると、さまざまな関連動画が表示されて、別の動画に飛ばれてしまう可能性もある。そこで興味を持ったお客さんを逃がさないために、子供向けゲームの動画を見られる“わくわくゲームチャンネル”では、映像の終わり10秒間に、同チャンネルのリンクを貼った静止画のような画面を用意。それを子供が映像が終わったと思わせて、自然とクリックするように仕向け、同社の別のゲーム映像を何度も観てもらえる工夫をしている。

 ほかにも、Tefalのコードレスアイロン“Free Move”の動画でバンジージャンプをする人の顔を自分や知人の顔にできたりすることなど、いくつかの事例を披露した。さらに、YouTubeでは動画の開始時にCMが流れることもあり、5秒たつとクリックして飛ばせるようにもなっているが、そのCMの中には、5秒後も続きが観たくなるような映像にしてある事例も紹介した。

おもしろいゲームは、広告もおもしろい!

 今後、ゲームがオンラインでどんどん買えるようになっていくと、マーケティング担当は数字だけを見て、効果のあるところだけに広告を出すようになっていく傾向がある。それだけでは、ゲームファンに向けたマーケティングになってしまい、ファンが先細りして、ゲーム業界はコアなファンだけになってしまう恐れがある。それでは、テレビCMをすればいいかというと、15秒程度ではゲームのおもしろさを知ってもらうには難しい。そこでオンライン広告も活用して多くの一般の層にもゲームの魅力を伝えていく必要がある。

 最後定元氏は「おもしろいゲームを作ったのなら、広告もおもしろくして、クリエイティブ性でほかと差をつける必要がある」と熱く語った。

text by 川村和弘