ゲーム作りが変わる!? プレイステーション4の可能性

 2013年8月21日(水)14:50から、“新時代到来:諸兄、ゲームつくろうぜ! ~PlayStation4のビジョン、気持ちよく作れる製作環境~”と題するセッションが開催。インディー制作を含む、これからゲーム制作を検討している人たちに向けて、プレイステーション4のゲーム制作環境の概要が明かされた。余談だが、開場の30分以上前から長打の列ができるほどの人気セッションで、プレイステーション4に対する開発者の期待の高さが伺えた。

“新時代到来:諸兄、ゲームつくろうぜ!”――プレイステーション4とともに到来する、ゲーム開発新時代!【CEDEC 2013】_01
講師を務めたSony Computer Entertainment Japan Asiaの秋山賢成氏。

 登壇したのは、Sony Computer Entertainment Japan Asiaの秋山賢成氏。秋山氏はまず、PS4のアーキテクチャとマシンスペック、コンセプトを改めて紹介。非常にパワフルでメモリも潤沢であることに加えて、デベロッパーにとって使いやすいアーキテクチャであることを強調した。

“新時代到来:諸兄、ゲームつくろうぜ!”――プレイステーション4とともに到来する、ゲーム開発新時代!【CEDEC 2013】_02
“新時代到来:諸兄、ゲームつくろうぜ!”――プレイステーション4とともに到来する、ゲーム開発新時代!【CEDEC 2013】_03

 つぎに、新型コントローラのDUAL SHOCK4を紹介。DUAL SHOCK3のボタンや機能はすべて包括したうえで、新たなデバイスや機能がいくつか加えられている。その中でも印象深いのは、解像度1920*754、2点のマルチタッチを行えるタッチパッドが付属していること。クリッカブルな“押す”アクションや、フリック、ピンチ、ツイスト等の入力により、プレイステーション Vitaのようなジェスチャー体験が実現できるという。

 また、新たに“SHAREボタン”が追加され、ゲームプレイヤーはSHARE機能へのアクセスが可能となっている(詳細は後述)。マイクロフォンソケットとヘッドセットも標準装備で、すべてのユーザーがボイスチャットや音声認識を体験できることも特徴だ。加えて、データ転送がリニアになり、繊細な動作が可能になったほか、専用のスピーカを内蔵。細かいところではプレイステーション4がスタンバイ状態であっても充電が行えるという改善点もある。

“新時代到来:諸兄、ゲームつくろうぜ!”――プレイステーション4とともに到来する、ゲーム開発新時代!【CEDEC 2013】_04
“新時代到来:諸兄、ゲームつくろうぜ!”――プレイステーション4とともに到来する、ゲーム開発新時代!【CEDEC 2013】_05
“新時代到来:諸兄、ゲームつくろうぜ!”――プレイステーション4とともに到来する、ゲーム開発新時代!【CEDEC 2013】_06
▲曲線的なデザインになり、より指にフィットするように。アナログスティックも遊びが減って操作しやすく改善。
▲SHAREボタンを使えば、スクリーンショットの撮影や動画の録画、編集や生中継などが簡単に行える。
▲カラフルなライトバーも特徴。青、赤、緑、ピンクのカラーを切り替えたり、点滅させることができる。

 続いて秋山氏は、PlayStation Cameraの機能を説明した。高解像度化、視野角の拡張、安定化などが従来から向上したポイントで、チルドセンサーや4つのアレイマイクも搭載。カメラ専用のゲームも作れるだろうが、基本的には通常のゲームと組み合わせることで、ユーザー体験を強化する使いかたを想定しているようだ。たとえば、二眼レンズでユーザーのいる場所を精密に測定し、ゲームキャラクターがユーザーを見て話しかけたり、プレイヤーの顔認識によるシステムログインなどへの応用が期待できる。

“新時代到来:諸兄、ゲームつくろうぜ!”――プレイステーション4とともに到来する、ゲーム開発新時代!【CEDEC 2013】_07
▲PS Moveと組み合わせることも可能。より臨場感の高いゲーム体験を満喫できそうだ。

開発者への支援も徹底! 高性能で素直なハード

 つぎに秋山氏が解説したのは、従来のクロスメディアバーを拡張した、PlayStation Dynamic Menuという新UIだ。概要としては、個々のユーザー向けに情報がリアルタイムに更新され、ゲーム情報、ビデオ、DLC、友だちのコメントやリコメンド等が自動配信される仕組みで、「自分に関するすべての情報が集まる場所」と秋山氏は表現した。

“新時代到来:諸兄、ゲームつくろうぜ!”――プレイステーション4とともに到来する、ゲーム開発新時代!【CEDEC 2013】_08
“新時代到来:諸兄、ゲームつくろうぜ!”――プレイステーション4とともに到来する、ゲーム開発新時代!【CEDEC 2013】_09
▲中央の横軸にコンテンツメニューが並んで表示され、ライブエリアにフォーカスされたコンテンツが表示される。
▲ゲームを機動しなくても、ゲームの情報を入手できる。ゲームの詳細やフレンドのトロフィーなども閲覧できる。

そして、話題はプレイステーション4のキーとなるソフトウェア機能へと移行。このときにピックアップされた項目について、個別に詳しく見ていくことにしよう。

【フレンドシステムの改善】
これまでのプレイヤーデータはオンラインIDとアバターのみだったが、プレイステーション4では実名とプロフィール写真を既存のアカウント情報に付与できる。ただし、実名に関しては、フレンド同士での承認が必要。フレンド枠は100人から2000人へと大幅に増えている。

“新時代到来:諸兄、ゲームつくろうぜ!”――プレイステーション4とともに到来する、ゲーム開発新時代!【CEDEC 2013】_10

【シェア機能】
プレイステーション4のゲームプレイ中は、ゲームリソースを消費することなく、専用のエンコーダーがつねにプレイ動画を録画をしている。ゲーム開発者は任意のポイントにチャプターマーカーを打つことができ、ユーザーはそれを参照して映像を自由に編集が可能になるという。ここで役立つのが、先ほど説明したSHAREボタンだ。このボタンを介して、プレイヤーはスクリーンショットの撮影、ビデオの録画や停止、シェアメニューへのアクセスを行える。最後のシェアメニューというのは、ビデオやスクリーンショットを共有するためのメニューで、FacebookやTwitterなどへ投稿できる。

“新時代到来:諸兄、ゲームつくろうぜ!”――プレイステーション4とともに到来する、ゲーム開発新時代!【CEDEC 2013】_11

【ゲーム観戦】
SHAREボタンを介した、ゲームの生中継や視聴を行える機能。配信中の生中継が一覧表示されるので、好きなものを選択すると視聴が始まる。配信ユーザーはカメラがあれば自分の表情を映すことが可能で、右側には視聴者のコメントが流れていく。ゲームプレイの実況は動画サイトで一定の人気を博しているが、PS4本体にシステマチックに組み込まれているというのが興味深い。ゲーム制作者側が用意した選択肢を表示する投票機能もあり、たとえば視聴者が応援したいチームを選び、いちばん人気のチームにはアイテムが贈られる、などの遊びも可能。視聴者は見ているだけでなく、ゲームに介入できるのが新しいポイントになっている。

“新時代到来:諸兄、ゲームつくろうぜ!”――プレイステーション4とともに到来する、ゲーム開発新時代!【CEDEC 2013】_12

【リモートプレイ】
プレイステーション4のリモートプレイは、プレイステーション Vitaに対応。ゲームのリソースは必要ないため、基本的にすべてのゲームで利用可能になるようだ。Gaikaiの技術を利用しており、レイテンシー(遅延)はこれまでよりも抑えられているという。

“新時代到来:諸兄、ゲームつくろうぜ!”――プレイステーション4とともに到来する、ゲーム開発新時代!【CEDEC 2013】_13

【マルチユーザサポート】
これまではゲームを起動後は、起動したユーザーのシングルプレイが基本だったが、プレイステーション4では友だちの家などでも、自分のアカウントを入力して簡単にマルチログインができる。

“新時代到来:諸兄、ゲームつくろうぜ!”――プレイステーション4とともに到来する、ゲーム開発新時代!【CEDEC 2013】_14

【Companion App】
PlayStation AppというアプリををAndroid/iOS向けにリリース。このアプリでフレンドとのチャット、フレンドの情報確認や動画閲覧、メッセージングなどが行える。家庭内LANと接続し、スマートフォンをセカンドスクリーンとして使うことも可能だ。また、ゲーム専用のCompanion Appを開発者がリリースすることもできる。

“新時代到来:諸兄、ゲームつくろうぜ!”――プレイステーション4とともに到来する、ゲーム開発新時代!【CEDEC 2013】_15

【Play As You Download】
PlayStation Networkで購入したゲームを、すぐに遊べるようにするための新機能。近年のゲームは容量が肥大化し、ダウンロードにも長い時間がかかるものが増えている。そこで、最小限の部分をダウンロードしてインストールすればすぐに遊べるようになる。残りのデータは、ゲームを遊びながらバックグラウンドでダウンロードとインストールが行われる仕組みだ。

“新時代到来:諸兄、ゲームつくろうぜ!”――プレイステーション4とともに到来する、ゲーム開発新時代!【CEDEC 2013】_16

最後に秋山氏は、開発者から見たプレイステーション4という視点で、対応している開発環境やミドルウェアを紹介。開発環境を支える高性能なCPU/GPU、豊富で高速なメモリを有するプレイステーション4は、「現世代で実現したかったこと」が簡単にでき、「素直なアーキテクチャなので、プロトタイプを作るのが早い」ハードであると結論づけた。

“新時代到来:諸兄、ゲームつくろうぜ!”――プレイステーション4とともに到来する、ゲーム開発新時代!【CEDEC 2013】_17
“新時代到来:諸兄、ゲームつくろうぜ!”――プレイステーション4とともに到来する、ゲーム開発新時代!【CEDEC 2013】_18
“新時代到来:諸兄、ゲームつくろうぜ!”――プレイステーション4とともに到来する、ゲーム開発新時代!【CEDEC 2013】_19
“新時代到来:諸兄、ゲームつくろうぜ!”――プレイステーション4とともに到来する、ゲーム開発新時代!【CEDEC 2013】_20

 それを証明するように、リソース消費を気にせず作成した開発デモを公開。フェイシャルにたくさんのボーンを組み込んだキャラクターが映し出され、自然かつ豊かに変化する表情が確認できた。これまでは“使うかどうか”で決断を迫られたポストエフェクトなども、処理の重さを気にせず重ねがけできるとのことだ。

“新時代到来:諸兄、ゲームつくろうぜ!”――プレイステーション4とともに到来する、ゲーム開発新時代!【CEDEC 2013】_21
“新時代到来:諸兄、ゲームつくろうぜ!”――プレイステーション4とともに到来する、ゲーム開発新時代!【CEDEC 2013】_22
▲今回のセッションのために作成されたキャラクターの開発デモ。作成期間は3日ほど。

 最後に秋山氏は、プレイステーション4に興味を持った開発者がゲームを出す手段として、SCEがこれまで行ってきた取り組みを紹介。今後も技術サポート、ビジネスサポート、教育、クリエイター支援などを積極的にやっていく意志を来場者に力強く伝えた。機能面はもちろん、サポート体制も万全のようで、来場していた開発者には非常に魅力的な開発環境に映ったのではないだろうか。

“新時代到来:諸兄、ゲームつくろうぜ!”――プレイステーション4とともに到来する、ゲーム開発新時代!【CEDEC 2013】_23
“新時代到来:諸兄、ゲームつくろうぜ!”――プレイステーション4とともに到来する、ゲーム開発新時代!【CEDEC 2013】_24
“新時代到来:諸兄、ゲームつくろうぜ!”――プレイステーション4とともに到来する、ゲーム開発新時代!【CEDEC 2013】_25
“新時代到来:諸兄、ゲームつくろうぜ!”――プレイステーション4とともに到来する、ゲーム開発新時代!【CEDEC 2013】_26
▲個人開発者などには負担になりそうな開発ツールの価格面でも、リースや分割払いを検討しているという。

※セッションに使われた素材にはイメージ画像、または開発中のものが含まれています。