開発側の予想をはるかに超えたユーザーの攻略スピード
正式サービス開始から1ヵ月以上が過ぎ、徐々にプレイの定石が固まりつつあるシミュレーションRPG『ブラウザ キングダムライジング』。現時点での感想や今後の展開について、開発スタッフのみなさんに話を伺った。
――まずはみなさんの自己紹介からお願いします。どういった作業を担当されているのでしょうか?
中村拓人氏(以下、中村) はい、プロデューサーを担当している中村です。ゲーム全般に携わっていまして、ニコニコ生放送(Geroと古川未鈴&成瀬瑛美(でんぱ組.inc)の水鏡レポート)にも出演しています。
――そちらの番組は我々も楽しく拝見しています。
中村 ありがとうございます。生放送中はブショーダスを引いたりしているんですが、本当にURが出ないんですよね……、家で引くと出るそうなのですが。よければそちらもご覧いただいて、コメントもらえると嬉しいです。
須田誠氏(以下、須田) リードプランナーの須田と申します。私は企画全般のほかに、カードのパラメータ調整などゲーム内の数値関係をおもに担当しています。
竹口佳奈氏(以下、竹口) ディレクターの竹口です。スケジュール管理等担当しています。そのほかに、須田と同じく企画全般も担当しています。
――正式サービスを開始してしばらく経ちますが、まずは現在の率直な感想を聞かせていただけますか?
中村 これはニコ生でもお話ししたのですが、ユーザーの皆さんがものすごく濃いプレイをしてくださっていて、それが純粋に嬉しいですね。大変多くの方に楽しんでいただいています。また、こちらが想定していたよりもはるかに成長が早く、そして強い! 私はもう完全にトップクラスのユーザーに置いていかれてしまいました。
須田 攻略のスピードが恐ろしく速かったですね。今では兵力を1万以上保有しているのが当たり前になっていますし。
中村 我々開発陣の読みでは、もう少し攻略のスピードが遅いと予測していたのですが、完全に読み違いでした。トップクラスのユーザーになると部隊の総攻撃力が1000万を超えるとも聞いています。サービスインから1ヵ月ほどでここまで来るとは、ある意味うれしい誤算でしたね。
――オープンβテストから振り返ってみて、とくに印象に残っている出来事はありましたか?
中村 いろいろありましたが、やはりいちばんはメンテナンスでユーザーのみなさんに大変なご迷惑をかけてしまったことですね。バグをひとつ片付けたと思ったら、また新たなバグの報告が来たり。その一方で、アップデートの準備も並行して進めていたりと、なかなかハードな日々でした。ですが、そうした経験もあって、通常の開発ではまず体験できない“ユーザーとの共同制作”のような感覚で取り組むことができました。
竹口 私がすごく印象に残っているのは、ランキング上位の同盟が合併したことですね。
――たしか1位と2位の合併でしたよね。
須田 アップデートで同盟人数の上限が引き上げられた直後でしたからね。最近では引き抜きや人員整理もあちこちの同盟で行われているようですよ。
中村 私はシミュレーションゲーム初心者の方が多く遊んでくださっていることに感動を覚えました。『ブラウザ三国志』やほかのシミュレーションゲームを経験された方がほとんどだと思い込んでいたので、まったく初めてという方に選んでいただけたことは、開発陣として本当にうれしい限りです。
須田 あ、私もうひとつ印象的だったエピソードがありました。
――どんなことですか?
須田 打ち合わせから戻ってきたら自分の城が落とされていたことです(笑)。
一同 爆笑
須田 事前に出城の戦力をしっかり固めておいたんですけど、ミーティング後に合戦場をのぞいてみたら周辺の施設も含めてキレイに片付けられてました(笑)。そんなにずっと席を離れていたわけでもなかったので、あれは強く印象に残っていますね。
――まさに“想定外の強さ”だったわけですね。
中村 プレイヤーのみなさんの攻略スピードは本当に我々の予想を大きく上回っていますね。プレオープン時の合戦でも、わずか3日でNPC城を落とされてしまって、「なんでこんなに早く攻略できるんだ!?」と、開発スタッフ全員で頭を抱えたほどでした。
須田 言い換えれば、それだけ熱意を持って遊んでくださっている、ということですからね。ありがたいことだと思っています。
ユーザーの意見を取り入れて開発スケジュールを変更!?
――新機能“トレード”についてお聞かせください。
須田 今回実装されたトレード機能は、売りたいカードを出品し、それをほかの君主が“TP”を使って競り落とすオークション形式になっています。これまでTPは合成などに使用していましたが、そもそもTPとは“トレードポイント”の略なんです。ちなみに出品は誰でも可能ですが、入札は内政マップに“市場”の建設が完了している君主のみ実行できます。出品者は完全匿名となるので、よくある1対1のトレード形式とはちょっと異なりますね。
中村 出品したカードには“強制公開期限”が設定され、この期限を過ぎた時点でもっとも高い価格の入札者が落札できます。なお、強制公開期限を過ぎても入札がない場合は、それ以降に入札があった時点で即落札されるようになっています。また、出品者は出品時に手数料がかかりますが、落札時には戻ってくるようになっています。
須田 ブショーダスとは違って欲しいカードを選んで入札できるので、スキル強化や付与にも役立ちますよ。
竹口 じつはサービス開始当初からトレードに対する要望がものすごく多かったんです。もともとの実装予定はしばらく先だったのですが、あまりに多くの声をいただきましたので、先日のアップデートに何とか間に合わせました。
中村 先ほどもお話ししましたが、非常に熱心に遊んでくださるユーザーが多く、日々たくさんのご意見やご要望が寄せられているんです。我々としてもそうしたユーザーの声を大事にしていきたいと考えていますので、だったら1日でも早く実装しようと決めました。
――とても男前な決断ですね! ユーザーとしてはうれしい限りです。2013年8月2日にワールド2がオープンしましたが、これもユーザーからの要望に応じた形ですか?
中村 「新たにワールドを増やしてほしい」という要望は多かったですね。いまからワールド1で始めると先行ユーザーとの差が気になりますからね。
竹口 サービス開始直後から新ワールドへの要望は頂いていましたね。
中村 まぁ、開幕からわずか3日でNPC城を攻め落とすほどの英傑がいるわけですから(笑)。
――ほかにユーザーさんから寄せられる意見にはどのようなものがありますか?
中村 あまり具体的なことはお話しできないんですが、非常に的確な意見を出してくれる方が多いです。自分なりに分析し、詳細なデータを提示して指摘してくれる方もいますね。
竹口 イベントが多かった7月中は、とくにたくさんのご意見が集中しましたね。
中村 なかには「同盟員がこういう事態に陥っているから対処してくれ」と他人のために意見をくれる人もいて、同盟同士のつながりの強さも感じました。
武将カードに隠された秘密
――ここで少し攻略寄りの話を聞かせてください。武将カードを強化しようと思ってもなかなか狙ったスキルを付与できないのですが、スキルシステムの詳細を教えていただけますか?
中村 詳細なシステムは別の機会に説明するとして(編注:後日、スキル付与についての記事を公開します。どこにも出ていない情報なので、お楽しみに!)、やはり本作でのスキルの重要度はかなり高いですね。
竹口 狙ったスキルをつけようと思うと、難しいですね。
中村 実際に特定のスキルを習得しなければならない“幻のスキルを探せ”というクエストがあるのですが、クリアしている人はかなり少ないですね。
須田 あれはSR曹操の“覇王の猛撃”というスキルが鍵になっているので、習得するにはSR曹操を素材として使わなければいけないんですよ。
――それはかなりハードルが高いですね
須田 しかも付与合成なので、失敗して素材カードを失う可能性も非常に高い。クリア方法が分かっていてもなかなか達成できない高難度クエストです。
中村 それでもクリアした方がいるんですよね。ごく少数なんですけど。先日、たまたまUR呂布にSR曹操の覇王の猛撃を付与させてる人を見かけましたね。ものすごく豪華なカードで、自分もすごく羨ましいです。
――それ、現時点で最強のカードなのではないでしょうか・・・。カードの話題が出たのでもうひとつ、カードイラストで気に入っているものはありますか?
中村 僕は張魯のイラストが好きなんですよ。あの掌を広げて“五”ってやっているイラストなんですけれど、デザイナーからきたときは笑ってしまいました。「張魯は五斗米道の所属だから五」と言われて「えーっ!?」と驚いたんですけど、おもしろかったのでオッケーにしました(笑)。カードイラストにはこうした小ネタをいろいろと仕込んでいるんですよ。
――ほかにはどんなものがあるのでしょうか?
中村 蘇飛(そひ)という武将カードがありますけど、彼のイラストはよく見ると冠にカタカナの“ソ”と書いてあって、本人の眉毛がひらがなの“ひ”の形になっています。一見気づきにくいですが、ほかにもまだまだあるので探してみてください。
――私もこれからはイラストをじっくり見るようにしてみます。さて、続いては内政について。新たな施設の追加予定はありますか?
中村 新たな施設の追加も考えてはいます。ただ、まだアイデアレベルの段階なので、実装がいつになるかは決まっていないです。むしろ、そのあたりについてもユーザーさんからのご意見をいただきたいですね。
今後のイベントやキャンペーンにも期待!
――では、プレオープン時の“NPC城最速攻略キャンペーン”のような、合戦外のイベント予定はありますか?
中村 こちらもまだアイデアレベルで具体的な実装目処も立っていませんが、またやりたいとは思っています。
竹口 NPC城最速攻略キャンペーンの時は速度重視でしたが、もっとランダム要素をいれてイベント感のあるものがいいかなと検討しているところです。
中村 現状、合戦がコアになりすぎて初心者プレイヤーが入りにくい雰囲気になっていると思うので、全員で楽しめるものがいいなと思っています。
竹口 私も実際にプレイして合戦場の難しさは肌で感じています。ユーザーのみなさんが強すぎて、私は見逃してもらっているくらいですから(笑)。
――間口が広がる企画を検討しているということですね。現在はニコニコ生放送のようなゲーム外の活動も活発ですが、今後やってみたい企画などはありますか?
中村 とにかくユーザーのみなさんのご意見は貴重だと考えていますので、どんどん拾っていきたいんです。もっとそういう“生の声”を拾いやすい窓口みたいなものを設置したいですね。とくに、やり込んでいる上位ユーザーの目線での要望は、開発や運営スタッフ陣の想像の範疇に収まりきらない部分も多々ありますから。積極的に意見を拾える環境作りを進めていきたいです。
カードイラストに込められた小ネタや開発陣も驚愕させるほどの攻略スピードなど、ここでしか聞けないこぼれ話がどんどん飛び出すインタビューだった。筆者もふつうに本作を楽しんでいるプレイヤーなので、興味深かった。じつはインタビューはこの後も続いており、そちらではスタッフのみなさんのプライベート君主ライフについて伺っている。耳寄りな話をキャッチできたので後日公開するぞ!