荒削りながらも、いままでにない体験ができる意欲的な6タイトル

 ソニー・コンピュータエンタテインメントが協賛し、グラスホッパー・マニファクチュアが、新たな才能を持つ学生に対し、プレイステーション Vita向けソフトウェアの制作環境をフォローし、新感覚のゲームソフトを創出することを目的として行なっているプロジェクト“GAME CAMPUS FESTA(ゲーム キャンパス フェスタ)”。同プロジェクトの第2回のエントリー作品の入選作発表会が、2013年7月29日、東京都・品川のTKP東京コンファレンスセンターにて行われた。

 入選作品は6タイトル。以下は、審議員を務めた須田剛一氏(代表作『NO MORE HEROES』や『KILLER IS DEAD(キラー イズ デッド)』ほか)、ソニー・コンピュータエンタテインメントの外山圭一郎氏(『GRAVITY DAZE/重力的眩暈:上層への帰還において、彼女の内宇宙に生じた摂動』ほか)、上田文人氏(『ICO』ほか)の3名による、入選作品の感想や各作品の代表者とのやり取りをまとめたもの。入選作品の魅力や特徴はもちろん、審査員お三方のゲーム制作に対するスタンスもうかがい知れる内容になっているので、要注目だ。

 ちなみに、入選作品6タイトルは、今秋、PlayStation Storeで、プラネット Gより無料で配信されることが決定している。配信されたら、ぜひ遊んでみてほしい。

※以下、入選タイトル名はすべて仮題、チームメンバーは敬称略。
※入選作『ラビリンス』を制作した京都コンピュータ学院のチームの方々は都合により、参加できなかったため、ゲーム紹介のみとさせていただきます。

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▲審査員(有名クリエター陣)に自分たちが作ったゲームの批評を聞ける、貴重な機会となった入選発表会。ゲーム制作中はもちろん、この場での経験は、今後に必ず役立つはずだ。
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▲右から須田剛一氏、上田文人氏、外山圭一郎氏。
▲各作品の代表者の方々。
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桜花爛漫――アミューズメントメディア総合学院

【作品概要】
日本人なら誰もが知っている「花咲か爺さん」のおはなし。この昔話しには、実は後日談が!?爺さんの孫と、その周りの人たちが織り成す物語が幕を開けます。

本作は、ジャンプで灰を撒き、桜を咲かせる新感覚のアクションゲームです。作品では古き日本の良さを追求し、和風テーマとしました。是非満開を狙ってみてください!

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【チーム構成】
チームリーダー・メインプランナー:安彦信一【ゲーム企画ディレクター学科2年】
プランナー:佐々木敏彦【ゲーム企画ディレクター学科2年】
メインプログラマー:冨板亮佑【ゲームプログラマー学科2年】
プログラマー:後村健人【ゲームプログラマー学科2年】
3Dデザイナー:千田明日美【ゲームグラフィックデザイナー学科2年】
2Dデザイナー:工藤真乃【ゲームグラフィックデザイナー学科2年】
フォントデザイン(インターフェース):甲斐悠碁【キャラクターデザイン学科2年】
サウンドコンポーザー:川瀧茜【キャラクターデザイン学科2年】

■ドットイートタイプのゲームにアクション性を追加して楽しく

 「花を咲かせるところを気持ちよく感じてもらい、そこに重点を置いて開発しました」とチームリーダー・メインプランナーが安彦信一さんが語る『桜花爛漫』。左スティックでプレイヤーキャラを操作し、桜を咲かせるというシンプルな和風テイストのアクションゲームだ。

 4月の中間審議・試遊会(詳しくは→こちら)では、須田剛一氏、外山圭一郎氏、上田文人氏から高い評価を得ていた作品でもある。それだけに須田氏は、「以前触った段階で、アクションゲームとしての完成形がほぼ見えていた作品でしたので、今回は、細かいところのチューニングがどこまでできたか、というところを注目していた」という。

 実際にマスター版をプレイした須田氏は、「プレイしてみると確かに気持ちがいいですし、初プレイだとなかなか100%の達成率にできないバランスも絶妙。2回、3回と遊ばせることを想定した作りで、難易度のカーブも相当考えたのでは?」と分析。ステージのデザインとバランスに関しては、いろいろと調整に気を使った要素のひとつだったようで、開発当初はテクニカルな操作をしないと難しいバランスになっていたという。だが、誰にでも遊んでもらい、というコンセプトから「勇気を持って難易度は低めに設定」(安彦)し、何周もして、ステージの配置を覚えて、達成率100%を目指すバランスにしたという。バランスに関しては上田氏も「まだ2ステージ目までしか遊んでいないですけれど、それでもこの先も十分に調整されているんだろうな、ということが伝わりました」と賞賛。外山氏は、「完成度としてアタマひとつ抜けている作品」と絶賛し、タイムアタック、スコアアタックといったやり込みもできる奥深さにも注目していた。

 シンプルなゲーム性で“アクションゲームとしての完成形がほぼ見えていた作品”と須田氏に評された『桜花爛漫』だが、開発途中では、「ゲームが単調になってしまわないか」という心配もあったようだ。そこで、一時は何か新しいギミックを足すことなども考慮したとのことだが、シンプルさが失われてしまうなどの理由で、最終的には、敵の存在やステージの地形だけで勝負することにしたという。これに関し上田氏は、個人的な好みと前置きしたうえで、「最初から最後まで同じルールで通し、なお且つそこにバリエーションがあるというのがエレガントなデザインだと思っているので、僕はいまのままでよかったと思います」と感想を述べた。

 また、上田氏からは、『花咲か爺さん』をモチーフにしていることで、灰を撒いて花を咲かせる、という案は出なかったのか、という質問が。これについては、連打で灰を撒くというのも企画もあったというが、(プレイヤーキャラもこまめに操作する必要があるので)「疲れるよね、と話してやめました。ドットイートタイプのゲームにアクション性を追加して楽しくしよう、という当初の考えを貫きました」と明快な回答。これには上田氏も含め須田氏、外山氏も納得した表情だった。

 本作は、おまけ要素として、幻のステージ7もあるという。そのステージは、世界観が変わり「自分たちのやりたいように作ったステージ」(安彦)だという。このステージは、開発終盤に急遽入れることにして、2週間ほどで実装・調整したとのこと。須田氏は、「マスターアップ近くにいろいろムチャなものを詰め込むというのは日本のゲーム開発の伝統なので、今後、プロになってもやっていってほしいですね(笑)」とエールを贈った。

ライジングスター――学校法人 河合塾学園 トライデント コンピュータ専門学校

【作品概要】
ある辺境の星で休暇をとっていた主人公。急になり出した避難警報に驚き星をでると、そこには迫り来るブラックホールが!? 宇宙をかけて地球まで逃げ帰れ!!

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【チーム構成】
ディレクター:田中悠也【ゲームサイエンス学科3年】
ゲームプログラマー:坂 崇史【ゲームサイエンス学科3年】 
ゲームプログラマー:野村浩二【ゲームサイエンス学科3年】
3Dデザイナー:永松輝【CGスペシャリスト学科2年】
2Dデザイナー:水越善彦【CGスペシャリスト学科2年】

■タッチ操作だけでのシンプルなアクション

 タッチ操作で進むアクションゲーム。須田氏は楽しみにしていたタイトルだったとのことで、操作がタッチだけの潔さや単調なアクションにならなかった点を評価。上田氏は「操作がシンプルなだけで、自機の方向や燃料とスピードのマネジメントなど、いろいろと選択する余地があり、ゲーム性はしっかりしている」と感想を述べた。

 本作には、プレイヤーがより爽快にプレイできるようにギミックや必殺技などが盛り込まれている。ただ、とくに各種ギミックの効果がステージ上では多少わかりづらい印象も。外山氏は「そういった要素が最初から使えるよりは、進めていくと要素が足されていったほうが、取っ付きはよかったかもしれない」とアドバイス。

 チーム構成が5人という少人数で作られた点も特徴の本作。企画段階で、少ない人数でも作れるゲームデザインを考えただけではなく、開発チームの個々がステージの隕石やアイテムを配置できるなど、チーム全員でステージデザインができるように“ステージエディタ”なるツールを作り、開発の効率化を図っていたという。「僕のデビュー作も開発チームは5人だったんですが、少人数で作った感覚、経験というのは、今後、きっと役に立つと思います」(須田)

LINK――日本工学院専門学校

【ゲーム概要】
私達が制作しているLinkは2体の自機を指で直接操る横スクロールSTGになります。自機の距離を近づけたり離したりすることで射撃の砲台数が変動するので、自機同士を近づかせて確実に攻撃を避けて戦うのか。自機同士を離して多大な手数を用いて倒される前に倒すのか。その駆け引きを楽しむゲームになっています。

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【チーム構成】
プランナー:工藤淳平(クリエイティブラボ科4年)、神谷俊輔 (ゲームクリエイター科2年)、服部昂大(ゲームクリエイター科2年)プログラマー:矢島 孝英(クリエイティブラボ科4年)、篠崎亨(クリエイティブラボ科4年)、正田純規(クリエイティブラボ科3年)、木崎建輝(クリエイティブラボ科3年)、村田有里(クリエイティブラボ科4年)、島村巧史(クリエイティブラボ科4年)、丸山直樹(クリエイティブラボ科4年)
グラフィッカー:武藤恵子(CGクリエイター科2年)、大泉舞果(CGクリエイター科2年)、賀 立(CGクリエイター科2年)、伊藤拓馬(CGクリエイター科2年)、蔡 喜朝(CGクリエイター科2年)、橋本実季(CGクリエイター科2年)、王 暁晨(クリエイティブラボ科2年)
サウンド:喜田智也 (ミュージックアーティスト科2年) 、佐々木 流晟(ミュージックアーティスト科2年)、須田麻未(ミュージックアーティスト科2年)、中谷 啓亮 (ミュージックアーティスト科2年)、崔 秀彬 (ミュージックアーティスト科2年)、金田一也(ミュージックアーティスト科2年)

■“世にないゲームを作る”という意欲作

 横スクロールのシュティーングゲームだが、“リンクライン”という自在に伸びる線でつながった2体の自機を操作するといった、一風変わった操作感が特徴のひとつ。ただ、プランナーを務めた工藤淳平さんからは、斬新なシューティングであるがゆえに、チームには迷いもあったと言い、チーム内や先輩などから出たいろいろな懸念点を改善していたった結果、全体として少しシンプルにまとまってしまったかな、と反省の言葉も出た。外山氏は「従来のシューティングに捉われず、コンセプト(ふたつの自機がつながっているシューティングゲーム)にもっと注力していれば、ひと化けしたポテンシャルはあった」と、惜しい作品だと残念がった。

 一方、上田氏は、ふたつの自機というコンセプトに縛られ過ぎたのでは、と指摘。ただ、「ここがほかのゲームと違う」という部分を推し進めて貫きたいという気持ちはすごくよくわかると実感を込めて語った。コンセプトに縛られすぎて、深みにハマるというのは、ゲーム制作に限らずよく聞く話だが、そのコンセプトを思い切って変える、というのもとても勇気のいること。当初のコンセプトを突き詰めて進めるのか、思い切って方向転換するのか、という判断は経験もないとなかなか難しいだろう。

 須田氏は、当たり判定など、細かい部分のチューニングを気になった点として挙げたが、「新しい遊び、いままでにないシステムといった、“世にないゲームを作る”というチャレンジは存分に感じられた、すごく意欲的なゲームだったと思います」と総評した。

 ちなみに、今回、『LINK』制作チームが懸念を抱えつつ、当初のコンセプトのシューティングゲームを貫いた理由には、コンセプトありきで制作がスタートしたという事情もあったようだ。つまり、たとえば世界観ありきだった場合は、2機の自機を操作するというシステム面は柔軟な変化ができたかもしれない。だが、システムありきでスタートしたため、そこを変えると、もはや作りたいものではなくなってしまうジレンマ。そこで、工藤さんからは、ゲームを作る際、何を重視してどういった順番で作っているのか須田氏、外山氏、上田氏の3名に質問がぶつけられた。下記はそれぞれの練り込みかただが、三者三様だということがわかる。「こう作るのがふつう、というのはないと思います」(外山)。

【須田の場合】
・タイトルによっても違うが、(須田氏が)企画出身ということもあり、企画があって、ストーリーやキャラクターが決まって世界観を構築してからゲームに落としこむ、というパターンが多いとのこと。また、システム面では、(アクション、アクションアドベンチャーといったこれまで須田氏が作ってきたゲームの)ゲームエンジンの系譜も考慮する場合があるという。さらに、新しいプラットフォームで制作する場合は、ゲーム機の特徴に合わせてどういった遊びに落としこんでいくのか、といった“ゲームの仕組み”から入ることもあるのだとか。さらに、ゲーム作りにはこういった順番で作る、という答えたはない、とも。「何を発信したいのか」というものがキッチリと決まっていれば、自ずと順番も決まってくるという。

【上田氏の場合】
・上田氏には、まず、見せたいゲームのビジュアルや映像が念頭にあり、つぎにどういう仕組みに乗せてそれを実現するかを考え、それが見つかったら制作をスタートするという。

【外山氏の場合】
・ビジネスとしての側面を考えたとき、お客さんが自分に期待するものという観点で、逆説的にキャラクターや世界観を考えるとのこと。コンセプトも同時進行で考えることもあるという。

SOCIUS(ソキウス)――日本工学院八王子専門学校

【ゲーム概要】
プレイヤーが二つの光の玉を操作して進みステージの奥にいるボスを倒す「一台使って二人で遊ぶ」アクションゲーム。ステージの途中に出現するリングで、光の玉を強化しつつ合体や分離しながら迫りくるボスを倒します。シンプルかつ直観で動かせる操作性と、見た目や動きにこだわったステージを楽しむことができます。

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【チーム構成】
リーダー:池田虎敏(クリエイティブラボ科4年)
プログラマー:安部勇輝(クリエイティブラボ科4年)、加藤稜平(クリエイティブラボ科4年)、青木真吾(クリエイティブラボ科3年)、鈴木利典(クリエイティブラボ科3年)、萩原啓太(クリエイティブラボ科3年)
プランナー:津野崇(クリエイティブラボ科4年)、島村誠人(クリエイティブラボ科3年)
グラフィッカー:上谷雪乃(クリエイティブラボ科4年)、飯塚まゆみ(クリエイティブラボ科4年)、安富賢太郎(クリエイティブラボ科4年)、竹内裕輝(クリエイティブラボ科4年)、山田和明(クリエイティブラボ科4年)、守屋慎二(クリエイティブラボ科4年)、桑原真也(クリエイティブラボ科4年)、櫛田健介(クリエイティブラボ科4年)
コンポーザー:残熊礼(ミュージックアーティスト科2年)、中嶋晃(ミュージックアーティスト科2年)、池田哲也(ミュージックアーティスト科2年)、小林和実(ミュージックアーティスト科2年)、古田泰之(ミュージックアーティスト科2年)、岩本有加(ミュージックアーティスト科2年)

■「ぜひクリアーしてエンディングが観たい作品」と須田氏に言わしめた作品

 ひとつのプレイステーション Vitaをふたりで操作して遊ぶ、というコンセプトで制作されたユニークなアクションゲーム。須田氏は「シングルプレイではなく、マルチプレイからスタートした、という発想がおもしろい。ボス戦もあるのがすばらしい」と絶賛。ボス戦に関しては、チームスタッフが3Dでの制作が初めてだったということで、いろいろと苦労はあったようだが、その苦労も須田氏の言葉で報われたといったところだろう。

 上田氏は「自機の移動速度の兼ね合いなどがいいバランスで、何度も調整しないと、こういうふうにはならないだろうなと思いました」と丁寧なチューニングに賛辞を贈った。

 外山氏からは「コミュニケーションを取らないとうまくいかない、という要素が明確にあったら、ふたりでプレイするというコンセプトがより活きたのでは」と、ゲーム制作者の先輩としてのありがたい指摘も。

 制作中に苦労した点として、リーダー兼プログラマーの池田さんは、技術的な面はもちろんだが、各メンバーの個々の担当作業のスケジュール管理などを挙げた。これについては、ほかのチームのリーダーも(まとめ役なので当然ではあるが)苦労した点として挙げており、Game Campus Festaを通じて、チームで制作することの難しさを皆さん実感した様子。

 そういったスタッフの作業の状況をどう把握するは、「とにかくコミュニーケーションを取る」(須田)、「一日一度はみんなが訪れる共有スペースなどに、各パートの進行状況や必要な情報を全員が確認できるようにしておくといい」(外山)といった工夫が必要だとアドバイス。海外のデベロッパーや日本のメーカー、デベロッパーも進行状況やスケジュール管理は紙に張り出して、皆と共有できるようにするなど、「意外とアナログ」(須田)で、実際にそれが効果的なのだとか。

 最後に須田氏は本作をエレガントな作品と評し、「ぜひクリアーしてエンディングが観たい作品」と作り手冥利に尽きる言葉を総評した。

忍足 -シノビアシ-――日本電子専門学校

【ゲーム概要】
忍び足で家に帰宅するような父、面角立夫の視点から見た、家族のドタバタ劇を、“ギャグ”や“コント”満載のドラマ仕立てにして、リズムとアクションの2種類のゲームを盛り込んだ内容になっております。家族内の日常に起きる様々な困難が、立夫を待ち受けていた――。どうする立夫! 頑張れ立夫! 是非ご期待下さい!

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【チーム構成】

リーダー:近野孝吏、栗原 弥里
許 信勇、鈴木 竣、田中 翔太、大野 友貴人、菊池 祥、坂下 翔、高野橋 大輔、蓮 直樹、大網 慶裕、利根川 亮太、深田 龍仁、松本 龍洋、村岡 隆雄、関戸 崇朗、町田 泰平、松村 実、ダニエラ セチョブディ(以上、ゲーム制作研究科)

 グラフィックや世界観など、初代プレイステーション時代の少しおバカっぽいテイスト感じさせるアクションゲーム。リズムアクションのほか、さまざまなアクションゲームが入った物量的にもボリューミーな作品だ。中年のおじさんを主人公に家族愛を描く、というストーリーにも注目したい。「コンセプトに沿ったアートディレクションのこだわりを感じました」(外山)。

 初代プレイステーション風のグラフィックの作品を見ると、レトロに感じてしまったという部分では「時代の移り変わりは早いな、と軽いショックを受けました(笑)」という須田氏、上田氏、外山氏の3名。 本作ではストーリーを重視し、ゲームシステム部分はあえて目新しいところは狙わず、リズムアクションは『スペースチャンネル5』など、ほかにもさまざまな過去の作品を参考に、それらを物語に従って、どうおもしろく見せていくかを考えていったとのこと。

 本作のロード画面やスタッフロールにはちょっとした小ネタが仕込まれているのだが、リーダーの栗原さんは曰く「ロード時間が長くなってしまったために苦肉の策で入れた要素」だという。だが、そのままにするのではなく、サービス要素を盛り込んだところは「すばらしい」と上田氏も高く評価。

 また、本作がユニークなところは、Game Campus Festaの応募からマスターアップのあいだに年度が変わってしまうことから、そのタイミングで制作陣が先輩から後輩へとシフトしたというところ。つまり、土台は先輩チームが作り、それを現在のチームが引き継いて、マスターアップまで漕ぎ着けたというのだ。当然、引き続きの際にいろいろと問題もあったようで、とくにプログラマーは、まずはどういうプログラミングがされているのかを調べるところからスタートしたという。「ゲーム作りって最初の土台作りが楽しくて、開発後半になるほどキツくなるんですけど、皆さん、しんどいタイミングで引き継がれたんですね(笑)」(須田)。ただ、引き継いだチームも、実際にプレイしてみてイマイチだと感じた部分は作り直すなど、ゲーム作りのおもしろさは十分に感じられたようだ。

 本作の総評として、須田氏は「物語もそうですけど、人生を作品にしている、というところも共感できますね。オヤジが主人公というゲームは、日本ではなかなかないですからね。海外では『グランド・セフト・オート』などがありますけど。そういった点も新しいゲームですね。大好きです」(須田)

ラビリンス――京都コンピュータ学院

【ゲーム概要】
基本は単純なパズルゲームです。そこへ、色々なアイデア・仕掛けをみんなで紡ぎだすことで、シンプルなゲームの中に思わずはまり込んでしまうような気持ちよく、楽しいゲームに仕上げようと頑張っています。

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【チーム構成】
ゲーム学科3回生
田中 奈都子(タナカ ナツコ)

ゲーム学科4回生
栢分 瞭成(カヤワケ アキノリ)、高木 ヨシ徳(タカギ ヨシノリ)、吉村 朋樹(ヨシムラ トモキ)、田ナベ 雅之(タナベ マサユキ)

ゲーム開発学科 卒業(2013.3)
藤森 ちあき(フジモリ チアキ)

ゲーム学科 卒業(2013.3)
榎本 誠也(エノモト セイヤ)、米山 哲平(ヨネヤマ テッペイ)、LEE CHESTER CHIN ZHEN(リー チェスター チン チェン)

指導教員
小西 薫(コニシ カオル)

※入選作発表会には都合により不参加。

JISコードにない漢字はカタカナ表記にしています。