江城Pにたっぷりとお話を聞いてきました!

「『逆転裁判』シリーズは未プレイだけど、『5』から遊んでも大丈夫かな?」そんなアナタの背中を江城Pがグッと押すインタビューをお届け!_17
▲『逆転裁判5』プロデューサー江城元秀氏にガッツリ語って頂きました!

 2013年7月25日にカプコンより発売予定の法廷バトル・アドベンチャーゲーム『逆転裁判5』。『逆転裁判』シリーズのナンバリング作としては、実に6年ぶりとなる待望の最新作だ。同シリーズは、2001年に1作目の『逆転裁判』(ゲームボーイアドバンス)が発売されて以降、ナンバリング作以外にも、スピンオフ作品の『逆転検事』、『逆転検事2』やレベルファイブとのコラボレーション作『レイトン教授VS逆転裁判』など、多くのタイトルが発売されている人気シリーズ。また、ゲーム以外のいわゆるクロスメディア展開において突出した実績を持つのも特徴で、マンガ化や小説化、映画化、宝塚歌劇での舞台化など、さまざまな形でその名前を広めている。 今回のインタビューでは、このクロスメディア展開により、シリーズを遊んだことはないが『逆転裁判』に興味がある、遊んでみたいという人が多いのではないか? という点にフォーカス。間もなく発売される最新作『逆転裁判5』は初見の人、また、あまり普段ゲームを遊ばない人でも問題なく楽しめるものなのかどうかを、本作のプロデューサーである江城元秀氏に直撃した。併せて『逆転裁判5』の制作秘話や開発理念、プロデューサー論などもたっぷりと聞いているので、シリーズファンもお見逃しなく。

「『逆転裁判』シリーズは未プレイだけど、『5』から遊んでも大丈夫かな?」そんなアナタの背中を江城Pがグッと押すインタビューをお届け!_11
「『逆転裁判』シリーズは未プレイだけど、『5』から遊んでも大丈夫かな?」そんなアナタの背中を江城Pがグッと押すインタビューをお届け!_12

――『逆転裁判』はいま、宝塚歌劇団や映画、舞台などにもなり、さまざまな形で名前が広がっています。そこで気になっている人も多いと思うのですが、例えば宝塚の舞台で『逆転裁判』を知った人が「ゲームの『逆転裁判』を遊んでみたい」と思った時に、最新作の『5』から遊んでも大丈夫なのでしょうか?
江城元秀氏(以下、江城) もちろん大丈夫です。僕たちも、企画立ち上げのときに「まずそこを考慮しなきゃいけないね」という話をしました。宝塚歌劇さんとコラボしていたり、映画にもなったりで、タイトル的にはけっこう広がってきているだろうと。いわゆるゲームのコアファンではない層にも認知はされていて、ゲームを遊んでいなくても、『逆転裁判』の名前を聞いたことがあるという人はけっこういらっしゃるのではないかと想定して企画をスタートさせました。ちょうど『5』では、ニンテンドーDSから3DSにハードも替わりますし、ゲームの内容的にシステムもグラフィックも含めてすべての面でパワーアップさせようということと同時に、いまどきのゲームユーザーさん、初めて触るお客さんを考慮したUI(※ユーザーインターフェイス。操作画面のレイアウトなどのこと)デザインであるとか、サポート的なシステムも入れましょうと最初から決めていました。

――具体的にはどのようなものが入ったんですか?
江城 まず、セーブデータがふたつになりました。そしてチュートリアルはもちろん、マニュアルを見なくてもふつうにプレイしていただければスッと操作は馴れていく流れになっています。登場人物の紹介でも、初見のユーザーさんが見ても、この成歩堂龍一という人物が主人公であり、弁護士だとすぐにわかり、もうひとりのこの子が相棒なんだなと、スッスッと入っていけるような話の構成にしています。

――なるほど。操作や世界設定などが自然に覚えられるようになっているんですね。
江城 はい。また、UIもかなり洗練させました。例えば証拠品を見る場合でも、従来はアイコンだけがあって、もう1回選択しないと中の情報が見られませんでしたが、『5』ではそれをなるべく最初の階層で情報を表示しましょうと。何か知りたいと思ったときに、すぐそれが見られるようにUIデザインを変更したんです。『逆転裁判』っていわゆる様式美みたいなものがUIデザインすべてにあって、そこを極力崩さないように踏襲していたところもあるんですけど、それを崩さないようにしながらも、デザイン自体を分かりやすく変えてあげる、アイコンの形や中身の絵を変えてあげる、といったことをしています。今回のUIデザイナーが、そこはすごく工夫しています。例えば駅の券売機とかって、一般の人たちが何かを買うときに、間違えないようにデザインされているじゃないですか。あれを勉強したUIデザイナーが、ゲームにもそういう要素を取り込んでいるんですよ。だからパッと見たら、何をしたらいいのかっていうのが分かる。自分のやりたいことが直感的にできるようになっています。

――確かに、従来のシリーズよりも視認性が上がり操作がスムーズになった感触があります。
江城 加えて、バックログ機能も搭載しました。ゲームをやっていて、「結局どんな話だったっけ?」となることもありますから、戻ってお話を追っかけていけるように。あと『逆転裁判』シリーズにありがちなのが、僕自身もそうなんですけど、「どこに証拠品突き付けていいかわからない!」となったときに、たいてい“総当たり”が始まるんですよね(笑)。証拠品を1個1個当たっていく、という。で、直前のところでセーブしておいて、ダメだったらもう1回やり直す、みたいな。でもそれってメンドクサいですよね。ゲームオーバーの危険性があるから真剣に推理しましょう、っていう部分はもちろん必要なんですけれど、もっとカジュアルに楽しみたい人のためのサポートとして、『5』では複数回間違えるとヒントがさりげなく出るようにしています。そういったところでも、初めて触るプレイヤーさんも安心して遊んでもらえるように意識して作りました。

「『逆転裁判』シリーズは未プレイだけど、『5』から遊んでも大丈夫かな?」そんなアナタの背中を江城Pがグッと押すインタビューをお届け!_16

――新しく始める人には優しく、知っている人には煩くない、という形なんですね。
江城 そうです。シリーズのファンの方や、ノーヒントでやりたい人が煩く感じないようにもしています。先ほどの“相談する”機能でもそうですね。何回か間違えたときに、いきなり画面の真ん中にボーンと、「このボタンを押してくれー」みたいなアピールをされると、やらなきゃいけないのかと思うじゃないですか。それで押してしまって、「知りたくなかったのに!」、「自分で考えたかったのに!」となってしまうのは避けたい。ですので、見なくてもいいようなデザインにしています。

――初プレイの人、シリーズファン、双方に配慮しているんですね。
江城 それと今回から、つぎにどこに行ったらいいかなどがわかる探偵メモという機能が入っています。探偵パートの部分で、いままでだと、「どこに行ってなかったっけ?」とひとつひとつ探して回っちゃうこともありました。それがけっこうストレスだと感じる方もいるだろうということで、探偵メモを見ると、どこまで調査が終わっているかわかるようになっています。コアなファンの方は探偵メモを見なければ、いままでのシリーズのように遊ぶこともできます。また、今回密かに改善しているところが、探偵パートの移動です。いままでは、ある場所に行くには、この場所を経由しないと行けない、ということがあったんですが、今回は全部ダイレクトに行けるようにしたんですよ。経由が入ると、どこから行ってどこへ行けばいいのか、もうわからなくなっちゃうこともあるだろうと。全体として、推理を楽しんでほしいという以外の部分でのストレスは極力排除しようというデザインにしているので、初見の方も気持ちよくプレイできると思います

――よりユーザーフレンドリーになったと。
江城 そうですね。恐らく、シリーズの中で最強にユーザーフレンドリーに作られています。ただし、そのユーザーフレンドリーな部分を変にアピールし過ぎないようには心がけています。やっぱり従来のファンの方の楽しみを奪わないように、間違って押しちゃったときに、「ネタバレじゃないか!」ってなるのを極力防ごうというのはまず念頭にあったので。「あ、ここはネタバレ嫌だから見ない」っていうことも可能にしつつも、「教えてよ」という人には分かりやすく。そこはけっこう苦労しましたね。例えば、何回間違えたら相談のアシストをするのか、社内で協議して、いちばんベストな回数を導き出したりしましたね。

――アシスト機能の搭載ひとつをとってもかなりの検証を重ねられたのですね。
江城 『逆転裁判』1作目はもう10年以上前の作品ですからね。10年経てば、ハードも替われば、ユーザーさんの年齢も上がり、新規のユーザーさんも入ってくる。例えば、当時5歳の人が、いま15歳になっていると考えると、当時と環境も全然違ってくる。いまはいわゆるストイックなゲーム環境ではないので、そういう方が、例えば体験版などをやってみたときに、「ちょっとメンドクサそう」とか、「ちょっとわかり辛い」ってなっちゃうと、その段階でもうこっちを見てくれなくなっちゃうと思うんです。極力そういうユーザーさんがスッと入ってきて、いつの間にか物語にのめり込んでいって、気づいたらどんどん進んでいるという、自然にプレイできるような難度であるようにかなり注意して制作しました。

――では『逆転裁判』のゲーム自体はプレイしたことがないけれど、舞台や宝塚、映画を観て「いいな」と思った人も抵抗なく?
江城 抵抗はないと思いますね。やっぱりシリーズ作の『5』から入るというのは、ふつうに考えるとかなりハードルが高いと感じる方がいるのは当然です。そこを乗り越えて入ってきてもらえるように、いかに間口を広くするかというのは今回すごく神経を使っています。例えば、第2話からは探偵パートもあり、ここも今作では3D化されているんですが、そこの操作で何をするべきかっていうのは物語を読むうちにすんなりわかるようにしています。いかにもなチュートリアルで、ゲームの最初で操作はこうですって言われるんじゃなく、キャラクターの会話の中で自然と入ってくるような。

――「何かあの裏にありそうよ」というようなセリフが会話の流れの中で出てきます。
江城 そう、それでここをタッチしたらいいですよ、というのが画面から伝わってくるように、プレイヤーへの導線という部分はスタッフにすごく丁寧に制作をしてもらいました。ハッキリ言って、いちばん時間がかかっているところですね。また、いろいろなシステムも入っているんですけど、そのシステムの難度もすごく気にした部分でした。失敗が許される回数をすごくシビアにすれば緊張感は生まれるんですけど、その緊張感のさじ加減を例えば10年前の基準に合わせてしまうと、激ムズなんですよ。一発でゲームオーバーみたいな。

――そうすると、心が折れちゃう人もいそうです。
江城 そうなんです。折れちゃう可能性があるので、そこは気を遣いました。今回の探偵パートに入った“サイコ・ロック”システムは、シリーズファンの方には懐かしいというか、久し振りに入ったシステムなんですけど、あえてペナルティーを排除したり。そもそも、キャラクターとのやりとりや駆け引きを楽しみたいわけで、そこで失敗してペナルティーをゲーム側から与えられることは望まれていないんじゃないのか。そういう緊張感は、法廷パートでいいんじゃないの、と。そのあたりのバランスは今回すごく気にしていますね。

――いちばん楽しんでもらいたい部分との棲み分けという感じでしょうか。そういう意味でも章立てはマッチしていますね。
江城 そうですね。今回はけっこう細かく章を区切っています。区切りを細かくすることによって、クリアーした後にもう一度見たいシーンにすぐ戻れたり、アニメパートもギャラリーで観られたり。ユーザーさんが「やりたいな」とか「観たいな」と思ったときに、ひと手間をかけさせないように作っているんですね。また、もう1回テキストを読み返したいとか、全部の証拠品を突き付けたいってユーザーさんもいらっしゃると思います。ですので、濃く遊ぶユーザーさんのためには、つきつけメッセージも全部変えたりといったところはちゃんと対応しています。やはりそこはシリーズの伝統なので。何をつきつけても「それは関係ない」と出たり、探偵パートで何を調べても同じメッセージではつまらないですよね。それをやると開発側の手抜きだと思われちゃうので、もう自分たちで自分の首を絞めつつ、スタッフが必死にテキストを書いてくれました(笑)。

気になるストーリー そして、新たなる野望!?

――ちなみに、『1』から『4』とのストーリー的なつながりはあるんですか?
江城 『5』に関しては『4』から1年後という設定にしてはいます。ですが、『4』とか『3』を知っていないと『5』の話は分かりませんとか楽しめないという作りにはもちろんしていません。そこはシナリオをやっている山﨑(剛シナリオディレクター)がすっごい気にしていて、あくまでも物語の時系列は『4』の後ってことにしているけども、すべての事件が『5』の時系列の中で起こる、というドラマを描いています。もちろん、シリーズを知っているとちょっとうれしいポイントとか、“ニヤリ”ポイントは散りばめています。でも、それはそれ単体で見てもおもしろさがあるものになっています。ただその奥深さというか、その先にあるおもしろさは、シリーズを遊んでいる方だとさらに感じられるとは思います。逆に、僕たちとすれば、『5』を遊んで、『4』も『3』もやってみたいと思って頂いて、実際プレイしていただいたユーザーさんが「あれっ、これ『5』のときのあのネタなんじゃないの?」という戻ったときのうれしさみたいなものも感じてもらえたら理想的ですね。当然ずーっと歴代やってきているユーザーさんは、そこの伏線というか知っているところでニヤッとできるし、『5』から入ったユーザーさんに関してはシリーズを戻ることによる楽しみが待っている。シリーズ作品も、それぞれでお話が完結しているので、どこから始めてもらっても全然問題ないですしね。

――しかしいま『1』から『4』を遊ぼう、となるとなかなか……。
江城 そ、そうですね(笑)。

――スペシャルパッケージを作って下さい! 『逆転裁判1-4 アンベールドエディション』みたいな。
江城 歴代の作品が全部入っているってことですか!? う~ん、け、検討します(笑)。確かに、もう1回シリーズ作品を3DSで遊んでみたいっていう声はあるんですよね。『逆転裁判』ってゲームボーイアドバンスからニンテンドーDSに移って、いまは『1』~『3』がスマホアプリでプレイできたり、Wiiでできたりと、ハードの間口はすごく広いので。

――ですので、いまのグラフィックレベルとか、サポート機能を盛り込んだ『アンベールドエディション』を発売すれば……。そうだ、『逆転検事』も入れないと。
江城 (笑)。

――これはもうバカ売れですよ!
江城 6作入りとか見たことない(笑)。今回、3DSになったことでキャラクターをポリゴン化していますからね、全部ポリゴンで『1』『2』『3』『4』『検事』のキャラクターを作り直すとなった場合は、やっぱり開発費がかかっちゃうんで……。個人的には見てみたいところもあるんですけど、昔の『1』を3Dにしたときにどう見えるんだろうとか、むずかしい部分をどうサポートしていこうかとか、いわゆるベタ移植ではなくて、何かひと手間入れるかどうかっていうところがポイントになってくるのかなと思いますね。

「『逆転裁判』シリーズは未プレイだけど、『5』から遊んでも大丈夫かな?」そんなアナタの背中を江城Pがグッと押すインタビューをお届け!_15

――では『5』がすごく売れて……。
江城 それで会社が「3DSで好きにやればいいじゃない」って言ってくれれば、可能性もあるかもしれません(笑)。

――皆さんが『5』でたくさん遊んでくれることが、そういうことにつながるかもしれない、と。
江城 はい。でも、よく言われる「ユーザーさんの声が大きければ考えます」というのはリップサービスに捉えられがちなんですけど、カプコンって本当にちゃんとユーザーさんの声を大事にしているんですよ。アンケートハガキとか、ちゃんと社内で回覧しているんですよね。ソフトを買っていただいて、アンケートに答えてくださいってありますけど、あれ全部開発に来ているんですよ。全部、開発が見ます。全部見ているんで、例えば100通のうち50通に、ここの同じポイントがストレスだったっていうのがあれば、つぎ作るんだったらここは改善しなきゃいけないよねとか、本当に貴重なデータとして活用させていただいているので、書いてもムダだとかは絶対にないです。

――アンケートを送っている方にはうれしい話ですね。
江城 ひとつひとつ返答するのはちょっと無理なんですけど、いただいた意見はしっかり受け止めています。ゲームを作っていくのってサービス業みたいなものだと思っているんですよ。衣食住に関わらない部分、娯楽の部分なので、娯楽にお金を払っていただいているっていうのはすごいことなんですよね。だから払っていただいた対価以上の楽しみを提供しなければ満足にはつながらない。おもしろいからもっとやりたいって思ってもらえることで、つぎにつながっていくんだと思います。『逆転裁判』はとくに「もう10年間待ってました」っていうような声もあるほど、熱いファンが多いシリーズです。10年待つってすごいじゃないですか、1本のゲームを10年間待ち続けるってなかなかないので、そういう思いでプレイしてもらえるのであれば、当然開発側はそこに応えられるだけのおもしろさを提供するべきだと思うんです。もちろん、それが大きなプレッシャーにもなります。ナンバリングの宿命というか。今回は『1』から『4』までと全然違うスタッフで制作しているんですけど、過去作を作ってきたスタッフに負けないよう、「ちゃんと『5』になっているよね」と言えるだけのクオリティーを目指して、すごく命がけで作ってくれたと思います。いろんなインタビューで言っているんですけど僕今回はかなりムチャを言っていたんで(笑)。山﨑が言うには「こいつホントに大丈夫か?」っていうレベルのムチャ振りをしていたと。でもそれにキチッとした形で応えてくれています。

――現場では激しいやりとりがあったわけですね。
江城 僕はもうプロデューサーサイドなんで、ゲームの中身の細かい部分については極力アレコレ言わないようにしているんです。言うのはとっかかりの部分、方向性、方針とか。あと僕がすごく口を出すのはキャラクターデザインですね。『逆転裁判』って、キャラゲーではないんですけど、キャラクターがすごく立っているゲームなので、非常にハンドリングが難しいんですよ。

――キャラクターが立ってるからこそ、宝塚の舞台になったりするわけですよね。
江城 そう。キャラクターを立てようとして、いつもギリギリのラインで攻めています。「これ以上いくとイロモノになっちゃう、でもこれ以下だとつまんない」っていうラインを毎回せめぎ合いながら作っていく。今回の新キャラクターのココネとかはとくに試行錯誤でしたね。僕のやり方ですが、担当に「何がダメなんですか?」と言われたら、具体的にどうダメとは言わずに、「どういうキャラを作りたいの?」とか「どういう思いで作ったの?」と聞く。それが上手くいっていないときは「あ、そうしたいんだったらそれは伝わっていないよ」っていう返し方をするんですよ。僕は最初のファン、プレイヤー目線の意見をしようと思っていて、出来てきたものがダメな時は「それを見せられてもそうは思えないよ」、「同じチームの人間がそう感じないっていうことは、何十万人いるユーザーさんが見ても全く心に響かないよ」っていう風に言っています。

――そこはきびしくやられているところなんですね。
江城 そこはけっこう細かく言いますね。名前に関しても、僕はずっとココネの名前が気に入らないって言っていました。いろいろあって最終的にはOKを出したんですけど。山﨑は“ココネ”をずっと推していたんです。

「『逆転裁判』シリーズは未プレイだけど、『5』から遊んでも大丈夫かな?」そんなアナタの背中を江城Pがグッと押すインタビューをお届け!_01
「『逆転裁判』シリーズは未プレイだけど、『5』から遊んでも大丈夫かな?」そんなアナタの背中を江城Pがグッと押すインタビューをお届け!_02
▲新たなパートナー希月心音。

――それはもう感覚の問題ですか?
江城 経験からの感覚ですね。ココネの場合は「ベタ過ぎるなぁ」と思っていたんですよ。“キヅキココネ”って、“ここに気付く”、“ここね!”ってベタじゃないかなあ、と。それでスタッフに名前の候補を200~300くらい出してもらって。でもどれもピンとこなくて。そして、ちょうど去年『DmC Devil May Cry』のために海外出張していたホテルで、そのことをなんとなく考えたときに、ちょっと自分自身リセットしようと思ったんです。プロデューサーはいろいろなことを最終決定する立場なので軸がブレてはいけませんが、基本的にひとりしかいないので自分で自分をフラットな状態に戻すという作業が必要になります。ゲーム開発というのは期間も長いですし、人間ですからどうしてもちょっとズレちゃったり、ということはありますからね(笑)。そうして『逆転裁判』の人物の名前らしさということを考えたときに、キヅキココネっていう名前は『逆転裁判』らしい名前かなと。それでココネでいいよ、とスタッフにOKを出したんですけど、そこの経緯がわかってもらえないので、僕が乱心したと思われたんですよ(笑)

――200も300も候補を出させたのに、一周して結局ココネに落ち着いたという(笑)。
江城 今回はグラフィックの表現でもそういうことがありましたね。”3Dで2Dの味を出す”というこれまたムジュンするような難しい表現を今回は目指していたんですが、もう何十回と作り直して、毎回「これでどうですか?」って来るんですけど、「なんか俺のイメージと違うんだよねこれ」、「もっと2Dっぽく見せてくれ」と(笑)。担当は「せっかくポリゴンで作ってるのに、なら2Dでいいじゃないか!」と言いたそうにしてるんですけど、「いやそれは違う、ポリゴンで作った上で、2Dの味を出してくれ」と。それが今回の『逆転裁判5』の画作りの根本ですから。

――でもそこまでつきつめてやられたからこそのクオリティーなんですよね。
江城 そうですね。もちろん現場には現場の考えや想いがあります。でもそれって下手すると、自分の自己満足になっちゃうんですよ。だからそこで客観的な視点をポンッと放り込んであげることによって見え方が変わる、「あ、そう見えるのか」、「自分たちはこうやりたいけど、そんな風に見えたらマズいな」って気づかせてあげると、いい方向に修正ができるんです。今回のお話のテーマで言うと、特に「初めて遊ぶユーザーさんにキチッとおもしろさが伝わるようなゲームデザインで考えて下さい」っていう話はさんざんしたので、そこはしっかりクリアしてきてくれていると思います。そういう意味では、僕は初見のユーザーさん、『逆転裁判』なんて全く聞いたこともやったこともないっていうユーザーさんを集めた体験会を見てみたいですね。どういう風なプレイをしてもらえるのかとか、何が刺さって何が刺さらなかったかっていうのは知りたいな、と思いますね。

「『逆転裁判』シリーズは未プレイだけど、『5』から遊んでも大丈夫かな?」そんなアナタの背中を江城Pがグッと押すインタビューをお届け!_10
「『逆転裁判』シリーズは未プレイだけど、『5』から遊んでも大丈夫かな?」そんなアナタの背中を江城Pがグッと押すインタビューをお届け!_13
▲本作は、3Dになったキャラクターたちがとにかくテンポ良く動き、表情も豊か。究極進化した『逆転裁判』と言って過言ではないだろう。

内輪ネタはNG!

――くどいようですが、たとえシリーズを知らなくてもストーリーなど問題なく楽しめるわけですね?
江城 バッチリです。ストーリーで言うと、当初から山﨑も内輪ネタはやりません、って言っていましたしね。要は、このキャラクターのこういう背景を知らないとこの会話は成立しない、おもしろさが伝わってこない、というようなテキストはNG。知っていればよりおもしろいっていうのはOKなんですけど、まずそのテキスト単体でのやりとりで会話が成立して、そこがおもしろいというのがあったうえでのシナリオです。

――内輪ネタは、知らない側にとっては置いてきぼりですもんね。
江城 置いてきぼり感が出ちゃうと「これの何がおもしろいんだよ」という感じになっちゃいますからね。そこを配慮しつつ、どのキャラクターを過去シリーズから出してくるかもすごく考えました。『5』としてのキャラクターの立ち位置とか、ドラマを組むうえで必要かどうかという。初めてプレイする方たちが入ってきて、そのキャラクターをパッと見て、『5』のキャラクターと思ってもらっていいんですよ。『5』で「こいつ面白いな!」となって、後から「前のシリーズのここで出ているキャラクターなんだ」っていう風に思ってもらって全く問題ないので。

――そういう双方向の楽しみかたもありますよね。
江城 例えばミツルギなんか出てきたら、初めての人は「どういうキャラだこいつ! こんな検事局長ってアリ?」みたいな感じだと思うんですよね。もちろんそのドラマの中でいろいろあって、彼は彼なりにキチッと成立はしているんですけども。それで、ユーザーさんが後から、「iPhone持ってるから『1』やってみよう」となって、「あぁミツルギって検事だったんだ」みたいな。

――そういえばミツルギの“ヒラヒラ”を増やす増やさないで揉めたという話も……。
江城 最初にミツルギのデザインが挙がってきたときにこのヒラヒラがもうね、太ももくらいまできているのがあって……。これはちょっとやりすぎだろう、と(笑)。そういう極端に振ったデザインがいっぱいあったんですよ。ヒゲ生えてたりとか。結局はいまの“全体的なゴージャス感”っていうコンセプトでまとまったんですけどね。ちょっと袖に折り返しがあったり、ベストや、スーツがフロックコートっぽくちょっと長くなってたり。でも色は変えないみたいな。そういう方向性でうまくいったんですけど、ほんとに最初はすごかったですよ。

「『逆転裁判』シリーズは未プレイだけど、『5』から遊んでも大丈夫かな?」そんなアナタの背中を江城Pがグッと押すインタビューをお届け!_07
「『逆転裁判』シリーズは未プレイだけど、『5』から遊んでも大丈夫かな?」そんなアナタの背中を江城Pがグッと押すインタビューをお届け!_05

――ファンも多いキャラクターですから、たいへんですよね。
江城 ヘタないじりかたはできないですよね。「こんなのミッちゃんじゃないよ」みたいに言われちゃう。

――そういう意味では、夕神迅なんかはかなり振り切ったキャラクターですね。
江城 まず最初に山﨑が企画の段階で「今回のライバルは囚人の検事にしたい」って。「囚人の検事ってなんだよ!?」って言ったら「囚人でかつ検事なんですよコイツ」と(笑)。「それどんなキャラクターなの?」って聞いたら、「それはこれから考えます」ですよ(笑)

――インパクトありきなんですね(笑)。
江城 そうなんです。まず発想として、囚人で検事って言われた瞬間に、「えっ、なんなのそれ?」って食いつきは抜群じゃないですか。ってことは、やっぱりインパクトあるよねと。じゃあそれを成立させるためのドラマとか事件とかを起こさないとね、とパーツをどんどんはめていく。そこでさっき言った苦労の話なんですけど、「囚人で検事ってやっぱり設定に矛盾があるからやめようぜ」ってなると、もうユガミは出てこないわけですよ。でもその苦しみの中で何とか生み出して作り上げていって突き抜けたときに、いいものができる。それが例えば今回のユガミなんです。あれは開発スタッフ、アートディレクターの布施も山﨑も思い入れ抜群のキャラだと思いますよ。

「『逆転裁判』シリーズは未プレイだけど、『5』から遊んでも大丈夫かな?」そんなアナタの背中を江城Pがグッと押すインタビューをお届け!_04
「『逆転裁判』シリーズは未プレイだけど、『5』から遊んでも大丈夫かな?」そんなアナタの背中を江城Pがグッと押すインタビューをお届け!_03
▲新たなライバル検事の夕神迅。その手強さは、開発陣の折り紙つきとのこと。

――確かに最初にユガミを見たときに、彼の話の顛末を知りたいなと思いました。あまりにも振り切れすぎていて(笑)。
江城 今回、山﨑は「どうしても手強い検事を作りたい」って言っていたんですよ。『逆転裁判』のころのミツルギの手強さみたいな。「くっそー何やってもこの人状況を逆転してくるよ」っていうような手強い奴を作りたいと話していて。それが最大限に出たのか、モーションも良い感じでムカつく動きをするんですよね(笑)。でも、そのぶんユガミを負かしたときのスッキリした感じ! これはもう、どうよ! みたいなものが体験できるんじゃないかと。通常のアドベンチャーゲームとか、小説とかって、物語を紐解いていくと、“謎が解けていく”気持ちよさはあると思うんです。物語の展開がおもしろいっていう気持ちよさはあるんですけど、爽快感ってあまりないと思うんです。例えば推理映画を観て「爽快だったわー」とか、そんなにはないですよね。よくできた話だという納得感はあっても、アクション映画を観たときのスカッとは違う。『逆転裁判』は、プレイした後にそのスッキリとした爽快感があるんです。それは多分、プレイヤーがウソをついてる証人を追い詰めて、負かしてやったっていうスッキリ感。自分で謎を解いて、状況を逆転して、物語を大団円に持っていったときの気持ちよさが味わえるゲームなので、その部分が多分、通常のアドベンチャーゲームと違う部分で支持されている理由かなと思います。

――アドベンチャーにバトル要素が入って、うまくいかないと負けちゃうという。
江城 これは本当に他にないプレイ感というか、気持ちのよさだと思います。それ故に、キャラクターをいかに立たせるかとか、デザインも含めたアニメーションが大事になってくるわけです。いままでは2Dのパターン画だったので、パターン画の限界がある中で工夫してきたんですけど、今回は、3Dになることでアニメーションがよりしっかり滑らかになっています。2Dだと立体的な動き、例えば身を乗り出す画とかが作り難かったんですが、そういうものも積極的に入れているので、よりキャラクターが生き生き動きいています。

――そうですね、これまでにない動きもたくさん見られます。
江城 ええ。もちろん、真犯人的な奴も動くわけですよ、生き生きと。絶対やっつけてやりたいと思うんです(笑)。お前を絶対追い詰めてやると。そうして追い詰めきれたときのあのスキッとした感じが、3Dになってよりして増していると思います。だから逆に何の先入観もなしに『逆転裁判5』から入ってもらったほうが、「なんだこのスッキリ感は!」という部分では、より味わえるんじゃないか、とも思います。

――ハードの進歩、技術の進歩が後押ししているところもあると。
江城 ですので、取っ掛かりは『5』から入ってもらって、「なんかスッキリしたー」と感じてもらえたら、じゃあ前のナンバリングタイトルはどんなスッキリ感があるのかと広がってくれたら嬉しいですね。

――はい。そこで6作品パックが……(笑)。
江城 そう、ドーン! とスペシャルボックスに入るわけですよね(笑)。15周年記念とかでやれたらいいですね。要望がホントに多ければ、検討していくでしょうし。

――『5』から入った人が、「このグラフィックで、3Dで、過去作をやりたいんじゃ!」となれば?
江城 ええ、皆さんのご意見はちゃんと届きますので、もしかしたらそういう未来もあるかもしれません。

ドラマとリアリティー

――ところで、江城さん的に他ジャンルの作品、小説、映画、漫画、アニメ、こういうのが好きな人だったら『逆転裁判』にもハマるんじゃないかな、というものがあったら教えてください。
江城 最近、「江城さん、『リーガル・ハイ』絶対観てください!」ってチームの子に強くプッシュされて、録画して観たんですけど、テイストというか、物語の雰囲気が『逆転』っぽいなあって思ったんです。ふつうの推理ドラマのファンの方もやってもらえれば楽しめると思うんですけど、そういったちょっと毛色の違う推理ドラマ、例えば『TRICK』であるとか、キャラクターも立ちつつ物語が展開していくのが好きな方も楽しめると思います。ふだん推理小説読まないし、推理ドラマとかもそんなに好きじゃないって方もいらっしゃると思いますが、でもその中でも『TRICK』のようなドラマにおもしろ味を感じるなら、十分楽しめるはずです。いまだったら『ガリレオ』とか間口の広い推理ものもありますよね。キャラクターが立っていて、ドラマが展開して、逆転要素があって。そこを楽しめるユーザーさんだったら、『逆転裁判』は絶対楽しめます。

――そんなに難解に捉える必要はないわけですね。
江城 はい、ありません。漢字四文字で逆 転 裁 判って書かれるとすごい堅いイメージがあるので、そう思われがちかもしれませんが……。

――そこはちょっと気にされているところなんですね?(笑)
江城 でも、これカタカナで『ギャクテンサイバン5』って書いたら、「おいどうした」ってなっちゃいますから(笑)。

――たしかにそうですね。それこそシリーズの伝統ですもんね。
江城 そこは守りつつ(笑)。ほかにも例えば海外ドラマの『CSI:マイアミ』みたいに本格的な推理ドラマでは、証拠を集めてキチッと捜査しているんですけど、それを楽しめる方だと、また別の楽しみかたが『逆転裁判』の中でも出てくると思うんです。現場を調べる探偵パートでは、自分で考えて理屈を構築して「何のヒントもなくても解いてやった」みたいな楽しみかたもありますしね。

――ちなみに、実際の裁判を傍聴されたことはありますか?
江城 あります。『5』を立ち上げるときにチームのメンバーで大阪地方裁判所に行きましたね。僕はそのとき初めて行ったんですけど、殺人事件の裁判を傍聴して。

――それはまたヘビーな事件の傍聴ですね。
江城 事件によって法廷の大きさも違って、小さい法廷で審理する窃盗事件とかは「じゃあ判決です」「ハイわかりました」という比較的簡潔なものだったりするんですけど。大きい法廷では殺人事件の口頭弁論とかもあったりするんですよ。今日の裁判リストみたいな傍聴用の資料があって、何時から何々の裁判、何時から何々の裁判、ってバーッと書いてあるので、それを見て、傍聴してみようと。重大な事件とか、話題の事件はやっぱり傍聴席が満席なんですよ。

――人が多くても、事件などを裁いている場所ですから雰囲気も当然重めに……。
江城 そうなんですよ。だから人間ドラマ的なものが伺えたりしますよね。山﨑が傍聴した中では、検察側が出した証拠に対して、「いやそこおかしいんじゃないですか」と弁護側がムジュンを指摘したりとかあったらしいんですよ。それで論破していくという。まさに「異議あり!」なシーンだったみたいです。実際は、検察側の陳述に対して、「こういう部分と証拠と矛盾があると思うんですけど」みたいな形の冷静なやりとりだそうですが。

――リアルにする必要は全くないですけど、一応踏まえたうえで作られていると。
江城 実際の裁判を知った上で『逆転裁判』はこうですよ、ということですよね。エンターテインメントに昇華させていくうえで、どういうエッセンスを入れて、何をオリジナルで作ってやるのか、それを考えるヒントになりました。だから全く何もかもがフィクションではなくて、そういうことも、もしかしたらあるかもねっていう具合のフィクション度合でやっていくと、身近になったりするんです。事件自体は奇想天外な事件だし、出てくるキャラクターも「そんなヤツいないだろ」みたいなのばっかりなんですけど(笑)。でも『逆転裁判5』の中で語られるドラマでも、そういう状況だったら自分もそういう風に思うかもとか、そういう衝動にかられてしまうかもとかいう部分がちゃんと描かれています。今回のココロスコープもそうなんですけど、極限状態の人間って法廷に立たされたらそりゃ思い違いも間違いもあるでしょ、っていう。感情的な部分は必ず裁判にはあるはずなので、山﨑が感情に切り口を置いてこのシステムを考えてくれたときは、よく考えてくれたなぁって思いましたね。それをいかにわかりやすくシンプルな操作で遊んでもらえるかというところに注力して開発しました。システムを複雑にしないというのが『逆転裁判』の重要なところなんですけど、いちばん難しいところなんですよ。複雑にするのはいくらでもできるんです。プレイヤーに負荷のかかるところを極力シンプルにしつつも、シンプルにし過ぎて逆につまらなくならないよう、味付けをしていきました。

「『逆転裁判』シリーズは未プレイだけど、『5』から遊んでも大丈夫かな?」そんなアナタの背中を江城Pがグッと押すインタビューをお届け!_08
「『逆転裁判』シリーズは未プレイだけど、『5』から遊んでも大丈夫かな?」そんなアナタの背中を江城Pがグッと押すインタビューをお届け!_06
「『逆転裁判』シリーズは未プレイだけど、『5』から遊んでも大丈夫かな?」そんなアナタの背中を江城Pがグッと押すインタビューをお届け!_09
「『逆転裁判』シリーズは未プレイだけど、『5』から遊んでも大丈夫かな?」そんなアナタの背中を江城Pがグッと押すインタビューをお届け!_14

エンディングに待つもの

――ちなみに『逆転裁判5』は通してプレイするとどのくらいのボリュームですか?
江城 だいたい平均で25時間ぐらいだと思います。全部つきつけを試したりする人なら、もっともっと伸びます。ただ、なぜ初めてでも遊びやすいかというと、1話ずつの構成で、休憩できるからなんです。だから「ゆっくり楽しみたい」って人には、バックログや探偵メモなどの機能が活きてくるんですよ。いままでの『逆転裁判』は一気にガーッとプレイしてもらえるぐらいおもしろいドラマを作りましょうというコンセプトでやっていたので、「バックログなどいらぬ!」みたいなところもあったんですけど(笑)、そこをプレイヤーさんによってスタイルを選べるようにしようよ、ということで今回採用したんです。

――なるほど。物語は3話くらいまではテンポよく進みますよね。4話、5話からがっちりという感じで。
江城 そうですね。そこでいろんなことが分かってくる、起承転結の転の部分で「おおぉー」となって、クライマックスを迎えて「はぁー」と、余韻が残るというか。そうだ、エンディングの曲がですね、10分くらいの曲なんですよ。今回も岩垂徳行さんに作曲をお願いしているんですけど、『逆転裁判』をすごく理解していただいている方で、もうすごいこだわりで作っていただいて。最初は2、3分の長さで曲を発注したんですよ。それが、エンドロールってスタッフの名前が流れていくものですけど、『逆転裁判5』のエンディングはちょっと違いまして、途中にドラマが仕込まれているんです。事件後のことについてキャラクターたちが語りかけてくれる。それが壮大な曲に合わせて流れていくんですけど、それが10分。しかも曲がループじゃないんですよ。10分がひとつの曲で、エンディングにもドラマがあるんです。

――そもそもそういう演出をするから10分の曲にしたわけではなく?
江城 違うんですよ。どうも作っていくうちに延びていったらしく(笑)。そこで岩垂さんも、「いやいやそれ無理だよ」っていうのでなく、「いいねぇ」って(笑)。結局、通常なら3曲分くらいに当たる曲を作っていただいたんです。本当に力作ですよ。これはもう絶対観てほしい! だから途中でやめないでほしいんですよ。長く時間がかかってもいいので最後までプレイしていただきたいですね。『逆転裁判』への愛情とか、最後までプレイしてくださってありがとうございました、という感謝の気持ちが表れたエンディングになっているので。出し惜しみ無しです(笑)。

――そこまで言われると、やはり最後まで見たくなりますね。
江城 感慨深いものがあるんじゃないかと思います。

――では、最後に読者へのメッセージをお願いします。
江城 ナンバリング作を作っていくうえで、プロデューサーの立場としては当然「どこからやっても大丈夫ですよ」って言えないといけないものなんですけど、『5』に関しては本当に、まず立ち上げた段階から初見の方に遊んでもらいたいっていう想いがありました。なので、ぜひ初めての方にもプレイしてもらいたいなと思います。既存のファンの方も、友だちに安心してお奨めいただけるものに仕上がっていますので、よろしくお願いします。そうしてコンテンツが大きくなっていけば、また新たな展開も実現できると思いますので、応援してもらえたら嬉しいです。

「『逆転裁判』シリーズは未プレイだけど、『5』から遊んでも大丈夫かな?」そんなアナタの背中を江城Pがグッと押すインタビューをお届け!_18
江城P「誰にでも楽しめるものに仕上がっているので、ぜひ手にとってみてください!」