プレイヤーに支持されている理由と課題

 2013年7月7日、コーエーテクモゲームス日吉本社にて”『信長の野望 Online』10周年感謝祭”が催された。『信On』プロデューサー・渡辺知宏氏、ディレクター・川又豊氏が登壇。ゲストには、『信On』はβテストからプレイしているライター・カゲキヨ氏、歴史アイドル”歴ドル”として活躍中の美甘子さんが登場し、世界唯一の戦国MMORPGである『信On』がこれまで歩んできた10年間の思い出話に花が咲いた。

新章の情報や暴露話も飛び出した、”『信長の野望 Online』10周年感謝祭”が開催_01
▲左からカゲキヨ氏、川又氏、渡辺氏、美甘子さん

 「10年間で6つもの拡張パッケージを出せたのも皆様のお陰だと思います。私自身もいろいろと立場が変わるなどあり、あっという間に10年が経った気がします。ベータ1テストのとき皆様へ未完成な状態で提供をした結果、多くの意見を頂き、それを反映したベータ2テストで”おもしろくなった”とご意見を頂いたときがとても思い出深いです。そして、この反応を見て、”これはいける”と確信が持てました」と、早速サービスイン前の話から切り出す渡辺氏を皮切りに、「なかなか出ない断片を求めて富士地下洞穴を駆けずり回ったり、黒雷と戦うために順番待ちで3時間待機したりとつらい思い出が多い気がします。ですが、大名と始めて戦ったときの緊張感や、ボス戦での立ち周りを考えてそれがハマったときの達成感などは忘れられませんね」(カゲキヨ)など、ディープな話が飛び出すところは、やはりコアゲーマーの多いMMOのイベントならではだ。
 そんなコアなファンたちに向けて実施された『信On』についてのアンケートの結果も公表された。”『信On』が愛されている点”として継続して遊んでいる理由では、”戦国時代を舞台にした世界観が好きだから”という意見がプレイヤーの71.93%にも上り、「『信On』の持つ戦国ファンタジーという世界観は、ほかにはないものです。今後はこの世界観を強く伸ばしていきたいと考えている」(渡辺氏)と力強い意思表示がなされた。以下は”参加しているゲーム内のコミュニティが楽しい”、”独特の戦闘システムが好き”といった意見が続き、「10年間プレイされている皆様は、ほんとうにすばらしいコミュニティを持っていると思います。『信On』は戦闘中でもチャットを楽しめますので、メンバーと連携するのが醍醐味です。これもほかにはないゲーム性だと思います」と渡辺氏は分析した。
 逆に不満な点として”『信長の野望 Online』の課題”も発表された。こちらでは”1度のプレイ時に時間がかかりすぎる”、”徒党を組むまでに時間がかかる”といった直接的な時間の問題に対する意見が多く、”先行プレイヤーとの差が埋められない”といった新規からの意見も見られた。また、カゲキヨ氏からは「合戦には、さまざまなローカルルールがあり、これが初心者には高い壁になっていると思います」と改善すべき項目を、プレイヤーと開発とで共有している様子が伺えた。
 そしてサプライズとして、『信On』の音楽を監修している川井憲次氏より、「10年もやらせて頂いていますといろいろなことがあります。作曲時はサウンドチームから音楽メニューが届くのですが、初期のころは”豪雨の中、少数精鋭が大軍を討つ”といった分かりやすいイメージが届いていたのですが、『新星の章』あたりからはアグレッシブなものになっていました。”雅楽ロック”といわれたとき、雅楽とエレキギターを融合させるという自分でも経験のないことに挑みましたし、それでも何とかうまくできたと思っています。今後もっとアグレッシブになってきそうで少し怖いです」とビデオレターによる暴露話が飛び出した。

新章の情報や暴露話も飛び出した、”『信長の野望 Online』10周年感謝祭”が開催_02
新章の情報や暴露話も飛び出した、”『信長の野望 Online』10周年感謝祭”が開催_03
▲川井氏のビデオレター。
▲ほかのタイトルにはない部分が楽しいと感じているプレイヤーが多いようだ。
新章の情報や暴露話も飛び出した、”『信長の野望 Online』10周年感謝祭”が開催_04
▲「時間の問題はMMORPG全体が抱える問題だと認識しています」と渡辺氏。

『天下夢幻の章』では、『信On』のおもしろさの原点に帰る

 新章の手応えを聞かれ、渡辺氏は「この先さらに15年、20年と目指していく気持ちを込めて拡張パッケージを作りました。コンセプトは”天下布武”です。古きを破り、新たな世界へ向かうという、織田信長の掲げたスローガンでもあります。これまでの『信On』の10年を、これから始まる『信On』に変えていきます。つまり、10年間ゲームが続いている中で実施された各種拡張によって、『信On』本来のおもしろさが伝わりにくくなったという反省から、1度原点に帰って『信On』の魅力を考え直し、それをストレートに伝えるために再構築したのが『天下夢幻の章』です」と新章への自信で返した。

新章の情報や暴露話も飛び出した、”『信長の野望 Online』10周年感謝祭”が開催_05
▲渡辺氏曰く「これまでの戦国の時代を打ち破り、新しい世界を作ろうという、織田信長の強い気持ちを込められた言葉」とのこと。

 また、”『信On』が変わる”を合言葉に”戦い”、”成長”、”世界”について今後の展開も発表された。
 ”戦い”では、攻城戦にかかるプレイ時間の短縮を約束。雑魚戦でもクローズドバトルが発生し、簡単な戦闘でも時間がかかっていた。これはオープンフィールドの要素を取り入れることで、経験値稼ぎの雑魚戦などは大幅な時間短縮ができるとのこと。また戦闘の舞台となる天下布武異録は、織田信長がもしも本能寺の変を生き延びていたら、という歴史ifストーリーが体験できるものとなる。
 ”成長”で注目なのが、攻城戦で使用するフィールド技能である軍神と、徒党(パーティー)全体で共通使用できる陣営技能だ。とくに陣営技能は徒党の仲間たちと使用タイミングを相談する必要があり、戦闘が一段と奥深いものになるよう期待が込められている。
 安土を舞台とする”世界”では入り口をしっかりと決めて、「『天下夢幻の章』は安土から始まるんだ!」と冒険の芯をドッシリと添える方針とのこと。全ワールド共通のダンジョンでは仲間たちとのコミュニケーションにより、絆を深める効果を狙う。また、徒党の募集などができる冒険瓦板も実装。募集内容を瓦板に貼り付けるだけで、募集する側も参加する側もワンタッチで機能を活用できるものになるそうだ。
 新規のプレイヤーもこの安土から冒険を開始することから、低レベル帯をサポートする施設もののふ道場も設置されている。また、レベルアップに必要な経験値も緩和されるとのことで、新たにプレイするための環境も確実に再構築される。なお、全ワールド共通のエリアでは、ワールドを超えてのアイテムの受け渡しなどはできないとのことだ。
 さらに”いつも楽しい『信On』”をスローガンにした長期計画も開示された。7月の『天下夢幻の章』を実装後、11月には早くも第二陣のアップデートが実施される。ここでは合戦を軸に調整するとのこと。具体的には、合戦の目標をひとつに絞り、わかりやすいコンテンツを目指すというものになる。現状では検分を稼ぐこと、合戦に勝利することとふたつの目標があり、それらがお互いにぶつかってしまっている。そのため、検分を廃止して、合戦で勝利することに集中できる環境を整えるようになるそうだ。なお、大合戦も合戦のルールを複雑化している要因と考え廃止を決定。戦果についても計算方法を大幅に変更し、陣を取ることが直接合戦に勝利するような仕組みに生まれ変わる。これにより、武将を倒してはいけないといったローカルルールがなくなり、全員で協力してひとつの目標に突き進めるようになりそうだ。また、遊びやすさの改善として、合戦の開催時間の変更もなされる。より多くのプレイヤーが参加できる時間帯を算出し、さらに1戦にかかる時間の短縮や開催頻度の向上も検討中とのこと。報酬面では、活躍すればするほど多く貰えるように変更予定で、手柄システムを利用して、その成果によって報酬が貰えるようになると同時に、陣のサポートや仲間への回復などでも手柄に繋がるような調整を検討中。これらの調整は、第二陣が始まったらすぐに実施するのではなく、1度本ワールドでテストをしてから意見を集め、それを反映してからの実装になる予定だ。

新章の情報や暴露話も飛び出した、”『信長の野望 Online』10周年感謝祭”が開催_06
▲3つの要素を柱に、現状の見直しにも力を入れていく。
新章の情報や暴露話も飛び出した、”『信長の野望 Online』10周年感謝祭”が開催_07
新章の情報や暴露話も飛び出した、”『信長の野望 Online』10周年感謝祭”が開催_08

ほかにもタイアップイベントを実施。『劇場版タイムスクープハンター 安土城 最後の1日』の主人公・沢嶋雄一のトレードマークともいえるメガネがゲーム内に登場する。

開発前の極秘情報も飛び出した”『信On』リークス”!

 開発者しか知らないような情報を惜しみもなくぶっちゃける”『信On』リークス”では、渡辺氏が『信On』開発前の企画書を持参して登場。その表紙に書かれた『超・信長の野望』とは、『信On』の開発前の名称で渡辺氏はたいへん気に入っていたタイトル名。しかし、今年30周年を迎える『信長の野望』を超えるというのは失礼では? と反対があり泣く泣く取り下げたのだとか。その当時の『信On』のビジュアルサウンドコンセプトは”リアルな戦国描写とファンタジー”だったとも明かした。さらに企画段階の職業も公開。そこには、さまざまな人形を使役して戦闘を行う傀儡師、相手の攻撃を無力化することに長けた徒手家、戦闘の趨勢を見極める軍師など企画段階で消えた職業が多数存在した。
 プレイヤーからの質問に直接渡辺氏が答えるコーナーでは、装備生産の入魂時は魅力が依存している?という質問に対して「関係ないです」と答えると、会場からはどよめきと笑いが巻き起こった。さらにNPC専用の技能・沈黙の霧を無くせませんか? という質問に対しては、「この技能については問題視しています。発動の予兆がなく対処ができないのが原因だと認識しています。ゲームのおもしろさは、対策にあると考えていますので、対策を講じれるように調整できればと思います」と渡辺氏。また、川又氏からは「蘇生の秘薬についても、調整の必要があると考えています。こちらは『天下夢幻の章』から使用頻度を極力減らす予定です」と具体的な話もなされた。

開発者との交流を楽しみ、クイズゲームに沸いた第2部

 会場を移し、軽食を楽しみながらプレイヤーどうし、あるいは開発者とプレイヤーとで交流を深めた第2部。そこで催された”『信On』○×クイズ大会”では波乱があった。「まずはウォーミングアップ問題からいきます」と川又氏が出した”レベル65のとき必要になる、食料の合計価値は、パエリア4個分である。○か×か”という問題に、ほとんどの参加者が×を選択。そして正解したのは○を選んだ4名だったのである。そのあとも、”秀吉戦機の第一陣桶狭間の戦いに登場する秀吉の背中の家紋は、信長から授かったという五三桐である。(答:×)”、”現在すべてのワールドで流通しているお金の総額は、1文30円換算にしたとき、2013年度の日本の国家予算を上回る。(答:○)”といった難問が出題された。ちなみに前者の正式な家紋は、沢瀉紋だそうで、川又氏のこだわりを感じて欲しい部分とのこと。後者は、6月現在の全ワールドで35兆文もあるそうで、1文30円換算で計算すると1000兆円くらいになる。
 この会場では、ひとあし早く『天下夢幻の章』をプレイでき、HD版となった美麗な世界を駆け回るプレイヤーが多く見られた。また、渡辺氏と川又氏が各テーブルを回り、プレイヤーと直接会話をしている姿をたびたび目撃。そこではどのようなプレイをしているといった雑談で盛り上がったいたようだ。
 最後に、「ディレクターに就任したばかりの新米で、巨大掲示板などでは”新メガネ”と呼ばれています。すてきなニックネームを頂けると、それを糧にがんばります。皆様の意見は無駄にはしませんので、今後ともよろしくお願い致します」(川又氏)、「皆様と直接話ができてほんとうにうれしかったです。ぜひこういった機会を増やせればと思います。『天下夢幻の章』ではゲームも大きく変わります。新しいスタートに立ち会って頂けますとありがたいです」(渡辺氏)と締めくくった。

新章の情報や暴露話も飛び出した、”『信長の野望 Online』10周年感謝祭”が開催_09
新章の情報や暴露話も飛び出した、”『信長の野望 Online』10周年感謝祭”が開催_10
▲10周年祝いのケーキも登場。ゲーム内のアイテムを模した形となっている。
▲『信On』○×クイズ大会で優勝したP.N.センジンさん。「『信On』はサービス開始直後から遊んでいます。章が変わるたびに新しい期待があるので、この賞品(信長の野望 Online ~天下夢幻の章~ TREASURE BOX)で遊びつくしたいと思います」
新章の情報や暴露話も飛び出した、”『信長の野望 Online』10周年感謝祭”が開催_11
新章の情報や暴露話も飛び出した、”『信長の野望 Online』10周年感謝祭”が開催_12
新章の情報や暴露話も飛び出した、”『信長の野望 Online』10周年感謝祭”が開催_13
▲『天下夢幻の章』で拠点となる安土
新章の情報や暴露話も飛び出した、”『信長の野望 Online』10周年感謝祭”が開催_14
新章の情報や暴露話も飛び出した、”『信長の野望 Online』10周年感謝祭”が開催_15
▲新たな成長要素の軍神
新章の情報や暴露話も飛び出した、”『信長の野望 Online』10周年感謝祭”が開催_16
新章の情報や暴露話も飛び出した、”『信長の野望 Online』10周年感謝祭”が開催_17
新章の情報や暴露話も飛び出した、”『信長の野望 Online』10周年感謝祭”が開催_18
新章の情報や暴露話も飛び出した、”『信長の野望 Online』10周年感謝祭”が開催_19
▲大人数での戦闘を楽しめる攻城戦
新章の情報や暴露話も飛び出した、”『信長の野望 Online』10周年感謝祭”が開催_20
新章の情報や暴露話も飛び出した、”『信長の野望 Online』10周年感謝祭”が開催_21
▲新技能。鎧鍛冶の防戦の極至(左)、僧の烏枢沙摩秘呪(右)

(c) 2003-2013 コーエーテクモゲームス All rights reserved.