“デバイス&サービスカンパニー”への変革を目指す日本マイクロソフト

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▲日本マイクロソフト 代表執行役社長・樋口泰行氏。

 本日2013年7月2日、都内で日本マイクロソフト・新年度経営方針記者会見が開催された。この記者会見は、7月から新しい年度を迎えた日本マイクロソフトの戦略発表会だ。
 この7月から始まった、日本マイクロソフトの2014年度は、“デバイス&サービスカンパニー”への変革の一年と位置づけられている。ソフトウェアのみならず、同社のタブレット型多機能端末“Surface”をはじめとしたデバイスでの展開も強化される(全社員に“Surface RT”が配られているとのこと)。さらに、7~9月には法人向けに“Surface”を投入するほか、Windows 8.1のプレビュー版の開始(※日本語版提供はコチラ)、Windows XP・Office 2003のサポート終了による乗り換えキャンペーン、SkyDriveや法人向けのWindows Azureなど、クラウドビジネスをさらに加速させる。

Xbox Oneはもちろん日本でも展開

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▲変わらずダンディーな出で立ちの泉水敬氏。

 さて、今回ファミ通ドットコムでは、記者会見後に開催された懇談会で、Xbox部門のトップ・泉水敬氏(日本マイクロソフト インタラクティブ・エンターテイメント・ビジネスゼネラルマネージャー)を直撃。今後のXbox事業に対する取り組みかたなどを伺った。

――改めて泉水さんの口から、「Xbox Oneは日本でも出します」という言葉が聞きたいのですが。
泉水 日本でも出しますよ。もちろんです。発売時期については、皆さんに発表できる準備ができ次第、きちんとした形でお伝えしたいと思っています。
――E3でのXbox Oneについての感触はいかがでしたか?
泉水 初代Xboxから一貫した進化をたどってきていると思います。ゲーム機として、つねに最高のプラットフォームであり続けると同時に、ゲーム以外のエンターテインメントもどんどん取り込んで、Xbox Live サービスも進化・充実してきました。Xbox Oneは、現時点での集大成として、また“オール・イン・ワン”のエンターテインメント・システムとして、自信を持って皆さんに提供できるプラットフォームになると思います。
――Xbox Oneで注目している機能はなんですか?
泉水 やはり新しいKinectになりますね。いままでKinectというと、ジェスチャーを認識するデバイスとして認知されていたと思いますが、新世代のKinectは、センサーの前に立つだけで、そのユーザーがどなたなのか、どんな趣味・嗜好を持っているのか、さらに細かい動きなども認識できるようになっています。いままでの“ジェスチャーゲーム向けのKinect”とはまったく違うものと言えると思います。
 それにより、これまでとは違ったゲームも出てくるでしょうね。いままでは、Kinectを使っているという“意識”が強かったのですが、ふだんの生活でそれほどジェスチャーは使わないですよね? それに対して新しいKinectは、特段Kinectを意識することなく、自然な振る舞いや笑顔、声を出すなど、ふだん取っている行動できちんとXbox Oneが動くユーザーインターフェースです。いわゆる“ナチュラル・ユーザーインターフェース”(NUI)に近づいたと言えます。
――NUIについては、以前からマイクロソフトは積極的に研究していましたね。
泉水 現世代のKinectも、ゲーム以外で、非常にたくさんの分野で使っていただいていますが、新世代のKinectも、企業や研究機関から注目していただいています。
――新しいKinectは、認識精度も上がっているようですね。
泉水 視野角が広がったことで、たとえば部屋が狭くて、距離が近くても認識できるようになりました。もうひとつの問題である騒音や振動についても、先ほどお話ししたように、大きなジェスチャーをしなくてもKinectが認識するということを、うまくゲームに取り込んでいただければ、騒音などを気にすることなく、ゲームをお楽しみいただけると思います。
 Kinectを特段意識することなく使っていることが、我々が目指している“21世紀のリビングルーム”ですから。その魅力については、ていねいにお伝えしていかなければいけません。

●『Titanfall』に新世代ゲームの未来を見た

――E3で、泉水さんが気になったタイトルはなんですか?
泉水 『Titanfall』ですね。日本のメーカーの方もおっしゃっていましたが、あのテイストのゲームを海外に越されたのが非常に悔しい、と。こういうロボットゲームを作りたいという理想に近いゲームですからね。
 また、将来的にいちばん大きいポテンシャルを持っている機能は“クラウド”だと思います。『Titalfall』もクラウド機能を使うことによって、物理演算やAI計算をサーバー側が行い、それらをゲームに取り込むことが可能になってきます。ゲームの可能性を広げる一因になると思いますよ。
――クラウド機能については、まだ不明な部分も多いですね。
泉水 一般のプレイヤーの方にとって、とくにクラウドを使って何かをするという感覚は必要ありません。いまは、クラウド機能を使ってどんなゲームを作っていただけるかということを、開発者の皆さんにお話している段階なので、それらが具体化してくると、ユーザーの皆さんにはイメージが湧きやすいのではないかと思います。ただその時でも、ウラ(サーバー側)で何が行われているかは、ユーザーさんには関係ないですから。
――とくに意識する必要がないと?
泉水 はい、そうあるべきだと思います。ただ、クラウド機能があることによって実現される世界は、プレイヤーにとって、とても新鮮な、衝撃的なものになると思います。
――現行機では、日本のメーカーは海外メーカーに押されているのではないか、という意見もあります。Xbox Oneではどのようになると思いますか?
泉水 我々のカンファレンスのオープニングは『メタルギア ソリッド V ファントムペイン』でした。日本のメーカーにもふたつの方向性があると思います。ひとつは、世界に通用するフランチャイズを育てていくということ。もうひとつは、日本ならではの遊びかたやゲーム性、キャラクターなどを追求する方向性です。これらは必ずしも同一方向ではないので、どちらも世界市場において成功する可能性を持っていると思います。遊んでいて楽しい、手ざわり感がいいといった、日本のメーカーさんが得意なゲームが出るといいなと思いますね。Xbox Oneはオール・イン・ワンのエンターテインメント機ですから、ハイエンドなゲームもあれば、カジュアルなゲームもあり、エンターテインメントも楽しむことができます。
――Xbox Oneの本体価格についてはいかがですか。
泉水 まずは、Xbox Oneの価値をユーザーの皆さんにきちんと認識してもらうことが第一だと思っています。単なるゲーム機ではない、オール・イン・ワンのエンターテインメント・システムとしての価値。Xbox Liveやクラウドサービスなどを含めた価値を理解していただくように努力していくことが必要です。一方で、価格に限らず、Xbox Oneの世界に入ってきやすいご提供の仕方も考えないといけないと思っています。いろいろと考えていますよ。
――今年は東京ゲームショウに出展しますね。
泉水 やはり、ゲームショウには出展しなければいけないと思っています。去年が例外でした。ユーザーの皆さんに楽しんでもらえるものを出展したいと思います。
――では、最後にメッセージをお願いします。
泉水 Xbox 360のビジネスも引き続きがんばっていきます。ユーザーの皆さんが楽しんでいただけるゲームを取りそろえて、よりサービスの充実を図っていきます。一方で、Xbox Oneの日本での展開についても準備を進めていますので、ぜひ楽しみにしていてください。

◆番外編:IllumiRoom(イルミルーム)
 懇談会会場入り口にさりげなく設置されていた“IllumiRoom”。いわゆる技術デモで、Kinect for Windowsとプロジェクターを使って、壁一面にさまざまな映像を表示するというものだ。今日設置されていたものでは、台の“Microsoft”という文字を立体表示に見せたり、画面に表示された画像外の上にスライドさせるなど、さまざまな視覚効果が可能。残念ながら明るい場所だと、肝心の光の演出が消えてしまうが。
 技術デモということで、具体的な実用アイデアはないが、店頭でのPOPや夜間のイルミネーションの演出など、アイデアひとつで効果的な利用法が生まれそうなデモだった。

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▲技術デモながら、さまざまな用途に使えそうな“イルミルーム”。