PS4バージョンは自然な流れで!?

『グランツーリスモ6』は根本から見直し、よりリアルに進化――山内一典氏インタビュー【E3 2013】_09

 2013年6月11日から13日(現地時間)までアメリカのロサンゼルスで開催された世界最大級のゲーム見本市、E3 2013(エレクトロニック・エンターテインメント・エキスポ 2013)。同イベント期間中、ソニー・コンピュータエンタテインメントからプレイステーション3用ソフトとして、2013年冬発売予定の『グランツーリスモ6』のプロデューサー山内一典氏の合同インタビューが行われたので、その模様をお届けしよう。

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――まずは、現段階の開発状況を教えていただけますか?

山内 開発は進んでいると言えば進んでいるんですけど、僕らの中では半分くらいですかね。ゲーム制作では、最後の最後で完成度がグッと上がってくるものなので、まだまだやることはいっぱいあります。

――開発で苦労しているポイントは?

山内 『GT6』はこれまでのシリーズでやってきたことを、もう一度見つめ直して、レースゲームとしてのベースを、もう一度構築することを目指して開発しています。それは、ソースコードもそうですし、モデルデータもそうなのですが、そのどれものがたいへんですね。『GT6』では、よりリアルになった分、サスペンションやジオメトリのセットアップがかなりシビアで、これまでのようにあいまいな状態だとちゃんと動かないんです。その代わり、セットアップが決まってくると、ものすごくちゃんと走る。そのあたりの調整を今後、1200台のクルマに対して行っていくんですけれど、それ自体はすごく楽しみです。

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――最新のPVではライバルカーとの激しいバトルが展開されていましたが、『GT6』では、ライバルカーのAIなども変更されているのでしょうか。

山内 はい。細かいところでいうとフィジックス(物理計算)も含め、AIも変えています。フィジックスやレンダリングエンジン、AI、サウンドシミュレーション……すべて基本が大事なんですね。何かだけを取り出して改善する、というのはできなくて、根本からやり直すということが必要で、今回はそれをやっているところです。

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――手応えを感じている部分は?

山内 ビデオゲームを制作しているときというのは、“急がば回れ”でコツコツと開発する必要があるんですが、ある日、何かが達成される瞬間が訪れるんです。それがゲーム制作の醍醐味でもあるんですが、PSとPS2のときと比べると、ハードウェアやソフトウェアが成熟してきたことで、作っている最中に遭遇する新鮮な驚きの瞬間は減ってはきてはいます。ですが、『GT6』に向けて基本からやり直すことで、そうした僕らにとって幸せな瞬間はたびたび訪れています。

――幸せの瞬間というのは、たとえばどんなところでしょう?

山内 ある日の晩なんですが、新しいフィジックスを開発していて、縁石を乗り越えてみたら「何これ!」みたいな(笑)、それを狙って作っているわけではなかったんですが、結果として予期せぬいいものができあがったんです。そういうのは突然やってくるんですよね。そこがうれしい瞬間で、今回のPVでもこれでもかと言うくらい、そのシーンが入っていますが、それは僕らの新鮮な喜びがそのまま入ってるというか(笑)。具体的には、縁石を乗り越えた瞬間にタイヤが路面とどうコンタクトしているのか、というのがステアリングを通じてすごく感じられるんです。かつ、バネ下のタイヤが暴れながら路面に接地し、その力がバネ上に伝わって、スプリングのダンパーが車体の動きを減衰しながら路面に戻っていくというのが、『GT6』ではものすごく伝わってきますよ。

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――E3でプレイしている人の反応をどうご覧になりましたか?

山内 じつは、プレイした人の感想を聞いていないのでよくわからないのですが……。ただ、すごく行列ができていたので、少しでもたくさんの人がプレイしてくれればいいなと思います。

――新たなロケーションとして、スペインのゲマソーラーが公開されましたが、『GT』シリーズではEV車(電気自動車)も増えていくのでしょうか。

山内 EV車にはEV車のトレンドというのがありますから、今後はどうするかはそのトレンドを見て判断することになると思います。今回はテスラ・モデルSを入れてますが、ゲマソーラーというシチュエーションにはテスラがすごく合っていると思っていて、PVにもテスラを入れています。

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――ホンダがF1に復帰するというニュースがありましたが、今後の『GT』シリーズにホンダのF1カーが収録される可能性はあるのでしょうか。

山内 じつはF1カーというのは、つねに1台しか入れてはいけない、という取り決めがあって、すでにフェラーリを収録しているので、そう簡単に決断できる話ではないんです。

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――PS4対応に関しては、どのようにお考えですか?

山内 このタイミングでPS4対応についてはまったく考えていません、というのもバカみたいじゃないですか(笑)。

一同 (笑)。

山内 まずは、『GT6』を待ってくれている人が多いプレイステーション3でリリースし、オンラインでのアップデートを重ね、タイトルを成長させて、プレイヤーがすべて遊び尽くしたかなと思われるころにPS4バージョンは自然に現れるんじゃないですかね。ですから、待たせすぎることもないし、早すぎることもないと思います。

――PS4というハードに対してはどういう印象をお持ちですか?

山内 以前、PS4の紹介映像でもコメントしたことがあるんですが、基本的にはニュートラルでバランスが取れた、クセのない、いいハードだと思います。ですから、あとはソフト次第でしょうね。

――ハードの性能が上がると実現できることも増えてくるのでは?

山内 それはつねにあります。僕らから見るとハードウェアはとてもセクシーなんですね。性能を見て何ができるのか、というのがイメージできます。ただ、進化のステップ幅は小さくなっていますので、そうじゃない方向で魅力を作っていく必要もあると感じますし、いい意味でビデオゲームが成熟してきたと思っています。

――SCEからは『#DRIVECLUB』というレースゲームも発表されていますが。

山内 『#DRIVECLUB』はまだよく見ていないので、皆さんのほうがよくご存知かもしれません(笑)。僕らはこれまで15年間『GT』シリーズを作ってきて、いろいろなトライをしてきました。自分たちが感じた点を改良する、変化させる、ということをコツコツと続けていくしかない。ほかのタイトルが何をやっているかは意識はしていません。改良点したい点というのは、どうしても出てくるんです。『GT6』ではメニューからレースが始まるまで、ロード画面なくシームレスでレースが始まるようになっているんですが、『GT5』ではロード時間が長いというプレイヤーの声があったので、『GT6』ではそれを解消しました。これはUIを高速化したりなどで実現しています。

――山内さんがレースゲームを作り続けるモチベーションはどこにあるのですか?

山内 そうですね……。不思議なんですけど、『GT』の開発に飽きたことはないですし、ツライと思ったことも正直ないですね。『GT』の開発当初まで遡ると、20年ほど同じチームで開発していて、人は増えていますが、チームのコアメンバーは変わらずに同じファミリーで作り続けています。広いゲーム業界と言えど、そんなチームはほかにないと思います。そういった家族的な結束力も迷いなく進めるひとつの原動力なのかなと思います。

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