初のプレイヤブル(試遊台)出展!
コーエーテクモゲームスから2014年に発売が予定されている『YAIBA: NINJA GAIDEN Z』。本作は、コーエーテクモゲームス、comcept、SPARKの3社で開発が進められている、極めて異質なアクション新作。今回のE3では、初のプレイヤブル(試遊台)出展となったが、見た目以上にスピーディーで気持ちのいいアクションは『NINJA GAIDEN』を彷彿とさせる手触り。それでいて、ゾンビから腕を引きちぎってゾンビヌンチャクにしてしまったり、メカ仕様になっている左腕を活かしたパワフルな攻撃など、“斬る”だけではない、多彩で驚きのあるアクションが複数用意されており、まさに触ると納得の仕上がりとなっている。そんな本作について、共同開発のコーエーテクモゲームス早矢仕洋介氏と、comcept稲船敬二氏に、E3会場で話を伺った。
■コーエーテクモゲームスらしくない新作アクション
――初のプレイヤブル(試遊台)の出展となりましたが、まずは現在の開発状況と、その手ごたえを教えてください。
稲船敬二氏(以下、稲船) 全体の開発状況は約3割なのですが、触り心地の部分は、9割ほど仕上がっています。物量を詰め込んでいくのはこれからですが、その前段階の部分はだいたい見えたな、と。
――アクション部分のベースや、どういった遊びを盛り込むか、といったところはほぼできている、と。
稲船 そうですね。そこは固まりました。E3初日、皆さんが遊ばれているのを見て、思った以上に、なんて言うと怒られるかもしれないですが、評判がいいんですよ。
――思った以上に(笑)。
稲船 いや、こう見えて、不安だったんですよ(笑)。
早矢仕洋介氏(以下、早矢仕) やっぱり不安でしたよね。
――でも、触らせていただいて、アクションのベースの部分に『NINJA GAIDEN』らしさをしっかり感じました。すごくスピーディーですよね。
早矢仕 ちゃんとアクションゲームになってるじゃん、みたいな感想は受けると思います。
稲船 やっぱりアートが先行すると、「中身はどうなの?」って皆さん思われるんですよね。
早矢仕 ややもすると見かけ倒しのようにとらえられちゃうかな、と。ですから、中身はしっかり作っていますが、こうしてお披露目するまでは不安だったんです。
――“カタナ”だけではなく、思いもしない攻撃手段が用意されていたり、ユーモラスな演出が合間に挿入されたり、何と言いますか「吹っ切っている」という印象も受けたのですが。
稲船 早矢仕さんによく言うのですが、このゲーム、コーエーテクモゲームスさんらしくないんです。それは最初から狙っていたところとは言え、コーエーテクモゲームスさんがどこまで受け入れてくれるかが心配だったのですが……。
早矢仕 逆に僕らから、もっともっとやってください、とリクエストしています(笑)。新作とは言え同じチームで開発すると、どこかに“匂い”は残っちゃうんです。だからこそ、今回ような異質な匂いは大歓迎でした。もちろんアクションゲームとしての手触りの部分はとても大事で、こだわりもありますが、全体のテイストはぶっ飛んだほうがいいな、と。
稲船 だから、遠慮なくやらせてもらっています。すごくやりやすいですよ。
――当初のコンセプト通りに開発が進んでいる、ということですね。
稲船 本当に、ほぼ企画書の通りになっています。
■湧き出るアイデアをしっかり活かす開発体制
――ゲームの中身についてですが、オープニングのシーンで、主人公のカミカゼ・ヤイバとリュウ・ハヤブサが相対して、ヤイバは左腕がメカになるほどの深手を負います。ゲームとしては、ふたりのライバル関係が主軸の、因縁の物語になるのでしょうか?
稲船 そうです。ゾンビを倒すことが目的ではないんです。あくまでヤイバは、リュウ・ハヤブサを倒すために突き進む。その過程でゾンビがジャマだから、倒しまくるんです。
早矢仕 ヤイバ自身は男らしくてカッコよくて、リュウ・ハヤブサを倒すという明確な目的があるキャラクターになります。
――なるほど。ちなみに、主人公のヤイバですが、ゲーム中に顔が見えるカットインの演出がありましたが、いわゆるイケメンではないですよね。Team NINJAさんのイメージとは異なるような。
稲船 それは、僕が考えるイケメンは、カッコいい人じゃないからです(笑)。
早矢仕 開発元のSPARKからも、いろいろな候補が挙がってきましたが、これは違う、というやり取りはけっこうしました。僕らも突っ込んで意見を言って、ヤイバ像を固めていきましたね。
――アクション部分は、どのような形で練っていったのでしょう?
早矢仕 基本的には、SPARKのアイデアを尊重して、活かすことを大事にしました。無邪気なアイデアがいっぱい出てきたので、アクションゲームとして押さえなければならないところは説明して導きながら、彼らのクリエイティブを大事にしています。
稲船 指示待ちはしないようにしよう、と決めたんです。「こうやってください」、「伝えます」、「わかりました」みたいな指示系統になると、3社が存在する意味がなくなってしまう。ですから、「何を、どの方向性で、どう作っていくか」という基礎の部分はみんなが納得できるまで詰めて、あとはSPARKに自由に開発させているんです。もちろんダメなものはダメだと言いますが、アイデアが出てきたなら、その意志を尊重するような開発体制になっています。
――ヤイバのメインの武器は“カタナ”になるんですよね?
稲船 いや、メインの武器は決めていないんです。少なくともカタナ一辺倒ではないですね。ヤイバのカタナって、オープニングでリュウにポキンと折られているんですけど、あの短いカタナのまま戦っているんです。
――ああ! そうなんですね。
稲船 もちろん、プレイヤーが違和感を覚えないようにふつうに使えますが、じつは短いんです。そんな、不完全な状態だから、カタナだけではなく、ニンジャならではのテクニック、メカのパワーなども使って戦うことになります。
早矢仕 プレイスタイルによっては、カタナだけでもいけますが、それ以外の選択肢もたくさん用意します。
――確かに、ゾンビの腕を引きちぎってヌンチャクにしてしまったり、敵の頭が火炎放射器になるシチュエーションがあったり、ステージを進む過程で、いろいろな武器が登場します。
早矢仕 そのあたりも、SPARKのアイデアです。ニンジャ×ゾンビというコンセプトからもブレていないので、そこは伸ばしていくことに決めました。
稲船 早矢仕さんは、『NINJA GAIDEN』の長所も短所も当然すべて知っているので、アートを変えて、ゾンビを加えて、『NINJA GAIDEN』の新作にするだけでは魅力が伴わないことを重々わかっています。だから、ヤイバらしさ、ゾンビを使う意味をきびしく求めているんです。それにSPARKが応えて、ゾンビヌンチャクといったアイデアが生まれた。すごく健全な関係だと思っています。
――開発において相乗効果が生まれているんですね。左腕はメカになりますが、この使いかたは?
早矢仕 ニンジャって、ふつうは力で押すような戦いかたはしないですよね。でも、このメカがあるので、ニンジャらしからぬアクションも盛り込めるんです。もともとは稲船さんのアイデアですが、やっぱりアクションに広がりがでるんです。ロケットパンチみたいな技もあります。
――ロケットパンチは、YAIBAみずからが敵に突っ込んでいきますよね。このような技が許される設定はすばらしいと思います(笑)。
稲船 ですよね(笑)。この組み合わせはおかしいよね、というものこそ入れ込みたい。僕は長年にわたり海外デベロッパーと仕事をしていますが、ある程度の緩さと言いますか、縛らない感じで話を持っていくと、彼らからどんどんアイデアが出てくるんです。日本人は根がマジメなので、同じ条件でもどこかで制限をかけてしまう。海外デベロッパーは、それがない。結果、アイデアが出てくるようになったら、それをチョイスして、導いてあげればよいので、開発もどんどん前に進むんです。
■2014年の早い時期にリリース予定!
――今回はステージ1を遊ばせてもらいましたが、ゲームの合間にゾンビどうしの掛け合いがあるなど、ユーモラスなカットインも印象に残りました。全体のストーリーはシリアスですが、こういった演出も入ってくるんですね。
稲船 そうなります。ヤイバ自身は、リュウ・ハヤブサをシリアスに追っているのでお茶らけたりはしないですが、周辺のゾンビはそこには関係ないので。ステージ1では、ゾンビがローラー車に投げ込まれて、そのまま運転して、ゾンビを挽きながら壁をぶち壊しますが、この演出って、必要不可欠ではないんです。なくてもぜんぜん成立する。だけど、あったほうがおもしろいよね、というサービス精神で入れています。
――想像以上に詰め込まれそうですね。
稲船 アメリカ人のゾンビに対するイメージって、“スチューピッド”なんです。“ホラー”とか“グロテスク”ではない。そこは日本とは違うところで。だから、ゾンビでおもしろく遊ぶほうがいいんですよ。
――最後に、おふたりからメッセージをお願いします。
早矢仕 2014年の早い時期には、皆さんに遊んでもらえるように開発を進めています。今回の3社による開発は我々にとってもチャレンジですが、ふだんとは違う“匂い”のゲームに仕上げますので、新しい刺激をお待ちください。公開された映像を観た感想なども、お寄せいただけるとうれしいです。
稲船 初めてTeam NINJAと組ませてもらっていますが、本当にたくさんの刺激を受けています。もちろんいいことばかりではなくて、今回もE3のROMがなかなか上がらなくて、どうしようって心配になったりもしていましたが(笑)。
早矢仕 ちょっとコンセプトに乗り込んできてって、スタッフに冗談で言いました(笑)。
稲船 「大丈夫です」と言いながら、「大丈夫かな……」って(笑)。でも、海外デベロッパーはだいたいこんな感じなので(笑)。もちろん手ごたえは相当にありますし、早く、日本のゲームファンの皆さんにも触ってほしいですね。
――ちょっと気が早いですが、東京ゲームショウでは遊べますよね?
稲船 それは大丈夫でしょう。
早矢仕 また、東京ゲームショウ以外に、触ってもらえる機会が作れないかな、とも思っています。見た目はアメコミ調で、アートな感じもしますが、触ると本気のアクションゲームですから、多くの人に触れてほしいと思っています。
稲船 動きも、実際に触るとすごくスピーディーで、印象が変わると思います。期待してもらっていい作品に仕上がってきています。『NINJA GAIDEN』と西洋のゾンビの融合を、ぜひ楽しみにしてください。