次世代レースゲームは意外なところで(?)すごかった

 6月10日(現地時間)に開催されたユービーアイソフトのカンファレンスで、突如発表された次世代機向けの新作レースゲーム『The Crew』。カンファレンスで流されたトレーラー映像が、“いろんな種類のクルマが都市を疾走しまくる”という、ぶっちゃけわりとありきたりな内容だったので、どんな特徴を持ったレースゲームなのか、いまいちピンとこなかったのだが、ユービーアイソフトブースで実際に遊んでみて驚いた。
 じつは本作は、超広大なオープンワールド形式のレースゲームだったのだ。今回遊んだエリアは峠道だったのだが、始まった瞬間に適当にアクセルを全開してみたら、コースアウトして山から谷底まで真っ逆さま! レースゲームだから、道の両側にある縁石でブロックされたりするものと思っていたのに……。横で見ていた開発スタッフが「このゲームはオープンワールド形式だから、見えているところはすべて走れるんですよ」と教えてくれた。なるほど、それを先に知りたかったよ。

オープンワールド・MMO・RPG……いろんな要素がくっついた次世代レースゲーム『The Crew』開発者インタビュー【E3 2013】_01

 気を取り直してゲームを再開。峠を下りて市街地をドライブすることに。次世代機だけあって建物やオブジェクトのボリュームや質感がかなりいい感じで、街の雰囲気がよく出ている。今回プレイしたのはPC版の開発機材だが、開発スタッフによると、プレイステーション4版とXbox One版でも同等のクオリティーを出せるという。それはすばらしい。試遊の後で調べてわかったことなのだが、『The Crew』はIvory Towerとユービーアイソフトの2社による共同開発作品。Ivory Towerはこれが初めてのゲーム開発だが、『ニード フォー スピード』シリーズや『バーンアウト』シリーズ、『テストドライブ アンリミテッド』などを手掛けたスタッフが集結してできた会社。そしてユービーアイソフトのほうは『ドライバー』シリーズを手掛けたスタッフが主軸になっているという。上記のラインアップを見れば、『The Crew』がオープンワールド形式を採用した理由が何となく納得できる。ちなみに、ふつうのクルマでマップを1周しようとすると、3時間はかかるらしい。なお、開発スタッフの話では、このゲームにはさらに“MMO”と“RPG”の要素も盛り込まれているらしい。オープンワールドで、レースゲームで、“MMO”で、“RPG”、それっていったいどんなゲームなの!? というわけで、本作のクリエイティブディレクターを務めるJulian Gerighty氏に話を聞いてみた。

オープンワールド・MMO・RPG……いろんな要素がくっついた次世代レースゲーム『The Crew』開発者インタビュー【E3 2013】_02
オープンワールド・MMO・RPG……いろんな要素がくっついた次世代レースゲーム『The Crew』開発者インタビュー【E3 2013】_03
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オープンワールド・MMO・RPG……いろんな要素がくっついた次世代レースゲーム『The Crew』開発者インタビュー【E3 2013】_06
『The Crew』
クリエイティブディレクター
Julian Gerighty氏

――さっそくですが、本作の基本コンセプトを教えてください。
Julian Gerighty(以下、Julian )氏 スタートはまず“最大のドライビングゲームを作ること”でした。しかもそれだけではなく、いろいろなことができる、多様性のある世界を目指しました。さらに、活き活きとした現実の世界に限りなく近づけたかったので、MMO(大規模多人数同時参加型オンライン)の形式と、RPGの要素を盛り込んだのです。

――“最大”とは、スケールの話ですか?
Julian ええ。規模やエリアの話です。本作にはニューヨーク、マイアミ、ネバダ、ロサンゼルスという広大な地域が収録されていますが、ディスクの読み込みなしでドライブを続けられるのが特徴です。

――“MMO”の形式とは、具体的にはどういうことですか?
Julian 本作のおもなプレイ人数は4人ですが、これは協力プレイの部分だけの話です。ネットワークにつないで遊べば、ほかのプレイヤーと同じ世界を共有できます。自分の隣を走っているクルマは、実際のプレイヤーかもしれないし、AI(人工知能)かもしれない。ひとつの世界をたくさんのプレイヤーで楽しむことになるので、“MMO”と。

――もしかしたら、何百人ものプレイヤーが自分と同時に走っているかもしれない、と。
Julian そうですね。だから“MMO”と説明しています。

――『The Crew』というタイトルは、走る仲間という意味なのでしょうか?
Julian タイトルにはふたつの意味があって、ひとつはおっしゃるとおり“仲間”というもの。フレンドといっしょにドライビングし、いろいろなアクティビティーを体験するのです。もうひとつは、このゲームではクルマに乗って各地を回ることになるのですが、そこでファミリーメンバーをリクルートするというシステムがあります。デトロイト、ニューヨーク、ラスベガスなどなど……。旅をともにするファミリーメンバーは“乗組員”のようなものです。

――このゲームでは、ひたすらミッションだけに挑戦してもいいし、友だちどうしであてもなく旅をしてもいいようですね。
Julian そういうことです。世界にはいろいろな発見があるので、ぜひ各地を巡ってみてほしいですね。

――たとえば、マップを1周ぐるっとクルージングすると、どのくらい時間がかかりそうですか?
Julian クルマやルートによってぜんぜん違いますが、目安としては最速クラスのランボルギーニで、ニューヨークからサンフランシスコまで最短ルートで1時間45分くらいかかります。田舎の道を通って、もうちょっと遅いクルマに乗ると、だいたい3時間ほどでしょうか。レベルがある程度あがれば、もっと早く到達できるはずです。

――なるほど。さきほどRPGの要素とおっしゃっていましたが、走るうちにレベルアップして、走りが変わるんですね?
Julian その通り。本作では、“経験値”と“キャッシュ”と“パーツ”を集めることで、クルマをカスタマイズできます。カスタマイズは3項目に分かれていて、ストリートとオフロードとサーキットがあります。プレイヤーの皆さんの好みに応じてカスタマイズしてほしいですね。

――このゲームは、シミュレーターとしてのリアルさと、レースゲームとしての爽快感の、どちらに重きを置いているのでしょうか?
Julian 我々はちょうどその中間を目指しています。アクションドライビングで、しかもコントロールのレスポンスがいいのがいちばんです。プレイしたら本当にドライブしている感覚を持ってもらえると思いますよ。
――本作は、Ivory Towerとユービーアイソフトの2社が共同開発を行っているとうかがいました。Ivory Towerは『ニード フォー スピード』シリーズや『バーンアウト』シリーズ、『テストドライブ アンリミテッド』などを、ユービーアイソフトは『ドライバー』シリーズといったゲームを手掛けているとのことで、いずれも広大な世界を舞台にしたゲームがそろっています。オープンワールドには並々ならぬこだわりがあるのではないでしょうか?
Julian はい。Ivory Towerにとってはデビュー作になりますが、経験のあるスタッフが多数在籍しているので、じつに魅力的なオープンワールドを作ることができました。このゲームでは、都市も砂丘も山岳も、プレイヤーに見えているところはすべて走れるようにしています。

――2014年の発売まで少し時間がありますが、開発はどんな作業が残っていますか?
Julian 少し時間がある? とんでもない! 発売日はすぐにやってきますよ(笑)。というのも、私たちがやらなければならない課題が山積みでして、グラフィックはもちろん、ユーザーインターフェースも磨かなければいけません。それにクルマのハンドリングなども調整しないといけないですね。ただ、プレイステーション4とXbox Oneは、ハード自体が最終的な機体が完成していないので、そのあたりも難しいところですね。近々弊社に届くことになっていますよ(笑)。その後、社内でのプレイテストを入念に行って、少しずつクオリティーを上げていきたいと考えています。2014年の発売まで、もう少しお待ちください。