紛れもなくシリーズの魂を継いだ最新作

 じつは『TOMB RAIDER(トゥームレイダー)』シリーズといえば、筆者が海外ゲームにも目を向けるようになったきっかけのひとつであり、いまだに思い入れ深いタイトルでもある。
 第一作目が登場したのは17年前。これ以前にも3Dフィールドを舞台にしたアクションはちらほらと出ていたが、本作のように人々の記憶に残った作品は少ない。古代寺院や人跡未踏の密林など、冒険ロマンをくすぐる舞台設定。頭を使わないと突破できない仕掛けや罠の数々。ふだんは環境音のみだが、場面展開に合わせて流れだす映画的な音楽。そして主人公ララ・クロフトの躍動する豊満な肢体(!)などなど、映像的な魅力が3Dアクションのおもしろさを下支えしており、プレイしながら“次世代機の時代”の到来を実感したものである。
 その『TOMB RAIDER(トゥームレイダー)』シリーズが久々にリブート。知人からもデキがいいという評判は聞いていて、そろそろ自分でもプレイしなければ……などと思っているうちに今回のお仕事の話が来た次第(冒頭で「思い入れ深い」とか書きつつ、それもどうかなのかという気はするが……)。
 二丁拳銃をかまえてこちらを睨んでいるララに心の中で平謝りしつつ、さっそくゲームをスタート。すると、開幕から息をつかせぬ危機また危機の連続。浸水した船の中で溺れそうになるわ、殴られて天井から吊り下げられるわ、スロープをものすごい勢いで滑り落ちるわ、岩に押しつぶされそうになるわ、爆撃機の残骸から滑り落ちそうになるわ、命綱なしで鉄塔を登らされるわで、息つくヒマのないジェットコースタームービー、もといゲームっぷり。

【めざせ!!100万時間応援企画】プレイリポート第4回:『TOMB RAIDER(トゥームレイダー)』プレイインプレッション_01
【めざせ!!100万時間応援企画】プレイリポート第4回:『TOMB RAIDER(トゥームレイダー)』プレイインプレッション_02
▲危機的状況やバトル、そして遺跡での謎解きがつぎからつぎに展開し、プレイヤーは島の異常な状況や、邪馬台国の卑弥呼にまつわる謎に引き込まれていく。

 そんなこんなで、気がつけばあっというまに数時間が経過していた。うむ、このゲームは紛れもなく『TOMB RAIDER(トゥームレイダー)』の最新作だ!
 ちなみにジェットコースタームービーで思い出したが、確か17年前も「これ女性版・レイダースじゃん!」などと言われていたような……。

おもてなし要素と、プレイヤーに委ねる要素のバランスが絶妙

 Xbox 360やプレイステーション3の登場以降、“プレイできる映画”タイプのゲームのクオリティーは一気に上がったが、本作はそれらの中でも1、2を争う映像美を実現している。しかも、通常のゲームシーン、ムービー、そして映像を見つつ操作を行うシーンがスムーズにつながり、切れ目を意識させずに連続していく。それが冒頭でもお伝えしたジェットコースター感を増幅し、プレイヤーの気持ちをとらえて離さない。
 そしてただ連続するのではなく、激しい場面が続いた後はストーリーや謎を語る場面で休憩させてくれるという具合に、緩急のリズムもすばらしいのだ。
 ちなみに映像を見つつ操作を行うシーンも、単に素早く反応すればオーケーというわけではない。敵の顔を蹴り飛ばす場面など、映像のタイミングに合うように目押しを行う場合もある。ボタン操作と映像がシンクロすることにより、映像に自分の気持ちが乗ったような感覚があるのだ。わずかな違いだが、単なる早押しタイプのものよりもはるかに入り込める気がする。

【めざせ!!100万時間応援企画】プレイリポート第4回:『TOMB RAIDER(トゥームレイダー)』プレイインプレッション_03
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▲「まーたQTEか」などと侮ることなかれ。映像と操作をしっかりシンクロさせてあるので、通常のプレイ画面が派手になったような気分で楽しめた。

 また、シリーズ伝統の探検ルート探し、謎解きなどは少しだけ易しめに。壁面にピッケルを打ち込むときや、壁を蹴ってさらに上に登る場合はタイミングよくボタンを押す必要もあり、アクションゲームとしてのリスク感、達成感などをより強調してきた印象だ。
 さらに新機能“インスティンクト”を使えば、よじ登るべき場所や、押すべきスイッチなども表示される。旧シリーズの雰囲気は好きなものの、難易度のおかげで先に進めなかったという方もこれで安心だろう。

【めざせ!!100万時間応援企画】プレイリポート第4回:『TOMB RAIDER(トゥームレイダー)』プレイインプレッション_05
【めざせ!!100万時間応援企画】プレイリポート第4回:『TOMB RAIDER(トゥームレイダー)』プレイインプレッション_06
▲ララの冒険家としての本能が目星をつけてくれる。しかしジャンプのタイミングや操作の順番など、プレイヤーが考えねばならないことも多い。

 しかし。この“インスティクト”は、任意で使うか使わないかを決められるのがポイント。シリーズの古くからのファンなら“自分自身のインスティンクト”を働かせて遊んだほうが圧倒的に楽しいはず。個人的にはやはり、こういった探索ものの解法は人や攻略サイトに教わるのではなく、自分自身の力で見つけてこそという思いがある。アナクロだろうか?
 とはいえ、前回のプレイからあいだが開き、どっちに進むのか忘れたときなどは“インスティンクト”はとても便利でした!(結局少しは使うんかい!)

遊びごたえややりこみに関しては?

 今回の『TOMB RAIDER(トゥームレイダー)』は、絶海の孤島でのサバイバルや成長要素がアクセントとして加わっており、本筋のお話を頭から最後まで順になぞればハイおしまい、というゲームではない。
 たとえば狩りの要素。ララは動物や敵対する人間を狩ることで経験値を獲得、さまざまなスキルを習得することができる。また、島の各所には廃物の入った箱が落ちており、これをサルベージして武器や装備を強化するという要素もある。物語の本筋を進めていて戦闘がきびしく感じた場合は、これまでに通過してきた場所に戻り、狩りやサルベージなどでララのパワーアップを計ればいいというわけだ。

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▲ステルス状態を保ちつつ、ヘッドショットを確実に決めていけるプレイヤーなら、スキル習得や武器改造はそれほど気にしなくても大丈夫。幅広い腕のプレイヤーが楽しめる作りだ。

 また島の各所にはトゥーム(墳墓)が隠されており、そこでは遺跡の仕掛けを突破して秘宝を手に入れるという、シリーズの原点のおもしろさを味わえる。オールドファン(筆者も含む)にはたまらない要素だ。また秘宝探しはララに経験値をもたらすため、スキル習得面でも有利になる。

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▲本シリーズの謎解きはアクションパズル的。頭を使いつつ、タイミングよく操作を行わないと秘宝を手に入れることはできない。このシリーズのもっともコアなおもしろさを継承した要素。

 遊びごたえといえば、Xbox Liveを使った各種対戦もかなりのボリュームだ。まず対戦マップは立体構造で、ジャンプやよじ登りなどのアクションを駆使して移動することになる。進撃ルートや待ち伏せポイントはかなり多く、上下からの敵にも警戒しなくてはならないため、変化に富んだ展開を楽しめる。
 また、マップ固有の仕掛けやトラップなどもあり、マップを熟知することによるアドバンテージは計り知れない……というか、マップを覚えていないと敵プレイヤーにやられるだけでなく、高い場所から転落して死んだりするので(笑)、まずはプライベートマッチでマップを熟知するところから始めることをオススメしたい。
 さらに、シングルプレイとは独立したスキルや武器のアップグレード要素があり、スコアを稼げば稼ぐほど強力な武器やスキルを使用できるようになる。対戦を始めたばかりのころ、至近距離のショットガンに何発も耐える敵にビックリさせられたが、アップグレードを重ねていくことで対等の条件で戦えるようになるわけだ。

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▲対戦用のマップはダウンロードコンテンツとして購入でき、新たに増やすことができる。初期のマップだけでは飽きたらなくなってきたら購入してみてはいかがだろう?

 なお、今回の『TOMB RAIDER(トゥームレイダー)』のお話は、ララ・クロフトがふつうの女の子から、一人前の冒険家として成長するきっかけと過程を描いている。スキル習得や武器のアップグレードは単なるゲーム的なお楽しみというだけでなく、お話のテーマとうまく合致している要素と見ることもできる。初めて人を撃ったことに戸惑っていたララが、眉ひとつ動かさずに敵をバリバリ撃ちまくる強い女にいかにして変わったかという過程を、プレイヤー自身の手で追体験(?)できるのだ。本作が気になった方は、ララ・クロフトを心ゆくまで成長させてみてはいかがだろう?

■著者紹介:高橋祐介
ゲームやデジモノ界隈に出没するフリーライター。昨今のゲームの完成度の高さと、日本でのセールスのギャップに寂しさを感じなくもない今日このごろ。大人ゲーマー諸君、もうちょっとだけでいいので遊ぼう!(自分も含めて)