屈指の演技派声優が演じた、型に収まらないヒロインの素顔とは?

 Take-Two Interactive Japanから2013年4月25日に発売予定の『Bioshock Infinite(バイオショック インフィニット)』。本作でヒロインのエリザベス役を演じた沢城みゆきが、エリザベスの魅力、そして本作の魅力を語ってくれた。

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エリザベスは“キャラクター”というよりも“ひとりの人”でした

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沢城みゆき(以下、沢城) 最初に見せていただいたのは、印刷された絵ではなくて、すでにモーションがついて動いているエリザベスでした。その映像には台詞はついていなかったのですが、とてもクオリティーが高くて、おびえているとか、すごくエキサイティングなことがあって楽しいと思っているとか、それが動きや表情だけで十分表現されていたんです。それを見て、いろいろな顔、表現をしていいキャラクターなんだな、と思いました。ひとつのイメージで、聡明ならずーっと聡明というわけではなくて、はしゃぐこともあれば、すごく大人っぽい顔もすることもあったり。

――局面に応じていろいろな表情を見せてくれるキャラクター、ということですね。

沢城 そうですね。キャラクターというよりは、ひとりの人として演じていいのかな、という印象でした。

――その最初の印象と、実際に演じてみた後で、印象が変わった部分などはありましたか?

沢城 演じてみると、あまり日本のゲームでは見ないような……けっこう主人公に冷たくするというか、ちょっと主人公をないがしろにしたようなリアクションもするんですよね。ずーっとヒロインなだけではなくて、ちょっとヒロインから降りたような行動をするところもあって。キャラクターのレンジが、日本のキャラクターよりも広いような印象は受けましたね。そして、最初に見た印象よりも、ずっと可愛いらしかったですし、ずっとミステリアスな女の子でした。

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――演じるうえで、難しかったところ、楽しかったところがあったら教えてください。

沢城 日本語吹き替えの音声収録が、海外での制作と同時進行だったので、海外でできあがった部分から台本がくる、という進行だったんです。ですので、これがいったいどのシーンの台詞なのかがわからないまま、カンで進めていったところもありました。なんとなく声の印象をきいて、おそらくはクライマックスに近いのではなかろうか? とか、まだブッカーのことを“ミスターデュイット”と呼んでいるから、これはたぶん、出会いの最初のほうのシーンではないだろうか? とか(笑)。こちらにすべての情報が揃った状態で臨めた収録ではなかったので、切れ端から想像しながら収録していくというのは、非常に難しい部分でもあり、また現場のみんなで楽しみながら進めていった部分でもありますね。

――なるほど、かなり難しい収録だったようですね。

沢城 海外からくる台本が、時系列がバラバラになった状態のもので、たとえばアクションシーンの台詞だけが、オープニングからエンディングまでまとめて印刷されている台本だったりするんですね。そうすると、何ページにもわたって、「ブッカー!」「ブッカー!」「ブッカー!」って、ずっと呼びかけているみたいなこともあって(笑)。でも延々と叫んでいると、声が枯れてきてしまうので、最初に、ふつうにしゃべっている部分を録って、収録の最後1時間くらいで、一気に声を張る台詞を録る、という進めかたになるのですが、そこでは毎回、2回くらい休憩を入れて、クーラーを入れ直さないと、「汗だくで無理です」となりました(笑)。ちょうど夏場に収録していたので、ちょっとしたスポーツでした。

――シーンによっては絵素材がないままに収録したこともあったそうですね。何か収録中の印象深いエピソードなどはありますか?

沢城 たとえば、咳、“カフ(cough)”と書いてある台詞だけで、NO.10まであったりするんです。ほとんど同じ音に聞こえるけど……とりあえず全部録りましょうと(笑)。はたしてそれがオープニングで使われている咳なのか、ラストシーンの咳なのかがわからないまま、とりあえず、「これはすごく苦しそうだから、走った後の咳かなぁ」などと想像しながら、いろいろなパターンを録りました。同じように、くしゃみやあくびも、やっぱり10パターンくらいありましたね。

――「ブッカー!」にもいろいろなパターンがありそうですね(笑)。

沢城 そうなんです。「ここは距離感が何となくさっきより遠い気がするな」とか、「さっきよりも何となく、ピンチな感じがする」というところを聞き取って、日本語吹き替え版では、もう少しだけ、シチュエーションをわかりやすく盛っているというか、原音より少しピンチを上乗せしたり、少し息を切らせたりと、少しだけ過剰に表現して、できるだけパターンがかぶらないように工夫しました。

――ちなみにエリザベスの年齢はどのくらいを意図して収録されたのですか?

沢城 最初にプロデューサーからは、「だいたい20歳くらいの女の子です」という説明があったのですが、日本のユーザー向けには、もしかしたらもう少し、隙があるというか、子どもっぽいほうが、より親しみやすいのではないかという話になりまして、私の中では、もう少し下、17歳~18歳くらいのイメージで声をあてています。とは言っても、あくまでも吹き替え版の17歳なので、日本の制服を着ている高校生よりは、はるかに大人っぽい作りにはなっていると思います。海外版はもっと声が低めで、20代真ん中といってもおかしくないくらいに聞こえるのですが、日本語吹き替え版では、少女な雰囲気が残るようにしています。

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――今回、ブッカー役の藤原啓治さんの声を聞きながら収録された場面もあったとお聞きしています。これはゲームの収録では珍しいですよね。

沢城 最初は私の収録の進行のほうが早かったので、海外版のエリザベスの台詞を聞いて、それに合わせながら収録していく方法でした。でもだんだんクライマックスシーンになると、相手との台詞のかみ合わせが重要になってくるので、海外版のブッカーの台詞を流していただいて、それにリアクションしていくという方法を採るようになったんですね。そこからさらに収録が進むと、啓治さんの収録が先行し始めたので、「それなら啓治さんの声で流してほしい、なぜなら私のテンションがすごく上がるから」と(笑)。それで最後のほうでは、啓治さんの声を聞きながら、すごく大事にしてもらいながら収録しました(笑)。

――本作では、途中でエリザベスが歌うシーンもありますが、そこでは沢城さんが歌われているのでしょうか?

沢城 はい、日本語の歌詞で歌いましたよ。けっこう本作では、後からいろいろなことが追加されるというか、「あ、それもやるんだ!」というのが多かったですね(笑)。

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好きにならざるをえないヒロインになっている……はずです(笑)

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――『バイオショック インフィニット』という作品についてお聞きしますが、ほかのゲームと違う部分はありましたか?

沢城 ゲームでは、“インフォメーションとしての台詞”というのがありますよね。ゲームを進めるうえで必要な、たとえば「あれを取って!」とか、「あの馬車を救って!」というような、情報としての台詞が多いじゃないですか。でも本作では、キャラクターの台詞、感情の台詞が凄く多くて、じつはそれをうまくつなげていくと、すごく大事な伏線になっていたり、重要な情報が紛れ込んでいる、という作りになっているんです。ゲームに必要な情報を与えられるというより、自分でどんどん情報の切れ端をつないでいきたくなるような、そういう表現のされかたになっているのは、このゲームの希有な部分かな、と思いますね。

――なるほど、自然な会話をよく聞いておくと、なんとなく目的がわかるような。

沢城 そうなんです。お話の進みかたが、映画とかに近い印象を受けました。

――ストーリーについては、どのような感想を持たれましたか?

沢城 それは、本当にこのゲームの凄いところだと思うのですが、最初は、ちょっと鬱屈とした世界観から始まるんですね。それがエレベーターで天井に上がると、いきなり真っ白で天国のような世界が広がっていて。その世界をちょっと進むと、そこにはスカイラインというトロッコみたいな電車のかわりをするようなものが、すごくきれいな青空の中を滑走しているシーンになって……画面の中の雰囲気だけでも、すごくアドベンチャー感があって、エキサイティングで、そこにまず夢中になるんですね。そのあとでエリザベスという女の子に出会って。その子が、最初は仲よくなれそうもない距離感なのだけれど、どんどんその子の可愛い部分が見えてくるので、今度は世界観よりもエリザベスに夢中になっていくんです。でも、そうしてエリザベスに夢中になって、エリザベスを救うお話だと思って進めていると、「あれ? これ、どうも自分に関係ない話じゃないぞ……?」というところに、いつの間にか迷い込んでいることに気づく。これがすごい仕掛けで、またその先にある結末が、「えーっ!? ……また最初から遊ぼう」みたいになるという(笑)。最後にたいへんなことが起きるのですが、そこの仕掛けが、私自身も演じていてすごくビックリした部分でもあるので、そこはぜひ、体験していただきたいと思います。

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――うーん、とても気になりますね! では、エリザベスの声を楽しみにしているファンの皆さんに、聞きどころを教えてください。

沢城 海外版のエリザベスを見たときに、とても聡明なのに、とてもピュアという面を併せ持っている女の子で、私自身がまず何より彼女のファンになったんですね。それをとにかく、100%再現することに集中してやりましたので……日本語吹き替え版のエリザベスも、可愛いはず、なんです(笑)。そしてこの作品の特殊なところは、ヒロインが後ろを付いてくるのではなくて、ずっと自分よりも前を行くヒロインなんですね。ストーリーの中心としての部分を担いつつも、マスコット的な可愛さも、聡明なヒロインという部分も併せ持った女の子で、ときどきいなくなって心配させられたりするんです(笑)。だから本当に、どんどんどんどん、世話を焼きたくなるというか、好きにならざるをえないヒロインになっている……はずなんです(笑)。ですので、日本語吹き替え版でも、そう感じていただけたらいいな、と思います。本体設定で音声を切り替えられるらしいのですが、ぜひ、日本語版でもやってみてください(笑)。

――最後に、ファミ通読者にメッセージをお願いします!

沢城 とっても魅力的なヒロインが、日本にやってきました。すごく人間味のあるキャラクターで……キャラクターと言うよりも、ひとりの女の子として、彼女はいろいろな顔を見せてくれます。古城にとらわれたお姫様のようなときもあれば、やんちゃな妹のようだと感じるときもあり、ハリウッド映画のヒロインのように、すごくたくましく、自分の相棒のように立ち振る舞いを見せてくれることもあったり。そして最終的には、まるで運命の人だったかのような顔を見せる部分もあって、本当に魅力的な女の子です。ですので、ぜひ、彼女に出会っていただけたらな、と思っていますので、よろしくお願いします。

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バイオショック インフィニット
メーカー Take-Two Interactive Japan
対応機種 X360Xbox 360 / PS3プレイステーション3
発売日 2013年4月25日発売予定
価格 7770円[税込]
ジャンル アクションアドベンチャー