個人的には寝っ転がりながらPCゲームはとてもナイスだが……。
NVIDIAが発表したAndroidマシン“Project SHIELD”。サンフランシスコで行われたGDC(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス)2013で行われたNVIDIAの講演“NVIDIA Project SHIELD and Tegra 4 Redefining AFK”の模様から、その真価を探る。
要は“Project SHIELD”とそのチップTegra 4についての解説を行なって、要は「こんな感じにグレートなのであなたもゲーム作ってね」というスポンサー講演だったのだが、ゲーマー的にも気になる部分があったのだ。
まず最初にあらためてProject SHIELDを紹介しておくと、この携帯ゲーム機風のマシンはNVIDIAの最新モバイル用プロセッサーTegra 4を搭載したAndroidマシンだ。
Bluetooth接続のゲームパッドなどいくつかの試みはあるものの、モバイルゲームを進化させるような決定打があまりない(特にインターフェース面)ことから、モバイル分野を強化していきたいNVIDIAが、「じゃあ究極のゲームデバイスを作ろう!」(登壇者)と思い切って作ったのがコレということになる。
とはいえ、5インチ720Pの液晶にコントローラー、サウンドに、ハイスピードWi-FiつきのAndroidゲームマシン……って言われても、「うーん」と思うかもしれない。それは当然だ。作り手にとっても、ユーザーにとっても、Androidのゲーム市場のほとんどはそんなウルトラハイスペックを想定したものになっていないからだ。
NVIDIAはTegraZoneを通じてTegraで動作するハイエンドモバイルゲームをブランド化しているが、多くの作り手にとっては「で、誰が買うの?」ってなもんだろう。頑張ってバキバキのハイエンドゲームを作っても、動かせるマシンを持ってる人がいなければ意味が無い。多くのユーザーにとっては逆に「そんなスゲーマシン買って、それに値するゲーム出るの?」ってな話になる。
そのジレンマを解決する(かもしれない)アイデアがPCゲームのストリーミング再生機能だ。NVIDIAがクラウド分野で積み上げてきた研究成果を応用し、NVIDIAのグラフィックボードを積んだゲーミングPCからストリーミングを行なって、いわばSHIELDを自家用のクラウドゲーミング端末にしてしまうという機能を搭載している。
講演タイトルの“Redefining AFK”とは、トイレ行ったり洗濯物取り込んだりする際にPCから離れることを告知するAFK(Away from Keyboard)を再定義するという意味。SHIELDはクラウドゲーミング端末であるであるからこそ、Wi-fiが飛ぶ家の中であればどこにでも持ち運び、ゲームを継続できる。これは「超すげぇAndroidゲーム」という今存在しない需要より、コアゲーマーにとってはっきりした魅力だ。というか記者はこの部分だけでかなり欲しい(Android機としてはあまり期待していないが……)。
SHIELDがコアゲーマーを獲得できれば開発者はSHIELD向けにゲームを作る意味ができる、SHIELD向けのハイエンドゲームがたくさんできればNVIDIAはTegra路線をさらに強化できる(し、Tegraもグラボもたくさん売れる)……。だからNVIDIAはこの3月終盤、PAX East(全米からコア中のコアゲーマーが集まるイベント)とGDC(世界からゲーム開発者が集まるイベント)にSHIELDを出展し、プロモーションをしていたのだ。
ちなみにTegra 4の性能は、CPUとしてウルトラブックに搭載されるCore i5に匹敵する性能を持つという。GPU性能もモバイル向けとしては最高クラスで、これまで「モバイルだから」と諦めていた部分もガンガン作り込めるというのが売りになっている。
講演では、SHIELD向けの開発時の注意事項も明かされた。尖ったコンセプトのハードだけあって、通常のAndroidやPC向けの開発とは異なる注意点があるというのは興味深いところ。
・SHIELDは横長なので画面をちゃんとサポートすべし
・Androidゲームはタッチ必須にしないように、PCゲームはマウス必須にしないように
※ソファーから立たずに遊べるように! ソファーから立ってマウスを弄りにいかなければいけないようでは修正が必要
・HDMIで大画面へ出力した際にどうなるかもテストすべし
・PCゲームはストリーミングに最適化したほうがよし
・コントローラーはやっぱりゲーミングデバイスとして最強
・コントローラーを自動検出してすぐに遊べるようボタンをちゃんと割り当てるように。またすべての要素にボタンでアクセスできるように。
・秒間20フレーム以下だと体感できるレベルでカクカクするが、コントローラーがつくとなぜかさらに目立つので注意されたし
・コントローラー使用時はタッチメニューを消してゲーム画面を全面に映し出すといい
・入力については、Android標準のInput クラスを使用。
・UI面では現在選択している要素を強調表示するようにするとわかりやすい。それと操作はコントローラーに最適化すべし
さて、こういった取り組みによりProject SHIELDが成功するかどうかはわからないが、スマートフォンゲームにいくら市場としての魅力があるとしても、擬似ゲームパッドで遊ぶようなゲームはやっぱり無理を感じるし、PCゲームでいかにハイエンドなものが遊べるとしても、ゲーミングPCの場所に依存せず、ソファーやトイレでも遊べたほうがいい。「これはスマートフォンゲームだから……」とか「これはPCゲームだから……」と、これまで諦めや慣れでごまかしていた部分を解消する試みがあるのは大歓迎。まぁ一番問題なのは、このSHIELDが日本で発売されるかってことなんですけどね……。