先日発表された、ガストの『アトリエ』シリーズ最新作『エスカ&ロジーのアトリエ~黄昏の空の錬金術士~』(2013年6月27日発売予定)。本作のディレクターを務めるガストの岡村佳人氏と、3Dキャラクターモデル・モーション制作を担当しているフライトユニットの代表、松本浩幸氏にインタビューを行った。
※本記事は、週刊ファミ通2013年4月11日増刊号(3月28日発売)に掲載されたインタビューの完全版です。
左:ガスト ディレクター
岡村佳人氏 (おかむら よしと)
『ヴィオラートのアトリエ~グラムナートの錬金術士2~』からシリーズの制作に参加。『ロロナのアトリエ~アーランドの錬金術士~』からディレクターを務める。
右:フライトユニット 代表取締役
松本浩幸氏 (まつもと ひろゆき)
ゲーム業界でプランナー・ディレクターとして活動した後、2002年、3Dキャラクターの制作をメインとするデベロッパー、フライトユニットを立ち上げる。
ふたりの主人公の視点で描く、新しいアトリエです
――今回、主人公がふたりと聞いて、かなり驚きました。始めに、主人公を選べるようにした理由を教えていただけますか?
岡村佳人氏(以下、岡村) ユーザーの皆さんに大きな驚きを感じていただきたかったというのが、いちばんの理由です。また、前作『アーシャのアトリエ~黄昏の大地の錬金術士~』では、『ロロナのアトリエ~アーランドの錬金術士~』から始まる“アーランド三部作”とは違う方向性を目指したのですが、どこまでイメージを変えていいのか、最後まで悩んでいました。ならば今度は、従来のイメージに近い主人公と、新しいイメージの主人公を作ろう、と考えたんです。
――従来のイメージはエスカ、新しいイメージはロジーということですね。
岡村 はい。シリーズファンの皆さんにも、新しいユーザーさんにも楽しんでいただけると思います。
――エスカとロジーは、それぞれどのような性格の持ち主なのでしょうか?
岡村 エスカは、いわゆる『アトリエ』シリーズの主人公らしい子です。元気ながんばりやで、ちょっとフワフワしたところがある。ロジーは……ある意味、本作の最大の萌えキャラといいますか……。
――えっ、萌えキャラですか?
岡村 表現が難しいのですが、とにかく、すごくいいヤツなんです(笑)。クールに見えて熱い。物語では、ふたりが仕事を通じて距離を縮めていき、いっしょに夢に向かっていくさまが、友情や信頼をテーマにていねいに描かれています。黄昏の世界で若いふたりが懸命に生きていく物語を楽しんでください。
――どちらの主人公を選んでも、その物語は楽しめるのでしょうか?
岡村 メインとなるストーリーは共通です。ただ、エスカとロジー、それぞれに専用のイベントがありますし、同じイベントでも、異なる視点から楽しめたりします。
――エンディングも変化しますか?
岡村 前作同様、マルチエンディングを採用しています。どちらで遊んだ場合も見られる共通のエンディングのほか、エスカでしか見られないもの、ロジーでしか見られないものもあります。
――それはやり込み甲斐がありそうですね。
岡村 どちらかの主人公の物語を見るだけでも、十分に楽しんでいただけますが、周回プレイをされる方は、良かったらもう一方の主人公でも遊んでいただきたいですね。
――ちなみに、本作のサブタイトルは“黄昏の空の錬金術士”となっていますが、空が舞台になるということでしょうか?
岡村 “空”の存在は、ストーリーの中で重要な意味を持っています。
――今回公開された設定画にも、飛行船らしきものが描かれていますね。
岡村 ありますね。これらの乗りものがゲーム性にも関わってくるかもしれません。
――『アーシャのアトリエ』のキャラクターが登場するのかも気になります。
岡村 誰が登場するかは、まだお知らせできませんが、引き続き登場するキャラクターはいます。本作では、前作の後の物語が描かれますので、成長したキャラクターたちの姿を、ぜひ楽しみにしていてください。
いっしょに3Dキャラを魅力的にしたい
――前作に続き、今回もフライトユニットが3Dキャラクターを制作していますが、そもそもガストとフライトユニットが、いっしょにゲーム開発をするようになった経緯を教えていただけますか?
松本浩幸氏(以下、松本) お付き合いが始まったのは、『アルトネリコ』シリーズの1作目からで、3Dの塔を制作しました。続編にも携わらせていただいて、3作目ではメインキャラクターの制作を担当しました。それから、「『アトリエ』シリーズを3Dで作りたい」とご相談をいただいたんです。
岡村 『ロロナのアトリエ』のときですね。
松本 『アルトネリコ』の素材を使って、3Dキャラクターモデルと背景のデモを作ったところ、ご好評いただけて。そこから、『アトリエ』シリーズにはずっと関わらせてもらっています。
岡村 いまの『アトリエ』は、フライトユニットさんなしでは考えられません。
――前作から、キャラクターデザインに左さんを起用されたのも、フライトユニットが推薦されたからだと伺いましたが。
松本 左さんの絵は、すごくしっかりしていて、かつ細やかさがあるんです。『アトリエ』シリーズが大作へと進化していくなら、左さんの描く、しっかりしたキャラクターが合うと思ったんです。
岡村 キャラクターデザインの段階でも、フライトユニットさんには、3D化したときにどうすれば映えるか、どの部分が気になるかについて、助言をいただきます。
松本 前作では、全体的に色合いが落ち着きすぎてしまったので、鮮やかな色や、豪華なシルエットを取り入れてほしいとお願いしました。それから、『アトリエ』では、キャラクターの表示サイズが場面場面で変化しますから、どの場合でも映えるように考えますね。たとえば、揺れものがあると、動きがついて華やかになるとか。
――揺れものというと、やはり目が行くのは、エスカの尻尾ですよね。
松本 モーション担当によれば、エスカの尻尾は、予想以上に、かなりの見どころになっているらしいです(笑)。
――キャラクターのモーションも、フライトユニットが手掛けているんですね。
岡村 ほぼすべてのモーション制作をお願いしています。なお、前作では実装できなかった、リップシンクや視線の動きも、本作では実装しています。
松本 キャラクターを画面内に置いたときの見えかたもガストさんと一緒に調整して、プログラムを組んでいます。単にモデルを納品するのではなく、「(ガストと)いっしょに3Dキャラクターを魅力的にする」という気持ちで作業させていただいています。
――今回、新たに『無双』シリーズと同じ開発エンジンを採用されたとのことですが、エンジンが変わったことで、表現の幅は広がりましたか?
松本 色により深みが出るようになったのが大きいですね。黄昏の世界の雰囲気が出るよう、画面を調整しています。でも、エンジンが変わったことで僕らが目指したのは、「前作とあんまり変わらないこと」なんですよ。ぜんぜん違うゲームになってしまったら、ファンをガッカリさせてしまいますので。エンジンのいいところだけを取り入れていこうと思っています。
――動いているキャラクターたちを見るのが、いまから楽しみです。それでは、最後に読者へのメッセージをお願いします。
松本 いま、フライトユニットがいろいろなお仕事をさせていただけるのは、ガストさんとの取り組みがあってこそだと思うので、本作でも、より一層力を入れて取り組みたいと思っています。今回は、主人公たちが本当にかわいい・カッコいいので、手に取っていただければ、すぐに魅力がわかると思います。よろしくお願いします。
岡村 “黄昏”シリーズ2作目ということで、より完成度の高いものを遊んでいただくべく、開発を進めています。今後は、バリエーションに富んだ情報を公開していきたいと思っていますので、楽しみにしていてください。また、フライトユニットさんと、もっとおもしろいことを展開できるように考えていますので、ご期待ください。
エスカ&ロジーのアトリエ~黄昏の空の錬金術士~
メーカー | ガスト |
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対応機種 | PS3プレイステーション3 |
発売日 | 2013年6月27日発売予定 |
価格 | 7140円[税込] |
ジャンル | RPG / 冒険・ファンタジー |
備考 | プレミアムボックスは10290円[税込]、ディレクター:岡村佳人、キャラクターデザイン:左 |