ゲーム市場のグローバル化に合わせたレーティング制度を考える【GDC2013】_01

 2013年3月25日(北米時間)よりサンフランシスコでGDC(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス)2013が開催中。4日目にゲームのレーティング制度をテーマにしたセッションが行われた。

 セッションは北米のレーティング審査団体ESRB(エンターテインメント・ソフトウェア・レーティング委員会)のプレジデントを務めるPatricia Vance氏の解説からスタートした。日本国内で発売される家庭用ゲームはCEROがレーティング審査を行なっているが、現在は世界の各地域でも同様にさまざまな団体が審査を行なっている。この現状に際して「ワールドワイドのレーティング審査システムを作る努力をしている」と語った。ゲームやアプリの市場はこの数年で大きく変化しており、デジタル配信の技術浸透や開発環境の多様化により、グローバル化と巨大化が進んでいる。確かに世界基準のレーティング審査システムが構築できれば、さまざまなメリットが享受できるだろう。

 Patricia Vance氏らが中心になって進めている“世界基準の審査システム”だが、その目標について「基準を統一することで明確にして信用を上げる」「規模に応じてプロセスを柔軟にする」「各地域の背景や文化に考慮したローカライズの実現」「デベロッパーのコストを無くす(または最低限にする)」と挙げている。そして、これらを実現するために検討中の審査システムの具体的な流れが紹介が行われた。

・IARC(International App Rating Council)と名づけられた審査団体に申請すれば、ひとつのステップで複数団体のレーティングが発行される。

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・審査はYes/Noで回答するシンプルな質問用紙に回答する。設問の回答によっては、より詳細な追加質問がある。

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・審査を通過すると、各団体で個別の証明書が発行される。

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・システムは正しく稼働しているのかをチェックし、問題があればすみやかに対応する

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 このシステムではすべての審査をIARCで行うので、明確であり一貫性が保たれるだろう。地域の背景や文化の違いについても、コントロールしやすい環境となるはずだ。また、デベロッパーとしても手続きにかかる手間やコストが下がることはメリットになる。
 現在、昨年完成した審査用の質問用紙をテスト中だが、ESRB(北米)、PEGI(欧州)、USK(ドイツ)、DJCTQ(ブラジル)ほかのサポートを受け、2013年の実施を目標にしているという。

 その後、パネルディスカッションでは登壇者がそれぞれの立場からレーティングに対する見解を述べた。
 PEGIのマネージング・ディレクター Simon Little氏は「PEGIは10年の歴史があり信用されているが、欧州全体での協力体制を確立するのは難しい」と文化の違いをまとめることの難しさを語った。
 また、ブラジル政府法務省のRafael Vilela氏は「ブラジルでは憲法に従い政府がレーティング審査を行なっている。そのため非常に時間がかかり、デジタル環境に遅れが生じている」と悩みを打ち明けた。審査対象にはゲームだけでなく、テレビ、映画、アプリ、一部の書籍も含まれるが、急激なゲーム市場の拡大につき、政府のシステムでは対応できなくなっているのだとか。
 一方、マイクロソフトでシニアプロデューサーを務めるAaron Kornblum氏はプラットフォーマーの立場から「レーティングは複雑もので、現在14の地域に対応しなければならないので、時間とコストがかかっている」と語る。しかし、「ビジネスの一環として欠かせないもの」という認識を明らかにし、さらに「見当違いの批判からゲームビジネスを守るために、親をちゃんと教育しなくてはならない」とレーティングの重要性を強調した。

 このように地域や立場によって状況は大きく異なり、当面の課題も異なっている。しかし長期的な視点に立てば、グローバル化の進むゲーム市場でレーティング審査に明確な基準を設ける意義は大きい。ゲーム業界の未来の為にも、今後の動向を見守りたい。