大きな可能性を秘めたアフリカのゲーム市場

知られざるアフリカのゲーム市場と開発シーンの展望【GDC2013】_01

 2013年3月25日(北米時間)よりサンフランシスコでGDC(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス)が開催中。2日目にアフリカのゲーム開発をテーマにした講演が行われた。

 講演に登壇したのはアフリカのゲーム開発会社、Leti GamesのCTOを務めるWesley Kirinya氏(写真左)、同社CEOのEyram Tawia氏(写真右)。ほとんど実態を知られていないアフリカのゲーム産業について、現場の声を聞くことができる貴重な機会となった。

 一口にアフリカといっても、55ヵ国、3000の異なる文化を持っており、その多様性は凄まじいものがある。ゲーム開発の歴史は浅く、本格的にゲーム開発会社が出てきたのは、2000年代に入ってから。90年代に開発会社はほとんどなく、2003年に南アフリカのMXITがSNSベースでテキストベースのゲームを制作して以降、徐々に設立されるようになったようだ。

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 プラットフォームはモバイルだとAndroidが多数を占めており、iPhoneのゲームも徐々に増加の傾向にある。インターネット機能がない携帯電話が多いものの、インターネット機能付きのフィーチャーフォンやスマートフォンが急成長でシェアを拡大しており、アフリカでもスマートフォンへの移行が進んでいるとのことだ。

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 現在、アフリカで活動している開発会社は10社前後。モロッコのカサブランカにユービーアイソフトの開発スタジオがあり、そのほかには南アフリカやケニア、ウガンダ、ナイジェリア、セネガルなど。
 また、南北アフリカと東西アフリカではゲームの特色が異なり、前者は比較的リッチなゲームが主流だが、後者はカジュアルなゲームが多いようだ。
 ゲームの言語にもアフリカ特有の傾向があり、かつてヨーロッパ諸国の植民地化されていたことから、旧宗主国+アフリカのローカル言語という組み合わせになっていることも。

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 アフリカで人気のあるゲームジャンルは以下の4つ。
1)シリアスゲーム
2)プラットフォームゲーム
3)カジュアルゲーム
4)パズルゲーム
 シリアスゲームとは企業向けのトレーニング用ゲームなどを指す。開発費が会社や組織から提供されるので、多くの開発スタジオが制作しているようだ。ただ、その多くは受注開発だけでなく、並行してオリジナル作品の開発も手がけているとのこと。世界的に人気のあるFPSや3Dアクションはまだまだこれからだそう。

 まだ成長過程にあるアフリカのゲーム産業だが、開発者を支援する団体や組織が設立されており、イベントやカンファレンスも精力的に行われている。たとえばLeti Gamesが主催するNaijia Game Evoは回を重ねるごとに参加者が増えていることから、ゲーム開発に対する機運が高まっていることは明らかだ。

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 アフリカのゲーム産業が抱える課題としては、開発者側の視点から人材育成の重要性を挙げている。技術力のある人材というだけではなく、その能力をゲーム開発に生かせる人材が足りない現状があるようだ。一方、とユーザー側にも課題があり、ゲーム文化の成熟を挙げた。小規模なゲーム市場を拡大するために、より幅広い人がゲームに親しんでいく環境が必要になっていると明かしている。

 こうした課題は抱えているものの全体的な動向としては開発スタジオ自体は増えており、中には専門性を高めた開発スタジオもできてきたことから、あまり悲観することはなさそうだ。今後は資金提供や投資を受ける機会が増えたり、パブリッシング、配信、コミック、映像関係の事業拡大が予想されるなど、アフリカのゲーム開発にとって明るい予測材料を挙げていた。今後の成長や新作ゲームの登場が楽しみになるセッション内容だった。

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▲Leti Gamesによるケーススタディを紹介。アフリカの歴史上の人物を現代風に解釈して、ゲームやコミック向きのキャラクターにしている。